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『The game 2-2』 作者: 名前がありません号
6.
レミリアは、やる気のない咲夜を連れて廊下を歩く。
最近のフランの様子を調査する事にしようという咲夜の提案で、
とりあえず妖精メイド達に、話を聞くことにした。
「妹様の最近のご様子ですか? やけにはしゃいでおられた気がしますが」
「はしゃいでた?」
「はい。何か楽しい事でもあったようで」
「楽しいことねぇ」
「まぁ詳しくは聞いていないので……」
「妹様は最近、図書館に出入りしていたみたいですよ」
「図書館に?」
「面白い小説があるからと、定期的に借りていたみたいですよ」
「ふぅん。で、どんなの?」
「さぁ。推理小説とかだったかと。ただ、タイトルまでは……」
「妹様なら、今日は部屋に篭っていらっしゃいましたよ」
「そうなの?」
「お菓子を持っていった時も、布団に入り込んでいらっしゃいました」
「そんな様子はなかったように思うのだけど」
「ですが、私が見た限りではずっと部屋に居たと思いますが」
「妹様の部屋からは特に何も聞こえてきませんでしたよ」
「そうなの?」
「はい。仲間の妖精から妹様の異常を聞くまで、全然気付きませんでした」
「音もなくか」
「ええ、まさか妹様があんな事になっていたとは……」
「妹様に事前にパーティが始まったら呼ぶように言われていたので部屋に言ったんです。そしたら」
「あの有様だったわけか」
「はい。最初は何があったのかと思ったのですが、妹様の羽が見えて、それで」
「私の所に報告してきたわけか」
「は、はい……」
「今日はあの妖精メイド以外は、誰も来ていないと思いますよ」
「第一発見者のあの妖精ね」
「ええ。この通路には警報結界もありますから、不審者が入ってくることは出来ませんし」
「ふむ」
「犯人はどうやって部屋に侵入したんでしょうかねぇ」
妖精メイド達に一通り話を聞き、咲夜とレミリアは地下室に戻ってきた。
「咲夜」
「お嬢様」
「貴方の推理を聞かせてくれない?」
「お嬢様の推理を聞かせてくださいませ」
「「へ?」」
二人は顔を見合わせた。
7.
「何よ咲夜、ここは貴方が推理するところでしょ?」
「お嬢様、安楽椅子探偵の名を返上するには早いですよ」
レミリアはまたムスッとした。
咲夜がてっきり纏めてくれていると思っていたら、そんなことはなかった。
一方の咲夜は、自分は無関係と言わんばかりの表情だ。
「前の時だって、貴方が犯人を連れてくる手筈だったじゃない」
「お嬢様。それは天候が不安定であった為です。館の中の問題解決に私を使わないでください」
「なんでよ!」
「炊事洗濯掃除世話戦闘その他雑多な物含めて、私は多忙ですので。探偵の助手作業も含めるとボーナスを要求しますが」
「うぐ。わ、わかったわよ! 検討するわ」
「ありがとうございます」
咲夜はニコリと笑う。
くそ、こういうときは抜け目ないな。
「ではメイド妖精達の話をまとめましょう」
・妹様に何か良い事があった
・推理小説を借りる為、最近図書館に入り浸っていた
・今日は妹様は部屋を出ていない
・妹様の死を第一発見者の妖精メイドが発見するまで、他の妖精メイドは気付かなかった
・第一発見者の妖精メイドは、事前に妹様にパーティが始まったら呼ぶように言われていた
・第一発見者の妖精メイドは、羽を確認して妹様だと確認した
・誰も地下室に侵入していない
「羽だけでフランだと判断したわけか」
「まぁ殆どが肉片でしたからね。まともに残っていたのは羽だけでしたし」
「外部犯の可能性も薄い?」
「まぁ例外は居なくもありませんが、戦闘の跡も確認できませんし」
「妖精ごときにフランが始末できるはずもない」
「何か妹様に疑いの目が向きそうなのですが」
「フランの自作自演? それは……ありえそうね」
フランはレミリアに対して、いい感情はない。当然ではあるのだが。
悪戯目的でこのような事をしても、不思議ではない。
とはいえ、これはフランである疑惑であって、確証ではない。
「フランが犯人だとしても、本人は何処にいるのかしらね」
「自殺なのでは?」
「自殺なら徹底的にやるだろうさ。この館ごとふっとばすぐらいはするだろうさ」
「自殺に巻き込まれるのですか。怖いですわ」
「ともあれ、フラン一人でやるには少々手が込みすぎてるわね」
「共犯者がいると?」
「可能性は考えていいでしょう。それと一つ」
レミリアは人差し指を立てて、言う。
一体こんなポーズを何処で覚えてくるのか。
咲夜は思う。
「あの死体は一体、誰の死体なのかしら?」
8.
―――紅魔館、焼却場
妖精メイド達が、塵を廃棄する廃棄場である。
基本的に、屋外は門番隊で管理されている。
レミリアと咲夜は、美鈴に会いに来ていた。
「おや、お嬢様に咲夜さん。何か御用で?」
「こっちに死体が運ばれてきたはずだけど」
「ああ、死体ですか。まだ焼却していませんが」
「ああ、死体全部はいらないわ。羽の部分だけでいい」
そういって、美鈴が袋の中を素手で漁る。
しばらくして、フランの羽を取り出す。
「見た感じ、妹様の羽だと思いますがね。力も感じますし」
「まぁとりあえずしばらく預かるよ」
「どうぞ」
美鈴がレミリアにフランの羽を渡す。
美しい宝石の輝き。
羽は赤い血を除き、殆ど傷らしい傷もない。
「それじゃコレは借りていくわ」
「はぁ、別に構いませんが」
そういってレミリアは、美鈴から羽を取り上げる。
「それじゃ残りは焼却処分して頂戴」
「はい、わかりました」
「さくやー! 早くきなさーい!」
咲夜は美鈴に残りの処分を依頼すると、
大きい声で自身を呼ぶお嬢様の元へと1秒で到達する。
相変わらず、人間なのかよくわからないなぁ。
咲夜を見て、そう思う美鈴だった。
8.
「あ」
「どうされました、お嬢様」
「今日のパーティ参加者の名簿を最初に見るものじゃないの、普通」
「でしょうね」
「早く見に行くわよ!」
「お待ちください」
「なんでよ!」
そんなレミリアの思いつきに、咲夜はレミリアを静止する。
すると咲夜が後ろ手に持っていたものを出す。
「名簿はここにございます」
「あら、早いじゃない。時間を止めたの?」
「いいえ、お嬢様が焼却場に向かう際に、受付に目を通さなかったので念の為」
「……あ、あはは。よくやったわ、さすが助手ね」
「借りひとつとさせていただきます」
「うー……」
レミリアはとりあえず咲夜と共に、名簿を確認する。
ちなみに名簿を用意したのは、
誰が、どれだけ、ウチで馬鹿騒ぎしていたかを確認する為である。
そして当然の如く、仕返しをしてやるためだ。
とりあえず萃香に仕返しする事は確定済みである。
霊夢と飲む予定だったワインを飲んだ恨みは根強い。
「霊夢に、萃香に、西行寺と従者、パパラッチか。永遠亭からの訪問はなし。紫も欠席。忙しいのかしら」
「後は妖精達や妖怪達が、ここぞとばかりに集まってるぐらいですね」
「新入りと地底の面々も来ていないようね。なんだ、思ったより少ないじゃないか」
「そういえば魔理沙とアリスも来ていませんね。アリスはともかく、魔理沙が欠席とは珍しい」
「確かにそうねぇ……でもまぁ、魔理沙はフランには用がないしねぇ。煙たがるぐらいだし」
魔理沙は度々、フランとの弾幕ごっこに付き合わされる。
それが嫌になって犯行に及ぶとしても、魔理沙でどうにかなる相手でもない。
それ以前に、紅魔館はパチュリーの要望で、対魔理沙防衛体制が敷かれており、
どこから侵入してきても察知できるようにしてある。
つまり、彼女が犯行を行ったとしても、逃げ場はないのである。
「ますます妹様の疑惑が濃厚になりましたね」
「そうねぇ。なんかつまらないわ、咲夜。これじゃ一時間と持たないわ」
「まぁそんなものじゃないですか。調べごとに関してはアマチュアな私達には丁度良いかと」
「じゃあ、フランが犯人でいいのかしら。うーん、でも……」
「でも?」
「誰に、誰が犯人だと報告すればいいのかしらね?」
「そういえば、そうですね。直接出てきてくれれば、有難いのですが」
そう、仮にフランが犯人だと特定したとしても、
それを伝えるべき者ないし、伝達方法が無い。
稚拙というか、準備が足りていない。
「妹様が犯人なのは確かですね。妹様殺しの犯人は」
「まぁ物的証拠はこの羽ぐらいだが、他の犯人が居るとも思えない」
そういって、レミリアは宝石のついた羽を取る。
僅かに残る魔力はフランのものだ。
そして、その羽は灰になる事無く存在している。
つまり、フランは生きているという証明でもある。
しかし、咲夜もレミリアも腑に落ちない。
「そもどうやって、誰にも見られずに部屋を出たんだ?」
「確かに。地下室は壁抜けできませんしねぇ」
「うーん」
吸血鬼は壁抜けができる。
とはいえ、八雲紫のスキマのように何処へでも行ける訳ではなく、
ただ単に壁を抜けるだけなのである。
そして地下室と接しているのは、地下室のある通路だけ。
それ以外は全て土だ。
よって、壁抜けしたところで誰にも見られずに地下室からは出られないのだ。
「せめて、何か抜け道でも作れればな」
「といいますと?」
「そうだな、例えば転移用の魔方陣とか」
「そんなものなかったじゃないですか。部屋中血塗れで……」
「……咲夜」
「お嬢様」
二人は顔を見合わせる。
同じ事を思いついたようだ。
「もう一度、地下室に行くわよ」
9.
レミリアと咲夜は再び、地下室に戻っていた。
扉の前には妖精メイド達が居た。
「あー、待ちなさい」
「はい?」
「掃除は後にして。ちょっと調べることがある」
「はぁ」
そういって、妖精達を退かせるとレミリアと咲夜は部屋に入る。
「パーティ中とはいえ、掃除に来たのは今しがたのようですわね」
「今回は咎めてやるな。あやうく大事な証拠が消えるところだったんだからな」
「しかし血で書いた魔方陣を、血で隠すとは考えましたね」
「血そのものを結界にしているんだろう。共犯者がいるな、これは」
レミリアはそういうと、自分の手首を爪で傷つけて、血を床に垂らす。
すると、床の血痕がみるみる内にレミリアに吸い取られていき、
床に、隠された魔方陣が浮かび上がってくる。
「さて、行きましょう。多分、この先にフランが居るはずよ」
「わかりました。さて、妹様のお遊びもこれまでですね」
「何言ってるのよ」
「はい?」
「まだ共犯者を捕まえていないわ」
「いえ、ですから妹様に聞けばよろしいのでは?」
「それは、なんか、面白くない、じゃない」
「はぁ」
やれやれといった表情をする咲夜の顔を見ないまま、レミリアと咲夜は魔方陣の上に立つ。
赤い光に包まれて、転移した先は地下の図書館であった。
「しかし捜査らしい捜査も、探偵っぽい推理もまるでありませんね」
「おかしいわね。私の読んだ漫画だと、こう、急にひらめいたりするもんなんだけど」
「お嬢様。せめて推理小説ぐらい読んでください」
※ ※
え、何、続くの、嘘。
名前がありません号
作品情報
作品集:
9
投稿日時:
2009/12/25 17:53:28
更新日時:
2009/12/26 03:01:14
分類
推理?
なにそれおいしいの?
推理物を書いていたはずだがそんなことはなかった
さぁいったい誰か…?
「黒い仏」っていう小説思い出したw、あれは途中からああなるけど。