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『幸せな夢』 作者: johnnytirst

幸せな夢

作品集: 10 投稿日時: 2010/01/11 18:53:10 更新日時: 2010/01/12 03:53:10
――――――水橋パルスィが消えた…




その噂を彼女が耳にしたのはなじみの居酒屋であった。

「………どういうことだ?」

額に赤い一本角を生やし男勝りな風貌の女性、星熊勇義が赤い杯を顔の前に持ち杯越しに店主を睨むように聞き返す。
この迫力に圧倒されたのか店主は勇義から目をそらし落ちつかない様子で答える

「さ、さぁ…なにぶん風のうわさなんでね…、定かではないんですが」

「私はつい五日前あの橋に行って彼女と杯を交わしたんだ…その間に消えたってのかい?」

「はぁ、まあいつもあの橋を通ってくるなじみの客がそんなことを言ってましてね。まぁそのお客はあまり信用なりませんでね、さらに酔っていたのでなおさら……と、噂をすればなんとやら」

店主がそういって店の玄関へ目をむける。
のれんに手をかけながら薄緑の汚れた野良着に身を包んだ男が入ってきて勇義の隣に座った。

「親父、酒を」

「また昼酒かい?言い御身分だね…いい加減つけ払ってもらわんと」

「かてぇこと言うなよ………同じ地底に追われた仲じゃねぇかよ」

店主はため息をつきながら酒の用意を始める…
男はすでに別の場所で飲んできているのか酒臭く、顔が赤くなってへらへらと笑っている。
やがて酒が出されると、お猪口に酒を注ぎながらへらへらと話を始めた。

「それにしても、ホントにあの橋姫…最近てんで見ねぇな…試しに奴の家の近くまでいってみたんだが気配すらなくてな…」

「橋姫」という言葉を聞いた勇義はその男へ顔を向ける…
男はそんなことを気にもせずに話を続ける…

「まぁ居なくなったら居なくなったで俺には関係ねぇけどな…むしろあの妬み屋が居なくなった方がいい奴はいっぱいいんじゃねえのか?ははっ…まあ外面はきれいかもしれねぇけどよ、ありゃ中身はドブだぜドブあの川もドブだ、我ながらここまでうめぇたとえはねぇな…はっ。ああそうだ、話によるとあいつにお熱の鬼がいるって話じゃねぇか、どこのどいつかしらねぇが世の中にはドブが好きな奴もいるんだなっ。」

話を聞きている店主は半ばあきらめたように夜の仕込みをしている。この様子を男はこの店主が話を聞く気がないととり、つれねぇなと言いながら話し相手を探し横を見る、すると男の視界に目をつぶって杯を傾ける勇義が入った。

(女じゃねえか、しかもかなりの上玉だぜ)

「なぁ、姉ちゃん鬼みたいだが、橋姫いやドブ姫が大好きな鬼の話しらないか?」

「しらないねぇ…」

勇義が相変わらず目をつむり杯を傾けながら答える。

「なんか、話くらいはしらねぇのか?、ドブみたいな鬼だろ?どうせ、ドブ姫にドブ鬼、お似合いぃ…」

男がそこまでいったとき男の視界が宙に浮いた、と同時に首に強い痛みを感じる、飲みすぎたか?何が起きた?そう思い男が辺りを見回すと、さっきまで横に居た女が自分の首をつかみしめあげている…
てめぇ……
と言いかけた時、さらに首の痛みが強くなった、

「あがぁ…ぁ…はぁ…あ…」

首を締めあげられ声を発することすらできない。男は店主へと助けを求めるために視線を送る…
しかし店主はそんなことをまったく気にせず相変わらず仕込みの準備を続けている。
男の頭をよぎったのは絶望の二文字…
不意に勇義が男へ語りかける。

「あの子やあんたたちは地上を追われてここに来た…さらに、あんたらみたいのがあの子をここからも追い出して、その挙句まだそうやって悪態をついてるのかい?…私から見れば、地上の奴らとやってること変わらないね。まぁ追い出したくらいじゃあんたを殺しやしないがね…」

勇義がさらに男の首を締めあげる…

「でもあんたはその話をする場所を間違えたよ。冥土の土産におしえてあげるさ………………ドブ姫が好きなドブ鬼ってのは」

勇義がさらに力を込める


「私さね」


直後、鈍い音ともに男の首があらぬ方向に曲がる。
勇義は男の死体を放す。

「悪いね、おやっさん。この男の付けの分後で払うから」

「いえいえ、後はこっちでやっておきますよ」

店主はにこやかに答える。その笑顔に軽く手をあげて答えると勇義はさっそうと居酒屋を出た…。

まず勇義は彼女がいなくなったことを確認するために橋の近くの彼女の家へ向かう。
ドアに鍵はかかっておらず中へは簡単に入ることができた。家具などは全てきれいに整理整頓されていて生活している様子はない。

(すると、彼女の意思で消えたのか?だとしたらなぜ…)

わからない

五日前彼女とここで杯を交わしたとき彼女はいつものように私を迎え入れてくれ、そのまま朝まで飲んだ
その時の彼女はそんな感じに見えなかった

「誰かいるの〜ぉ」

パルスィ!!いや声が幼すぎる…

「ヤマメかい?」

「あ、勇義、パルスィならいないよ、ちょっと前から」

「ああ、聞いたさ、いつ頃からいないんだ?」

「う〜ん、三日前かな…、私たちも捜してんだけどねぇ」

ヤマメがそう言って畳に座る。

「キスメちゃんにも頼んでるけど全然…」

「分かった。ありがとう、私もこれからいろいろ探してみるよ」

「うん、私も協力するよ、よろしく」

「まっかせて」

ヤマメがガッツポーズを取りながら答える

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その後、ヤマメやキスメの協力を得て、さらに勇義の呼びかけで鬼たちによる大規模な捜索が始まった。

パルスィと接点のある者、橋の近くをよく通るもの、川でよく釣りをする者等、地底中で当たれるものはすべて当たった。
張り紙や呼びかけなども行ったが一向に有力な情報が集まらない。

呼びかけに応じてくれた鬼たちも初めは、形は違えど鬼の仲間である「橋姫」を探すことに率先して協力してくれたが今はその士気は残っておらず、徐々に鬼たちの中にはあきらめのようなものが漂っていた。勇義も霞をつかむような捜索に疲弊していた。

ある時、勇義は捜索に協力してくれた鬼たちを集めた。

「みんな、すまないねぇ。これからは私一人で探すよ。これ以上、私事で迷惑はかけられない」

勇義は仲間の鬼たちへ、ため息交じりに言う…
そんな勇義に一人の若い鬼が

「顔をあげてくださいって、勇義さん…これからみんなで協力して捜索すればきっとわかりますって、がんばりましょう」

皆疲れてるはず…しかしこの若い鬼の言うことに誰も反論しない。それどころか若い鬼に賛同し勇義を励ます声すらも上がった。

「ホントに、すまない…」

仲間の励ましが痛い…

勇義の視界が濡れてゆがむ。
仲間に迷惑を押し通す力の無い自分への情けなさ、大切な人を見つけられない無力さ。
そんな思いが、堰を切ったように涙をどんどん溢れさせる。

(仲間に、涙なぞ見せられるか…)

仲間に見えないように涙を流しながらも、それでも懸命に涙声になるのを必死に抑えやっと声を絞り出す。

「すまない……みんなほんと…に」

勇義はうつむき、それ以上なにもじゃべれなかった

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その後も、鬼たちやヤマメ、キスメも懸命に捜索したが全く有力な情報はない。

勇義もほとんど寝ることなく、また鬼にとって命ともいえる酒もほとんど飲まずに捜索した。

その日の夜、勇義はヤマメやキスメとの調査報告のために橋の近くの岩場に来ていた

「んで、またみてみたんだけど全然見当たらなかったよ。私の糸もいろんなところに張りめぐらしてるけどそれも反応しない、妖精にもいろいろ聞いてみたけど全然、ね?キスメちゃん?」

キスメが桶の中で頷く。

「そうかい。ありがとうね。2人とも、ほんとに、お礼って言ってもこんなのしかないけど、いるかい?」

そう言って勇義は旧都で買ってきたお菓子、外からの流れ品でジャガイモを薄くスライスしてを揚げたものようだ。以前食したことはあるがあまり日本酒のつまみには合わなかった。

「あ〜ありがと〜勇義!、キスメこれ大好きなんだ」

「ありがと!ゆーぎ!」

「どういたしまして」

2人は勇義に手を振り帰っていく、ふと途中でキスメ振り返り器用に桶で跳ねながら勇義のもとへ寄ってくる。

「ゆーぎ、パルスィが見つかってもおこらないであげてね?みんな人に言えない何かをかかえてるって、ちれいでんのさとりおねぇちゃんも言ってたよ、パルスィも、もしかしたら何か、かんがえがあってこうしてるのかもしれないってわたしはおもうんだ。だからもし見つかったら、ゆーぎはいつも酔っぱらってる時みたいに抱きしめてあげて」

「ありがとう、キスメ」

キスメは笑顔で頷くとまた跳ねながらヤマメの元へと向かった。
それを見送った勇義自身も帰路につく。

(怒るわけ…ないじゃないか…)

(パルスィ…おまえさんはどうして消えちまったんだい…せめてなにか言ってからでもいいんじゃないかい?それとも私にすら打ち明けられない「何か」があるのかい?)

遠い旧都の光に手をかざす。
そして握る。
当然のことながら旧都の光はつかめない…
まるで今の自分のやっている事のようだ

「う…うぅぅ…ああぁぁぁぁ」

いままで仲間の鬼や、ヤマメ、キスメの前では見せられなかったものがあふれてきた。
誰も見ていない、いまだけ、

地面に膝をつき、無力で何もできない自分を殴るように地面をなぐり、額の赤い一角をこすりつけだたひたすらに泣いた。


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ひとしきり泣いた。

いつの間にか地面には涙で染みができていた。

何が四天王か。

愛する者一人探し出せやしない。



勇義はようやく立ち上がり、涙と土で汚れた顔を袖で簡単にふくと、とぼとぼと歩きだした…。

気がつくと橋までたどり着いていた。
足を止め、手すりに手をかけて旧都の光を映して揺れる川の流れを見つめた。

「こうやって、川を見ながらおまえさんと飲んだね」

そういえばパルスィを探し始めてからまったくと言っていいほど酒を飲んでいない…

「今は一人しかいないけど…飲もうか久しぶりに」

そう言って勇義は愛用の杯を取り出し胡坐をかく、さらにもう1個、パルスィが見つかったときに、酔いつぶしてやろうと思い、買った、大きなお猪口を取り出す

「お前さんのために買ってきたんだ、みんなと私に苦労かけさせた分、これに並々注いだのを何杯も飲んでもらうよ」

「なに一人でわけわかんないことしてんのよ?1人で飲む酒より2人で飲む酒の方がおいしいって言ったのはあんたじゃないの?」

「えっ?」

おそらくその時の自分アホみたいな顔をしていたことだろう。

「なによ?その顔?久しぶりに会った相手にそこまで無礼な顔をできるあんたの神経が妬ましいわ。まったく…」

信じられない…
いままで、つかめなかった光が目の前にある。手が届き、抱きしめられる距離に

「パルスィッッッ!!!」

「ちょっっっ、なんなのよ!?痛いわねもう酔っぱらってんの?妬ましいわねっっ!!」

パルスィが腕の中で暴れる。

放さない。

ようやくつかんだ光…死んでも放すものか。

「パルスィ…ようやく、もう放さんぞ、絶対…」

「……ごめんね。何も言わないで…」

「いいよ、お前さんも、何か事情があるんだろ?言わないでいいさ」

勇義はパルスィを開放する

「さぁ!!!!明日は、お前さんを探してくれてた鬼やヤマメやさとりたちみんなを集めて宴会だ!!!!!」

そう言って勇義は先ほど取り出した盃をとりお猪口をパルスィに差し出す。

「さて!これからはその宴会の前夜祭と行こうか?お前さんには二回…いや何回でも酔いつぶれてもらうよ!!!」

「やめてよっ!私はあんたみたいに酒豪じゃないんだから!!!」

そういいながらもパルスィの顔はけしていやそうな顔をしていない、むしろ嬉しそうでもあった。


2人は、再開を喜んでひたすら飲んだ。

勇義はパルスィがいなかった間を取り戻すように飲み続けた。積もる話を肴に…。

この時のパルスィはずっと笑っていた。

そしてふとどこか悲しみを帯びたような笑顔になり

「ごめんね……勇義…」

「なにを悲しい顔をする必要があるんだい!!!?さぁ飲もう、まだ朝には早いぞ?!」

そういって勇義は杯を傾けそのまま倒れてしまった。

久しぶりに飲んだ酒は予想以上にきつかったのかもしれない。

勇義は幸せそうな表情を浮かべている。

「パルスィ…もう放さないよ…」



このとき勇義の向かいには誰も座っていない。

ただ大きなお猪口とそれに注がれた酒が静かに波打つだけ


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 ・









――――翌朝、星熊勇義が死んだ



ヤマメとキスメがパルスィの目撃情報が入ったとのことで真っ先に知らせようと旧都に急いでるとき橋の上で発見された。

死因は凍死。

鬼がそんなことで死ぬとは到底思えないが、勇義の場合、連日の不眠不休の捜索がたたり体力がかなり衰弱していたようだ。

しかし、冷たく硬くなった表情には満面の笑みが浮かんでいた。




―――水橋パルスィの行方はいまだ知れない





勇パル物かも…。
救いはない…としたのですが…

勇義はしわせそうですね… 
本当は目覚めたら…としてもよかったんですが、勇義は自分が生き続ける限りパルスィを探し続けるというか、挫折する姿を想像できない(うまく表現できない)…

まぁこれでも十分救いはないと判断したため投稿した次第であります。

P.S
ホロサイト買ったのでこのテンションで、もこの前でけーねを中国式の射殺するSS書くかもしれません。
その時はよろしくお願いします。m(_ _)m




外来者録………

ホロサイト付M4y=ー( ゚д゚)д゚)д゚)д゚)д゚)・∵. タタタタターン









―――支援してくれた友人へ

ありがとうッッ!
後は、君の早苗に対する愛が早く文章化するのを願うばかりだよ
johnnytirst
作品情報
作品集:
10
投稿日時:
2010/01/11 18:53:10
更新日時:
2010/01/12 03:53:10
分類
勇パル
救いはないよ
支援ありがとう>友人
1. 狗走 ■2010/01/12 04:42:20
救われないね……

なんでパルスィはいなくなっちまったんだ……
2. 漬け物会長 ■2010/01/12 05:04:42
個人的にパルスィちゃんはレイプ殺人で死んで欲しい
3. soobiya ■2010/01/12 09:39:01
こっそり、地上に出てて
パル橋「お外、超楽しい!!」
とか言ってたら、きっと浮かばれない
4. 名無し ■2010/01/12 13:24:11
途中で産廃SSであることを忘れてしまった。
こういうのもいいなあ。
5. 名無し ■2010/01/12 23:26:18
果たして其れは幻影だったのか、其れとも・・・?
6. johnnytirst ■2010/01/13 00:25:03
>>狗走さん
ありがとうございます。
テーマが伝わったか正直不安だったんですが…
安心しました^^

>>漬け物会長さん
同志よ^^
勇義がないてる風景まで浮かんだ自分は…

>>soobiya
別の意味で救いのない。
それもいいですね^^

>>4
ありがとうございますm(_ _)m
帰宅途中で思いついたネタですが…。

>>5
そこは謎のままで^^;
ただテーマは「救いのない」ですので…
はたして…
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