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『水橋パルスィの悩み。曰く妬ましい』 作者: ウナル

水橋パルスィの悩み。曰く妬ましい

作品集: 5 投稿日時: 2009/10/20 14:56:44 更新日時: 2009/10/20 23:56:44
※この作品は東方Projectの二次創作作品です。
※この作品にはキャラ崩壊が含まれます。
※この作品にはスカトロ表現が含まれます。
※この作品にはオリジナルキャラクターが登場します
※以上の四つを確認した上で、部屋を施錠しモニターから三センチは離れて呼んでください。


















旧都で三人の妖怪たちが金属の缶を追い回していた。一人は白い着物姿で桶に入っている釣瓶落とし、キスメ。一人は金髪を結い上げお腹のあたりがぽっこりと膨らんだ服が特徴の土蜘蛛、黒谷ヤマメ。そして、尖った耳と緑の瞳を持つ橋姫、水橋パルスィである。
彼らが遊んでいるのは“地獄ふっとぼーる”という遊びだ。幻想郷には缶という金属でできた筒が割とよく舞い込んでくる。それを利用した遊びだ。
ルールは簡単。それぞれ自分のゴールを作り、そこに缶を入れた者が得点を得る。缶を持っていない者は持っている人の邪魔し缶を奪い、缶を持っている人はゴールを目指す。缶を持っていない者同士は協力するが、その一方で缶を奪ってゴールを決めようと虎視眈々と機会を狙っている。缶を持った者は二対一の状態でどうやってゴールを決めるかを考えなければならない。シンプルだがそれ故に奥が深い遊びなのだ。

「とりゃあ!」

「……………っ!!」

「なあ!? それは私の缶よ! 妬ましい!」

キスメの釣瓶スライディングをかわし、パルスィのディフェンスの合間を縫いヤマメはゴールを決めた。

「いえい。これで全員三点ね。ようやく並んだわ」

そばに置いてあった棒で、地面に書かれた自分の欄に3と書くヤマメ。試合は実力伯仲の延長戦に持ち込まれた。と言っても、基本的に終了時間なんてお腹の減り具合によって変わるえらく適当なものなのだが。
缶を中央に置き、三人が自身のゴール位置に戻る。誰かがゴールを決めたら中心に缶を置いて再開するのがルールなのだ。

「よーい……」

三人が自分のゴールに待機しヤマメが合図を待つ。「ドン」の一言を聞き、飛び出そうとパルスィは右足でしっかりと地面を踏みしめる。
だが、まさに瞬間。パルスィの腹部に鋭い痛みが走った。

「っぅ!!」

合図とともにヤマメとキスメは缶に向かい駆け出すが、パルスィは身動きすることができなかった。右足と左足を前に出した格好で石化したかのように一点を見つめていた。
いつまで経っても缶に向かわないパルスィにキスメもヤマメも不安気な顔で寄ってきた。

「どうしたのパルスィ?」

「……………(くいくい)」

「何かあった? またあの巫女でも来たの?」

「……………(きょろきょろ)」

二人が話しかけてもパルスィは反応を返さなかった。その顔は青ざめ、脂汗が溢れている。
細く長い息を吐き、パルスィはようやく石化から解除された。

「な、なんでもないわよ……」

「そう? 物凄く辛そうだったけど」

「……………(こくこく)」

「なんでもないったら、ないのよ!」

苛立ったような強い口調で言い放ち、パルスィは二人に背を向けて歩き出した。その歩き方も内股気味で歩幅がやたらと狭い。

「パルスィ? どこいくの?」

「……………(くい?)」

「い、家に帰るのよ。こ、こんな子供だましの遊びなんかやってられないわ」

「こんな……って、パルスィだってあんなに楽しそうだったじゃない。ほら。やりましょうよ。次はパルスィがゴールを決められるよ」

「……………(こくこく)」

「ほらほら。意地なんか張らないでさ」

「………………(くいくい)」

「は、離しなさいよ!!」

「……………!!」

パルスィは自分の服の裾を掴んでいたキスメを思いっきり振り回した。本人は腕を払ったくらいのつもりだったが予想以上にキスメが腕を強く握っていた為、釣瓶が地面に叩きつけられてしまった。

「キスメ! 大丈夫!?」

面食らって目を白黒させているキスメ。ヤマメは急いでキスメに駆け寄り、その身体を起こしてやる。その間にパルスィは早足でその場を去ってしまった。残された二人は困惑した表情でその背中を見送った。

「……………」

「なんで? パルスィ。なんで……」

ときおり、パルスィは突然機嫌を悪くして家に帰ってしまう。自分たちは何もしていないのにヒステリーを起こしたように怒り出し、時には乱暴もしてくる。理由を聞いても答えてはくれず「貴方たちは何も悩みがなさそうね。妬ましいわ」と言い返すだけだ。
パルスィの妬み症は前々からだがそれでもこういった変化は不自然なものだった。理由を話してくれなければどうすることもできず、二人はまた次の機会に遊びに誘うことしかできないのである。めそめそとなくキスメを慰めて二人はそれぞれの家に帰ることにした。
また明日パルスィを誘おう。そう二人は決めて別れた。



◆◆◆



「こんな時にっ! 今日はもう大丈夫だと思ったのにっ!」

下腹部を押さえながらパルスィは地底の空を飛んでいた。ゴロゴロとガスがパルスィのお腹を叩く。気を抜けば今にも全てを出し尽くしてしまいそうだ。無理矢理肛門に指をつっこみ強引に栓をする。
だが、自宅まで後一歩というところで家にお腹の痛みに耐え切れなくなった。パルスィの目に飛び込んできたのは近くのあるちょっとした林。辺りに誰もいないことを瞬時に判断しその中に飛び込んだ。
しかし地面に足をつけた瞬間、力が抜けてしまったのかお尻から盛大なオナラと共に「ぶりゅ……」という音が聞こえてきた。

「や! ま、待って!」

急いで白い下着をおろすパルスィ。その白生地の中心部に茶色のしみができていたが、本命が頭を出す寸前で下着を脱ぐことができた。
パルスィが腰を降ろす動作の途中でその窄まりの力が抜け、泥のような便が雑草に振りかけられた。

「っぅ! はぁぁぁ……!」

ぶっぷぅ〜! ぶぃぃぃっぃぃいりりりっ!!

柔らかい穴を軟便が走り、ぶるぶると肛門が震え、卑猥な音楽を奏でる。直腸に溜まった便が流れ出し、全身の力が一緒に抜けていくようだ。
一方ですでに三度は繰り返された行為に、肛門擦り切れ悲鳴をあげている。焼け付くような痛みが走り、その瞳に涙が溜まる。

「なんでよ? 毎日毎日、こんなうんちばかり……」

そう。パルスィは慢性的な下痢症なのだ。
毎日のように黒い汚泥を垂れ流す。遊んでいる間に催すこともしょっちゅうだ。ごく稀だが下着をはいたまま漏らしてしまうこともある。しかし、そのことを周りの人間に話すこともできず、悪気は無いとわかってはいてもキスメやヤマメに辛く当たってしまう。腹部に痛みが走った瞬間、勘の鈍い二人はパルスィの具合を心配して自由にさせてくれないのだ。そのときばかりは彼女らはパルスィにとっての不倶戴天の敵になる。

「妬ましい 快便女が 妬ましい」

パルスィ心の一句(字余り)。
一体いつからこうなったのかわからないが、パルスィはずっと下痢と戦い続けてきた。何が原因かもわからず、こんな自分を理解してくれない周りの人間を見ては「妬ましい」という言葉を吐き続けることだけをしてきた。悔しさに爪を噛む。パルスィは排便しながらもう一度「妬ましい」と呟いた。

「おや? パルスィじゃないか。どうしたんだ? そんなところにうずくまって」

「っ!?」

突然かけられた言葉にパルスィは急いで下着をはいて立ち上がった。そこにいたのは一本の赤い角の生えた鬼、星熊勇儀だ。

「具合でも悪いのかい? 家まで連れてってやろうか?」

「な! そ、そんなことないわよ!」

「そうかい? まあ元気そうだし大丈夫か? ん? なんか臭いような……」

「!?」

パルスィは思わず後ろ足で自分の出した軟便に砂をかける。そんなことしても隠せるような量ではないのだが、何もしないよりもマシだと愚かにも考えてしまったのだ。だが、当の勇儀は「ちゃんと風呂にはいったんだけどな」と自分の身体にすんすんと鼻を這わせていた。

「そ、それよりなんでこんなところに? 地上にでも行くの?」

慌てて話を変えるパルスィ。確かにここは地上と地底を繋ぐ橋の近くだ。こんなところを通るのは地上に出ようと変わり者くらいなのだ。

「んにゃ。地上への見送りの帰りだよ。萃香とそのツレが訪ねてきてね」

「萃香って。あの小さな鬼の?」

「そうそう。なかなか面白いネタを持ってきてくれてね」

「一体どんな?」

「『永遠の排泄』について」

悪戯をしかけた子どものような笑みで勇儀は言った。だが、勇儀とは正反対にパルスィは思いっきり嫌悪感を現した顔で勇儀を見つめ返した。

「永遠の、排泄ぅ〜。何なのよそれ?」

「ん〜。これは体験してもらった方が早いな。口ではアレは説明しづらい。何でも地上は排泄主義ってのが流行ってるみたいでな。便所神って神様が現われて信仰を集めてるって話だし」

「便所神? それって便所の神様よね?」

「まあ、名前からするとそうだろうな。会ったことないけど」

「……その神様。どんな容姿かわかる?」

「えっと。聞いた話じゃ、緑髪で白と青の巫女服姿でカエルとヘビの髪飾りをつけてるとか。でもなんで?」

「いえ。ただの興味本位よ」

「そうかい? まあそういう訳だ。そのうち酒の肴に話を聞かせるよ」

「酒が不味くなりそうだからやめてよ」

「いやいや。お前も試してみればわかるって。まさしくやみつきだよ?」

そう言い残し勇儀は林から去っていった。そこでようやくパルスィは一息ついた。勇儀が見えなくなるまで待ってから、辺りの砂をかき集めた。そこまでしてようやくパルスィは臀部にある生柔らかい感触に気づいた。





「妬ましい! 幸せに生きてる連中が妬ましい!」

ぐっちょりと茶色に染まった下着を洗いながらパルスィは一人叫んだ。桶の中の水は薄く茶色になっている。さらにお気に入りの靴にも下痢便がこびり付いていた。後ろ足で砂をかけるときに誤って自分の便に触れてしまったようだ。
洗剤まで使って懸命に洗ったが下着についた汚れは完全には落ちそうにはなかった。ノーパンのパルスィは怒りに顔を真っ赤にし、茶色の下着を風呂桶に投げ捨てた。



「妬ましい! 妬ましい! 妬ましいっ!!
のうのうと純白のパンツをはいてる奴らが妬ましい! 
毎朝のように固形便を出せる快便女が妬ましい! 
清楚な顔して野太い大便をぶりぶり出せる美少女が妬ましい! 
一週間うんこ溜めて官僚用便所で排泄できる女が妬ましい!
妬ましい! 妬ましい! 妬ましぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいっ!!
なんでなんでなんで! 私ばっかり!! こんな目に!!」



ばりばりと髪をかきむしり、パルスィはヒステリックに風呂場で暴れまわる。そして、置いてあった石鹸で足を滑らせ浴槽に思いっきり頭をぶつけた。

「痛ぅぅぅぅぅぅぅっ!!」

涙目で痛みを堪えるパルスィ。その心に浮かぶのは無数の嫉妬の言葉ばかり。
ようやく痛みが引いたのか、よろよろと起き上がったパルスィはクマのできた目で格子のついた窓を見た。地底にあるのは空を望めぬ天井ばかり。しかし、その先にはパルスィにとってのわずかな希望がある。

「便所神……。便所の神様なら私の下痢も治してくれるわよね? なにせ神様ですもの」

この瞬間だけはパルスィの顔はまるで流れ星に願いをかける少女のようだった。嫉妬に歪んだ妖怪の顔は影を潜め、少しだけ希望に顔をほころばせた。ゴロゴロと鳴るお腹を擦りながら、パルスィはまだ見ぬ便所神なる神に思いをはせた。



◆◆◆



次の日の昼、人間の里にある寺子屋では排泄についての談義が行われていた。便所神となったといっても早苗はまだまだ日が浅い。神たるもの奇跡ばかりに頼っていてはいけない。もっと多角的な見地から人々の相談にも乗れるようになっておくべき学ぶべきだ、と萃香に諭され、排泄主義の先駆者である男と慧音を教師に自主学習をしているのだ。

「うんこは健康状態を確認するわかりやすいバロメーターです。例えば固さ。固すぎるうんこは便秘である可能性が高いです。人にはそれぞれ合った排便期間があるので一概には言えませんが、一般に排便が三日以上ないまたは出しても残糞感がある場合は便秘であるとされます。その主な原因は食物繊維の不足、十分な咀嚼が行われなかった、薬の副作用などです。まあ、人によっては自主的に排泄量を増やす為に排便を我慢することもあるのですが、これはある程度慣れておかないと危険なテクニックです」

「解消法としては下剤や浣腸によって排便を促すことだが、これが常態化した場合逆に浣腸無しでは排便できなくなってしまう。まずは正しい排泄習慣をつけることからだ。毎朝起きたら水を飲み、ちゃんと目が覚めたらトイレに向かう。その習慣をつけるだけでもだいぶ変わるはずだ。ご飯をしっかり取り特に野菜を食べると良いな。私の生徒の中にも便秘がちの子がいるが、やはり寝坊をしてトイレに行かずに寺子屋に来る子が多い。寺子屋の便所に行くのは恥ずかしいという意識があるようで無理に排便を我慢する子もいる。そんな子がうんこを我慢するのは当たり前という意識になり、便秘を起こしてしまうのだ」

「なるほど! 勉強になります!」

「まるで実体験を話しているみたいにリアルな話しだねぇ。そういう生徒でもいたの?」

「……………まあな」

「あ、あと腹筋を鍛えるのもいいみたいですね。やっぱりうんこをするときは腹筋を使いますもん。勇儀様もそうでしたが、萃香様もよくあんな太いモノを出せるなと思います」

「そりゃあまあ、鍛え方が違うからね。しっかりと身体動かしている奴は自然と快便になっていくさ」

むん、と薄い胸を張る萃香の横でせっせと早苗は言われた言葉を紙に書き写していく。実際に便所神になってから排泄に対する悩みの相談も多くなった為、こういう知識は非常に参考になるのだ。

早苗は便所神になってからとしみじみ思う。排泄とは人を映す鏡である、と。
十人十色の形があり、それぞれに合った排泄の仕方がある。そこに正しい排泄というようなものはないが、各人に最高の排泄がある。ナンバーワンなどない。みんながみんなオンリーワンなのだ。だからこそ、早苗はそれらを見守る便所神として最高の排泄の手伝いをしてあげたいと切に願うのだ。痔に苦しむもの、便秘に苦しむもの、まだ一人でするのが下手な子ども、全員早苗の大切な信者だ。彼らに最高の排泄をプレゼントするために早苗は今日も頑張ります。

「じゃあ、続けますね。次に下痢についてですが……」

「便所神! ここにいるんでしょう!? 出てきなさい!」

男が授業を再開しようとしたとき、ヒステリックな声とともに寺子屋の扉が開け放たれた。教室にいた四人が振り返った先には緑色の瞳の妖怪が不機嫌のために顔を上気させていた。
実はこの少女、地上に出るのも久しいため幻想郷を散々迷ったあげく、妖怪の山に住むニ柱の神に下着を狙われたため非常に機嫌が悪い。
きょろきょろと教室を見回したパルスィは緑髪の少女を認め、ずかずかと歩いてくる。

「あんたが便所神?」

「え? あ、はい。私、このたび幻想郷の便所神となりました東風谷早苗と申します。以後お見知りおきを」

「なら話は早いわ。私の悩みを聞いてちょうだい」

ふかぶかと礼をする早苗を他所にパルスィは勝手に話を進めていく。やや困惑顔の早苗だったが、相手は妖怪とはいえ自分を頼ってきてくれた信者候補だ。みすみすここで逃がす手は無かった。聞けばこの妖怪は地底の妖怪であるとのこと。うまくすれば神奈子と諏訪子とともに早苗への信仰も地底に広まり、守矢神社の地位をより磐石にすることができるかもしれない。そうすればいけ好かない命蓮寺との格差を広げることも可能だ。場合によっては連中を路頭に迷わせることもできるかもしれない。早苗は心の中でにやりと歪んだ饅頭のような笑みを浮かべた。

「なるほど。神へ神託を貰いにきたわけですね。いいでしょう。この東風谷早苗。信者の言葉には耳を貸す寛容な心を持っています。なんなりと申してみなさい」

あっという間に調子づいた早苗を見て、男は苦笑し、萃香は興味なさ気に酒を飲み、慧音はやれやれと首を振った。その様子にパルスィは眉を怪訝な表情を浮かべたものの、チクチクと痛むお腹に背中を押され早苗に悩みを打ち明けた。

「なるほど。下痢症ですか」

「大きな声で言うなっ! 周りの人間に私が下痢だってばれたらどうするの! もうっ! 妬ましいわね!」

「あんたの方がよほど声大きいと思うけどなあ」

「うるっさいわね。貴方と違って私は身体が大きいから声も大きくなるの。ああ妬ましい。コンパクトツタペタボディが妬ましい」

「……喧嘩は借金してでも買う主義なんだよねぇ。私」

「うわわわわわわ。す、萃香様もパルスィさんも落ち着いて。そうだ萃香様。酒の肴に漬物を持ってきましたよ。どうぞどうぞ」

「なんか、子どもを飴であやしているみたいな態度で気に入らないが……まあいいか。このおしんこに免じて見逃しあげるよ」

そう言って萃香は綺麗に黄色に染まった大根を口に放り込みコリコリと咀嚼する。途端に酒が進みだしたのか、片手にひょうたん片手に漬物の萃香はぐびぐびと酒を飲んでいく。呆れ顔でそれを見ていたパルスィは再び早苗に振り返った。

「それで治せるの?」

「えっと、はい。信仰さえあるならすぐにでも」

「治せるのね!? なら早くしてちょうだい! 礼ならちゃんとするわ!」

早苗にパルスィは一気に詰め寄った。がしっと早苗の両手を掴み顔を寄せる。それに気圧され早苗は思わず払い棒を振ってしまう。奇跡の力によりパルスィのお腹にしっかりとした感触ができあがった。下痢になっていた分がしっかりとした形を保ったためだろう。服の上からその感触を確認したとき世にも珍しいパルスィの笑顔があった。

「やった、やったわ! これで下痢とはおさらばね!」

「でも気をつけてくださいよ。冷たい食べ物やお腹の出るようなことは控えてください。あと変なものも食べないように。後、守矢神社を信仰するといいと思うよ」

「わかったわ! ありがとう! でも、そんな力を使える貴方が妬ましい!」

感謝しているのか妬んでいるのかよくわからない台詞を残し、パルスィは去って行った。その足取りは軽く地底で出会ったキスメやヤマメも始めは誰かわからなかったほどだ。

「キスメ! ヤマメ! 遊びましょう!」

「え? パ、パルスィ? な、なんか今日はやけに機嫌いいね。変なものでも食べた?」

「……………(びくびく)」

「別に! でもそんな愛らしいリアクションを返せる二人が妬ましい! ジェラシィ!」

そうして言い知れぬ不安を抱きつつも二人は昨日の続きを始めた。だが、ゲームに集中しだすとそれも忘れていった。



◆◆◆



「ん〜」

自宅の風呂につかりながら男は首をひねった。男の膝の間に座っていた萃香は天を仰ぐ形で男の顔を見た。

「どした?」

「いえ。パルスィさん、あれで良かったのかなって。どうにも腑に落ちなくて」

「早苗の力を疑ってるの?」

「いえそういう訳ではないんですが」

「だろうね。別に早苗は無能のいらない子じゃあない」

「そこまで言ってませんが」

「でも、やっぱり詰めが甘いねえ。まだまだ修行が足りないなあ。あの巫女は」

萃香が浴槽から出る。そのまま木製の椅子に座り、髪をまとめて身体の前面に持ってくる。男は手ぬぐいで石鹸を泡立て萃香の背中を擦り始めた。

「詰めが甘いと言いますと?」

「下痢にも色々ある訳さ。あんたなら知ってると思うけど、下痢の主な原因は?」

「えっと」

萃香のお尻をチラ見する。イスに座ることで少し形を変えた小振りなお尻はそこはかとない妖艶な雰囲気を持っている。首を通り肩や背中に流れる雫も舐め取りたくなるほど魅力的だ。何気ない、何処にでもあるはずのものなのに何故にこんなにも惹かれるか男には理解できずにいた。

「ほら早く。あと五秒以内に答えないと、あんたの毛を毟り取るよ。もちろん全身のね」

慌てて男は意識を切って、萃香の問いへと頭をシフトした。

「まず食中毒や病気がありますね。風邪などのときも消化力が落ちていて下痢便になります。腸が菌やウイルスを早く外に出そうとするためですね。他には刺激の強い香辛料やアルコールなどを摂取した場合、腸の動きが活発化して水分を十分に吸収しないまま排泄してしまうので下痢になりますね。それとストレスや乱れた生活習慣でも下痢になってしまいます。水分を吸収する力が弱まるためですね」

「正解。下痢はこれらの要因が複雑に絡み合って起こるもの。で、パルスィの場合は三番目のストレスによる慢性的な下痢症なわけ。あの下賎な妖怪は常に嫉妬心を持っている。誰かを嫉妬することでストレスが溜まり、それが結果的に下痢につながっているわけだ」

「そう、だったんですか。……って、それじゃあ」

「そう。あの妖怪が嫉妬心を持ち続ける限り治しようがない。早苗は目の前にある分を整えたに過ぎない。しばらくすればまた同じ症状が出るわね。そして、橋姫たるあいつは嫉妬心を無くすことはない」

「そんな……」

男は萃香の肩を擦っていた手を止めてしまった。今はもう地下に帰ったであろうパルスィを思う。少女の悩みを聞き、男は一時的な生活不順が原因かと思っていた。だが、それが一生となれば話は別だ。

「それじゃあ、彼女は一生極太排泄の快楽を知ることがないということですか? なんて不幸な……。神はなぜこんな辛い目を彼女に与えてしまったのか……っ! 神よ! 私は貴方を恨みます!! 人々には平等に排泄の快楽を知る権利があるはずです!!」

男は手ぬぐいを振り回し、空の一番星に向かい叫んだ。だが、答えはもちろん返ってこない。この幻想郷において神はあまりに身近な存在なのだ。萃香はそんな男の姿を見ながらどこか憂いをたたえた瞳を空に向けた。

「早苗の奇跡でもこればっかりはその場しのぎにしかならない。あの妖怪に残されたのは一昼夜限りの快便だけ。私にしても同じだ。私の力を使えば十分な固さに調節することができる。でも、やはりそれもただの付け焼刃。あいつが本当の排便を行える日は、たぶん一生来ないのさ。存在を変えない限りはね。……橋姫。人々に忌み嫌われ、排泄の快楽にさえ見捨てられた女。そう考えると少し可愛そうにも思えてくるよ」

その言葉に男は泣き崩れてしまった。
妖怪の業。それが男にはあまりに不憫に映る。排泄主義者としてこの快楽を世に広めると誓った。だが、世界にはそれが叶わぬものもいるのだ。そう知った瞬間、男の中に言いようのない無力感が広がった。

「何が……。何が排泄主義だ! 何が排泄の快楽だ! 妖怪の女の子一人満足に満たしてやれないのか、私は!?」

思いは出口を求め、男の口より飛び出した。

「永遠の排泄!? そんなものが何になる! 所詮それは私の自己満足だ! 満たされたもののオナニーだ!! 世には満たされない排泄をしている子がいるというのに、私は何もしてやれないのか!? こんな、こんな残酷な責め苦に苦しむ子に手を差し伸ばすことができないというのか!?」

それは先を行くがゆえに纏わりつく苦悩。彼の求める排泄主義の世界は、水橋パルスィという少女には一生理解できないものだ。そう知ったとき、男は無力感に涙した。全てを救うことができる。形は違えど、排泄の喜びを分かち合える。そう考えていたのが、ただの思い上がりだと否応無く理解させられた。

排泄は完璧ではない。救えぬ者もいる。それもまた仕方の無いこと。だが、男の描いていた楽園にはそんな存在はいなかったのだ。何たる無知。何たる無能。しかし、若さゆえの暴走は感情を体液として流す以外に発散する方法はなかった。
だが、その身体に小さな温かみが重ねられた。萃香は男の胸にその頬を寄せた。

「萃香……様?」

「泣くな騒ぐな。お前がそんなことではせっかくついて来てやった私の立場がなくなる」

「……………」

「全てを救おうなどそれこそ傲慢な話だ。それは裏を返せば世界の全てを手に入れるという野望に他ならない。世界制服を完遂した者がいないように全てを救った者も、やはりいないのだ。お前はただがむしゃらに駆け抜ければよい。その後に道ができるのだから」

「……っ!」

「少なくとも私はついていくさ。あんたが歩みを止めない限りね」

「萃香様っ!」

思わず男は萃香を抱き返していた。その小さな胸に抱かれながら「絶対に、絶対に諦めません!」と何度も呟いた。萃香はまるで子どもをあやす母のように静かにそれを受け止め、その背中を撫でてやった。



◆◆◆



次の日の朝。パルスィは便所の中で歓喜の声を上げた。
バナナほどの大きさのうんこ。それも綺麗な茶色だ。いつもならどす黒い泥のような下痢便が流れ出るというのに、今日は肛門を押し広げ、久々の快便をすることができた。その快感にパルスィは本当に久々に心が満たされた。

だが、他の妖怪たちはみな毎日のようにこんなうんこをしていると思うと、急に妬ましく思えるようになった。

干していた洗濯物を取り込むとき、薄っすらと茶色のしみの残る下着を見た。他の者はみな綺麗な下着を着ていると思うと妬ましくなった。

歩いていると野良犬が野グソをしていた。そのアホ面に見ていると急に妬ましくなった。
勇儀が今日宴会をしようと声をかけてきた。その天真爛漫な顔を見ていると妬ましくなった。

いつの間にかパルスィは普段どおり「妬ましい」を繰り返す嫉妬の妖怪に戻っていた。

「ね、ねえパルスィ。今日も遊びましょうよ。も、もちろん具合が悪いなら無理にとは言わないけれど」

「……………(くいくい)」

昨日の異様に明るいパルスィの姿が焼きついているのか、ヤマメもキスメも少し腰が引けた様子でパルスィに声をかけた。その様子を下目使いに見て、パルスィは自嘲気味な笑みを浮かべた。

「いつも通り気楽そうな顔ね。貴方たちは。妬ましいわ」

そのいつも通りの様子にキスメもヤマメもほっと胸を撫で下ろした。やはりパルスィはこうでなくてはならない。そうして三人は昨日と同じように缶を蹴り始めた。
だが、しばらくするろパルスィのお腹がゴロゴロとなり始めた。

(っ!? そんな!?)

パルスィは困惑した。下痢は治った、と便所神のお墨付きを貰ったのになぜまだこの苦しみを味合わなければならないのか。もしかしたらただの偶然か一時的なものかと思い、パルスィは強引に遊び続けた。

それがまずかった。

気がつけばパルスィは気を失いそうな痛みを感じ、眉を寄せて座り込んでしまっていたのだ。

「……っぅ! はぁ……はぁ……っ」

「パ、パルスィ? 大丈夫?」

「……………(おろおろ)」

もはや我慢するとか家に帰るとかそういうレベルの状態ではなくなっていた。ダムの崩壊は時間の問題。インフルエンザにでもかかったかのように全身に寒気が走り、気持ちの悪い汗が背筋を流れる。目の前が揺れ、足腰に力が入らない。
だが、二人の妖怪はパルスィを案じ、その背中を撫でてくる。それはパルスィを気づかっての行動だったが、今のパルスィには拷問以外の何ものでもない。しかし、それを払う元気すらもパルスィにはなかった。

「立てる? とにかく家に戻ろう」

「っひぐぅ!」

こともあろうに二人はパルスィを立ち上がらせようとした。無論、身動ぎ一つが地獄の苦しみなのである。立ち上がろうものならすぐにでも彼女の下のお口からうんこが挨拶をするだろう。
もはや選択の余地はなかった。パルスィは近くの草むらに向かい走り出した。せめて二人に排泄姿を見られることだけは避けたかったのだ。
だが、その希望さえ断たれた。すでに判断力を失っていたパルスィは進行方向に転がる缶にさえ気づけなかった。

「きゃ!」

可愛らしい悲鳴を上げてパルスィは缶に滑って転んだ。前のめりに倒れ、四つん這いの格好になったパルスィ。それが死刑宣告だった。



「い、ややあああああああああああああああああああああああああああああああっ!! 見ないでえええええええええええええええええええええええええええええええっ!!」

ぷっしゃああああああああああああああああああああああっ!!
ぶっぷぅ〜〜〜っ!! ぶうるぅ! ぶりぶりりりり……っ! べちゃびちゃっ!!


声を上げては逆に注目を集めるともわからず、パルスィは叫んだ。次の瞬間、盛大なオナラを皮切りにパルスィは脱糞した。それだけではない。股間からは小便を漏らしている。
折角はいてきた薄い青色のパンツは茶色に染まり、内側からホースの水でも浴びているかのように勢いよく膨らんだ。それが確固たる形を持ち、ゆっくりとパルスィの尻を流れ、下着を重みで引き下げていく。
パンツが吸いきれなくなった汚泥は太ももを伝い、白い靴下と黒い靴の中に溜まっていく。黄色い小便と混ざり合い、白い太ももを流れるそれは一種の芸術品のようだ。
そんなパルスィの排便姿を目撃してしまった二人は、何をすることもできずただその非現実的な光景を目に焼き付けるしかなかった。

「うっ……うっう……」

とうとうパルスィは泣き出してしまった。ボロボロと涙を流し、「妬ましい……妬ましい……!」と繰り返す。
パルスィの心にあるのは絶望だけだ。嫉妬に狂い人々を呪い殺していったかつての自分。人は自分の姿を見るだけでショック死した。幻想郷に入ってからもこの能力は人々だけでなく妖怪にも嫌われた。だが、地底に来てからはわずかながら友達と呼べる人ができた。嫉妬の心を完全に忘れることはできなかったが、彼女らといるときだけは少し心が休まった。
それももうおしまいだ。こんな姿を見られた以上、彼女らはパルスィを軽蔑するだろう。再び一人苦しむ日々を想像し、パルスィは「妬ましい」の一言に思いを乗せるしかない。

だが、そうはならなかった。見ればキスメはせっせと穴を掘り、ヤマメはパルスィのパンツを脱がした後、そのお尻を紙で丁寧に拭いていた。

「……どうして? こんなことをしてくれるの?」

そのパルスィの疑問に二人は笑みで返した。

「うんこ垂れたくらいでパルスィを嫌いになるはずないよ」

「……………(こくこく)」

そして、キスメの掘った穴にパルスィのうんこを埋め、三人はパルスィの家へと向かった。

「まずは身体を洗わないとね。一緒に入ろうか?」

「……………(こくこく)」

「……貴方たち格好つけすぎよ。妬ましいわ」

でも、と一拍置き、そっぽを向きながらパルスィはこう言った。



「ありがとう」



排泄は快楽を得るための手段である。それは違えようのない事実である。
だが、世界には排泄によって作られる縁もあるのだ。
パルスィはこの件を通してより二人の妖怪と打ち解けていった。

このことを聞いた男は深い感銘を受け、そのときの様子を地底の妖怪たちに聞きに行った。パルスィは照れながらも嬉しそうにそのときのことを語った。男は排泄には快楽だけでなく友を繋ぐ架け橋にもなり得ると新たな希望を抱けるようになった。




どうしようもない障害が目の前に現われたとき、人は思わず神に祈る。
だが、時には神の奇跡など必要ないこともあるのだ。
本当の友人は全てをさらけ出して、なお友人であり続けるのだから……。

それが心の通じ合った友。“心友”である。

























「排泄主義者。ふーん。ずいぶんと妙な連中が現われましたね」
「どうしますか? 必要ならばやっつけちゃいますよ」
「いえ、ここは私自らが動くべきでしょう。地上ならばいくらでも変えてしまって構いませんが、地底にまで手を出すようなら仕方がありません」
「ということは……ま、まさか、彼らに“アレ”をするつもりですか!?」
「ええ、そのつもりです。永遠の排泄。興味深いですが、このままでは地底の者に悪い影響がでます。……その前に少し腕を慣らしておきますか」
「!!?」
「ふふっ……。『やった! ご褒美を貰える』ですか。下の口もこんなに濡らして、はしたない子ですね。安心しなさい。最高の喜びを与えてあげますよ」






つづく
risyeさんとこのパルスィの下痢便をもらった。イエイイエイ。

そういえば、パルスィは普段どんなうんこするんだろ?

嫉妬ばかりしてストレスたまってそう。きっと神経性下痢便だ。

パル「ど、どうしよう。risyeにうんこ欲しいと言われたけど、下痢しかでないよぉ……」

パル「ほら! あんたの欲しがってたものよ! ふん、あんたには汚らしい下痢便がお似合いよね! 感謝の言葉はどうしたの!?」

というところまで妄想し、これはパルスィを書かねばと使命感にかられこうなった。ゲリゲリよぉー。


本日のテーマ「健康と排泄と友愛精神」。排泄主義は世界を繋ぐ。


さて、物凄く悪そうな連中が出てきました。反排泄主義の一派でしょうか? 彼女らの正体は? その目的は? 排泄主義者は彼らに勝てるのか? 
わーわーどんどんぱふぱふ〜


追伸:勇儀姉さんとの絡みも書いたのですが、まとめると長いので載せませんでした。そのうち投稿します。

追伸2:参考になるかとグーグルさんに「萃香 スカ」で検索したら産廃創想話がトップだった。複雑な気分。
ウナル
http://blackmanta200.x.fc2.com/
作品情報
作品集:
5
投稿日時:
2009/10/20 14:56:44
更新日時:
2009/10/20 23:56:44
分類
水橋パルスィ
伊吹萃香
排泄
スカトロ
下痢
1. 名無し ■2009/10/21 00:45:59
ウナルさんのSSで新たな性癖が目覚めてしまいました
2. 名無し ■2009/10/21 00:58:14
この物語は、
全ての人々にほんの少しの救いを望んだ男と
その救いにさえ見捨てられた少女と
そんな少女を見捨てなかった少女達の
愛を描いた物語であるッ!!

続編は分からんッ!!
3. 名無し ■2009/10/21 01:02:11
このシリーズが好きなのは、男に好感が持てるからだろうなあ
とか言いつつ全体的に好きです。すいかちゃんかわいい
4. 名無し ■2009/10/21 01:03:21
男と萃香がちょっとずつ仲良くなっていってるのが妬……微笑ましい
5. 名無し ■2009/10/21 02:46:54
毎回とても爽やかにウンコのストーリーを描く作者に脱帽です♪
6. ぐう ■2009/10/21 11:31:35
キスメとヤマメ優しいなぁ。友情って素晴らしい
7. のび太 ■2009/10/21 12:54:29
妬ましい…快便して、快感を覚える奴が妬ましい。
8. どっかのメンヘラ ■2009/10/21 22:15:15
神経性の下痢ほど困ったものは無いな!パルスィの気持ちはよく分かる。
9. risye ■2009/10/23 22:35:01
パルスィの下痢便にこんなストーリーがあるとは…

うぎぎ、なんだろう、パルスィ愛されているなぁ、と思う今日この頃。
10. 名無し ■2009/10/24 16:36:27
普通に良い話で逆に吹いたわw
11. 名無し ■2010/11/29 00:16:47
パルスィの下痢便がここまで切実に書かれるとは
なんかUNアルのせいですごい不便に思えちまった
いや、実際不憫なんだろが
12. 名無し ■2010/12/04 23:25:58
三センチは離れて呼んでください。
        ↑読んででは?
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