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『東方ロケッティア』 作者: suminof

東方ロケッティア

作品集: 7 投稿日時: 2009/12/02 16:52:14 更新日時: 2009/12/03 02:39:10
〜一介の門番が砲兵をやることになる発端の話〜

 よく晴れた、肌寒い日のことである。
湖畔のほとりにたたずむ洋館、幻想郷の住民からは
紅魔館(こうまかん)と呼ばれる建物の正門が開き、
敷地の内側から一人の女性が現れた。
女性は名を美鈴という、体術に長けた妖怪であり
紅魔館の門番を長く務めている。今日もまた、
半日後の交代時刻までの間、館の正門を守る役目
に就いたのであった。正門前に立哨してすぐに
美鈴は軽い便意を催す。

この日の美鈴は、気温の低さにそぐわない薄着で
あった。昨日までと打って変わって寒くなっている
ことに気がつかず、ズボンこそ穿いてはいるが
外着の下は薄い下着だけ身に付けた格好で出て来て
しまった。彼女は頑健な肉体の持ち主であり、体力
や我慢強さについては自信を持っている。
それゆえに軽い肌寒さを感じつつも、厚着をしに
部屋へ戻ることを億劫がって今日一日は薄着のまま
役目にあたることに決めていた。

美鈴は腹に手を当ててみると、服の布地一枚を隔て
て掌の温かみを感じる。胴の内側で臓物が小さな
声で鳴き、微かに律動しているのがわかった。
(これくらいなら、もたせられるかな?)
美鈴は腰を落として呼吸を整えると、下腹部に気を
集中させて臓物の温度を高めた。温められた臓物は
処理途中の大便を急いで排出しようとするのを止め、
通常の体調である時と同じリズムの活動に戻る。
「うん、快調快腸」
雲の切れ目から太陽が顔を出し、紅魔館を含む一帯
にささやかな温もりと陽光降り注ぎ始めた。

美鈴は背後に正門を揺する音を聞いた、振り向くと
門の内側に、褐色の肌に金髪をなびかせる少女が
門に手をかけて美鈴の名を呼んでいた。
「美鈴、美鈴や、ここを開けてちょうだい」
門番を呼ぶのは、紅魔館の主レミリアの妹にあたる
フランドールという少女である。
美鈴はフランドールの求めに応じて門を開くとそこ
を通した。
「街へ遊びに行ってくるわ」
「行ってらっしゃいまし、妹様」
美鈴はフランドールに恭しくお辞儀をして彼女を
送り出した。フランドールは姉と同じく生粋の吸血
鬼であり、太陽光線を浴びると致命的な痛手を負う。
しかしフランドールは躊躇せずに、陽射しの中の
リアルを駆けて行った。

さんさんと白く眩しい陽光の先へと見えなくなって
ゆくフランドールの後姿を眺めて、美鈴は目を細め
た。美鈴の脳裏には、まだ白く透ける肌をしていた
頃のフランの姿や表情がはっきりと思い出せる。
あの頃のフランドールも美しい容姿をしているが、
いつともなく壊れ出しそうな危うい雰囲気を漂わせ
ていた。今の彼女は、日の下で遊び戯れる子供らの
微笑ましい元気さに満ち溢れた明るい顔立ちをして
見る者に快い印象を与えている。
遡ること数ヶ月前、フランドールは竹藪に居を構え
ている永遠亭の藪医者、八意永琳の下に預けられて
数十回にも及ぶ実験と手術を受けていた。結果の予
測できない処置が及ぼす苦痛と恐怖に耐え切った末、
フランドールは陽光への完全な耐性を身に付与され
ていた。
手術や実験の様子を美鈴自身はその目で見てはいな
いが、主人であるレミリア・スカーレットとお付の
メイドである咲夜の二人は永遠亭でそれを見ている。

***********************

〜まずは妹を先に出してその様子を見てから〜

永遠亭に預けられているフランドールの身を案じた
主人がある日のこと、妹の様子を見たいと出かけて
行った。レミリアはそこで想像を遥かに超えた、凄
まじい光景を目にしたという。液体の満たされた槽
の中に、全身の皮膚を剥がされて無数の細い管を挿
しこまれたフランドールが目を開け浮かんでいたと
いう。ガラスのような水槽に浮かぶものが、皮を剥
かれた妹であると認めたレミリアは全身をわなわな
と震わせて言葉を失った。レミリアはフランドール
と目が合うと、妹の目元から涙の珠が生じては泡と
一緒に水面へと浮かばせているのがわかった。妹は
泣き続けていた。見かねた咲夜が、背後に控えてい
る永琳に尋ねた。
「これは……一体、何の為のものかはわかりません
けど、妹様にはきちんと痛みを和らげる措置が成さ
れた上でのことなのですよね」
咲夜は震える主の肩を抱くようにして宥める、レミ
リアも永琳の方に振り向いて、そうだ、痛みなどは
全く無いのだろう? と問いたげに医師を見上げた。

問われて永琳の口端が、許されざる角度に吊り上げ
られて卑しくも狂気を孕んだ笑みに歪む。
「いいえぇ、とっても痛いでしょうね〜」
レミリアと従者の表情が凍りつく。永琳の顔つきと
発する雰囲気が尋常でないものに変わっていた。
「目には見えませんが、日の光に含まれる光線のう
ちで吸血鬼に有害なものだけを真皮に当て続けてい
ますからね。出力を落として弱めてあるので、外で
直に日光を浴びた時の痛みはあれども肉体の再生力
が上回っているから灰化していないだけですよ」
この台詞を聞かされて、主従ふたりの目が丸く見開
かれた。フランドールは今、全身の素肌に日光を浴
び続ける痛みを二十日間に渡って一秒も止むことな
く耐えているというのだ。
咲夜はフランドールの苦しみを想像して、顔を青ざ
めた瞬間、レミリアは怒りに任せて、永琳に殺意を
以って飛び掛った。咲夜はレミリアを抱き止めよう
とするが遅れて空気を掴んだ。レミリアの爪が永琳
の鼻先まで迫る、部屋の片隅に控えていた鈴仙の体
が宙を突進する。放つ跳び蹴りが吸血鬼の顎を打ち
貫いて撃墜せしめた。反射的に咲夜が悲鳴をあげる。
「お嬢様!!」
部屋に武装したウサギ達が雪崩れこんだ。咲夜が時
を止める間も無く、上半身だけ服を着た巨大なウサ
ギに指揮される妖怪兎の女達は咲夜とレミリアに銃
を突きつけると二人を拘束した。
咲夜が取り押さえられ、こめかみに銃口を押し当て
られているのを見るやレミリアは戦意を失くした。
永琳は微かな笑い声と共に拍手して二人の前に進み
でる。
「ご安心くださいな、命に差し障るような真似は
一切行いませぬ故、どうか専ら私どもにお任せにな
られて吉報をお待ち頂きたい。さぁ!!」

永琳は組んだ腕から右手を振り出して指図した。
引き取れ、という意味の手振りである。
ウサギたちに部屋の外へ連れ出される間、レミリア
はずっとうなだれた姿勢のまま、地面以外を視界に
入れないようにしていた。自分が見たフランドール
の姿が、自分を見るフランドールの目が強烈なトラ
ウマーとして瞼の裏に焼きつく感覚がレミリアの脳
裏に奔っていた。部屋の中にいる永遠亭側の者で只
一人、因幡てゐだけが事態におののき、顔を青ざめ
させて気まずい思いをしている。永琳は顎でてゐに
命じた。
「てゐ、患者のご家族様を玄関までお送りして差し
上げて?」
てゐは小さな声でひぎぃ〜と鳴き、臍を噛む思いで
レミリアと咲夜の二人を先導した。
(今しがた、こんな扱いをした二人を背にしろだなん
て何考えてるんだ!? 師匠も師匠だよ!)
てゐが涙目になりながら二人の前を歩きだすと背後
から無神経に狂い笑う声が立ち上った。永琳の声で
あった。
「クックククク、はっはっはは! あははははは!」

永遠亭の地下施設から地上部分の屋敷内に上がった
ところで、レミリアを永遠亭の主、輝夜が待ち構え
ていたという。彼女はレミリアに声をかける。
「ハイ、レミィ? フランちゃんはどうだった?
うちの従者ったら、守秘義務だとか言って私には何
も教えてくれないのよね」
レミリアは輝夜に応えることも無く出口へ向かう。
「ねぇ、新しいゲームを手に入れたんだけど、一緒
にやっていかない?」
輝夜はレミリアに並んで歩きながら色々と話しかけ
たが、レミリアの耳には入っても意識にまでは何も
届いていない。彼女は精神のバランスを崩しかけて
いた。悪気の無い輝夜をレミリアの従者が丁重に遮
ると、輝夜はそれ以上ついて来るのを止めた。
玄関で屈みこみ、のろのろとした動作で靴を履く二
人を輝夜は眺めている。すると背後に永琳がやって
来た。訝しんだ輝夜は永琳を詰問する。
「永琳、また何か遊んだの?」
永琳は心から微笑んで応えた。

***********************

〜一介の門番が遥か未来まで眠り続ける話〜

紅魔館の門前で美鈴は回想に耽っていた。妹様を永
遠亭に預けてから、お嬢様が咲夜さんを連れて様子
を見に行って帰ってきたあの日以来、お嬢様はすっ
かり変わられた。塞ぎこみがちになって、遊びに出
かけることも減ったかと思うと些細なことで急に機
嫌を悪くして怒り出すことが増えた。咲夜さんも、
あまり表に出さないものの以前と比べて暗くなった。
老け込んだとでも言うべきか、雰囲気が重々しい。

妹様が帰ってきてからは、あの明るさにつられて館
全体の雰囲気が良くなり活気を皆が取り戻したと思
う。ただ一人、お嬢様を除いてだけど。妹様の、あ
の真っ白い雪のような肌が濃い褐色に変わって帰っ
ていらした時は皆が驚いたものだ。妹様ご本人こそ
なんとも思っていないようだったけれど、お嬢様は
怒り狂って竹薮に火を着けに行こうとしたくらいだ。
「妹を黒ン坊なんかにするために預けたんじゃない、
あの藪医者め、一派郎党を皆殺しにしてやる!!」
他にも差別的で蔑視的な悪口と罵りを喚き散らしな
がらお嬢様は暴れ続けて、皆が疲れ果てた頃にとう
とう妹様の手によって地下に幽閉された。皮肉な事
に、姉妹の関係がその時から逆転したんだ。お嬢様
がようやく落ち着いた頃を見計らって、妹様の指示
で地下から出された頃にはもう、実質的な主人はフ
ランドールお嬢様であると皆が認識を改めていた。
咲夜さんを除いて、皆は表には出さないが今のお嬢
様は形式上の主人に過ぎない形勢なのだ。

「状況は複雑だわ……」
美鈴自身は今に至るも、レミリアを主人としている。
政治的な考えや行動が苦手な自分はどうするべきな
のか、そんなことに思い廻らせながらぼんやりして
いると、美鈴は甘美な眠気に誘われる。気温が上が
り、段々と肌寒さを感じなくなっていた。美鈴は館
からは門柱に遮られて自分が見えなくなる位置に動
くと、おもむろに地面の上で寝転がった。土が温ま
っていて、ゴロ寝も不快ではない。半開きの眼一杯
に広がる青い空を見ているうちに、美鈴は空へ吸い
こまれてゆく心地で眠りこんでゆく。紅魔館の門前
に動く者はいなくなり、静寂さがあった。

美鈴の眠りが深まった頃になり、二体の妖精が門前
に現れた。妖精の目的は美鈴と遊ぶことであり、横
になっている美鈴を見つけると駆け寄ってゆく。
やって来たのは氷の妖精チルノと、死の妖精ダイの
二人であった。ダイは横たわったままで反応の無い
美鈴の口元に手をかざすと、彼女が生きている確証
を得る。向かい側で仁王立ちするチルノを見上げた。
「やっぱり寝てるよ」
「じゃあ、あたいが起す」
チルノは美鈴の着衣の裾に手をかけると、無造作に
まくり上げて腹、胸、股間を露にさせた。美鈴の盛
りあがる乳房を両手で無遠慮につかむと揉みしだき
ながら歌をうたいだした。
「おっぱ〜い♪ もみんもみん! もみんもみん!」
傍らで見ているダイは、想定を超えるチルノの暴挙
を目の当たりして、口元を手で覆った。暴挙の相手
は気の良い女性であるが、れっきとした強い妖怪で
ある。怒らせたらどうなるかということを、チルノ
は想像しないのだろうか? チルノは手を止めずに
歌い続けているが、美鈴は目を覚ます気配が無い。
「もみんもみん!! もみんもみ……ダメだこりゃ」
乳房を揉むのに飽きたチルノが美鈴の乳首を下着の
上から指で弾く、すると美鈴が鼻で鳴いた。チルノ
は立ち上がって門柱の下にしゃがみ込むと、小便を
垂れ始めた。門柱に当って小便が氷塊となってゆく。
ダイは引き上げをチルノに進言した。
「どっぷり寝ちゃってるね、今日は止めにしよう」
「仕方無い、奥の手を使うか」
ダイの声を無視してチルノは両手を美鈴の腹にあて
ると、目を閉じて掌に意識を集中させた。
「むん、むむむむん…… 寝坊介叩起掌、ハァッ!?」

チルノの両手から凍てつく波動が発生した。それは
美鈴の体内で共鳴を起し、臓物から血液を伝って身
体全体の体温をゆっくりと下げていった。美鈴の顔
から徐々に血の気が引いてゆくと、呼吸さえもが極
僅かな程度までに弱まった。美鈴の身体はコールド
スリープに近い状態になっていたのだった。
チルノは美鈴の腹から手を離した、しかし期待とは
裏腹に、美鈴は目を覚まさず眠ったままでいる。驚
いた美鈴が、蛙のように飛び跳ねる様を望んだチル
ノはつまらなくなり、美鈴への興味が冷めていった。
「もういいや、違うとこ行こうか」
チルノは浮かび上がると、飛び立とうよとダイを手
招きする。美鈴を死なせてしまったのではないかと
憂うダイは彼女の着衣を元通りに整えて、遅れまい
とチルノに続いて浮かびあがる。二体の妖精はその
ままどこかへ飛び去って行った。紅魔館の門前に、
冷たくなった美鈴だけが残された。

この時と少し後、紅魔館の厨房でまめに働く者の姿
がある。洒落なメイド、十六夜咲夜である。彼女は
番犬に与える昼餌の仕度を整えると、備え付けの伝
声管を用いて正門前に立哨している筈の美鈴に呼び
かけた。
「美鈴、美鈴? お昼ができてるけど、欲しければ
返事をなさい。要らないなら寝ていても構いません
よ」
咲夜の呼びかけに対して、美鈴の回答は無かった。
「美鈴? みれーい! 居眠りしているの? 美鈴
返事をなさい、美鈴!」
正門の門柱に備えられた伝声管、館からの声を発す
るラッパ形状の管が多いに震動して咲夜の声をくぐ
もり気味に伝えた。しかし美鈴はコールド・スリー
プ中であり、回答することは不可能である。
そのことを知らない咲夜は根気強く美鈴に呼びかけ
た。返事ができなければ(居眠りしていたら)昼食を
抜くと言い渡していたが、本当に食事を抜くのはや
はり可哀想だから、という気持ちがあった。しかし
咲夜も人間であり、期待に応えない相手にいつまで
も望みを寄せ続けることに耐えられない。やがて、
返事の無い美鈴の名を呼ぶことが馬鹿らしくなった。
咲夜は憤りを込めて食事に唾を吐き捨てると、それ
を犬用の餌皿に乱暴に放り込んだ。
「これをクソ犬の所に持っていっておやり!」
機嫌の悪いメイド長に餌皿を突きつけられたメイド
妖精は、とばっちりを受けたくない一心で何も問わ
ず餌皿を受け取ると一目散に勝手口へと向かった。

メイド妖精が館の外に出ると、戸外は冷たい風が吹
いて寒さが戻りつつある。紅魔館では犬を飼っては
いないので、最初はクソ犬というのが誰のことかわ
からなかった。メイド妖精は足りない頭で少しの間
考えると、美鈴のいるはずの正門へ歩いていった。
メイド妖精は地面に横たわって微動だにしない美鈴
を見るや、これじゃメイド長が怒るはずだと納得し
て餌皿を門扉の下から美鈴のいる外側に差し出した。
メイド長があれだけ呼びかけても起きなかった門番
だ、黙って置いてくるのが正解だろうと思い、メイ
ド妖精は館に戻った。

ここに第二の来客が現れる。
現れたのは二体の化け道具、つくも神と類される妖
怪で、多々良小傘と名乗る化け傘ともう一体は近年
増加傾向の、廃棄された電化製品から生じた若いつ
くも神で名を東芝神酒紗と名乗る者達である。
美鈴は居眠りしているところを小傘に悪戯されて、
驚いて飛び起きたことがあった。強い悪意を持たな
い化け道具は普通の妖怪と勝手が違い、美鈴の気を
用いる警戒があまり反応しない。何度となく悪戯を
受けて、その度に美鈴が驚くので小傘は紅魔館の者
をからかおうとするのが癖になっていた。今日は新
しく妹分とした若い化け道具を連れて、いつもの如
く美鈴を驚かそうとやって来ていた。小傘は無防備
に眠る美鈴を見るや舌なめずりをする、すると彼女
が携える大きな化け傘も同じく舌舐めずりをした。
「わたしが今から良い手本を見せるから、よく見て
勉強するといいわ」
小傘は笑みを浮かべて化け傘を美鈴にかざすと、化
け傘の口から垂れる舌が美鈴の身体に舐りつけられ
た。化け傘の舌が美鈴の肌から離れる前に、小傘の
方が舌の凍りつく感触に驚いて叫び声を立てた。
小傘は突き出した舌を手で包み、無様に地面を転げ
回った。「ヒィヒィ、ぜはーぜはー……」
思わぬ痛手に小傘は涙目になりながら美鈴を見やる
ものも、当の美鈴は身動き一つ見せない。
「まふで氷ひたくふめたい、どゆこと?」

小傘が足の先で美鈴を突いていると、神酒紗は門の
下に食品の盛られた皿があるのを見つけて本能的に
それを手に取った。神酒紗は皿を持って美鈴と小傘
の傍に座り込むと、皿の中身を手掴みして自分の口
にぐいぐいと放りこみ始める。なんとか舌を治した
小傘は神酒紗が物を食べているのを目の当たりにし
て憂いた。以前、自分も人間の真似をして飯を口に
入れた事がある。その後に、股の間にある小さな穴
から食べた物が垂れ流しになってなんとも気持ちの
悪い思いをしたものだった。
「そんなことをすると、後で大変な目になるよ?」
小傘の制止を意に介さず、神酒紗は餌皿の中身を全
て平らげると今度は大きな異音を身体全体から発し
て激しく震動し始めた。
「ん"ん"ん"ん"ん"ん"ん"んんんー"!!!!」
「なっ、なにごと? そんなことして先輩をおっど
、おっどどどっ! 脅かすの!?」
小傘が後輩とする神酒紗の異常な様子は、先輩をひ
としきり驚かせると途端に止んだ。
「攪拌、完了」
目を丸くする小傘の前で神酒紗は立ち上がると、無
造作に下半身の衣服を脱ぎ下ろして、毛の一本も生
えていない股間をさらけ出した。そのまま無言で美
鈴の顔上に足を踏ん張って跨ると、小傘の顔を見て
手伝いを要求した。
「先輩、こいつの口を、私がもういいと言うまでの
間、手で開かせておいてください」神酒紗は真顔で
小傘に頼んだ。小傘は、神酒紗の何の前置きも説明
も無い行為にただ驚くしかなかった。
「せ、先輩の手を煩わせるとは化け道具の風上にも」
「これは急を要します、早く!」
神酒紗があまり強い口調で命じるので気圧された小
傘は、手のかじかむ冷たさも我慢して美鈴の口をこ
じ開けて保持した。先の予想できない展開に、小傘
は流されるままである。化け傘までもが緊張の面持
ちで三人を見守っていた。小傘が美鈴の口を思いっ
きり開いたところで、開けたわよ、と言うと神酒紗
の人間と変わらない肛門がピクピクと二、三度収縮
してからぽっかりと開いた。そこから、皿に盛られ
ていた食物がペースト状に姿を変えて流れ落ち、美
鈴の口に注がれてゆく。小傘はただただ、美鈴の口
に手をそえて見ていることしかできない。
「あー、あー、溢れてくる、溢れてくるぅぅ……」
小傘がそう漏らした時には、既に美鈴の口はペース
トで一杯になり新たに注がれる分は溢れてこぼれ落
ちるばかりである。神酒紗は注ぐのを止めるでもな
く、道具としての使命を全うしている幸福感に打ち
震えながら熱い溜息を繰り返すのみであった。
神酒紗の肛門から注がれるペーストが段々と細くな
り、やがて途切れると肛門がグポグポという音を立
てて少量のペーストを美鈴の顔中にぶちまけた。
最後に神酒紗は「はふぅ」という満足げな声を出す
と自らの肛門を手で拭い、化け傘の舌に擦り付けて
清めると下の服を元通りに身に付け、立ち上がった。
「行きましょうか、先輩」
神酒紗に促されると、小傘は無言のまま彼女と共に
美鈴を放置してそこから飛び去って行った。帰りの
空中で、小傘は不意に疑問を漏らす。
「口に入れた物は、口から出すのが筋じゃない?」
並んで飛んでいた神酒紗は小傘に顔を向けた。
「入れた物を捨てる穴から出したのを、また人間の
口に入れるのって違う気がするなぁ、すかとろ?」
神酒紗は自分もどこか気になっていた疑問が氷解し
て、正しい道を悟ったという気持ちがした。
「流石は先輩!!」
興奮した神酒紗は、小傘の腰に手を回すと彼女に頬
ずりすることで気持ちを伝えた。小傘の身体を抱き
締めると、小傘に合わせて飛んでいた何倍もの速度
を出して空を進んでゆく。

電化製品から変化したつくも神は、総じて力が強く
物によっては残酷な気質を持っているという。
二体の化け道具が飛び去った後、美鈴は眠ったまま
口の中に注がれた食物を窒息せず飲み干していた。

***********************

〜一介の門番が目覚めた未来の話〜

陽も暮れかかり、木枯らしが吹き始めて野外は寒さ
を増しつつある。紅魔館の門前もすっかり薄暗くな
っていて、そのような頃に美鈴はようやくコールド
スリープから目覚めつつあった。美鈴は身体の節々
から砕けそうな程の苦痛に顔を歪めながらも身体を
起すと、今度は猛烈な喉の渇きを覚えてたまらずに
のた打ち回る。舌の付け根から乾ききった粘膜が裂
けて血が噴き出すかのようだ、縋るように美鈴は伝
声管を叩いて館の者に助けを求めた。干からびた喉
は上手く震えられず、かすれた声を出すのもやっと
で声量が出ない。死を強く予感させる乾燥にかられ
て、美鈴は一心不乱に伝声管を叩き続けた。この時、
館の厨房ではメイド長の咲夜を筆頭にメイド妖精達
が早めの夕食として賄いを食べていた。メイド妖精
の一体が、正門につながる伝声管から呼びかけるよ
うに叩く音を聞きつけて席を立ち上がる。彼女は伝
声管の蓋を開けて応答を行おうとするが、背後から
突然、咲夜が割って入り伝声管の前に立った。
「はい、厨房。何事かありましたか? 今日は来客
の予定はもう無い筈だけど?」
咲夜の声は平静ながら、明確な鬱陶気が含まれてい
る。美鈴とのやりとりを一秒でも短く切り上げたい
という感情に咲夜は突き動かされていた。
「……みず、を、ぉみず……ぅぉ、……さぃ、助け
てぇっかハッ」
あまりにもかすれて聞き取りづらく、伝声管越しで
は声量も足りない美鈴の助けを乞う声は咲夜の苛立
ちを煽り立てた。機嫌の悪い時は空耳さえもが悪口
に聞こえることがある、この時、咲夜の耳には美鈴
の「みずを(水を)」という台詞が「飯を(飯をくれ)」
に聞き違えられて入った。咲夜の苛立ちはすぐさま
許容水準から溢れ出して彼女を感情に走らせるた。
「……っ!! 土でも喰ってろ、この土ブタがっ!!」
咲夜は腹の底からがなり立てると叩き付けるように
伝声管の蓋を閉じた。そして食卓に戻り、何事も無
かったそぶりで食事を再開した。メイド妖精らの食
事する手が、一斉にテンポを速めて動き出した。

理由はわからない、しかし館からの助けが望め無い
とわかり、美鈴は力尽きて門柱にしなだれかかるよ
うに崩れ落ちた。ただ死を待つばかりかと乾いた瞳
で地面を見れば、そこには融けかけた氷の塊が存在
している。融けたはたから、水分は蒸発して空気に
奪われるばかりであったそれに美鈴の口がむしゃぶ
りついて舐め啜った。門柱にこびり付いた分まで直
に舐め取って、美鈴はようやく移動に足るだけの水
分を補給した。湖まで這いつくばって行き、辿り着
いたそこで腹いっぱいに水を飲んだ美鈴は元気を取
り戻した。正門まで戻る道すがらに、美鈴は憤怒に
かられて樹木を殴りつけ八つ当たり散らした。憤怒
の対象は自分の助けを冷酷に蹴散らした人間の女、
十六夜咲夜である。
「あんのぉぉぉアマぁがぁっ!! 私がっ、何をっ、
お前にしたんだよぉぉぉっ!!」
美鈴の怒気を込められた打撃、蹴撃が木々を引き裂
き破裂せしめるうちに、彼女の体温はすっかり上昇
して衣服からは湯気さえも立ち昇っていた。美鈴が
八つ当たりを切り上げて門の前に戻った頃、彼女の
体調にはっきりとした異変が起った。美鈴は唐突に
生じた腹部の、胃よりも低い位置での抉れる痛みを
覚えて手を当てた。普段とは質の違う、尋常でない
痛感に美鈴は考えることなく気を集中して臓物を温
めようと試みる。これが致命的な引き金になった。

***********************

〜一介の門番が砲撃手を務めることとなる話〜

美鈴は門柱にもたれかかり、口からは涎を幾筋か垂
れながら両膝をガクガクと震わせ、肩で息をしなが
ら全身の肌は脂汗を噴き出せていた。腹内の臓物は
岩を引きずるかのような呻き声を絶え間なく発して
蠢いている。特に腸の活動は活発で、美鈴をして腹
の中に掻き回る蛇のごとく律動を繰り返すと内部に
溜めた質量を終端へと押しやり、内圧を徐々に高め
続けているのが感じられた。湖から戻った当初、美
鈴は腹痛が治まった頃合に館の便所を使おうと思い、
そのまま門の前で休んでいた。交代時刻も間近になっ
ていたので、野糞に及ぶこともないと油断していた。

しかし腹のうずく痛みと腸の蠢きは止むことが無く、
門番の交代もやっては来なかった。休んでいれば、
なんとかなる。美鈴の思惑は空振りに終わって今や、
距離にしてわずか百数十メートル先の茂みまで歩く
余裕すら失っていた。そこまで歩く間に肛門が我慢
の限界を迎えて、野糞に及ばざるを得なくなる。
「それだけはっ、なんとしても、それだけはっ!!」
美鈴の女としての羞恥心と、仕える者としての誇り
が彼女に野糞という行為を自重させていた。主人で
ある吸血鬼の少女は鋭い嗅覚を持っているし、正門
前から半径数十メートルの範囲内は咲夜が責任を持っ
て毎朝ごとに厳しくチェックしている。ましてや、
敷地の中に糞を垂れることなど絶対に許されない。
美鈴は肛門にかかる圧力を耐えながら腹痛の治まり
を待ち続け、その機に茂みまで辿り着きそこで糞便
をぶちまけるしか生き残る道は無い。希望を捨てず
に耐えるんだ! そんなことを美鈴が改めて考えて
いると、追い討ちのかかるように腹内から雷鳴の轟
きを思わせる音が鳴り始めて止まらなくなった。美
鈴の肛門には内側から破城槌の攻撃を受けているの
と変わらない、質量の体当たりが繰り返されていた。
腸の蠕動によって、糞便の硬い先端が肛門に叩きつ
けられる。それはまた蠕動に乗って引き下げられる
と、後端に新しく付け加わった糞便の質量が加わっ
て再び肛門に打ちつけられるのだ。美鈴はもう限界
をきたしていた。
「おっ、おぅおぅお〜、あぐっうっくぐ、う゛ぉ」
美鈴は歯を食い縛ってヤマを耐えたが、門から離れ
た場所で糞を垂れるという希望は捨てた。最悪でも、
服の中で漏らすという事態さえ回避できればごまか
すための隠蔽は自分の手でいくらでもできる。美鈴
は気を腸に送って糞便を押し留めた。その場しのぎ
に何度となく行ったこの手当てによって、美鈴の腸
内は人間ならば爆死しているほどの圧力を蓄えるに
至っている。美鈴は決死の摺り足で正門から徐々に
離れ、これでもう本当の限界、という地点まで移動
すると最後の戦いを開始した。ズボンとパンティを
脱ぎ、糞を垂れる姿勢を取るのである。

***********************

〜一介の門番が最後の聖戦に赴く話〜

美鈴は意識を失いかけた。意識が遠のく一瞬の間に
これまで生きてきた中の思い出が脳裏を駆け巡った
後、美鈴は自分が幼い子供であった時代の記憶を揺
り起していた。美鈴の生まれ育った故郷は山間の地
にあり、上流には巨大な石造りの堰堤がそびえ立ち
一帯のシンボルと見なされていた。ある年のこと、
老朽化著しい堰堤に無数のひび割れを生じたことが
発端で、地域の全住民が高地に避難した。幼い美鈴
はいずれ故郷に帰れるものと信じていたが、ほど無
くして堰堤に小さな亀裂が入るとそこから一閃の水
が噴出した。これが致命傷となって、その日のうち
に堰堤は決壊を起し濁流と共に崩壊して周囲一面の
全てが水と泥の底に沈んで失われた。まだ幼い美鈴
はどうすることもできず、身内に抱かれて泣き叫ぶ
ことしかできなかった。美鈴の意識が回想から戻る
と、彼女は今、幼き日のトラウマーと同様の試練に
直面している。美鈴の肛門括約筋は自分の意思で御
せる限界をとうに超えていたが、紅魔の一員であり
たいと望む彼女の想いが最後の防衛線として機能し
穴を引き絞っていた。意を決した美鈴はズボンとパ
ンティ、一度で両方に指をかけると一気に引き下ろ
す。止まることなく膝まで下げて、その勢いに乗じ
てしゃがむ姿勢に持ち込み、糞を垂れる……!!

……試みは失敗した。美鈴の手がズボンとパンティ
を半ケツの高さまでずり下ろし、両膝を折り曲げて
しゃがみこむ排泄の構えを取ろうとした瞬間に肛門
が緩んだ。ぶぴゅるぶぴゅる、という水音を立てて、
液状の便が美鈴のパンティを内側から汚した。美鈴
は絶体絶命の危機に陥った。ここから先、どうイメ
ージしてもパンティの中か、パンティを下ろしてしゃ
がむ前にズボンの上に下痢便をぶちまける結果しか
見えてこない。
(終った、我、天運に見放されたか……)
美鈴が紅魔館の中で居場所を失うことを覚悟したそ
の時、館を訪れる一人の人間が現れた。最悪の状況
下に来客、ダメ押しとはこのことか。美鈴は仕事上
の習性から来訪者の観察を無意識に行っていた。
その者は覆面と胴鎧を身に付け、顔は見えないが声
からして男性らしい。武装しており、身長に似合わ
ぬ体躯は相当な鍛錬を経ている。身に付けている物
の様式が幻想郷一般の物とはかけ離れているので、
近頃とみに増えてきた"異世界"から迷い込んできた
冒険者だろう、と、美鈴は見当を付けた。
「拙者、名をモノノフと申す浪人です。こちらはス
カーレット様の御居城にございましょうか?」
美鈴は男の問いかけに何も答えられなかった。声を
出すだけでも刺激となって、今にも肛門を開きそう
であったから。美鈴の境遇も知らずに、男は自己紹
介と用件を美鈴に述べて、レミリアに取次ぎを求め
ていた。
「巷で聞きつけたところ、門番殿に挑み実力を認め
て頂けたならば、スカーレット様にお目通りを許さ
れると知って参った次第なのですが……」
早い話が、男は紅魔館に仕官を希望してやって来た
のだった。美鈴はこの男にすぐさま消えて欲しいと
しか考えられず、、男もまた、美鈴の様子や格好の
異常さに気が付くと二人の間に何とも言えないごわ
ごわした空気が漂った。美鈴の顔は涙、鼻水、涎、
脂汗でグチャグチャに流れている。ズボンと下着が
中途半端に下げられて尻の上半分が露出され、覗く
白いパンティには汚物の染みと水っぽい便臭が滲ん
で酷く汚らしい印象を受けた。男は不快さから、す
ぐにこの場から立ち去りたい気持ちに駆られた。
「……失礼ながら、体調が優れぬご様子。またの機
会に出直したいと思います」
男が美鈴から踵を返そうとしたその時、彼女の助け
を求める声に後ろ髪を引かれて振り向いた。美鈴は
素性の知れぬ外部の人間を最後の藁と思い縋る。
「たすけてください、おねがいします、お助けを」

男は美鈴の求めに応じた。慎重に美鈴のズボンとパ
ンティに手をかけると、汚物に触れぬよう注意して
それを膝の下まで下ろしてやった。すると美鈴はあ
りがとうと礼を言い、加えてこのことは誰にも言わ
ないで欲しい、と男に懇願した。
「心得ました、私はここで誰にも会いませんでした」
そう言い残して、男は去って行った。紅魔館に仕官
したいという気持ちは、汚物まみれの美鈴を見て消
え失せていた。自分以外の誰もいなくなったところ
で、美鈴は最後の力を振り絞って意を決すると大股
に足を開き、上体を前かがみにして両手を尻の肉た
ぶにそえると肉を掴み、左右に思い切り引っ張って
開いた。美鈴の肛門が閉じたまま盛り上がり、膨張
して直腸ごとめくれて糞便の硬い先端が顔を出した。
もう止められない、美鈴は腹筋を操作して、括約筋
を完全に弛緩させることで引き金を引いた。

***********************

それは排便と言うにはあまりにも大仰すぎた

多く、ぶ熱く、重く、そして大雑把すぎた

それはまさに砲撃だった

***********************

(失敗した……!!)
開放の瞬間、美鈴はそう思わざるを得なかった。
彼女は開いた足の間から、肛門の向いているのと同
じ方向を上下逆さになって目にした。そこは紅魔館
を囲む壁から殆ど零距離と言ってよい位置であり、
美鈴の下痢グソはほぼ全てがこの壁にぶち撒けられ
るのである。隠蔽工作の手間が格段に増えるな、と
美鈴は覚悟した。脳内麻薬が駄々漏れになる。
「気持ち良いぃぃぃぃっぃぃぃぃぃイィィィ!!!!」
気の力によって、腸が耐えられる極限まで高まった
圧力に撃ち出された美鈴の下痢便。それは光りを帯
て館の壁に衝突すると銀河系とも表現できる無数の
飛沫、滴となって跳ね返った。美鈴の身体を浸すほ
どに便液が濡らし、周囲の地面を扇状に広がって沼
のごとく下痢便が満たした。紅魔館の正門前を覆い
尽くしてもまだ下痢便の排出は止まらず、むしろ勢
いを増していった。次第に下痢便の噴出による反動
が美鈴の踏ん張る力を上回り、美鈴はゆっくりと前
方に加速してゆく。下痢便沼の上を、下半身丸出し
の美鈴が肛門からジェット下痢便の糞出力で空を飛
びつつあったのだ。妖怪の航空史というものが存在
していたならば、美鈴は歴史的な快挙を成し遂げつ
つあるということになる。
(今の私はロケットエンジンなんだ!! フォォオォォ
ン!)
最後に、重砲の発砲音にも似た爆発音をあげて美鈴
は湖まで吹き飛んで行った。

***********************

〜妹君が湖沼の妖精がごとく舞うお話〜

歴史的快挙が成し遂げられた瞬間の、少し前に遡る。
紅魔館の当主レミリアの妹であるフランドールは不
良仲間と遊び倒してとっぷり日も暮れた頃、家路を
急ぐ道すがらに、路傍で絵を売る人物を見つけた。
ゴザの上に並べられた様々な絵柄の絵はそのどれも
がまるで生きているかのように動いていて、フラン
ドールの興味を大いに惹きつけた。男は彼女の前で
何も無い空間にキャンバスがあるかのごとく絵筆を
奔らせた。すると瞬時に描きあげられたフランドー
ルの全身画が瞬きしたかと思うと、身体を描かれた
平面からはがすようにして地面に降り立ち、驚くフ
ランドールの周りで跳ね回ってはじゃれつき始めた
のだった。フランドールは男に尋ねた。
「こんなの初めて見たわ! どんな仕掛けなのかし
ら? とても不思議だわ」
喜ぶフランドールに気を良くして男は名を名乗った。
「私は流浪の魔伎、ピクトマンサーのナーと申す者
です」
「魔伎、ってことは魔法使いなのよね。わたしもこ
れくらいならできるよ」
言うや、フランドールは背後に自身の分身三体を生
じさせて見せた。目の前の少女が何の詠唱も秘儀の
実施も無く、筆舌に尽くし難い精巧な分身を造り出
したことがどういう意味を持つのか。魔伎を自認す
るナーという男はそれを知っており、心底から驚愕
した。驚く男の顔を見て、フランドールはしてやっ
たりと見て笑った。分身のフランドールに囲まれて、
絵に描かれたフランドールが縮こまっている。
「ふふふ、これじゃあファイブ・カードだね」

フランドールはこのナーという男を紅魔館に招待す
ることにした。生き物のように変化を見せる絵を産
み出す能力、これならば姉の心に何がしか良い影響
があるかも知れない。
(些細なことでも良い、何かしらの楽しみになれば)
姉との関係は、自分が陽光耐性付加手術から帰って
来た日を境にして急におかしくなったままだ。姉は
精神的に不安定なままで、家に閉じこもらせていて
はいつまた具合を悪くするとも知れない。外に興味
を持たせたいとフランドールは案じた上での招待で
あった。この時、フランドールは歴史的快挙が達成
された瞬間の轟音をそれとは知る由も無く聞いた。
「あいつが暴れてるのかしら? でも……!?」

紅魔館の近くまで辿り着くと、辺りは湖から生じる
霧に包まれて視界が利かなくなっていた。
フランドールは生粋の吸血鬼であり、口唇と陰核を
微かに震動させることで超音波を発しながら歩くこ
とができる。跳ね返ってきた超音波をキャッチすれ
ば、地形や障害物の存在などが手に取るようにわか
るのだった。やがて正門近くまでやって来ると、フ
ランドールは遠目に美鈴の姿を見つけ、嬉しくなっ
て駆け寄って行った。
「美鈴! みれーい! お客様を連れて来たよーっ」
フランドールは不意に足を滑らせて倒れた。躓いた
のではなく、地面がぬかるんで彼女の足元をすくっ
たのだった。顔から何から、全身を汚泥に浸してし
まったフランドールは起き上がるとこの泥が酷い便
臭のすることに顔をしかめる。
「く、臭い! なんなのこの臭い泥は!? ねえ美鈴、
これはなんなの!?」
そこへ、館からも轟音の原因を確かめようというレ
ミリア、咲夜、メイド妖精らの集団が出てきて辺り
は尚更に騒々しくなる。
「門番は何をしているのだ!? 報告に来るでも無く、
それでいて連絡も寄越さんとはな、ブツブツブツ」
門扉を蹴り開けてレミリアが現れた。膝から下は霧
に覆われて何も見えない。ただ足元から漂う濃い便
臭の不快さに鼻をつまませられた。
レミリアが来たことを察知して、フランドールはす
ぐさま姉に危険を報せた。
「姉さま来てはダメーっ!! こっちには来ないで!」
妹の声を聞き、レミリアは臭みとは別の不快さから
顔をしかめた。
「フラーン!? こんな時間までどこをほっつき歩い
ていたの!! 罰よ、お仕置きよ、折檻よ!! すぐこっ
ちに来なさっ……ああっ!?」

フランドールの声を聞きつけたレミリアは下痢便沼
の中へ駆け込んだが、勢い余らせて体勢を崩した。
顔面から沼に滑り込んで、妹の足元にぶつかると姉
妹は仲良く糞まみれにくんずほぐれつの様相を呈す
る。そのままレミリアの一方的な姉妹喧嘩が始めら
れた。そこへ止めに入っていこうとした咲夜、メイ
ド妖精らもまた次々と足を滑らせて、たちまち全員
揃って下痢便沼に沈み糞濡れになる。この、突如と
して発生した臭い沼の正体が美鈴の下痢便であると
知れるまでもなく紅魔館の面々は皆がヒステリーと
パニックに陥って何もかもが有耶無耶になった。

後から送れてやって来た、ピクトマンサーのナーは
饐えた下痢便臭を嗅ぐや猛々しく男根を勃起させた。
「おお、おおおお〜!! こっ、ここは桃源郷か!?」
この男は女性の排便や糞便といったものに、強烈な
性的興奮と快感を得るタチの人間である。そして、
糞便と排泄こそを人生のテーマとして追い求める真
摯な求道者でもあった。
「ありがたや、嗚呼、ありがたや。おお、拝んでい
るだけで力が満ち溢れてくるようだ……」
ナーの目前で、全身を糞に濡らした美しい女達が互
いに罵りあい、取っ組み合っては手に手に糞を取り
合って口に押し込もうと争っている。別の所では、
臭いに耐えかねたのであろう女達が新たな嘔吐物と
排泄物を沼に供しているではないか。現世にありな
がら、自らが至高の楽園とする光景にまみえている
至福に歓喜の涙を流しながらナーは絵筆を振るって
その軌跡を煌かせていた。

下痢便沼のほとりにたたずむ一人の女妖怪、美鈴は
この後に自身を待ち受けているであろう壮絶な責め
苦を想像するに、正気を逸して思わず失禁せずには
おれなかった。美鈴の発達した大腿を、琥珀色の美
味しい湧き水がつたって濡らした。
このSSは、蛇足的に付け足した部分が多くなり
結果内容に比して無駄に長くなり過ぎて読みにくく
なっていることかと思う。
それを耐えて最初から最後まで読んでくださった
読者の方には本心から感謝を申し上げたい。

このSSの内容は、絵板のほうで良い絵を投稿
されているNA氏の数枚の絵を味わっている時
に閃いたものである。良いスカ絵には、性欲を
発散させる素晴らしい効能がある。

私自身はSSの中に出てくるような派手な放便は
非現実的だと思っているが、蓄便と圧力の調整を
経て大砲じみた、言うなれば便撃を実現される
凄まじい先生の技を直に目にしたことがある。

スカトロと聞くと、ニヤニヤ笑いながら
「うんこ食うの好きなんだろ?(嗤い」
などと定型文じみたからかいを口にされる方が
時たま見受けられるが、スカトロの本流というのは
もっと地味で、喰うまでも無くそこに感じられる
人の本性から発して濁流に消えてゆく儚さとか
そのあたりにあるとロマンチックでいいなぁ、
とか私は想像するものであります。

追伸・書いてる途中でNA氏の絵でいたしたけど、
   そのあとやっぱり普通のソープにも行ったよ。
   僕はスカに興味惹かれるけどノーマルなんだ。
suminof
作品情報
作品集:
7
投稿日時:
2009/12/02 16:52:14
更新日時:
2009/12/03 02:39:10
1. 名無し ■2009/12/03 02:22:57
みれい じゃなくて めいりん な ほん めいりん


興奮した
そしてミキサーに笑った
2. 名無し ■2009/12/03 02:34:33
なんかスカトロのような画面の色のせいと文字の色のせいで読みにくい。
改行しすぎ。
演出もいいが物書きとしては完全に間違ってるだろ
3. 名無し ■2009/12/03 18:04:31
美鈴やられっぱなしだな
スカは食べるとこまでいくとレベル高すぎてわからん
4. NA ■2009/12/03 20:59:43
美鈴さんはなんでとぶのんヽ(´ー`)ノモンバンデスカラー

なにこれちょっとエロいんちゃいますのん
緻密な美鈴の内なる戦いの描写に興奮を禁じ得ません
そうなんだそうなんだこういうニュアンスを伝えたかったのです
ああこんなに文章が書けたら幸せだろうなあ

自分の作ったものが誰かのハートを揺り動かすというのはこの上ない喜びなのです
あの美鈴がsuminofさんにこの作品を書くインスピレーションをもたらしたとすれば
それはもううんこ絵描き冥利に尽きるとしか申し上げられません
ありがとうありがとうsuminofさんと奇跡のような幸運と産廃にありがとう
こういうちんちんのつっつきあいがもっと起こると幸せはきっとかならず加速していくはず

そしてスカトロの本流というのがどこにあるのかはいまだ答えの影すら見えない命題ですが
暴騰するハードコアだけが真理に至る唯一の道筋ではないのではないかと信じてやみません


いやまあそんなことより褐色フランちゃんとフラグ立っちゃったよどうしようウフフ
5. 名無し ■2009/12/05 05:27:37
面白かった
生真面目な文章が実に宜しい
6. 名無し ■2009/12/06 12:15:02
真面目な文体と内容のギャップの凄まじさもあって盛大に笑わかせて頂きました。
読んでいる最中に本当に噴き出してしまったのは久々のことです。
てか美鈴いろいろと頑丈ですねw
7. suminohu ■2009/12/18 10:10:14
褒めてくれてサンキュ!
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