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『同族苛虐愛好家』 作者: 要介護認定
朝方に彼女から送られた"プレゼント"は、さとりが就寝する為に自室に戻るまで、ずっとベッドの上に置きっぱなしだった。
自室に入り、さとりは思わず顔をしかめた。お気に入りの花柄の布団が、包装された荷物を中心に赤黒く染まっていた。部屋一杯に満たされた鼻を突くような金属臭は、紛れもなく血の臭いだ。
立方体の"プレゼント"を包む包装紙の、底の部分が黒ずんでいる。どうやら滲み出した血が布団にまで伝わっているようだ。
一呼吸。何も"聞こえない"のを確認すると、さとりは"プレゼント"の近くに置かれていた長方形の紙を手に取った。送り主はペットの燐だった。
思わず昨日のことを思い出す。燐にはきつく灸を据えたばかりだった。表裏のないその性格は心を読むさとりにとって嬉しいものだが、彼女には一つだけ悪癖があった。空もこいしも知らない――というか気にしない――悪癖。それがさとりの中で影を落としていた。
燐は、どういう訳か、猫を好んで殺す。
「邪魔だったんで火焔地獄に猫を落としました」
「四肢の骨を折って、どれぐらい長く生きていられるか見てました」
「私が蹴ったら何回で死ぬのか試してみました」
「生まれたての子供を潰して母猫に食べさせました」
「二匹の猫を使って二頭の猫を作りました」
「見て下さい! どうですかこの猫耳? 作るのに苦労したんですよ?」
「ほらお空、そっち持って。いっせーので引っ張るよ?」
「面白かったです」
「楽しかったです」
「最高でした」
実際に死体を持ってくる事も多々あった。ちょっとでもさとりが嫌がる仕草を見せると、逆に燐は楽しんでいるようでもあった。一度さとりの目の前で猫の首をボロ雑巾の様に引き千切った事もある。言うまでもなく燐が殺した猫はさとりのペット達なのだが、何度叱り付けても燐は懲りる様子を見せようとはしなかった。
この血の臭いからして、送られてきた"プレゼント"も嫌がらせの類ではないかとさとりには思えた。燐がさとりを嫌っていないのは確かだが、好意の向け方がどうにも歪んでいる。子供特有の一種のサディズムとも言い換えることが出来る。しかし燐の場合、純粋に猫を殺す事を楽しんでいる節があるのも否めなかった。
昨日だってそうだ。よりにもよって食事中に、燐は嬉々として猫の赤子を殺したという旨を、事細かに語ってみせた。思うだけならまだしも口にするのは不味い。珍しく妹のこいしまで参席してくれていたというのに、食事は殆ど咽喉を通らなかった。その上"躾がなっていない"等と妹に怒られる始末……さとりが燐に灸を据えたのも頷ける話だ。
燐にとって、このプレゼントはお詫びの印なのだろうか。それとも……さとりは血の臭いを発する"プレゼント"に視線を向けた。
"プレゼント"のサイズは、縦横が五十センチ、高さが三十センチ程度だった。持ち上げてみると意外と重い。米袋二つ、三つ分ぐらいの重さはあるだろうか。僅かな隙間さえも許さず詰め込んだかのように思われた。
そんな窮屈な中身から出してくれと言わんばかりに、血が少しずつ漏れ出てくる。さとりは一先ず"プレゼント"を床に置いたが、血で染まった布団が綺麗になる訳でもなく、逆に被害範囲が広がるだけだった。おまけに滲み出た血が手に付着した。包装紙にはべったりとさとりの手形が写ってしまっている。さとりは近くにあったティッシュで念入りに血を拭った。
この血は猫のものであろうか……燐が用意した物だと考えると、その予想は確信に変わった。この"プレゼント"の中に入っているであろう物を想像すると、胃が腐り落ちるほどの吐き気がさとりを襲った。
重みからしても、この"プレゼント"に使われた猫は一匹や二匹ではないだろう。五、六匹を捕まえてきて、頭と足を切り取り、パズルを填めていくように隙間を埋めれば、この"プレゼント"を作る事が出来るかもしれない。燐は手を血まみれにして、猫の四肢や臓物をどのような角度で入れていくのか、嬉々として考えていたのだろうか。さとりは身震いをして、おぞましい想像を振り払った。
意を決し、リボンを解いて包装紙を剥がした。カラフルな包装紙とは打って変わって、半分が血に染まった純白の箱が出てきた。さとりがその箱の蓋に手を掛けた瞬間、背後で音が鳴った。
トントンと、控えめなノックの音。箱に木を取られていて気付かなかったが、扉の前に居るのは間違いなく燐だった。
「さとり様ー、"プレゼント"見てくれましたかー?」
『死んでないかな』
「っ……まだ見てないわ」
なるべく動揺しているのを悟られないように、出来るだけ静かに返事を返した。燐が扉を開ける様子はない。しかしさとりには、燐が一瞬だけ"嗤った"のが感じ取れた。
「ちゃんと見て下さいねー」
『まだ生きてますから』
燐が走り去る音がした。
「にゃあ」
『痛い』
鳴き声が半開きとなっていた箱の中から聞こえた。
さとりは開きかけた蓋を押さえつけた。
手の平に振動が伝わる。厚紙の蓋越しに、何かが脈打っているのが分かる。
蓋の隙間から血が跳ね、部屋の家具に血痕を付ける。
脈動が荒々しくなった。さとりは全体重で押さえつけた。
「にゃあ」
『苦しい』
脈動はじきに間断を無くし、脈動ではなくなった。休むことなく内側から押し返してくる力に、さとりの腕の筋肉は痙攣し始めた。
さとりの手の平の周囲を型取るように、血が厚紙の表面に滲み出してきた。生暖かい血は、あろうことか重力に逆らって手の縁を上り、甲の僅かな窪みに溜まり始めた。その窪みが満たされると、更に皮膚を伝わって腕を上り始める。さとりは猫のような絶叫で"プレゼント"から手を放し、その場で尻餅をついた。フローリングに手を叩き付けて血を拭い取ろうとするが、ただ突き指をして痛みに苦しむだけだった。
"プレゼント"の蓋が開いていたが、さとりは自分の手に気を取られている。"プレゼント"の中から突き出た、小さな手には気付かない。"プレゼント"の中身はびっしりと敷き詰められた猫の手足と臓物。それでも埋まらぬ隙間を赤いゼラチン質で埋め尽くされている。"プレゼント"から突き出た小さな手だけが、猫でも血でもない……幼児の手だった。
「にゃあ」
『――――』
さとりにはそう聞こえたが、別の聞き取り方も出来るだろう。
「おぎゃあ」
『お母さん』
血まみれの小さな手は、ありもしない母の指を握らんとしてか、虚空で何度も開閉されていた。その度に血が零れ落ちて、ぴちゃりと音がする。更にもう一本の腕が伸びた。しかし二本では終わらない。三本、四本、五本、六本と、"プレゼント"の奥から幼児の腕が生えてくる。三本目以降は、それぞれが手に物を持っていた。ハサミ、ペン、ナイフ、フォーク等々……それらのちょっとした凶器の先端は、全てさとりに向けられていた。
腕たちの蠢きにより、猫の手足や臓物、赤いゼラチン質、流動する血液が"プレゼント"の外へと溢れ出した。何かが転がる音と液体のぶちまけられる音で、ようやくさとりは"プレゼント"へと視線を動かした。
改悪パロディ作品。元を知っている方とは良い酒が飲めそうです。
ところでさとり様の目って素敵ですよね。引っこ抜いて食べたいです。
要介護認定
- 作品情報
- 作品集:
- 6
- 投稿日時:
- 2009/11/06 03:01:13
- 更新日時:
- 2009/11/06 12:01:13
- 分類
- 燐
- さとり
- プレゼント
ただのグロとはまた違ったグロさ
そう、多少の折檻を厭わずに