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『ゴミクズの環』 作者: きなびご
あるところにゴミクズ魔理沙がいました。
ゴミクズ魔理沙なので当然のことながら、みんなからゴミクズゴミクズと言われていました。
「いつも本を盗んで……。まったく、どうしようもないゴミクズね」
「ひとの人形を壊しておいて悪びれもしない、さすがゴミクズだわ」
「賽銭箱に葉っぱやら瓶の蓋やらを入れるゴミクズは、死ねばいい」
「……ううっ」
他人の気持ちを平気で傷つけるゴミクズでも、悪口を言われれば傷つきます。
「……なんでみんな、私をゴミクズって言うんだぜ?」
けれど、自分を省みることができないので、傷ついた経験は全く無意味でした。
「……なんでなのかなぁ」
それでも、魔理沙はゴミクズの頭で考えることにしました。
自分の好きなことをする、それはとても気分のいいことだと思いました。
困るのはその後です。
魔理沙が好きなことをすると、みんなが悪口を言ったり冷たくしたりするのです。
「なんでなのかなぁ。好きなことを好きにしてるだけなのに」
魔理沙はいっぱい考えました。
ゴミクズのくせに考えました。
それは深い海で溺れているような、辛く苦しい時間でした。
それは深い森で迷っているような、辛く苦しい時間でした。
そしてついにある考えに至ったのです。
「もしかして、私が好きなことをするのって、みんなの嫌なことなのか?」
それは恐ろしい、けれども信憑性のある仮説でした。
そう考えると、全ての辻褄があってしまいます。
ゴミクズは家に籠もって泣きました。
今までの自分がしてきた好きなことを思い出して泣きました。
泣いて泣いて、涙も涸れて。
そうして、呟きました。
「みんなごめん……。私は、ゴミクズなんだぜ……」
その瞬間、暗い部屋に光が溢れました。
「違うわ」
パチュリーが微笑みました。
「そんなことない」
アリスがうずくまる魔理沙をそっと起こしました。
「魔理沙はゴミクズなんかじゃない」
霊夢が頭を柔らかく撫でました。
「み、みんな!!」
みんなの優しい表情と行動に、魔理沙はびっくりしました。
「ありがとう……、でも私は気づいたんだ。自分が今までどんなにゴミクズなことをしていたか」
「いいのよ」
「自分でそこに気づけたんだから」
「自分がゴミクズだって気づけたなら、魔理沙はもうゴミクズなんかじゃないわ」
他にもたくさんの人や妖怪が現れて、魔理沙を認めてくれました。
「魔理沙はゴミクズなんかじゃないんだよ」
「……みんな!!」
気づけば、魔理沙は泣いていました。
悲しみの涙は涸れ、新たに喜びの涙が湧き出しました。
「私と、仲良くしてくれるのか?」
「もちろんよ」
「だって魔理沙はもうゴミクズじゃないんだもの」
「仲良くしましょ」
久々の微笑みと温もりに包まれ、魔理沙はすっかり嬉しくなりました。
「よかった、ゴミクズじゃなくなって、本当によかった」
――瞬間、世界が暗転しました。
温かい光は消え、冷たい闇で満たされていきます。
みんなの表情も、嫌悪と侮蔑に変わりました。
「自分がゴミクズだと分からないのなら魔理沙、あんたはやっぱりゴミクズね」
「所詮ゴミクズはゴミクズ。変わるわけがなかったってことだわ」
「がっかりなんてしないわよ。どうせこうなると思ったわ、ゴミクズ」
みんなが遠ざかり、後にはゴミクズだけが残りました。
「なんで……、なんでなんだぜ?」
こうしてゴミクズ魔理沙は、再び長く苦しい思考の闇に呑まれました。
時折赦されては、また突き落とされる。
その環は既に閉じていて、二度と開くことはありませんでした。
初めまして、きなびごと申します。
皆さんの作品を見ているうちに、衝動に駆られて書いてみました。
好きだからこそ、真っ当じゃない愛で方もしたくなってしまいます。
拙作も、そんな愛の形の1つになれば幸いです。
元ネタは灰羽連盟というアニメだったりします。
きなびご
- 作品情報
- 作品集:
- 8
- 投稿日時:
- 2009/12/11 12:00:16
- 更新日時:
- 2009/12/11 21:00:16
- 分類
- 魔理沙
- 童話風
- グロ無し