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『味噌汁にかけた情熱』 作者: 暇簗山脈
それはある晩のことであった。
聖白蓮が虎丸星を自室に呼びつけたのは。
「こ、こんな夜に何の用ですか」
恐る恐る聞く星。
白蓮がいきなり呼びつけるのは滅多にないことだからだ。
「貴方の名前なんですけどね・・・」
「はぁ」
「星って・・・なんか星飛雄馬みたいでややこしいんですけど」
「はぁ!?」
鳩が豆鉄砲を食ったかのような顔をする星。
いや、むしろ虎が虎ばさみに・・・いや、やっぱり止めておきます。
「しかも星飛雄馬の『星』って名字じゃないですか」
「さっきから何言ってるんですか?病院行きますか?それとも仏教やめますか?」
「やっぱりややこしいですよ」
「ややこしくないですよ!!そんなこと気にしてるの貴方だけだ!!」
「というよりですね、私は貴方のファミリーネームが『星』でファーストネームが『虎丸』だと思っていました」
「ほ・・・『星虎丸』って・・・」
「SAMURAIみたいな名前だなって思ってたんですけどその期待は尽く裏切られてしまいました」
「そんな期待を受けたこともありませんし、そもそもその欧米人的な発音と発想を止めていただけませんか?」
白蓮が笑顔で抗議する最中、
星虎丸は今にもキレそうだ。MK5。
「駄目ですか?」
「(色々な意味で)駄目です。ていうか私の名前は『星』と書いて『しょう』と読むのはご存じの通りであって」
「いや、やっぱり譲れないものがありますよ」
「そんなことで譲れないのなら、いっそプライドをかなぐり捨てて成仏しちまえばいいんです」
「ほぉ、デカくなったな、タイガー丸」
「いきなりキャラ変えないでください!それにその呼び方なんなんですか!?」
「え、じゃあライオン丸で・・・」
「もう『丸』しか合致してないじゃないですか!!ああもう、欧米人になったり昭和人になったり・・・」
※『昭和人』と書いて『ロマンチスト』と読みます
「昭和舐めんじゃねーぞ」
「またキャラ変わった!ああもう」
やってられないでっす!!
という星の叫び声が命蓮寺中に哀しく響いた。
翌朝。
「ちょっとライオン丸さん」
朝食の味噌汁を飲んでいた白蓮は星を呼びつけた。
星は『ライオン丸』という名前が定着して不機嫌なようだ。
「・・・なんですか」
「この味噌汁、中華スープみたいな味がするんですけど」
「それは賞味期限切れの中華スープの素が台所の奥にあったので使い切るために出したんです。」
「どおりで」
「そもそも今まで出していたのは『味噌汁』ではなく『和風スープの素で作ったインスタント汁』です」
「どおりで」
「もう生きているのも嫌になったでしょ」
「どおりで」
三日後。
一輪とナズーリンが何やら話しているようだった。
「ご主人・・・ライオン丸が中華スープの素に変えてから白蓮様の元気がないな」
「何で言い直したの・・・『ご主人』でいいじゃない・・・」
新しいものはどんどん採用していこうというスタンスのナズーリンに突っ込む一輪。
「これは思うに・・・ライオン丸の嫌がらせだな」
「えっ」
「なっ」
「りっ」
テンション高ぇな。
「だってさ、最近白蓮様ってば、すれ違うたびに『性行為』とか『エロティック』とか卑猥な単語を呟くんだよ?」
「ふむ」
「つまりそのおかげでストレスが溜まっていたライオン丸の怒りが『ライオン丸』という仇名を付けられたことで爆発したんだ」
「わかっているならその呼び方止めてあげたらどう?」
「保守的だな、一輪よククク」
「・・・そういえば村紗船長は?」
一輪はナズーリンの異様なテンションに付いていけず、話題を転換した。
確かに、このような痴情のもつれ話とか好きなはずの村紗がいないのは不思議な話である。
「キャプテンは宇宙に行ったよ」
「なんであの人宇宙に思いを馳せちゃったの!?」
「宇宙故に・・・人は心を狂わせる」
「船長・・・アンタ心の宇宙人でしたよ」
天空に輝く星々からはキャプテンが見守ってくれている・・・
そんな気がした。
その晩。
再び白蓮が星を呼び出した。
襲われそうという理由でナズーリンも同伴することになった。
「タイガー星よ」
「もう呼び方滅茶苦茶じゃないですか・・・」
タイガー星は苦言を呈した。
ナズーリンは聞かなかったことにしてあげた。
「味噌汁とはなんでしょう」
「味噌汁(みそしる)は、だしに野菜や魚介類などの具(『実』とも称される)を加え、煮て、味噌で調味した日本料理。
私にとっての味噌汁とはそういうものです」
「それWikipediaから引用しただろう」
ナズーリンの的確はツッコミは二人に無視された。(事実は時として正義とは呼べないのです)
「喜劇ね。味噌汁を望んで以来、味噌汁を飽食し尽くしていると思っていた私が実は一度も味噌汁を飲んだことがない」
「え、確かに私は作ったことないですけど・・・それマジですか」
「トラ○☆。貴方の味噌汁を飲みたいな・・・」
「残念ながら、その願いは叶わせません」
「別にいいじゃないか味噌汁ぐらい・・・」
ナズーリンの同情にも似たツッコミは二人に無視された。
そして間髪いれずに放たれた白蓮の眼潰しをダッキングでグレイズし、左アッパーを決める星。
(気づいていましたよ寅さん
私は年増だったのです
味噌汁に彩られていたハズの私の人生が・・・
その実スープの素に満ち・・・)
そこで白蓮の意識は途切れた。
翌日。
「ライオン丸が味噌汁作ってくれないの」とのたまう白蓮に、
心底同情した一輪が「私が好きなだけ味噌汁を作ってあげましょう」とか言ったため今回のどうでもいい事件は丸く収まった。
また、星のことはやっぱり『星』と呼ぼう、ということで決着がついた。よかったね!
「ねぇ星。『タイガー・サークル・スター』っていう呼び方だとプロレスラーみたいで凄く格好良いですよ」
「いいから黙ってください、ね?」
今日も命蓮寺は赤く染まる。(暴力的な寺ですね)
地味に忘れ去られていたぬえ。
彼女の慟哭は同じく忘れ去られていた小傘の耳にも届き、
それは哀しすぎる二重唱となって村紗がいるハズの宇宙にまで木霊した。
――完――
星蓮船のキャラtxtを読んでいたら思いついた話。
ちょっと感動的なのはそれが原因です。
暇簗山脈
- 作品情報
- 作品集:
- 7
- 投稿日時:
- 2009/11/21 16:48:16
- 更新日時:
- 2009/11/22 01:48:16
- 分類
- スーパー命蓮寺タイム
「なっ」
「りっ」
暇簗さん返ってこねぇかなぁ