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『東方下痢娘「極限状態」』 作者: pnp
空に上った朝日に照らされ、多々良小傘は目を覚ました。
頬に妙な湿りと冷たさを感じた。
見てみれば、枕が濡れに濡れているではないか。
それを切っ掛けに彼女は、昨晩の嫌な出来事を思い出してしまった。
「泣きながら寝ちゃったんだっけ」
*
昨晩――十月三十一日――、幻想郷で「ハロウィン」と呼ばれる祭りが、盛大でなくとも開催された。
外界からやってきた巫女の入れ知恵で幻想郷中に広まり、一部の人妖の積極的な開催推進の運動の成果もあり、開催された。
一部の人妖と言うのは、冥界に住む亡霊を中心に、菓子に目が無い幼い妖怪や妖精が集まってできた集であった。
そんな奴らにワーワー騒がれてしまい、対応するのも面倒くさくなった博麗の巫女が承諾し、開催されただけと言うイメージが強い。
ただ、実際に催されてみると、享楽的な幻想郷住民のノリのよさや心の広さも相まって、なかなか盛り上がった。
尤も、人を食うような妖怪が人里の民家の戸を叩き「お菓子をくれないといたずらするよ」と言ってきた物なら、普通の人間なら従わざるをえないだろう。
菓子を貰う側に回った妖怪や妖精の間では、「どんなお菓子を、どれくらいの量貰えたか」と言うのを競っている者もいた。
質と量で競い合った結果、今年の“優勝者”は子鬼の伊吹萃香であったらしい。
彼女のような強力な妖怪は人間の家を訪ねるのは造作もないことだから有利だったようだ。
また、何も考えておらず「とにかくお菓子欲しい」と言う一心で「トリックオアトリート」の一文を必死に覚えた氷の妖精チルノも健闘し、堂々の二位を獲得している。
逆に菓子をあげる人間の間では、「どんな妖怪や妖精が家を訪れたか」と言う度胸試しのような比べ合いが始まった。
「俺の家には鬼がきた」とか「一度の四人もの奴らがきて、根こそぎ持っていかれた」とか、それぞれの武勇伝を語り合い、楽しんでいた。
そんな中、多々良小傘は、完全な置いてけぼりを喰らっていた。
唐傘お化けなんてほとんど怖がられないし、人に会う度に向けられる「なんだただの唐傘か」と言った視線が恐ろしかった。
故に人里が見える森の中から、行くか行かぬか迷い続けていた。
すると、あれよあれよと言う間に祭りは終息し始め、更に参加するタイミングを失っていった。
結果、小傘は人里で何もできぬままハロウィンを終えてしまう結果になった。
このままではいけないと、小傘は魔法の森に向かった。
そこには、見知った顔の人間が住んでいることを知っていたからだ。
見知らぬ者よりは声を掛けやすいと、小傘は踏んだのだ。
霧雨魔法店と言う古ぼけた看板の掛けてある家屋の扉を、トントンと叩く。
扉の向こうからガタガタと音がなり、扉が開け放たれた。
「誰だ? 菓子ならあげないぜ。沢山貰ったけど」
霧雨魔理沙が扉を開けると同時に言い放った。
しかし、絶対に言おうと決心していた小傘は、それを口に出した。
「と、トリックオアトリート!」
「人の話を全然聞かない奴だな」
呆れた口調で魔理沙が言う。
まさかこんなにも早々に断られるとは想定しておらず、小傘は言葉を失った。
うろたえる小傘に、魔理沙はもう一度言った。
「お菓子はあげないぜ」
「く、くれないと、いたずらしますよ!? 本当ですよ!?」
「そうか。さあやってみせろ」
意地悪く笑う魔理沙。
確かに魔理沙ほどの人間であれば、小傘程度の弱小妖怪のいたずらなど蚊ほどにも感じないだろう。
やりすぎると逆に過度のいたずらを受けてしまいそうだ。
そう考えると、もう小傘は何も言えなくなってしまった。
ションボリと肩を落とし、その場に俯き、動けなくなった。
気の毒なこの妖怪に、魔理沙は助言を与えた。
「人里に行けばいいだろ」
「もうお祭りは終わってしまいました」
「何でもっと早く行かなかったんだよ」
「だって」
「だって、じゃないだろ。全く、しょうがない奴だな」
待ってろ、と言うと魔理沙は家の奥に姿を消した。
暫くすると戻ってきて、小傘の手に一つの紙に包まれた饅頭を置いた。
小傘が驚いて顔を上げる。
「ほら。お菓子」
「あ、ああ、ありがとう!」
「どういたしまして。さあ、早く帰れ」
小傘は頭を下げ、霧雨邸を後にした。
これで小傘のハロウィンに纏わる思い出がお仕舞いならいいのだが、これで終われないから、小傘は泣き寝入りする羽目になったのだ。
帰宅途中、彼女は偶然、四人の妖怪と妖精の集団に出くわした。
虫、宵の妖怪、夜雀、氷の妖精の四人である。
偶然その場を通りかかった小傘を、氷の妖精が呼び止めた。
「ちょっとそこの唐傘お化け! ハロウィンに参加した?」
「え? な、何で?」
「お菓子よ、お菓子! 何個貰えた?」
どうやら彼女らは、貰えた菓子の数を競っているようであった。
小傘は勿論、先ほどもらえた饅頭一個だけである。
言葉を口の中で転がしていると、いつの間にか後ろに回りこんでいた虫の妖怪が、ポケットに手を突っ込んできた。
「あ!?」
「あったあった、って、ありゃ? これだけ?」
虫の妖怪の手には、可愛げもない古ぼけた饅頭が一つ。
それを見た氷の妖精は、声を上げて笑い始めた。
「ちょ、そ、それだけぇ!? あはははは!!」
「か、返してよっ」
慌てて饅頭を分捕り、ポケットに入れたが、手遅れであった。
よく分かっていないが、氷の妖精が笑っているのでとりあえず一緒に笑い出した宵の妖怪。
虫の妖怪も同じように笑っているし、夜雀は声は出していないが、苦笑を浮かべていた。
「一つだけで、しかもそんな饅頭一個! 誰からも怖がられてない証だわ! あはははっ」
「そ、そういうあなたはどうなのよ!」
「んん? あたい? ほら」
手で持ちきれなくなって、祭りの途中で人間から貰った紙袋には、高そうな菓子から安そうなものまで、様々なお菓子が入っていた。
羞恥とか礼儀とか自重と言うものを深く考えない妖精であるからこその結果と言える。
そんなものを見せ付けられ、小傘はいよいよ何も言い返せなくなってしまった。
「まあ、あんたとは格が違うって訳」
妖精如きに負けたのが悔しくて、小傘はさっさと家に帰った。
饅頭をテーブルに置き、そのまま悔し泣きしていたら眠ってしまい、そして朝を迎えた。
嬉しいような、忌々しいような、複雑な気分を髣髴とさせる饅頭を眺める。
饅頭を包んでいる紙を取り、それを口に放り込んだ。
それなりの甘みと、しっとりとした食感を備えた、平凡な饅頭であった。
「今に見てなさいよ、妖精め。いつかきっと立派で恐ろしい妖怪になって、腰を抜かして……いいえ、ショック死させてやるんだから」
呪詛を唱えながら唐傘と一緒に外へ出た。
今日も、会う者を驚かせてショック死させてしまうような妖怪になるためにがんばらなくてはならない。
低級な妖怪や妖精にいろいろと驚かせる手法を試してみたものの、やはりさっぱり効果は表れない。
何か驚かせるヒントを掴もうと、彼女は魔法の森を訪れた。
魔法の森は割かし瘴気が酷く、普通の人間や低級な妖怪なんかは近づこうとしない。
故に淘汰が起こり、そこにいるものはそれなりの力を持つ者だと言える。
そんな者たちを見れば、何か得るものがあるのではないか、と小傘は踏んでいた。
しかし。
「……っ……!?」
突如、腹にキリキリとした痛みが生じた。
外傷的な痛みとは全く異質な感じの、実にいやらしい痛みである。
堪えきれなくなって、小傘は腹を押さえてその場に蹲った。
冷や汗が背からじわりと滲み出て、服がぺったりと地肌にくっ付いてくる。
痛みを手で引っ掴んで地面に叩きつけてやりたい衝動に駆られたが、痛みに形などない。
痛い所に手が届く筈もなく、原因不明の腹痛は続く。
しかもひどいことに、痛みと平行して猛烈な便意まで表れだした。
「ああ、あっ、あぅう、うう」
一歩歩む際の小さな衝撃だけで暴発する可能性を秘めている、大変危険な状態であったが、さすがにその場で漏らす訳にはいかない。
彼女は、最寄の厠を目指し、慎重に慎重に動き始めた。
*
魔法の森にある霧雨邸には、二人の人物がいた。
その二人は、どちらも魔法使いである。
「昨日のハロウィンは楽しかったか?」
霧雨魔理沙がアリス・マーガトロイドに紅茶を差し出しながら問うた。
「それなりにね」
紅茶を受け取ったアリスは素っ気無く答えた。
祭りと言えども、はしゃぐ自分をなるべく周囲に見せたくないと言う意思の表れであった。
実際の所、アリスは大はしゃぎしていたのを魔理沙は知っていたが、彼女の気持を汲んだ魔理沙は、それ以上の言及はしなかった。
紅茶を飲み、魔法について魔理沙が夢を語ったり、アリスが意見を出したりしている最中、玄関の扉が音を立てた。
「もしや客か?」
「そんな訳ないでしょ」
魔理沙が跳ねるように玄関に向かい、扉を開く。
「いらっしゃい。霧雨魔法店へようこそ、って、おお?」
扉の向こうに立っていたのは、どう言った訳かとても苦しそうな表情を浮かべ、少し前のめりになっている多々良小傘。
昨日もハロウィンで会っていた為、二日続けての対面となった。
「なんだよ。もうハロウィンは終わっただろ」
「い、いえ、今回は、お菓子でなくて」
「じゃあ何だよ」
「と、とい、トイレ、を」
「トイレだぁ?」
玄関先で素っ頓狂な声を上げている魔理沙を訝しみ、アリスまでも玄関を訪れた。
「何叫んでるのよ」
「いや、妖怪がトイレを貸してくれなんて言うもんだから」
「トイレ?」
見ると、左右で異色の目を持つ見知らぬ妖怪が、苦しそうに腹を押さえているではないか。
アリスは大きな大きなため息をついた。
「人間にトイレを借りる妖怪、ねぇ。情けなさ過ぎて涙が出てくるわ」
「あ、あの、ほんとに、お願いします」
「そもそも、何でお腹を下してるのよ。変な人間でも食べたの?」
「あ」
アリスの一言で、魔理沙はあることを思い出し、慌てて家の奥へ行った。
そして、昨日小傘にあげた饅頭の箱の裏を見た。
「あちゃー。やっぱり消費期限が切れてる」
「どのくらい?」
「二週間ちょっと」
「そんなもの食べりゃお腹下すわね」
「いやあ、すまんすまん。紅魔館で盗んできて、いつ盗んだのかをすっかり忘れていた」
「何でもかんでも盗むからよ」
「今日お前に出そうとしてた品だったんだ。いやあ、気付けてよかったよ」
それを聞いたアリスは、持っていたグリモワールで魔理沙の頭をぶん殴った。
玄関先で二人のコントなど見せ付けられても、今の小傘に笑う余裕などない。
笑う為に腹に力を入れてしまったら、それだけでアウトな予感がする。
「お、お願いします。も、も、もう、限界なんです」
「さっさと貸してあげなさい」
「んー」
アリスに諭され、魔理沙は顎に手をやり、考えた。
そして、ニヤリと笑った。
「貸したやりたいのはやまやまだが、ただで貸す訳にはいかないな」
「え?」
「私は霧雨魔法店と言う何でも屋をやっている。故に、仕事の依頼にはそれなりの対価が必要だ」
「そ、そんな……高が、トイレを貸すってだけで」
「高がだと!?」
魔理沙が声を上げる。
ビクリと小傘が体を硬直させた。同時に、ほぼ反射で下半身に力を入れて、何とか排便を防いた。
「今のお前にとって、トイレはそこまでの価値は無いって言うのか?」
「そ、そんなことは、ないです、けど、でも、あああ、ああの、」
「じゃあそれなりの対価を払えと言っているんだ。嫌なら別の所へ行けばいい」
「わ、わかりました、払います。払い、ます、から、まず、その」
「『トイレを貸して欲しい』って言う仕事を、私がただで請ける義理なんて無いぜ? 分かってるのか?」
小傘の言う事を無視し、魔理沙は説教を始めた。
魔理沙の考えていることが分からず、アリスは隣で首を傾げていた。
そして、ふと小傘の表情を見る。
いい年になって、さすがに漏らしてしまうなんてことがあってはならない。
それ故、限界に近づきつつある便意を必死に堪えているのが、その表情から見て取れる。
少し前傾姿勢で、腹を押さえ、しかも内股の状態で、長い呼吸を繰り返している。
その綺麗なオッドアイには、薄っすらと涙すら浮かび始めていた。
薄い緑色の髪のある頭から、すうっと汗の雫が滴り、白い肌を濡らす。
それを見て、ようやくアリスは、魔理沙の真意を理解した。
魔理沙は、楽しんでいるのだ。
*
「という事だ。分かったか?」
約十分の説教が、ようやく終了した。
内容は極めてスカスカで、同じ意味の文を言葉を変えて繰り返しているだけのものであった。
それで十分保ったのだから、ある意味才能と言えそうである。
説教を受けた小傘は、ぶんぶんと首を縦に振った。
「は、はい。分かりました、分かりましたから、はやく、早く、と、トイレにぃっ」
「ああ!? 全っ然分かってないじゃないか!! さっきの時間何を聞いて何を考えてたんだよお前はっ!!」
傍聴しているアリスまで驚く程大きな声で、魔理沙は怒鳴った。
アリスが驚いたのに、小傘が驚かない筈がない。
おまけに「もうすぐトイレに行ける」と言う安心感から少し気を抜いていた小傘は、不意打ち染みた魔理沙の怒鳴り声に竦んでしまった。
竦んだ途端、少しだけ出してしまったのを感じた。今下着を脱いだら、汚れてしまっていることは確実だ。
しかも、またもや魔理沙の説教が始まった。
「対価払えって何回言ったら分かるんだよ!!」
「ご、ごめんあさい、ごめんなさいぃ」
少しだけ漏らしてしまった事実を変えることはできない。
小傘は、妖怪になって初めて、俗に言う“お漏らし”をしてしまったのだ。
おまけに、何だかよく分からない説教までされている。
情けなさと恥ずかしさで涙が出てきた。
「何泣いてんだよ、情けない! 妖怪なんだろお前! 人間の私に怒鳴られただけで泣くなんてことがあってなるもんか!」
「だって、だってぇ」
「だってもくそもあるか!」
「ううっ、ううう」
完全に泣き始めた小傘。
腹の痛みは止まらないし、便意も収まらない。
それどころか、もう彼女の中に溜まっているであろうやけに水っぽい汚物は、もうすぐそこまでやってきている。
一度はどうにか阻止できたが、二度目が来てしまったら、もう阻止できる自信が小傘にはなかった。
このまま相手の言いなりになっていても埒が明かない。
もはや叱責による恐怖などない。粗相による羞恥の方が、よっぽど恐ろしく感じた。
そこで小傘は、思い切ってもう一度話を切り出した。
「お、お願いします。もう、我慢できないです」
「だから対価が要るって言ってるだろ」
相変わらず魔理沙は「対価を払え」の一点張りだ。
「じゃあ、な、何を、払えば」
「そうだなー。それじゃあ、私を楽しませておくれよ」
「は、はぇ? 楽しませるって、ど、どうすれば」
「そりゃ勿論、決まってるだろ? とっっても楽しい遊びが、幻想郷にはあるじゃないか」
*
木々が多い茂る森の一角に、全く木がない場所がある。
そこは魔理沙が、弾幕ごっこ用にならした土地であった。
適当に木を魔法で吹き飛ばし、作ったのだ。
そこに、魔理沙と小傘が向かいあって立っていた。
面白そうだと、アリスもそこに立ち会っている。
「ま、魔理沙、さぁん……こんなこと、何も今やらなくても」
「だってトイレ行きたいんだろ? 私が楽しいって感じたら、それは価値のあることだからな」
魔理沙が、猛烈な便意をどうにか押さえ込んでいる小傘に提案した対価は、弾幕ごっこであった。
元々、弱小妖怪の小傘が魔理沙に勝てる筈などないし、その上今の小傘のコンディションは最悪と言える。
まともに歩くことすらできない彼女が、一体どの程度戦えると言うのか。
そんな事、小傘自身も、魔理沙もアリスも分かっていた。
「よーし、それじゃあ始めるぜ」
地面を蹴り、魔理沙が空へ向かって猛スピードで飛び立った。
小傘もどうにか空へ向かおうとしたが、動くことができない。
「まさか地上から迎撃するつもりか」
わざと驚いた風に言う魔理沙。
その瞬間にも小傘は、激しい腹痛と便意に耐えるのに精一杯で、弾幕ごっこどころではなかった。
「地上からの対空射撃なんて、初めて見る戦法だな。様子を見るか」
様子見と称した甘めの弾幕を、小傘目掛けて放つ。
見た目は派手だが、全て小傘を外してある、見せ掛けのものだ。
しかし、極限状態の小傘には、それがとてつもない弾幕に見えた。
元より満足に動くことができないのだから、尚更である。
「ひえぇっ」
恐ろしくなって、その場に硬直し、目を瞑ってしまった。
土の爆ぜる音が足元で響く。
撥ねられた土の欠片が体にぶつかる度に、小傘は小さく震えた。
「本当に動かないんだな。それじゃ、どんどんいくぜ」
動かぬ的でしかない小傘に、わざと外した弾幕を雨と降らせる魔理沙。
的役である小傘は、唐傘を抱いて震えた。
避けようにも、反撃しようにも、お腹の調子がそれらを許さない。
「もう、もう嫌だ、嫌だよぅ」
弾幕ごっこの最中に、小傘は泣きながら俯いてしまった。
もう、魔理沙の事など見てもいない。
それを確認した魔理沙は、スカートからスペルカードを取り出した。
「止めを刺させてもらおうかな」
急降下した。
一気に高度を下げ、地上スレスレの所で軌道を変え、地面と平行して飛び始めた。
俯きながら泣いていた小傘は、突如止んだ土の爆ぜる音に疑問を感じ、そっと目を開き、前を見た。
すると、どうだろう。
白黒の魔法使いが、とてつもない速度でこちらへ向かってきているではないか。
おまけにその手には、スペルカードが握られている。
「え? え?」
状況を理解できない小傘は、やはりそこから動けなかった。
魔理沙との距離が、数十メートル程度に縮んだ時であった。
「恋符!」
魔理沙がスペルカードの名を高らかに宣言した。
それは、小傘も見た覚えのある、ド派手で強力な、魔理沙を象徴するスペルカードであった。
光度、火力、見栄え、何をとっても一級品の魔理沙の魔法、恋符「マスタースパーク」。
山をも吹き飛ばす威力を持つそれを、至近距離から撃たれてしまっては、たまったものではない。
そこでようやく、小傘に腹痛以外のものによる恐怖が再生した。
「ちょ、ちょっと、魔理――」
「マスタースパーク!!!」
眩く輝く、白い巨大な光線が、小傘の視界を埋め尽くした。
*
「やりすぎよ、バカ」
アリスが呆れて言う。
魔理沙は悪びれたようすもなく、笑った。
「あはは。まさか、あんなに驚かせるとは思わなかったよ」
小傘は無事であった。
放たれたマスタースパークは、小傘の頭上を抜け、後ろにあった木々を薙いだだけであったからだ。
しかし、巨大な光線の直撃を受けると言う恐怖に、小傘は耐え切れなかったらしかった。
仰向けで倒れたまま、遂に彼女は失禁してしまった。
極度の恐怖により、顔は涙と洟で汚れていた。
おまけに、どうにか耐えてきた腐った饅頭による便も、遂に決壊が起き、その姿を外界に現していた。
仰向けゆえに見えはしないが、綺麗な薄い白と水色をしたスカートの裏は、見るに耐えない色になってしまっているであろう。
時折、ピクリと体を小さく痙攣させている。
「あ……あぇ……ぇぇ……」
「お疲れ、小傘。いやあ、楽しかったぜ。大満足だ」
仰向けのまま虚ろな目で空を仰ぐ小傘を覗き込み、魔理沙が問うた。
「トイレ借りる?」
「ぁ……か……あ……」
「要らないみたいだな。残念残念。それじゃあな」
森の殺風景な草地に一人、小傘は取り残された。
初スカ作品。最初で最後となりそうです。
慣れないジャンルでしたが、書いてて楽しかったです。
我慢ネタで通そうって思っていましたが、それだけでは無理だと察してがんばったらこんな結果に。
普段投稿してるSSよりボリュームが低めですが、あしからず。
冒頭がハロウィンですが、別にハロウィンに投稿し損ねた作品と言う訳ではありません。
食中毒の口実に使っただけです。
文章ではうまく表現できていないかもしれませんが、
「泣きながら汚物垂れ流しつつ草原で仰向けに倒れてる虚ろな目の小傘」は、絶対にかわいいと思います。ええ。
後、痙攣は正義。ほんといいものですよ痙攣。
余談ですが、題名は本当に困ってしまいました。
ご観覧ありがとうございました。
++++++++++
これから、お寄せ下さったコメントに対して、レスを返す努力をしてみる事にしました。
本当はコメントで返せばいいのかもしれませんが、コメント数が増えてしまうのが気に食わないので、
あとがきでのレスとさせて頂きます。
>>1
痙攣萌え会得おめでとうございます。
私もここへ通っている内に身に付いた癖です。
>>2
痙攣萌え会得おめでとうございます。
虐められる小傘はかわいいですね。虐めてくれって言ってるようなキャラクターですし。
アリスもかわいかったのなら、よかったです。かわいく書けて。
>>3
スカはあんまり好きなジャンルではありませんでしたから。
ここへ来たばかりの頃はかなり辛かったですが、最近は結構慣れました。
>>4
イメージではそんな感じです。
『事後の絶望感』のようなものが表現できていたらいいと思います。
>>5
そう感想をもっていただければ光栄です。
10メガもあったらすごいですね。別の所へその労力を使えばいいのにと思いますよ、きっと。
>>6
早苗さん登場と言う発想が全く無かったです。何故でしょう。
>>7
それなりに好きになれた感じはするんですけどね。
あなたの様にハードなものは書けそうにないです。
>>8
私自身、スカネタでSS書く機会があろうとは思いませんでした。
本当はハロウィン当日に魔理沙に弄られて、
排泄しちゃったものを「チョコじゃん。お菓子じゃん。さあ食え」みたいなネタも考えたんですが、書く勇気が無かったと言う。
>>9
がんばってください。
私はスカートの状態を想像するのも気が引けてしまいます。
>>10
刺激できるほど書けていたなら幸いです。
魔理沙はよろしく頼みました。
>>11
ごめんなさいって打とうとした→タイプミスした→雰囲気でてるからおk と言う作成秘話。
棚から牡丹餅ですね。
>>12
野糞はちょっと無理です。わたしの げんそうきょうが みだれる!
こんなに外道な魔理沙を書くのは初めてかもしれません。いつも被害者でしたから。
pnp
作品情報
作品集:
7
投稿日時:
2009/11/16 15:19:29
更新日時:
2009/11/24 23:40:03
分類
東方下痢娘
多々良小傘
11/24:コメント返し、はじめました。(あとがきに掲載)
痙攣萌えという新しい世界を手に入れることが出来ました
あとグリモワールで殴るアリスにも萌え
ああっ可愛いよ小傘ちゃんんああ
本当はHDに便意我慢.txtが10メガくらいあるに違いないない
スカ大好き人間の私の個人的な願いでいえば、もっともっと・・・いや、いつもでなくてもいいので、
またいつか書いてほしいと思います☆
まりさとアリスのコンビがなんかいいなぁ・・・そして小傘ちゃんはもっといい!!!!!
予想通り、小傘を完膚なきまでに弄ってくれましたねありがとうございます。
是非ともこちらの世界に顔を出していただきたいです。
ちょっと魔理沙とオハナシしてきますね
小傘ちゃんのごめんあさいぃでもう色々噴出。
うちのトイレ貸してあげるから横で見てていい?あとお菓子もいっぱいあげるよ!
魔理沙外道すぎる