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『東方落語【寿限無】』 作者: ぐう
親の子に対する情愛というものはたいへんなもので、どんな方であろうとも、わが子のこととなると夢中にさわぐものです。
これはお空が産まれる少し前のお話です・・・
父「はやく産まれてくれんもんかいな、これで来月になると、俺もふところ都合が悪いもんでよ・・・」
母「そうは言ってもねぇ、思い通りにはいかないよ。それよりも赤ちゃんが産まれればお金がたくさんいるんだから、しっかりやりくりしてよ」
父「それなら問題ねぇ、ちゃんと倹約してるんだ。昨日だって、仕事の帰りに八つ目鰻の屋台に飛び込むのをこらえたんだからよ」
母「えらいねぇ、産まれる子のことを考えてるじゃない」
父「そのかわりにおでんのゆで卵を食ってきた」
母「おまえさん、それじゃあ変わりゃしないよ」
さてさて、月満ちて日が昇り、ついに産まれおちましたのがなんともかわいらしい女の子ですから、ご両親の喜びもさぞ大きいことでしょう。
それから一週間後のことです。その女の子は「うにゅー!うにゅー!」と元気な泣き声を上げております。
そこへおかみさんが旦那に声をかけました。
母「おまえさん、今日はこの子の七夜(しちや)だよ」
父「おおそうか、もう産まれて七日になるんだな」
母「そうだよ。で、今日はこの子に名前をつける日なんだが、おまえさん考えてあるのかい?」
父「それがなかなか決まんねぇんだよ。おっ、今日は空がいい天気じゃねぇか、御天等さんも見守ってくれてるかもな」
母「そうだね」
父「ん、そうだ。空にちなんでうつほってのはどうでい?」
母「お前さんよくそんな難しい読みかた知ってるねぇ、正直由来なんて知らんのんじゃないかい?」
父「まぁ気にすんな、作者自身が由来知らないんだからよ。でも、これだけでパッと決めるのもなぁ・・・」
母「そうかい?あたしゃいい名前だと思うんだがね」
父「いや、なんなら今から命蓮寺に行っていい名前がほかにないか聞いてみてくら」
母「確かにものは逆が順に帰る、凶は吉に帰るなんていうから、それもいいかもしれないね」
父「じゃあ、ちぃとばかし行ってくるぜ」
そう言って家を出た地獄鴉の旦那さん。空を飛び、やってきたのは命蓮寺でございます。
父「あの尼さんなら、なんかいい知恵貸してくれるかもな」
一「はい、どなたですか?あら、地獄鴉の旦那様、今日は如何なされました?」
父「ちと聖の尼さんに用があってな、通してもらえねぇか?」
一「そうですか、ではこちらへ・・・」
聖「これは地獄鴉の旦那様、今日は何かご用で?」
父「早い話、うちの子が生まれなすったんです。で、今日で七日になるんで・・・」
聖「なるほど、七夜って訳ですね。それでもしや、名前の相談に?」
父「さすが聖の尼さん、話がわかるねぇ。で、あっしが考えたのが、空にちなんでうつほってつけたんですが、どうもこれだけで決めるのはちとどうかと思いましてな」
聖「うつほ・・・私はなかなかいい名前だと思いますよ」
父「でも、参考までに尼さんにいい知恵もらおうかと思いましてね、縁起のいい名前とかなんかないでしょうか?」
聖「ならば、経文(きょうもん)のなかにいくらかめでたい文字があるので、それを上げてみましょう」
父「お願い申します」
聖「では、寿限無(じゅげむ)というのはいかがですか?」
父「寿限無とは?」
聖「寿限(よわい)り無しと書きまして、つまり死ぬときがないということです」
父「そりゃあいいですな、他にはありますか?」
聖「五劫(ごこう)のすりきれというのは?」
父「五劫?すりきれ?」
聖「一劫というのは、三千年に一度、天人が天くだって、下界の巌(いわ)を衣でなでるのですが、その巌をなでつくしてすりきれてなくなってしまうのを一劫といいます。それが五回も、つまり何万何億年と数えつくせないことをいいます」
父「ひえー・・・気が遠くなる話だな」
聖「海砂利水魚(かいじゃりすいぎょ)というのはどうです?」
父「なんです、それは?」
聖「海砂利とは、海の砂利。水魚とは、水に棲む魚。いずれも取りつくすことのできないという言葉です」
父「なるほど」
聖「水行末(すいぎょうまつ)、雲来末(うんらいまつ)、風来末(ふうらいまつ)などというものがありますが」
父「なんですい、それは?」
聖「水行末は、水の行く末。雲来末は、雲の行く末。風来末は、風の行く末。いずれも果てしないことをいいます」
父「経文ってすげぇな、他は?」
聖「人間に限ったことではありませんが、衣食住のうち、一つでも欠けたら生きていけない。その意味で食う寝るところに住むところ、というのが」
父「へー」
聖「やぶらのこうじのぶらこうじ、というのは?」
父「やぶこうじという木なら聞いたことありますが」
聖「そう、その木のことです。それはとても丈夫で、春は若葉を生じ、夏は花を咲かせ、秋は実を結び、冬は赤い色をそえて霜をしのぐめでたい木なんです」
父「そんな縁起ものだったのか」
聖「パイポパイポ、パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナというものがあります」
父「なんですか、その呪文みたいなのは?」
聖「これは外の世界に昔、唐土(もろこし)にパイポという国がありまして、シューリンガンという王様とグーリンダイという王后様の間に生まれたのが、ポンポコピーとポンポコナという二人のお姫様で、そのお二人がたいへん長生きされたいわれがあるんです」
父「なんだ、人の名前だったんですかい」
聖「天長地久という文字で、読んでも書いてもめでたい結構な字があります。それをとって長久命というのはいかがです?」
父「いいですな」
聖「それに、長く助けるという意味で、長助なんてのもいいですね」
父「ふむふむ」
父「じゃあすいませんが、最初から全部書いてくれませんかね。あっしの頭じゃ覚えられやしねぇ」
聖「では、いま書いてしんぜよう・・・さぁ、この中からいいのを見つけてみてください」
父「こらありがとうございます。えーっと、寿無限寿限無、五劫のすりきれ、海砂利水魚の水行末、雲来末、風来末、食う寝るところに住むところ、やぶらのこうじのぶらこうじ、パイポパイポ、パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナの長久命の長助か。こうして並べと、みんな言い名前ですね。そうだ、いっそみんなつけて、その後に空とつけますわ」
聖「それはいくらなんでも長くて始末が悪いですよ。せめてどれか一つとあなたのお考えになった名前をあわせてみては・・・」
父「いえいえ、かまいません。どうもありがとうございました」
聖「あっ・・・!」
旦那さんは命蓮寺を出ると、うちへと飛んで帰りました。おかみさんにそれを伝えると、おかみさんも縁起がいいとその名前に賛成したそうです。普通は反対するものですが、はてさて・・・
そのばかばかしく長い名前が幻想郷で評判でして・・・
雀「ちょいと地獄鴉の奥さん、ごめんくださいよ」
母「あら、夜雀の奥さん、おいでなすって。何かご用でも?」
雀「べつに用ってわけじゃないけど、娘さんの名前がなかなか覚えられなくって、もう一度教えてもらえないですか?」
母「ああ、それならかまいませんよ。えーと・・・寿限無寿限無、五劫のすりきれ、海砂利水魚の水行末、雲来末、風来末、食う寝るところに住むところ、やぶらのこうじのぶらこうじ、パイポパイポ、パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナの長久命の長助の空(うつほ)。いいですかい?」
雀「ああ、あたしゃパイポの後がなかなか覚えられなくてね。おかげで覚えられましたよ」
この名前が性にあいましたものか、病気らしい病気もせずに育ちまして、地霊殿にて働くようになりました。とはいえ、勉学の為寺子屋へと通う身、朝、近所の子どもたちが迎えにやってきます。
大「おはようございます。寿限無寿限無、五劫のすりきれ、海砂利水魚の水行末、雲来末、風来末、食う寝るところに住むところ、やぶらのこうじのぶらこうじ、パイポパイポ、パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナの長久命の長助の空さんはいますか?」
さ「これは大妖精さん、そういえば寺子屋に行く時間でしたね。お燐、うちの寿限無寿限無、五劫のすりきれ、やぶらのこうじのぶらこうじ、パイポパイポ、パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナの長久命の長助のお空を起こしてきて!」
燐「はい!ちょっと寿限無寿限無、五劫のすりきれ、海砂利水魚の水行末、雲来末、風来末、食う寝るところに住むところ、やぶらのこうじのぶらこうじ、パイポパイポ、パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナの長久命の長助のお空、あんた寺子屋に行く時間でしょ。いいかげん起きなさい!」
空「うにゅうう・・・あと5分・・・」
チ「大ちゃーん!あたいたちも遅刻するよー!」
大「ごめんなさい、私たち先に行きます。チルノちゃん待ってよー!」
さて、この子なのですが、寺子屋の授業の成績が悪く、いつもテストで赤点を取ってきます。それを見かねた寺子屋の先生がある日、地霊殿を訪ねてきました。
慧「ごめんください」
さ「あら、寿限無寿限無、五劫のすりきれ、海砂利水魚の水行末、雲来末、風来末、食う寝るところに住むところ、やぶらのこうじのぶらこうじ、パイポパイポ、パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナの長久命の長助のお空が通っている寺子屋の先生、今日はどうされたのですか?」
慧「ええ、その寿限無寿限無、五劫のすりきれ、海砂利水魚の水行末、雲来末、風来末、食う寝るところに住むところ、やぶらのこうじのぶらこうじ、パイポパイポ、パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポk・・・いたっ!」
さ「先生?」
慧「いつつ・・・あんまり名前が長いから、舌かんでしまいました」
おわり
歴史が苦手なくせに古典は得意な私です。落語が好きなので、そのうちの一つ「寿限無」を東方風にしてみました。
いくら縁起がいいとはいえ、こんな長い名前はさすがに私は勘弁www
参考文献:古典落語(下) 興津要(編者です) 講談社文庫 S47.7.15発行
ぐう
- 作品情報
- 作品集:
- 10
- 投稿日時:
- 2010/01/10 08:32:57
- 更新日時:
- 2010/01/10 18:42:07
- 分類
- 落語
- 霊烏路空
- お空の両親(オリキャラ)
- 聖白蓮
- 古明地さとり
- 上白沢慧音
- うらんふさんリスペクト
木質さん・・・久々に言ってみたら、けーねと同じところで詰まりましたwww
名無し(3)さん・・・どんなんでしたっけ?ちと忘れました
どっかのメンヘラさん・・・私はこの文献で暗記です。ちなみに親父が昔から持ってた本だったので(発行年)
落語大好きな私がまいりました。いつも車の中ではBGMがわりに落語聴いています♪
じゅげむはいいですよねー
私が好きなのは、たんこぶがいつの間にか治ってしまうバージョンのサゲです☆