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『なんでもない日』 作者: nekojita
霊夢が博麗神社でなんでもない日常を楽しんでいると、魔理沙までもがなんでもない日常を楽しみにやってきた。その時の会話。但しあまりになんでもなくて傍から見る者には退屈なので自動的に大部分が省かれたらしい。
「暇ね」
「暇だぜ」
以上。
そんなことしているうちに太陽は天空高く上り、中天を過ぎて少ししたころ、やがて二人はおかしいなと気がつきだした。
初めひそひそ声で遠慮がちに、やがて大胆に、テンプレじみた、収録もされない会話をかなぐり捨てるように、一つの疑問点を声高に論じ始める。
「魔理沙」
「ん」
意識して声色を変えて呼びかけた霊夢の声。魔理沙が反応を返す。霊夢が続けて言った。
「どうして、何も始まらないの」
「何の話だ」
「何の話だじゃないわよ」
「この話の話か」
すぐにしらを切るのを止めた。霊夢が決まりを守らないなら自分が守る義理もない。魔理沙だっておかしいと思っていたのだ。
「この話の話よ。気が付いているでしょ。私たち出てきてからこっち、ずうっと何もしてない」
「霊夢がいて、私が乗り込んでくる。原作じゃ違うが、二次創作でこの場面は話の始まりの合図だ」
「そうよ。レミリアや紫がちょっかいを出してきてもよさそうなのに、何も始まらない」
「何事もない二人の日常を描いて、ぼんやり日が暮れてさらっと終わる、なんて趣旨のほのぼの話でもなさそうだぞ」
「わかっているわそんな事」
「そうか? 私さっきまでその可能性も捨てきれないと思っていたぞ。実は今でも」
「お生憎さま、ここまで私たちの日常、その行動についてなんか、一字一句すら触れられていないわ」
魔理沙は、驚いたように霊夢の方を見た。霊夢ははじめから魔理沙の横顔をみつめていたから、顔を見合わせるかっこうになる。
「じゃあ何か? 話は始まってるけど、その実、はじまってからこっち何時間も、話は始まっていない。そういうことか?」
「そういう事になるわね」
「あれじゃないのか。何か、舞台装置上の事情で、夜が来た事にしたい、とか。あるいは、『そして70年が過ぎ去りました』」
「だったら、ずっと私たちのことを書いている筈が無いわ」
「それじゃあ、何か事件が起こっている訳でも無いのに、何もしていない私たちを、ずっと観察して、『霊夢と魔理沙は何もしていません』って書いて、それで終わった二次創作がいまだかつて有ったか」
「東方の二次創作で私の知る限りは、無いわ。まあ知る限り、なんだけど。ネタ被りの危険は常に付きまとうけど、それを気にしていたら何もできないし」
「絶望先生がここに居たら、『今予防線をはりましたね!』なんて大喜びで出てくるんだろうがな」
「そういう同人はギリギリ存在しそうね」
「そうか? 見た事は無いな」
そうこうしている内に時間は過ぎて、もう空は暮れかけと言ってもいい風情になってくる。
「…………どう、思うんだぜ?」
「……私たちの自主性を、テストしているのかもしれないわ。ずうっとほうっておいたらどうするかって」
「成程。主人公資格試験だな」
「有りそうね」
有りそうではない。閑話休題。しかし霊夢は言って。そんなことを言っている場合ではない、といった顔になった。
「なんにせよ、話が始まって終わらないと、私たちはいつまでもこのままかもしれないわよ」
「『いつまでも変わり映えのしない日常の中で、魔理沙さんはやがて朽ち果てて行きました、とさ』なんて私はやだぜ」
「じゃあさ、」
霊夢が、この上なくはっきりと、言う。
「何か、しないと」
一体、何故こういう状態になっているのか。主人公検定なんかよりもっと現実的な仮説は無いのかと魔理沙は少し考え、すぐに言った。
「作者が話をはじめかけて、最初の舞台だけ決めたはいいが、何をするか決まらず、結局今のように、私たち『キャラクターが勝手に動き出す』のを休日まる一日ほど使って待っている状態なんじゃないか?
優れた小説家は書いてるうちに、キャラクターが勝手に動き出すのだなんて妄言を真に受けてさ」
「うーん、自分が書けないからってキャラクターに頼る、その姿勢、その精神は何か逆のような気がするし、違和感も有って、あまり気に入らないけれど……。
だとしたらそれこそ私たちが『勝手に動き出』さない限り、話は絶対に終わらないわね」
「けしからんな。私たちが動かなかったら書くことが無いじゃないか」
「折角ここに来たのに、何もしないで消えるのは癪じゃない?」
「うん、じゃ、力を貸してやるか」
「軽いわね」
「軽いぜ。私たちは現在二次創作界隈では多分最強の勢力を持った、主人公のオーソリティーだから、作家の手なんか借りなくても動き出す事が出来る。東方SSの一つや二つ、ちょろいちょろい」
「話の始めから終りまで、ずっと勝手に動くなんて事が出来る?」
「う、それはやった事がないが、それでも、ほらある程度まで行ったら、作者の筆も乗り始める筈だぜ」
「成程。話を始めさえすれば良い訳ね」
「それにしてもとっかかりが必要だぜ。どんな系統の話なんだ」
「誰も訪ねてくる様子は無いから、主要登場人物は私たちよ」
「それでも登場人物二人ってのはずいぶんきついな。そうだ、ここは、神社にいまだ居付いている筈の魅魔さまに再登場して貰ってだな」
「ふむ。聞くだけ聞くわ」
「人気にとらわれず生きていく、人の道を教えてもらう。一キャラとしての心を忘れ、自分たちが主人公だと天狗になっていた霊夢と魔理沙、それを聞いて感動。ただの人間の小娘からの再出発です。まる。」
「却下。あまりに創想話的すぎる。きっと忘れてただろうけど、ここは産廃創想話よ」
「……そう? 久しぶりに魅魔さまに会えると思ったのになー」
神社の建物の陰から様子をうかがっていた魅魔が、音も立てずに姿を隠した。
「それにこの作者は旧作をやった事が無いのよ」
だからこの魅魔のビジュアルはうろ覚えの適当だけどどうせ描写しないからわかるまい。
「じゃあしかたない、ここはレズセックスだろう」
「えっ」
「東方で、登場人物女キャラ二人と言ったらやっぱりレズセックスだろ。この作者はイカロに投稿した経歴も有る。私主役で。とりあえずレズセックスを始めてから考えたら筆も乗るし、最悪それだけで終わっても許してくれるだろう」
「そ、そんな支離滅裂っ、んぅ、」
霊夢は魔理沙の視線に自然と熱くなる小さな体躯と、何故だか肌蹴た衣服を意識しながら顔を火照らせ始めたが、しかし、か細い声で反論をする。
「『的』もなにもないわ、それは夜伽よ」
「ここはそうは言ってないぜ」
くち。と、右手がいきなり袴の切れ込みから秘所をまさぐれば、驚いた事に既に水音が有った。いつしか魔理沙は霊夢の背後から抱きかかえるように、左手は脇巫女服の中、つつしみ深い乳房にそっと添えられ、右手の方は少し乱暴に、赤い袴の中に女の秘芯を探し当てようとしていた。
やがて中指の腹がクリトリスをさっと擦った時、霊夢は甘い声を噛み殺す事が出来なかった。魔理沙は行為への同意ととって、満足げに、我が物顔で指を割れ目に突き込みはじめる。勿論親指で秘芯をいじくり続ける事は忘れなかったから、霊夢は陸に揚げられた銀色の、美しい小魚のように、微妙な角度に体を跳ねさせ続ける。
魔理沙がその無邪気で楽しそう、しかし妖艶を兼ね備える笑みを満面に湛えて霊夢の顔をのぞきこめば、秋も深いのにたったこれだけの愛撫に汗をかきつつある体、そして赤い顔を恥じて霊夢はばっと顔をそらしてうつむく。それに憮然としたように、魔理沙が両手の動きを止めた。
「あっ……」
間髪入れず、両手ともひっこめる。瞬間、霊夢はまるで抱きしめる母親の腕から放り出された赤ん坊のような、強い寂寥感、喪失感を感じる。これはどうしたのだろう。胸がきゅうと絞られるような感覚に泣き出してしまいそうになるが……。すぐにいたずら魔女の狙いを察してそれを気取られまいと、わざわざ澄ました顔を取り繕ったが徒労である。心を落ち着けることができたと思い、覚悟を決めてばっと振り向くと、証拠に魔理沙はにやにやと笑っていた。
「んー。何だその名残惜しそうな顔は」
「え……」
「なんだその物欲しそうな顔は―!」
「きゃあっ!」
涎が一筋、霊夢の口角から顎へと滑り落ちていく。滑り落ちる間に、今度は正面を向かせて魔理沙が霊夢を押し倒した。覆いかぶされば、霊夢は悲鳴は上げても完全に脱力したようである。
「魔理沙は受けだなんて二度と言えないようにしてやろうかー!」
「い、いや、…いや…」
リアル『いやよいやよも好きのうち』状態の霊夢は手足を地面に投げだし、少し内股ではあるがこれから魔理沙が何をしようとしても積極的に妨害しそうな様子は無い。乱れた着衣を直しもせず、そっと、目を瞑った。その身に受ける魔理沙の体温と体の重さにより支配される事を望むかのように。何事かを決意する、少女のように。
ふと、その体重が喪われている事に気づく。
「さて、冗談と宣伝はこのくらいにしてどんな話になる予定なのかをちゃんと考えようか」
「え……ええっ!?」
「話の骨組みすらも無いなら書き出そうなんて思うはずもないから、な、ん、れいむ、どうしt」
全体重を乗せた拳が、まず魔理沙の頭部に振り下ろされた。無論一撃で終わる訳もなく拳の雨は体中に降り注ぐ。
「まて、なぜ、殴る、ちょっとなにか喋んないとホントにこわい!」
「………」
「だって、産廃だし、夜伽じゃないし、……」
「………」
拳を振るうのにも飽きてしまったのか、目の前のゴミクズには拳を浴びせてやる価値も無いと遅ればせながら認識したのか、殴るのをようやくやめると、霊夢は着衣を直しながら建設的意見を言う。
「産廃という事を考慮したら、魔理沙が唐突にうんこもらしてアヘ顔で何事か喚き散らすべきなのではないか? それだけで作品としての体裁はつくわ」
良い笑顔で。魔理沙は蒼くなって、あわあわと返す。
「い、いや、確かに最近産廃では流行っているけど、この作者はスカトロは自分では書かないんだ」
「なに魔理沙産廃に詳しいの」
「え」
「きもい」
「……」
「……」
「……」
「まあいいわ、例えどんなにきもくても、このままじゃ何も進まないわ。あなたの意見が必要よ。この作者の傾向と対策は?」
「そ、そうだな。この作者の傾向と作風からして、ここは、いきなり宇宙人が出てきたりして、場面が急展開するところじゃないか」
「どうも、宇宙人です」
今まで誰も居なかった庭に、突如グレイ型宇宙人が現れた。
「不公平よ! こんなのが許されるなら魔理沙だって突然脱糞して然るべきだわ!」
霊夢が叫ぶ。
「そりゃ不公平で仕方ないぜ。この作者はお前より私の事が好きなんだ。贔屓されるのは当たり前だぜ」
「とにかく!」
神社の縁側には明らかに不釣り合いな宇宙人を、びしっと指差す正義の味方霊夢。
「さ、賽銭入れていきなさい」
「お約束のセリフだな」
「違う! 何故オリキャラだ!?」
「これをオリキャラという範疇に入れていいのか疑問が残るぜ。どっちかっつーと『現象』だろこれは」
「ワタシ、ケニアから来ました! ウチュージンデース!」
「そこ! どう考えても黙るべき!」
「ソモソモ二次創作におけるオリジナルキャラクターは有名ドコロでスター・トレックのメアリ・スーに遡リ……」
何か言いだした宇宙人を認識の枠から外してしまった霊夢。これはいかんと、魔理沙が元気づけにかかる。
「霊夢! これはいい兆候だ! こいつがいたらストーリーは進められる!」
「こんなストーリーいやだ! 本音を言えばさっきの夜伽展開のままが良かった!」
だだっこのように騒ぎ出す霊夢。しかしもう宇宙人は登場してしまった。今更登場しなかった事にはできない。もう夜伽展開には戻らないのだ。
「トイウワケデワタシハウチュージンデース」
「こんなやつはお仲間のヤゴコロエーリンの所へ送り届けてしまえ!」
「まあまあ。……さて、宇宙人さん、何か理由が有って来たんだろ。力になれるかもしれない。なあ、話してみろよ」
「リユウ……、ソレはカイサプチンのコトでヨロシーか?」
「カイサプチンってなんだ」
「カイサプチン、ワタシタチのコトバで『理由』とイウ意味ネ」
「そんな筈は無い! 良いから送り返してしまえ!」
「まあまあ。そ、そう、ここに来た、カイサプチンを教えてくれよ」
「ゴリラ捕りにキマシタ」
「…………は?」
「ケニヤカラゴリラ捕りにキマシタ」
「……」
「ワタシウチュージンデース」
「そんな筈は(ry」
魔理沙は暴れる霊夢を抑え込みながらグレイ型宇宙人の顔色をうかがったが、真剣そのもののようだ。いやこの見立て自体適当。宇宙人の顔色も表情もわかるわけないのだが。
「どうする? 幻想郷にゴリラって居ないよな」
「今すぐケニヤに送り返せ!」
「いや、この作者はこんな不条理、意味の無い混沌を書くような人物ではない筈。そうかわかったぞ!」
「何」
「これは、自分が宇宙人だという妄想に取りつかれた哀れな人間だ」
「どこが人間か」
「じゃあその辺の妖怪だ」
「どこの妖怪が、『自分はケニヤからゴリラを捕りにやってきた宇宙人だ』なんて妄想に取りつかれるのよ」
「フフン、庭を見ろ。幸運な事に実例が居るぞ」
二人の目の前には哀れなグレイ型宇宙人が居るのだった。
「純粋な心を持った私たち少女は心の底から宇宙人を心配する。コイツを宇宙人の仲間だと言い張って永遠亭に連れていく。そこで永琳が治療して、何か深いのかよくわからない事を言ってハッピーエンド。産廃にもピッタリなハートウォーミング精神病ストーリーだ」
関係ないけど今永琳って初めて打つのに一発変換されてびっくりした。
「私はそうは思わないわ。この状況、宇宙人、全部紫か、または博麗神社の評判を落としたい守矢神社が仕込んだ悪戯よ。霊夢さんがこいつを締め上げて元締めを吐かせて、そこに乗り込んで行ってぶっ殺す痛快アクション巨編ね」
一通りにやにやして、やがて素面に戻ったみたいに付け加える。
「ま、どうせ魔理沙の言った方が正解になるんでしょうけど」
やがて宇宙人が言い出す。
「ウチュージンのナカマが幻想郷にイルキキマース。ワタシそのヒトにアイタイデース」
受けて、魔理沙、出し抜けに斜め上を向く。
「……もうお話がわかってるんなら、面倒なだけだな。それにこの話、多分そんなんじゃちっとも面白くならないぞ」
「ソウデスカ! デハ! はい、永遠亭到着後何がオキルかわからなくなりまシタ」
面白いとかそういう事を気にするような段階なのか? という霊夢の疑問は無視されました。
「それだって結局白紙に戻しただけだろ。はあ。ツマンネ」
つまらなさそうな魔理沙に宇宙人が困った顔を向けている。向けていると、やがて魔理沙は名案を思い付いたみたいに嬉しそうにはしゃぎ始めた。
「名案を思い付いた」
と、口に出して言った。
「へえ、どんな?」
片方の眉を吊り上げて笑い、反応を示したのは霊夢である。
「ここにアリスが来る」
「魔理沙―、いるー?」
アリスが石段を駆けあがってきた。
「で、どうするの?」
「私が襲われていると勘違いしたアリスは宇宙人と戦って……」
「きゃあ、大変! 霊夢と魔理沙が得体のしれないグレイ型宇宙人に襲われている! 助けなきゃ」
「ああ、もう言わなくてもわかった」
アリスが宇宙人の琥珀の指から発射された怪光線を浴びて宇宙人と寸分たがわぬ醜い姿に変えられて、その後『ぎゃーうちゅーじんがふたりにふえたー』と棒読みの魔理沙からマスパ直撃を三発食らって本物の宇宙人とひとまとめに滅殺されたのは言うまでも有りません。
そんな『事故』の一部始終を見ていた霊夢は、なんでもない日常を楽しむ風情で、
「いやあ、これが一番、産廃らしい終わり方かもね」
と、誰に言うでもなく、空中に呟きました。とさ。
彼女らは物語が終わった気がいるが、作者の作風からすれば流石にそういうわけにはいかぬ。
『この日、紅魔館が八雲紫を打ち倒し、幻想郷の実権をついに奪取した大クーデターが有った。ついに東風谷早苗が神格を得て調子に乗ったが、既に密かに神格を得ていた河童にとりと天狗射命丸が逆に調伏して従わせた。地底では鬼が、さとり・こいし姉妹に宣戦を布告した。
のちに幻想郷の歴史の教科書に三度、別々に三度載る日であったが、その当日を生きる少女、霊夢と魔理沙は、そのいずれをも知らない。いつの世も変化は後から、後からやってくるのだ。二人はそういうことも知らずに、何もせず、変わり映えの無い日常を、日が出てから沈むまで、ずーっと、楽しんでいたのだった』
作品情報
作品集:
5
投稿日時:
2009/10/20 22:06:50
更新日時:
2009/10/21 14:55:56
分類
霊夢
魔理沙
ハートウォーミング精神病ストーリーというネーミングセンスには脱帽、まさしくそれだ!
こういう実験的な本は大好きだ
やっぱり凄い。