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『The game 2-3』 作者: 名前がありません号
10.
地下室の図書館は相変わらず、埃っぽい。
黴でも生えてそうなぐらいだが、魔導書を保護する魔法が掛けられているため、
本は保護されている。本は。
「どうにもここは好きになれませんわ」
「まぁ人間には辛いだろうな」
図書館は地下室ゆえ、空調も悪い。
腐敗を進めない為に
レミリアはさほど気に留めないが、人間には堪える空間だろう。
まぁこの図書館の住人ですら、喘息が悪化する始末なので何ともいえない。
「自分の健康より、知識を選ぶ辺り、本の虫ですよね。パチュリー様は」
「パチェはもとより、図書館に興味があってやってきたようなもんだからな」
「しかしこの場所は、見たことがないのですが」
「ああ、咲夜は入ったことがなかったね」
そういってレミリアは赤いランプの点る、狭い部屋の中でこういった。
「ここは禁書庫なのよ」
11.
「禁書庫?」
「ええ。特に危険な書物だけを隔離する場所」
「危険なのではないですか?」
「安心しなよ。下手に触れなきゃ死にはしない」
「なんと危険な場所なんでしょう」
だから禁書庫なんだろ、とはレミリアは突っ込まなかった。
しばらく歩いていると、人影が見える。
フランドールだ。
何か本を読んでいる。
「あら、お姉さま。早かったわね」
「こんばんはフラン。自作自演の殺人犯とは面白いアプローチだわ」
「あぁ、それ? これを読んで思いついたの」
そういうと、フランがレミリアと咲夜に見せる。
外の世界の推理小説で、犯人が自分を死んだように見せかけていた類の文が書かれている。
「フォーオブアカインドもこういう使い道が出来るのね」
「大した使い道だな。お前の思いつきか」
「それは秘密よ、お姉さま」
へらへら笑いながら、フランがレミリアに言う。
人差し指を口に持っていく仕草は、わが妹ながらかわいい。
「お嬢様、近親相姦はどうかと」
「何を言ってるのよ、咲夜。どこからその発想が起こるの?」
「いえ、余りにも熱っぽい視線で妹様を見ているので」
「やだ、お姉さま、私をレイプしようとするなんて」
顔を手で覆いながら、頭を横にふるふる振っている。
かわいいのだが、誤解を解いておかなければとレミリア。
「妹の成長を喜んでるだけよ!」
「そうかしら? ああ、私、お姉さまに純潔を」
「ややこしくなるからやめなさい!」
ベシンッとフランの顔をひっぱたく。
普通の子供なら泣きそうだが、フランも私も普通じゃないので問題ない。
「いたい、いたいわ、おねえさま!」
「とりあえずフラン殺しの犯人はフラン、貴方でいいのね」
「うー、いいよ。それで。間違いはないし。ついでにGMも私だよ」
「共犯者は誰でしょうか、妹様」
「へ? 共犯者なんて居ないよ。魔法は習ったけど」
「え?」
「転移魔法はパチュリーから習ったよ。よく出来てたでしょ?」
「つまり一人だったと」
「そうよ?」
そういって、フランは小説の続きを読む。
「アテが外れたわね。ところで出口何処?」
「そこだよ。でも出られないんじゃない?」
「へ?」
「だってその扉、きゅっとできないし」
そういって、フランは扉を指差す。
レミリアは扉を開けようとするが、開かない。
「うー! なんで開かないのよ」
レミリアの怪力を持ってしても、開かない扉。
どんなに押しても、まるで開く気配がない。
「だから言ったでしょ。開かないって」
「うー! どんな結界を使ったのよ!」
ゲシッと、扉を蹴るレミリア。
しかし蹴った後に、痛かったのか足を抑える。
フランは「お姉さまかわいい」と言いながら、小説を読んでいる。
咲夜が扉を引いて開けた時のレミリアとフランのほうけた顔を咲夜は目に焼き付けておいた。
12.
「かわいいお顔でした、お嬢様」
「忘れろ。忘れるんだ咲夜」
「さぁ、どうしましょうか」
「うー……」
レミリアは咲夜にいいように遊ばれながら、
詰まらなさそうな顔をしていた。
「フランは犯人だと自白した。GMもフランだった」
「とりあえずこれで収束という事ですわね」
「つまらない、つまらないわ。咲夜。本当に一時間も持たなかったじゃない」
「そう我が侭を仰られても」
咲夜は、うーうー唸るレミリアを嗜めつつ、
図書館を出ると、メイド妖精達が何かを喋っている。
すると萃香と共に客間の一つに入っていく小悪魔が見えた。
ただそれだけの事だったのだが、
咲夜は何故か、とても気になった。
「お嬢様、用事が出来ましたので、失礼させて頂きます」
「ん? ああ、勝手に行って来な。あ、でも」
「後始末はしっかりね?」
13.
―紅魔館 とある一室
「うぅ〜……」
「大丈夫ですか、萃香さん」
「うん、大丈夫」
小悪魔は、萃香の体調不良に気付くと、
パーティ会場から紅魔館の客間の一室に連れて来ていた。
「まさか、酔いつぶれるなんて……鬼の恥だよ」
「まぁまぁ、そんな日もありますよ。はい、お水です」
「あー、ありがと」
萃香は、小悪魔から差し出された水の入ったコップをくいっ、と飲む。
ぷはぁ、という声を上げる萃香。その息はとても酒くさい。
「しかしまぁ、皆いつも以上に飲んで騒いでのいい宴会だった。このところは中々機会がなかったからさ」
「そうらしいですね。私はパチュリー様の使い魔ですので、あまり外に出る機会はありませんけど」
「ふぅん、従順なんだねぇ。関心するよ」
萃香は体調が落ち着いてきていたが、
小悪魔にもうしばらくおとなしくしてください、と言われて、とりあえず従う事にした。
もう動く事は出来るのだが、また倒れると小悪魔に迷惑が掛かるのでやめておこう。
というより、少し眠い。折角だからこのまま眠ってしまおう。
そう思うと、すんなりと萃香は眠りについた。
14.
小悪魔は萃香が眠りについたことを確認すると、
服のポケットから、液体の入った小瓶を取り出す。
あの話が本当ならば、これを飲ませれば萃香は目覚める事はない。
水に溶け込ませるには色が奇抜すぎる上、
薬の効力は封を開いてから数分以内という限られた時間しかなかった為、
こうする以外に方法はない。
小悪魔は瓶の封を切ると、瓶の液体を萃香の口に持って行こうと
バキン
「あぐっ!」
手に走る痛み。
同時に瓶が手からすべり落ち、中の液体をぶちまける。
壁を見れば、突き刺さった銀のナイフ。
扉を向けば、そこにはメイド長。
ちっ、これまでか。
小悪魔は、心の中で舌打ちをする。
「何をしようとしていたのかしら」
「はは、いやだなぁ。体調を悪くされたので介抱していたんですよ」
「あらそう、随分奇抜な色をしてるのね、それ」
「見た目はアレですけど効果は抜群ですよ」
「逆に永遠に目覚めなかったりするのかしら?」
「は、はは。まさか、そんな事は」
「それはともかく」
小悪魔はごくりと息を呑む。
「実はこんな物が貴方の部屋から見つかったのよね」
そういって咲夜はポケットに入れていた紙を取り出す。
咲夜はそれが「The gameの参加資格を取得しました」と読むと、
小悪魔は汗をタラリと流す。
「な、なんでしょうそれ」
「とぼけなくていいわよ。ここには貴方のやろうとしている事の全てが書かれているわ」
「く、くそっ」
小悪魔の、その瞬間の行動は実に早かった。
悪魔の身体能力を最大限に生かし、
クナイを取り出し、咲夜の首を掻き切ろうとする。
しかしそれ以上に、咲夜は小悪魔の手を掴み、
簡単に捻り上げる。
「あがががが! そ、そんな、たかが人間に」
「ああ、やっぱり貴方もそう思ってるのね」
「ぐぎぎぎぎg!!!1」
咲夜よりも身体能力に優れる小悪魔だったが、
こと人の姿をした相手とは、戦い慣れている咲夜には、
組し易い相手だった。
「ごり押しするなら、それこそ圧倒的な差をつけなければ無理ですわ」
「うぎぎ」
「教えなさい。誰の指図?」
「指図? 知らないわよ! あんたの紙に書かれていたでしょ? 送ってきた奴は知らないわよ」
「へぇ、そうなのね。でも、それでよく願いを一つ叶えるなんて言葉、信じたわね」
「分からないわよ! あの言葉を見たら、いてもたっても居られなくなったのよ」
「ふぅん。チャームの類かしら?」
「だから分からないって! 痛い痛い!」
流石に悪魔でも、腕を締め上げられるのは痛いらしい。
「理由はどうあれ、今の彼女は客人としてもてなしているわ。それに危害を加えるなら貴方は排除しなければならないわね」
「うぐぐ」
「まぁ処遇はパチュリー様に任せましょう。きっと素晴らしいお仕置きを提案される事になりますので、お覚悟ください」
「ひぎぃ」
小悪魔はパチュリーの拷問じみたお仕置きを想像して、気絶した。
15.
「失礼します。お嬢様」
「ああ、お疲れ様。後始末は終わったかい」
「あとはパチュリー様に一任しましょう。要らぬ手間を増やすのは面倒ですわ」
「あっそう。まぁ別にいいけど」
レミリアは咲夜の後始末の報告を聞き終えて、紅茶に口をつける。
「小悪魔は手紙の送り主の通りに、今回の計画を実行したようですわ」
「私のワインに薬を仕込んで、萃香を弱らせて、さらに薬で永遠の眠りとは随分と陰険だな」
「パチュリー様に手紙を鑑定してもらったところ、誘惑の魔法がかけられていたようです」
「ふむ、結局黒幕には辿り着けないってわけか。くたびれもうけね」
「まぁ、そういうのは専門家に任せればよろしいかと」
「事件にならなきゃ動かない専門家に用はないわ」
はぁ、とレミリアは溜息をつく。
久々に面白い事になるかと思えば、この有様だ。
後で聞いた話だが、フランのところに届いた手紙にも願いが叶うという文面が書かれていたが、
小悪魔のように操られなかったのは、フランが強すぎた為だろうという事らしい。
「ふぅむ。咲夜」
「なんでしょうか」
「この招待状を送りつけてきた奴を特定するんだ。方法と時間は問わないよ」
「お断りします」
「それでこそ咲夜……ってそこは、普通に承諾しろよ!」
「嫌です」
「お願いだから、受けてよ咲夜!」
「いいえ」
「お願いよ、咲夜!」
結局、レミリアが上目遣いで咲夜にお願いした辺りでようやく咲夜が折れた。
レミリアは何か大切な物を失った気をしながら、一人自室で考える。
その手には、「The game」の招待状。
「ゲーム、か。ふん。“お遊び”で済むものかね」
レミリアの脳裏に浮かぶ、ある運命。
漠然としたものであるが、もし招待者の目的がそうであるならば、
随分と大きな事を考えるものだ。と、レミリアは思う。
招待状をぐしゃりと握りつぶしながら、気にいらないといった表情で、
紅茶を飲み干して、空を見る。
相変わらずの真っ黒な、雨を降らせそうな雲が空を覆っていた。
―幽かな声
所詮、小悪魔じゃこれまでか。
やはりある程度以上の妖怪をコントロールする事は不可能か。
もう少しデータを取って、修正しましょう。
次は彼女を招待しましょうか。
いいデータが取れることを期待しましょう。
※ ※
消化不良なED。
もうちょっと突っ込んだ話を書くべきかの。
とりあえず、短編書きたくなったから、短編書くお。
名前がありません号
作品情報
作品集:
9
投稿日時:
2009/12/31 16:49:07
更新日時:
2010/01/01 01:49:07
分類
犯人は○○○
消化不良のまま3へ続く
今回は黒幕ってわけでもないけど