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『狂気の光』 作者: departed
十六夜 咲夜は悪魔の館・紅魔館で働くメイドだ。
他の妖精メイド達は殆ど役に立たず居ても居なくても同じような為、実際は全ての仕事を彼女がこなしている。
彼女はとにかくよく働いている。紅魔館での仕事をこなす事が彼女の全てと言っても過言ではないかもしれない。
また、時間を操作するというあまりに人間離れした能力を持ち、ナイフを使った見事な芸当も得意としている。
銀のナイフ。美しく輝く刃を持つ、銀のナイフ。
鋭利な刃物というのは、見つめていると変な気分になってくるものだ。人の心に何かしらの影響を及ぼす。
そう、月の光に似ているかも知れない。
咲夜は今日も休む暇なく膨大な仕事をこなし、自室に戻った。もう夜遅くになっていた。
今夜はとても月が美しい夜だった。カーテンの隙間から、青白く冷ややかな月の光が差し込んでいる。
美しく、またどこか不思議な光。
彼女は月光に、ナイフをかざしてみた。ただ何となくやってみただけだ。
月の光を受けて輝く鋭利な刃。彼女はそれを見つめていた。短い間だったのか、暫くそうしていたのかはよく分からない。
ただ、美しくもどこか冷たく奇妙な光を放つナイフを見つめている内に、彼女の中にとある衝動が沸き起こった。
彼女はゆっくりと、ナイフを自らの手首へ移動させた。
そしてその白い肌を刃でなぞった。 血が流れ出た。
痛みと流れ出る血を見て、ふと我に返った。一体どうしてこんな事をしたのだろう。自分でも分からなかった。
しかし、青白い月の光と、それを反射して冷たく光る鋭利な刃。 そして白い肌についた赤い筋に、そこから流れ出る血液。何故か見ているだけで、不思議な気持ちになる。
もう一度、腕をナイフでなぞった。 またも流れ出る血。血。
疲れていたのかもしれない。血塗れになった腕とナイフを拭くと、床に就いた。
しかし、夜毎に腕の傷は増えていった。
ある日の昼。 紅魔館の門番を勤める紅 美鈴は、寝ていた。 いつも通りである。
「こら!」 そんな門番を見た咲夜が、美鈴を一喝し、彼女は慌てて目を覚ます。これもいつも通り。
だが、咲夜が言葉を続けようとした時だった。 「・・・っ」彼女はその場に倒れた。 いつもの光景ではない。
美鈴は慌てて倒れ伏している咲夜の元に駆け寄った。
「咲夜さん!! 大丈夫ですか!?」 咲夜の体を抱き起こしながら呼びかける美鈴の目に、あるものが飛び込んできた。
咲夜の袖口から、傷跡の様なものが見えたのだ。
美鈴が咲夜の袖を捲くると、その腕には幾つもの切り傷があった。
美鈴は絶句した。 しかし何とか落ち着きを取り戻すと、咲夜を彼女の部屋まで運んでいった。
少しして咲夜は意識を取り戻した。
美鈴は咲夜に聞いた。「咲夜さん、一体どうしてこんな事を・・・」
咲夜は俯いて沈黙した。返答に窮している様だった。
「ごめんなさい。自分でもよく分からない・・・」
美鈴はこの事態が把握できず戸惑っていたが、自分以上に困惑し、何かに怯えている様な、今まで見たことの無い咲夜の姿を見ていたら、これ以上何か質問することは不可能な気がした。
「・・分かりました。とにかく、もうこんなことは止めてください」 美鈴がそう言って部屋を出ようとした時だった。後ろから咲夜が静かに言った「美鈴・・この事はお嬢様や他の皆には言わないで頂戴」
美鈴は少し躊躇したが、咲夜の顔を見てから言った。「分かりました。ですが、もうこんなことは・・」
「分かったわ。・・・ええ、分かってる・・」
美鈴は部屋を出た。
それからは、美鈴は咲夜の様子を気にして、時折彼女の元を訪れては、彼女の様子を見て軽く会話を交わすようになった。
咲夜は、変わらず紅魔館の仕事をしっかりこなしていた。
だがある時レミリアに「咲夜、どうかしたの?何か顔色悪いような気がするんだけど」と尋ねられたが、努めて平常を装った。そう、仕事は変わらず、完璧にこなしていたのである。
だが、体の切り傷は、少しずつ増えていった。
月の美しい夜。青白く美しい光。鋭い刃。それから放たれる冷たく、幻惑的な輝き。
狂気
美鈴がまた咲夜の様子を身に来た時、彼女は酷くやつれていて、美鈴の知っていた咲夜からは信じられないほど弱々しく見えた。
「咲夜さん・・・どうして・・」
咲夜は何も言わなかった。
「もう・・もうこんなことならメイドを辞めたらどうですか? 今の咲夜さんを見てると・・・」
「馬鹿な事を言わないで」 咲夜が静かに、しかしはっきりと言った。
「ここで働いていない・・ここに居ない私なんて・・・」
咲夜は美鈴の眼を見ていた。美鈴はもう、何も言えなかった。
美鈴が部屋を出ようとした時だった。「ありがとう」 後ろから咲夜が小さな声で、そう言った。
「・・え」その言葉を聞き取った美鈴は思わず振り返った。
しかし掛けるべき言葉が浮かんでこない。
「いえ、ご自愛下さい。お願いですから・・」
それだけ言うと、部屋を出た。
それから数日後、美鈴はまた咲夜の身を気遣って、彼女の部屋を訪れた。
この日はもう夜だった。
「咲夜さん、失礼します。」美鈴がドアを開けると、カーテンの隙間から月の光が飛び込んできた。
月の綺麗な夜だった。
その窓の元でもたれるように咲夜が眠っていた。
そう。まるで眠っている様だった。
青白い光に照らされている、瞳を閉じた穏やかな表情。
腕や胸元の切り傷からは血が流れ出て。
首には深々とナイフが突き刺さっていた。
美鈴は咲夜の元に歩み寄った。青白い月光に照らされ、血で彩られた彼女の元に。
美しかった。とても美しかった。
その姿を見ている内に、涙が溢れて来た。
彼女の元でしゃがみ込むと、その白い首からナイフをそっと抜き取った。
そこから止めどなく 血が流れ出た。
涙が止まらなかった。怒りと悲しみがこみ上げてきた。
涙にむせびながら、感情にまかせてナイフを壁に投げつけた。
ナイフは勢いよく壁に当たると、跳ね返って床に落ちた。
何もできなかった。
唯一彼女の変化を知りながら、私は何もできなかったのだ。
何ができただろうか。
私に彼女を救うことはできなかったのか。
熱くなった頭で考えた。胸に何かが込み上げて来た。
さらに涙が出てきた。
私は余りにも無力だ。何もしてやれなかったのだ。 できることは何もなかった。
涙で滲んだ視界には、淡々とした青白い月光、その光を受けたナイフの冷たい光だけが輝いていた。
刃物の扱いと月の光にはご注意下さい
departed
- 作品情報
- 作品集:
- 6
- 投稿日時:
- 2009/11/12 16:23:14
- 更新日時:
- 2009/11/13 01:24:18
- 分類
- 十六夜咲夜
- 紅美鈴
- 精神病的な何か
自分の血を眺めてると何やら心地よくて、指に付いた自分の血をふと嘗めてみると、鉄臭い中に形容しがたい甘美なおいしさがあって。
何がいいたいかと言うと、俺もかなりダメなところまでキテるのかもわかんね
物にはなにかしらの力が宿ってるといいますね。
私も何かしらの感情がこもった物見てると頭の中プツプツってして気持ちよくなります
>>3
ようこそ夜の世界へ
薄ら寒くてすぐ止めたけどその先に行っちゃう人もいるのかもね…
まぁ、月の光は…ね
>>6
咲夜さんが狂ったんだから元々狂気は正常になるんj…んなわけないか
そして、エグいなぁ夜の世界………ゾクゾクしちゃうな(ゥフフ