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『超高齢者戦隊ババレンジャー【第6話】(前編)』 作者: どっかのメンヘラ
5人は爆心地へ向かう。立ち上る煙。近づくたびに強くなるものが焼け焦げるにおい。爆心地の端に人影があった。
「あそこに誰かいるわ!」
5人は人影に近づいてゆく。
「はっ!人影が煙に包まれてくわ!」
「あいつ逃げるつもりだ!急げ!急ぐんだ!」
そうしている間にも、その人影の周りの黒い煙はどんどん濃くなってゆく。
「待ちなさい!ここまでよ!」
煙の中に消えてゆく人影が振り向いた。不敵な笑みを浮かべながら、黒い煙の中に消えてゆく黒い帽子を被った金髪の女がそこにいた。
「あ!!あなたは!!」
紫が驚いたような声を上げる。
その顔は、5人のよく見知った顔だった。しかしその表情は彼女のいつものイメージからはかけ離れていた。まるでその女の皮を被ったまるで別の人間であるかのように。
「そんな・・・うそ・・・何故・・・。何故あなたがそんなことを・・・。」
紫はあまりもショックにただ呆然としていた。紫がほかのババレンジャーにこんな表情を見せたのは初めてだった。そしてほかの4人もまったく同じ表情で立ち尽くしていた。
禍々しい煙は風にかき消された。後に残されたのは、焼け焦げた爆心地、散乱する家屋の破片、なぎ倒され炎と煙を上げ続ける、木々、そして信じられないという顔つきでその場に立ち尽くすババレンジャーたちだけであった。
「超高齢者戦隊ババレンジャー第6話・遭遇!悪の帝王現る!」
それは少し前のことだった。
魔法使いであり人形遣いでもあるアリス・マーガトロイドは魔法の森の中を歩いている。友人の魔理沙が自分の家にぜひ来てほしいといってきたのだ。何でもビッグなビジネスチャンスらしい。
そしてしばらく歩くと、一つの家が見えてきた。魔理沙の家だ。
「魔理沙、来たわよ。」
アリスは呼び鈴を押す。少ししてから魔理沙が出てきた。
「ああ!アリスか!よく来たね。さあ上がって上がって!」
魔理沙に導かれるままに家に上がる。玄関の脇の靴箱の上には新聞紙が広げられ、そこには毒々しい黄緑色のキノコが干してあった。
魔理沙の家の居間に入る。机の上に雑然とおかれた実験器具の数々、そして広げられた新聞紙のうえにはやはりキノコが干してある。今度はくどいピンクだ。
「ほらよ。ここに座りな。」
魔理沙が出してきた椅子に腰掛ける。
「いやー、私の家に来るなんて珍しいじゃん。いつもは呼んだって来ないのにさ。」
「気が向いただけよ。まったく人が来るんだから少しぐらい片付けたらどうなの?」
「いやぁあんまり手が回らなくてさ。紅茶飲む?」
「いらないわ、どうせキノコから作った奴でしょ?」
魔理沙は苦笑いしながら霊夢からお中元でもらった緑茶の筒を開ける。アリスはさっきから少量の煙を噴出し続けているフラスコをぼんやりと見ていた。
「はい緑茶。」
「ありがとう。ところで話って何?アンタが儲かりだって思ってることなんて碌な事じゃなさそうな気がするんだけど。」
魔理沙は少しむっとしながら言った。
「何を言うか!こいつはすごくいいぜ!ゼッタイ売れるぞ!」
そういうと魔理沙は2つの皿に盛られた白い粉とコップに入った水とボウルを持ってきた。
魔理沙は一つ目の粉をボウルにいれて、コップの水を少しだけ入れた。とたんに粉は緑色になった。魔理沙がそれをかき混ぜると、ふつふつと非常に細かい泡を立ててふくらんでゆく。
「こうやって混ぜると・・・いっひっひ・・・。」
そして魔理沙が2つ目の粉を加える。それを混ぜると今度は気味悪く黄色になっていた。
「練れば練るほど色が変わって・・・。餡蜜をつけて食べれば・・・ウマイ!テーレッテレー!」
魔理沙はタイミングよく八卦路から小さな花火を出した。
「・・・なにその気持ちの悪いお菓子。」
アリスは山の中によくいる体調15センチのナメクジでも見るような顔をしてその物体をみた。
「何だよ!私の新作「ねりねりねりね」がそんなに気に入らなかったのかよーっ!」
「そんな色がころころ変わるような気色悪いお菓子ごめんよ!」
魔理沙はふくれっ面をしながら言った。
「そんなにキノコで出来たお菓子はいやか?!」
「嫌よ!この前も「岩井のレーズン」とか言ってキノコで作った甘味料で味付けした干しぶどう食わしてきたし!」
「どこがいけないんだよ!!甘みはきいてもシュガーレスな未来のお菓子だぜ!」
「だから何でもかんでもキノコから作るのが問題なのよ!」
魔理沙はここ最近キノコを使ったお菓子の研究に没頭している。安全性については(本人曰く)万全らしいがキノコから出来ている所為で人々は気持ち悪がって誰も食べてくれないようである。
「なんだよーっ!みんなそんなにキノコが嫌いなのかよっ!」
魔理沙がむすっとしながら言った。
「まったく・・・。もう少しまともなお菓子考えられないの・・・?何でもかんでも食用ですらない得体の知れないキノコから作ってたら誰だって気持ち悪く思うに決まってるでしょう?どうせまた変なお菓子食べさせようとしてるんだと思ってたけどやっぱりそうっだったわね。」
まったく、といった感じにアリスがため息をついた。
「でもアリス、なんだかんだ言って新作できると必ず見に来てくれるよな。」
アリスが一瞬はっとしたような顔をするが、いつもの表情を取り繕ってこういった。
「あっ・・・当たり前よ!アンタが変なもの作ってないか見張ってなきゃいけないからよ!!」
魔理沙はニヤニヤした。
「へぇ〜、なるほどねえ・・・。」
「なっ!何よ!何笑ってんのよ!」
アリスは真っ赤になって怒っていたが少し気を落ち着けて言った。
「そんなにお金がほしいならいい話あるんだけど・・・?」
「何?いつもお金なんてどうでもよさそうにしてるお前にしては珍しいじゃん?」
「私だってお金が欲しくない訳じゃないわ。」
「へえ、面白い話だな。何だ?空から金が降ってきたり木に金銀財宝がなる魔法でも見つけたのか?」
魔理沙はへらへら笑いながら言った。
「・・・ってうわっ!またゴキブリが出た!!」
魔理沙の台所の食器と実験器具が雑然と積まれたシンクから一匹のゴキブリが飛び出した。
「アリス!ちょっと待ってろ!今この不法侵入者に正義の鉄槌を食らわすから!」
魔理沙はそういって履いてたスリッパを手に持ち、構えた。
「その必要は無いわ。魔理沙。」
アリスはそういうと、手からビームを発射した。
禍々しい紫の光を放つビームを。
そのビームがゴキブリに当たると、とたんにゴキブリは苦しそうにもだえひっくり返った。そして哀れな昆虫はしばらく足を痙攣させた後そのまま動かなくなった。
「つぶしたら部屋が汚れるでしょ。まったく相変わらず力ずくでしか物事を解決できないんだから。」
いつもと変わらない様子でアリスは言った。
唖然とした表情をしながらアリス見つめていた魔理沙。しばらく続いた沈黙を、魔理沙は破った。
「アリス・・・お前どこでそんな悪趣味な魔法覚えたんだよ・・・。」
真っ青な顔をして魔理沙はアリスに言った。
「これは・・・これは誰かの魂を生贄にして始めて成立する黒魔法だ・・・たとえばちゃんとした知能を持ってるレベルの妖怪とか・・・考えたくないけど、人間とか。しかも自分の手で殺さないと習得できない魔法だぞ・・・。」
「あら魔理沙、よく知ってるのね。さすが伊達にパチェの本盗んでないわね。ちゃんと読んでるじゃないの。」
アリスは笑いながら椅子から立ち上がり、言った。
「魔理沙、私はね、常々「自分だけの世界」を持ってみたいと思ってたの。ママのようにね。ママみたいにすべてが自分の思い通りになってすべてが私のために動くようなすばらしい世界・・・そんな世界が欲しいと思ってたの!」
「アリス・・・いったい何言ってるんだよ・・・?」
「だから私は考えたの!この幻想郷を私のものにしようって!」
「アリス・・・なれない冗談はよしといたほうがいいぜ?ぜんぜん面白くねえよ。」
魔理沙は青ざめながらもそういった。
「冗談?私が冗談でこんなこと言うと思った?魔理沙、いいもの見せてあげるわ!あなたの言ってた金銀財宝がなる木ならぬ金銀財宝がなるキノコよ。」
そういってアリスが取り出したものは、一見するとどうということの無い普通の干しキノコのようなものだった。
「魔理沙ならこれが何か分かるでしょう・・・?」
魔理沙はそれを見て一瞬顔面蒼白になり、倒れそうになったが何とか持ちこたえた。
「アリス・・・アリス!どうしてお前がこれをもってるんだ!?私が胞子も栽培方法もすべて破棄したはずなのに!」
「あら、簡単なことよ。この前私が来たときあなたが大慌てで粉砕してたメモを人形に直させたのよ。胞子は庭で普通に燃やしてただけだったから魔法で簡単に復元できたわ。」
そのキノコはほかでもない、魔理沙が森の中で見つけた新種のキノコだった。魔理沙はそれを大喜びで家に持ち帰って研究していたが、ある日このキノコに強力な陶酔作用と依存性、そして脳などに不可逆的なダメージを与えるほど危険な物質が含まれていることが分かった。いわゆる麻薬として転用可能なキノコだった。
魔理沙はこのことが判明したときそのキノコのことが恐ろしくなってしまい。そのキノコを研究資料もろとも処分してしまった。最近キノコからお菓子を作る研究に没頭していたのは、そのキノコのことを忘れるためでもあった。
「あなたが新種のキノコ見つけたって大喜びしてたのにあるときいきなりあれは世界一つまらないキノコだったとか言って大慌てで捨ててしまうんだもの。怪しいと思ったらそういうことだったのね。」
アリスは青ざめた魔理沙の前でせせら笑った。
「ふふふ・・・これから精製した薬を人里のごろつき連中に売ったら面白いほどの金が手に入ったわ。その金を使っていつも近所でつるんでるバカ連中の4人に贅沢の味を覚えさせたら面白いほど言うこと聞くようになったわ。まったく金でおかしくなるのは人間も妖精も妖怪も同じね!ほんとに笑えるわ!」
アリスは狂ったように笑い声を上げた。
「そして幻想郷を手に入れるために、私は禁断の魔術を手に入れることにしたわ!紅魔館に一つだけあなたには見えない本棚があったのに気づいてなかった?あそこにはパチェが研究目的で集めてた禁書がおいてあったのよ。きっとほかの本を犠牲にしてでも隠したかったんでしょうね。その本棚にだけ魔理沙には見えなくなる魔法がほどこしてあったのよ。魔術の中でももっとも危険で、強力な黒魔術。人を自由自在に操ったり、殺したりするには一番おあつらえ向きな魔術よ!私はそれをあの4人に盗ませたのよ。ばれたら全部あいつらに罪を擦り付けるつもりだったけどまさかあんなに簡単にうまくいくとは思わなかったわ!」
「嘘だ・・・嫌だ!アリス!嘘なんだろ!お願いだ!言ってくれよ!下手な嘘ついてごめんって!お願いだ!」
魔理沙は涙をぼろぼろ零しながら叫んだ。
「何言ってるのよ魔理沙。私はね、もう2人も殺してるのよ!そこら辺で捕まえてきた唐傘のお化けと、香霖堂の店主をね!」
魔理沙は一瞬呆然としたがすぐに血相を変えて言った。
「お前・・・お前香霖に何をした!!!!」
「何度も言わせないで。あいつはもう殺したわよ。なるべく残忍な方法でね。死ぬときに苦しめば苦しむほど強力な魔力が得られるからね!魔力高いくせに戦闘力も警戒心もさっぱりだったからあいつを殺すのは簡単だったわ!」
魔理沙が鬼のような形相を見せる。もはや人間の表情ではない。怒り狂う猛獣を視線だけで殺せるほどに恐ろしい形相だ。
「魔理沙・・・そんな顔しないでよ。そうだ!よかったら私の手伝いをしてみない?そしたら地底をあなたの好きにしていいわよ!何でもかんでもやりたい放だっ・・・。」
ばしっ!と言う音と一瞬の閃光、アリスの後ろで窓ガラスが割れる音がほぼ同時におこった。そしてアリスの右肩に鈍い痛みが走った。アリスの右肩の袖が破れそこから血が流れた。
「アリス・・・お前を許さない・・・。ここで悲劇を終わらせてやる・・・。私の命に代えてでもお前を止めてやる!!!!」
魔理沙はマスタースパークをアリスに放った。しかしアリスは黒い結界を自分の前に張るとそれすべてを吸収してしまった。
結界が消えて、現れたのは熱で焼けこげた家具の真ん中に立ち不敵な笑みを浮かべるアリスだった。」
「一緒にむちゃくちゃやりたかったけど、残念ね。あなたも生贄のひとりになりなさい!」
アリスはそういったかと思うと一瞬にして煙がかき消されたかのように消えた。
「ごぼっ!」
腹全体が吹き飛ばされたような感触、そして腹以外のすべての体の部分がそれに引っ張られてゆくような感覚とともに耳元でガラスが粉砕される音がする、そして硬い地面にぶつかった。
内臓がすべて裏返しになるような感覚に襲われ嘔吐する。顔を上げるとそこには窓ガラスが破壊された自分の家があった。
爆発音とともに壁が粉砕され、粉塵の中からアリスが出てきた。
「あなたを殺せば相当な魔力が得られそうね。せいぜい苦しみながら死になさい・・・地獄が楽園みたいに見えるぐらいね!」
アリスが紫のビームを何発も撃ってきた。転がりながらもそれをよける魔理沙。わざと魔理沙が死なないように相当魔力を弱めているらしい。
「はっはっはっはっはっ!どうしたの魔理沙?!私の一部になりたくないの?私の魔力になりたくないの?!ねえ魔理沙!!」
ビームは地面に砂埃を巻き上げてへこみを作ったり、石を砕いたり、木々に火をつけたりした。
「がああああ!!!!」
魔理沙の右ふくらはぎにビームが当たった。焼け爛れてあちこちが炭になりかけている。
「手足があるからそうやってかさこそ逃げ回れるのよね。手足から焼いてやるわ!」
そういった瞬間アリスの目の前に閃光が放たれた。あまりのまぶしさに目を覆うアリス。目をあけたがそこには魔理沙の姿は無かった。
「あのクソッタレ!どこ行った?!」
アリスは叫んだが、その瞬間頭上に異様な光を感じた。アリスは頭上に手をかざした。極太のレーザーがアリスの手の中に吸収されてゆく。
「はぁはぁ・・・こんな程度で反撃できなくなると思われてるなんて私も相当なめられてるな!」
そこには箒にまたがり空を飛ぶ魔理沙がいた。
「バカね!不意打ちはもっと地味にやるものよ!」
アリスはそう叫ぶと紫色の禍々しい光を右手にまとい急激に魔理沙に向かって上昇し始めた。
「死ねえええええええええええ!!!!!!!!!!」
魔理沙はとっさに八卦炉からマスタースパークを放った。
二つがぶつかり、空中で爆発が起こった。
あまりの衝撃で箒から吹き飛ばされ中を舞う魔理沙。すぐ横をあの紫色のビームが掠めて行ったのを感じた。そのまま煙の外へと放り出された魔理沙は、近くを飛んでいた箒に何とかつかまった。
「アリス!目を覚ませ!!!」
体勢を立て直しまた箒にまたがると、魔理沙は多数の弾幕をアリスに放った。
しかしアリスの作った結界により、すべてはじかれて、ばらばらな方向へ飛んでいった。
「そんなモノで死ぬと思ったの?もういいや。めんどくさいからさっさと死んで。」
アリスの右手をまた紫色の光が包む。そして瞬時にアリスは魔理沙に近づき、腹に二度目のパンチを食らわした。
猛スピードで落ちてゆく魔理沙。魔理沙の体は自宅の屋根を突き破り、寝室のベッドの上に落ちた。魔理沙はベッドの上でアリスを見上げていた。アリスは魔力をためて魔理沙にとどめの一撃を食らわそうとしていた。魔理沙はもう自分の手足はすべて折れて、脊椎が折れて下半身が動かないことを悟っていた。
(ああ・・・そうか・・・私はもう死ぬんだ。こんな風に死ぬなんて思わなかったな・・・。)
その瞬間、一瞬で魔理沙の一切の視界が暗転した。
「あーあ・・・派手にやりすぎちゃった。魔理沙の残骸残ってるかなあ?魔力吸収できるといいんだけど・・・。」
アリスは爆発して真っ黒焦げになった霧雨道具店の跡地の周りを歩いていた。
「あ、魔理沙の帽子じゃない。戦利品としてちょうどいいわ。とっておきましょ。」
アリスはそれを被ると、ふと頭上に気配を感じた。魔力で第六感まで鋭敏になっていたアリスは人影を見るまえに、もう気配で五人の正体を見抜いていた。
「面倒なのが来たわね。帰ろう。」
そして自分の周りに黒い霧を展開させて、逃げ出そうとしたアリス。そして消える寸前、駆けつけた紫たちと目が合った。
(あっ、顔を見られちゃった・・・まあいいか。どうせいつかばれるだろうし。)
そしてアリスは瞬間移動した。
超高齢者戦隊ババレンジャー
第6話 後編へ続く
またしても長くなってしまった・・・。
どっかのメンヘラ
作品情報
作品集:
5
投稿日時:
2009/10/25 18:58:34
更新日時:
2009/10/26 03:58:34
分類
幻想郷最凶のババァ軍団
老害
前編
バトル
正面対決したのはババレンジャーじゃない
あんまりグロくなかったよ
黒幕無双
筆者の手の調子がからっきしだよ三級品