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『The game 2-1』 作者: 名前がありません号
1.
彼女が目覚めると、一通の手紙と箱がテーブルに置かれていた。
手紙の封を開けて、中身を読む。
其処には「『The game』のゲームマスターに選ばれました」というタイトルと、
詳細な情報が書かれていた。
しばらく読み進めると、ある一文が彼女の目に留まる。
“ゲームマスターが勝利した場合、願いをかなえることが出来る”
半信半疑であったが、やってみる価値はありそうだ。
彼女は、ゲームを行う準備と協力者を用意することにした。
数日後、全てのゲームの準備は整った。
後は仕掛けるタイミングだ。何処で仕掛けるか。
しばし館を歩き回ると、妖精達の話し声が聞こえる。
「レミリアお嬢様が明後日パーティを始めるんですって」
「その日って何かの記念日だっけ?」
「さぁ。でも『最近宴会してないからやる』って聞いたわよ」
「なにもうちでしなくても……」
「霊夢に賭けで負けたとかどうとか言ってたような……」
これはいい事を聞いた、と彼女は思った。
ゲーム開始を明後日にし、その旨を協力者に伝える。
彼女は、笑みを浮かべながら呟く。
「さぁ、ゲームを始めましょうか」
2.
咲夜はやれやれといった表情で、我が主を見る。
ムスッとした表情で、準備されていくパーティ会場を見下ろしている。
このところ、霊夢とご無沙汰であった為、見事に敗北を喫した上、
霊夢との約束で、宴会会場に紅魔館を貸しきられる羽目になった。
口約束とはいえ、それを反故にするのはレミリアの望むところではない。
やむなく約束を飲んだのだが、話を聞きつけた人妖達が、
次々に紅魔館に遊びにやってきたのである。
折角の静かなティータイムを邪魔された主は、ご立腹の様子だ。
「もう少し静かに出来ないのかな、あいつらは」
「それはどうしようもありませんわ。お嬢様は敗北者ですもの」
「あいつらを呼んだ覚えはないんだが」
「それもどうしようもありません。こういうときには皆耳が早いですからね」
「はぁ……風情も何もないわねぇ」
レミリアは比較的暴れたがりではあるものの、
ティータイムぐらいは静かに楽しみたいものである。
下の会場では、早くもワインに手をつける二人の姿が見える。
地底の鬼と萃香だ。くそ、あれはうちの秘蔵の一つなのに。
「ねぇ咲夜。我慢ならないわ。あの酔っ払いにあのワインは勿体無いわよ」
「そういわれましても」
「あれは本来霊夢と飲む予定だったのよ。ああ、コルクが……ッ」
「諦めてくださいませ。お嬢様」
「せめて、ワイングラスに注いで飲んでるだけましか……。ラッパ飲みしやがったら泣くぞ畜生」
目に涙を溜める主に、咲夜は慰めの言葉をかけない。
主の涙ぐむ姿はそこそこ目撃できるが、今回は結構真剣に泣いている。
よほど、霊夢と一緒に飲みたかったのだろう。
落胆の色が濃くなる主を余所に、咲夜も自身の仕事に向かう。
ふと咲夜が振り返る。
まだがっくりと肩を落としている。
あれは重症ね。
3.
パーティと称した宴会の準備が着々と進む中、相変わらずパチュリーは図書館に篭っていた。
ああいう騒がしいのは、苦手だ。
宴会自体を嫌ってはいないが、少なくとも始まる前までこの調子では先が思いやられる。
どれだけ酷いパーティになるかが容易に想像できて、頭が痛くなる思いをしていると、
小悪魔がコーヒーを持ってやってきた。
「パーティ会場にはいかないんですか?」
「まだいいわよ。始まる前ぐらいにいけばいいわ。急ぐほどでもないし」
「パチュリー様は騒がしいのあんまり好きじゃないですしね」
「自制が効かないくらいに暴れまわられると困るのよ。色々と」
「そういうもんですかねぇ」
小悪魔は納得したようなしないような表情で、パチュリーを見る。
相変わらずの本の虫っぷりだ。
栞なしで読みきっている本が積み上げられている。
パチュリー様は集中しすぎると、他に目が行かないお方だ。
実際、天人が起こした異変の際にはまさかの犯人見過ごしをやらかした。
それは図書館にも現れていて、本の手入れや片付けは殆ど私、小悪魔がやっている。
運動ついでに本を片付けては、と進言したが耳に入っていない。
熱いコーヒーを入れても、大抵パチュリー様が口を付ける頃には冷め切っている。
なんとも悲しい事実だが、契約には逆らえない。悪魔の辛いところです。
「あ、そういえば最近、魔理沙さんを見かけませんね」
「言われてみればそうね。最近静かで気付かなかったわ」
「前は毎日のように入り浸っていたのに珍しいですねぇ」
「大方、新しい研究でも始めたんでしょう。魔法使いなら珍しくないわ」
そうですね、と小悪魔はパチュリーに返事をする。
魔理沙さんの襲撃がないのはいい事ですが、しかし逆に言えば本が返ってくる見込みも無いので、
喜んでいいのか、悲しんでいいのか小悪魔にはわからなかった。
「おや、そろそろ始まるみたいですよ」
「そう。丁度読み終えた頃だし、行きましょうか」
「はい」
小悪魔と共に、パチュリーもパーティ会場に向かう。
いつものように酒を飲み交わし、いつものように会話に花を咲かせ、
いつものように酷い惨状になる。
今日もそうなるだろう。
パチュリーはそう思っていた。
4.
パーティ開幕の音頭はレミリアが取ることになった。
いつもは取りまとめ役に率先してなりたがる奴がいるのだが、
今日は欠席しているので、主賓であるレミリアが行う。
「あー、こほん。それじゃあ皆、いつも通り酒と食事を楽しもうじゃないか!」
特に気の利いたことは言わない。
どうせ聞いちゃいない。
こういうのは形式的な物で、特に意味は無いのだ。
「はぁ、カリスマでもあれば、連中に言う事を聞かせられると思う? 咲夜」
「お嬢様。墓穴を掘るのはどうかと」
「わかってるわよ。少しぐらい頼ってもいいでしょ? そういうのに」
レミリアは優しくない侍女に、はぁと深く溜息を吐く。
最初はかわいかったのになぁ、今じゃこんな風になっちゃって。
何処か諦観したように、レミリアが咲夜を見る。
「? 何かついてますか?」
「いいや、何にも」
その癖、どこか抜けているところがあって、
それがかわいいのだが、自覚がないのでいまいちしてやった感はない。
いつか本気でぎゃふんと言わせてやりたいものだ。
すると扉の方から、妖精がこちらに向かってくる。
随分を慌てた様子でレミリアに駆け寄る。
「た、大変です、レミリア様! い、妹様が!」
「なんだ、フランがどうしたって?」
「妹様が地下室で死んでいます!」
咲夜は驚いた。私も驚いた。
幸い向こうは完全に自分らの世界に入っている為、
聞こえてはいないようだ。
「死んだって……フランが? まさか」
「で、でも、し、死んでたんですよぉ!」
レミリアは半信半疑だったが、妖精メイドの慌てようは普通ではない。
「とにかく現場を見ないとわからないな。咲夜、ついてきなさい」
「はい、お嬢様」
宴の主賓が離れるのは問題だとも思ったが、
先ほどもいったように、あちらで完全に盛り上がっていてこっちに気付いてすら居ない。
それにこちらは緊急事態だ。
妖精メイドに連れられて、レミリアは咲夜と共に地下室へと向かった。
それと入れ替わるように、一人の妖精メイドがひっそりと会場に姿を現したが、誰も気付かなかった。
5.
「これは……」
「一体誰の仕業でしょうか」
「さぁ。犯人が全部話してくれれば万事解決なんだけどねぇ」
レミリアと咲夜は地下室の惨状を見て、そう言った。
地下室にはあちこちに血痕が飛び散っていて、
フランドールの肉体はまるで体内で爆発したかのように、
あちこちに肉が飛散していた。
身体の殆どが原型をとどめないほど破壊されている。
身体についたその宝石の羽から、フランドールだと妖精メイドは思ったらしい。
「わ、私が来たときには既にこの有様で……」
妖精メイドはがくがくと震えている。
彼女はこの地下室の防衛を担当している妖精なのだが、
まさかのフランの死に動揺しているようだ。
まぁ、死の想像がつかない相手が死んだら驚くわよね。
「とりあえず消臭と掃除をしておきなさい。血生臭くてかなわないわ」
「は、はい!」
妖精メイドはレミリアに命ぜられるまま、他の妖精メイド達にも応援を呼びにいった。
「しかし、誰がやったのやら……ん?」
ふと部屋におかれたテーブルには一枚の紙が置いてあった。
―わたしは『The game』のGM(ゲームマスター)。
―君にはこれから、ゲームをしてもらう。推理ゲームだ。
―目的はフランドールを殺害した犯人を特定する事。
―では、君の推理力を見せてもらおう。
「お嬢様、これは」
「どうやらこのゲームマスターとやらは、私がこれを見る事を予測していたらしいな」
「その理由は?」
「進んでこの地下室に来る奴は限りなく少ないじゃない」
「ああ、確かに」
咲夜は一人納得する。
地下室に入れるのは、紅魔館の関係者だけだ。
仮にレミリア本人が読まずとも、おのずとレミリアに報告が来る。そういうことだ。
しかしレミリアは難しい顔をする。
「しかし犯人を特定しろと言われてもねぇ。死体は木っ端微塵だし、凶器らしい物も見あたらない」
「おまけに、地下室に向かう通路は一つです。妖精達に発見される可能性がありますし、よしんば通れたとしてもここの鍵を開けることは困難でしょう」
「つまり密室ってわけか」
「そうなりますね」
気に入らないな、とレミリアが言う。
「犯人と一緒にGMの正体も引っ張り出してやる」
「頑張ってください、お嬢様」
「何言ってんの。あんたも手伝うのよ、咲夜」
「えぇ?」
「嫌そうな顔をするな!」
やる気のない咲夜に渇を入れて、レミリアはフラン殺しの犯人を捜すのであった。
「ところでお嬢様。妹様が死んだというのにやけに冷静ですね」
「……唐突に木っ端微塵に死なれたって、悲しむ余裕も何も無いじゃない」
※ ※
1に比べて、ノリが違うのは仕様。
つづく
名前がありません号
作品情報
作品集:
9
投稿日時:
2009/12/22 17:55:35
更新日時:
2009/12/23 02:57:06
分類
レミリア
咲夜
紅魔館編
悲しくて泣きそう
フランの弱点を知ってるならパチェもかな
まだ1だし情報が少ない
咲夜さんがお嬢に対してクールなのは珍しいな
この話でヒントがあるとすれば、幻想郷中の人妖が集まってるあたりでは人物の限定は不可
となるとセリフから判断していくしかないな
あと、犯人には仲間がいるってのはレミリアの視点からだと分からないんだよな
あのフランちゃんがバラバラとは…どうやったんだ一体
だいたい半信半疑の「やってみる価値はありそう」で他人を殺すってのは無いだろう
偽装の自爆で生きていて、隠れていて動けない間色々思考を誘導するか、または犯人役になるのが協力者かな
自爆用のロボットを提供してくれたアリスかもしれないな
ただこの場合は犯人どころか被害者が事実上存在しない推理ゲームになるのでGMの勝利ってのがどういう事かいまいちわからんのだよな
フランちゃんが死んだ振りをしてくれる協力者側というのも考えられなくはないが、最初の手紙の時点でゲームの内容がほとんど決められている筈と考えるとやはり苦しいか