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『再会。排泄主義者と小さな百鬼夜行』 作者: ウナル

再会。排泄主義者と小さな百鬼夜行

作品集: 10 投稿日時: 2010/01/15 11:39:33 更新日時: 2010/01/15 20:39:33
※この作品は東方Projectの二次創作作品です。

※この作品にはキャラ崩壊が含まれます。

※この作品にはスカトロ表現が含まれます。

※この作品にはオリジナルキャラクターが登場します

※以上の四つを「システム・オールグリーン」した方だけお進み下さい。







〈前回までのあらすじ〉

人間の里に住む排泄主義者の男は、伊吹萃香の協力を得て“永遠の排泄”に辿りつくことができた。

それを使い排泄主義を広めていく男と萃香。

しかし、二人はケンカ別れをし、男は地霊殿へと連れ攫われる。

地霊殿で男を待っていたのは心読む妖怪さとりの罠だった。

心を読み最高の快楽を与える“至高の浣腸”により男はさとりの前に屈した。

排泄主義者の運命やいかに!!



















◆     ◆     ◆







妖怪の山。

開けた岩場の上で、伊吹萃香は瓢箪を傾けていた。

人間の里が一望できるこの岩場は、萃香のお気に入りの場所だった。

珍しい酒が手に入った時などは、ここで一人月見酒を楽しんだものだ。

だが、今は訪れる者がいないという理由だけでそこに座っていた。





「……喜ぶと思ったのに。ばか」





もう、何度口にしたかもわからない言葉を吐く。

それが意味の無い事だとわかっていても、脳みそが下痢でもしたかのように口からあふれ出してしまう。

そして、そのたびに言葉を飲み込むように酒をあおるのだった。

酒の味などまったくわからない。

口から零れた酒を腕で拭い、萃香は人間の里を睨みつけた。





「どうせ今頃は自分の家で自慰にふけってんだろ。オカズは半獣教師? それとも早苗? いや、あいつは結構おっぱい好きだから勇儀かな?」





そこまで言って萃香は男の趣味を正確に分析できる自分が恥ずかしくなり、同時に自分の名が出ないことがやるせなくなった。

男を妖怪の山に置いてきてもう一週間。

あの辺りは守矢神社にも近いし、天狗や河童も無闇には殺さないだろうと萃香は踏んでいた。

それにあの男が萃香と共にいる事は、多くの妖怪が知るところである。

だが、それでも絶対とは言い切れなかった。

天狗の腹いせに殺されているかもしれないし、分別のつかぬ妖怪はだれかれ構わず襲いかかる。もしくは未だに妖怪の山をさまよっているかもしれない。

だが、そんな想像ができても萃香は行動を起こせずにいた。





「……今更、どんな顔しろって言うんだよ」





そう言い、萃香は瓢箪を取る。

だが、そこで異変に気付く。

瓢箪を引っくり返しても酒が出てこないのだ。





「……あちゃー。とうとう酒からも見放されたか」





憂鬱な気分になりながら、萃香は立ち上がった。

酒の無い世界。それを地獄と萃香は呼ぶ。

ため息を一つ。





「一旦、地底に帰るしかないか」







◆     ◆     ◆







萃香の持つ瓢箪『伊吹瓢』は内側に酒虫という特殊な虫の体液を塗った特別製だ。酒虫は少量の水を大量の酒に変える力がある。それを利用して、萃香は常に酒を飲み放題していたのだ。

だが、大量とは多くではあるが無限ではない。

酒虫の体液が無くなればただの瓢箪に戻ってしまう。ゆえに数年に一度は瓢箪のメンテナンスが必要なのだ。

それが実に間の悪いことに今この瞬間に来たという訳だ。



知り合いと出会う可能性があるので地底にはできるだけ戻りたくなかった萃香だが、ヤケ酒もないようでは話にならない。

案の定、勇儀と出くわし「あの人間はどうしたんだ?」と聞かれたが「なんで、いつも一緒だと思うわけ?」と返しておいた。

不機嫌そうな萃香を見て、勇儀は何を勘違いしたのか少しだけ微笑ましそうに笑った。





「これで良し、っと」





酒蔵で酒虫の体液を補充し、萃香は瓢箪を振った。

中からはたぷたぷと水音が返ってきて、伊吹瓢の機能を取り戻したと応えていた。

萃香の自宅は鬼の都でも外れの方にある一軒家だ。

だが、その地下は萃香が丹精込めて作った酒蔵になっており、さらに地下熱を利用したサウナや温泉も完備した豪華な造りをしていた。

全ては酒を美味く呑むために揃えたものだ。

だが今の萃香にはどんな美酒でも、ただのアルコール水同然だった。

自分の身体を騙すだけ呑めば、それ以上口をつける気にはならなくなっていた。





「もう寝ちゃおうかな」





やることも思いつかず、萃香は寝室の扉を開けた。

こざっぱりとした畳の部屋の押入れを開き、ふとんを敷いていく。

ため息一つ。

トイレに行き、手を洗い、もう一口酒を含んで萃香が寝室に戻ったとき、そこには一人の少女が寝ていた。





「すぅ……すぅ……」

「おお? こいし?」





雲のような髪。静脈のような管。心臓の上にはうっ血した色の第三の目。口からは「えへへ。お姉ちゃんの使用済みティッシュ〜」という寝言。

布団の中で堂々と寝ていたのは、地霊殿の古明地こいしだった。

ご丁寧にまくらはよだれでべとべとになっていた。





「うへへへ。よいではないかよいではないか」

「まったくもってよくないよ。こいし。起きてよ」

「んん……。あれ? 萃香? なんでここに?」

「それはこっちのセリフだよ。なんで私の家の寝室にいるんだい」

「あ。そっか。萃香の家に来たら、無意識にふとんの匂いを嗅ぎたくなっちゃって、そのまま寝ちゃったのか。失敗失敗。失敗酸っぱいパインアップル」





こいしは姉のさとりと同じ覚という妖怪で心を読む力を持っていたが、その力を捨て無意識を操るようになった少女だ。

それゆえに時折、このような無意識での行動を取ってしまうらしい。

その時、一緒に心も閉じたというのがもっぱらの噂。





「また地霊殿から抜け出して来たのかい? さとりに叱られるよ」

「違うんです! 悪いのは足じゃなくてこの私なんです! この子には私が命令したんです! 罰なら私が受けます! ああ、足ちゃん大丈夫だよ私がついてるよ。ああ、何をするんです! ギロチン♪ 火あぶり♪ 電気椅子♪ あっという間に、美味しく焼けたお肉だよ♪ ラーメン食べたいなあ……」

「相変わらずだねえ。悪いけど、今の私は機嫌が悪いよ。だれかれ構わず、思わず殺しちゃいたいくらいに」

「無意識で殺せるのは素人だー意識して殺せるのも素人だー。でも意識して殺せない子どもがいて無意識で殺せる玄人がいる。つまり殺す殺せないは別問題で、死ぬ死なないが問題なの? 連立方程式なの? 入学試験なの? 四年B組古明地こいしです。よろしくお願いします。入学初日に集団レイプ。痴漢に盗撮へへへ写真ばら撒くぞ。でもノーパンチラなの。だって四年生だもん。楽しみ学園生活の始まりだね。ところで、鬼いさん。良い事教えてあげようか?」

「なんだい? 良いことって?」





こいしと会話ができないのはいつもの事。

多分大したことではないだろうと思いつつ、萃香はこいしに問いかけた。

こいしは屈託のない笑みを浮かべると萃香にこう言った。





「あの人間さん。今、家にいるよ」

「……っ!!」

「そこでね。結構酷い目にあってるの。教えてあげよっか?」





萃香は無言で先を促した。

すると何が楽しいのか、こいしは笑顔で語り出した。





「えっとねえ……」







◆     ◆     ◆







男の生活はある意味天国ある意味地獄だった。

陰茎と睾丸には鈍い光を返す鎖。

許可無く勃起すれば、それが男の陰茎を締め上げる。

肛門にはアナルストッパー。

どちらも鍵付きの代物。鍵はさとり以外持っていない。

男の射精と排泄は完全に管理されていた。



排泄を管理されるというのは排泄主義者にとって最大の屈辱だ。

排泄主義者に対して出すなと言うのは、魚に対して泳ぐなと言い、鳥に飛ぶなと言うことに等しい。

だが、寺子屋に通う童女ほどのさとりに「射精したいです! うんちしたいです!」と懇願し、靴で頭を踏まれながら土下座までした時、自分はペット以下家畜以下の存在になったのだと男は理解した。





「はぁ……んぅ……く……ちゅぅ……」

「んん〜。気持ちいい〜。さとり様のお浣腸は大好きだけど、お尻が痛くなるのが難点だよね」

「う〜。お燐〜。早くしてよ〜。漏れちゃうよ〜」





白いタイルの部屋の中。

もともとは風呂場だったのだろう。排水口が取り付けられ、隣には蛇口が取り付けられている。

この小さな部屋が男の仕事場となっていた。

男は無言でお燐のお尻を舐める。

衣服は一切まとっておらず、首には皮でできた首輪が巻かれていた。

顔には黒い目隠し。口先と嗅覚に意識を向けさせるための処置だ。

その胸元にはお燐が出したと思わしき、茶色の固まり。



彼の仕事は“便器”。



使うのはお燐やお空と言ったさとりのペット達。彼女らの汚物を受け止めるのが男の仕事だった。

さとりと日常的に浣腸プレイを楽しむ二人は、肛門を痛めることが多いようで、男の舌で尻拭いをしてもらえるのは、なかなかに好評だった。

だが、男にとってはただの拷問だ。

これだけの美少女にうんちを出してもらいながら、勃起することも許されない。

もしすれば、鎖が男の陰茎と睾丸を握りつぶそうと動き出す。





「……終わりました」

「ん」





お尻のシワの一本まで綺麗にした男。

だが、お燐が礼を言う事は無い。淡々とトイレから出て、パンツをはく。

これは男の仕事であり、義務であり、機能だからだ。

そして、お燐と入れ替わるようにお空が男の上に腰を降ろす。





「あ、まだ片付けて――」

「ダメ! もう出る! 胸がダメならこっちで受けてよ!」





お燐の汚物を片付けていないことを伝えた男。

だが、お空はギリギリまでトイレを我慢するクセがある。どうも多少の尿意や便意ならすぐに忘れてしまうらしい。

胸がダメなら顔で受けろと、お空はずいと肛門を男に突き出した。

そして、ぐいぐいと男の顔に向かってお尻を擦り付けた。

否応なく女の匂いと愛物の匂いを嗅がされる。

悪意が無い分、男には辛い。

やがて、お空は眉を八の字に寄せ、一気にアナルを開放した。







「ふっ!んんっ……んんんんんんんんんんんぅぅぅぅっ……!!はぁ……っ!くぅ……んんんんんぅっ………!!」





男の顔面向かってお空のうんこが垂れ下がっていく。

お空のうんこは健康そのものだ。

茶色のうんこは固めた泥ダンゴほどの固さを持ち、次々とお空のアナルから飛び出し、男の顔面を染めていく。

その量はMサイズバナナ二本分ほどだろうか。

良く食べよく出すお空らしい。

その愛物を男の顔にぶちまけながら、お空は今日一番の満足感を得ていた。

男の顔からお空のうんちが滑り落ちる。

男はお燐と同じようにお空の肛門を舐めて清めた。





「……萃香様………ぁ」





お燐とお空のうんこを処理しながら、誰にも聞こえない声で男はつぶやいた。

かつて自分と同じ志を持ち、自分には無い力を持った少女の名。

あの時は妖怪も人間も無いと信じることができた。

排泄主義はこの世に広めることができると思えた。

何よりも萃香と共に過ごし、身体を混じ合わせ、うんこを出し合った日々はどこまでも輝いていた。

この状況に至って、思い起こすのは萃香の顔ばかり。

萃香の四肢の柔らかさを思い出しても、全て地霊殿の床と壁に塗りつぶされる。

一言だけでいい。叶うのならば萃香に思いを伝えたい。



トイレの外にいたさとりは、そんな男の心読み、不機嫌そうに眉を寄せるのだった。







◆     ◆     ◆







「他にもね。お燐の相手をして何回も射精させられたりしてたよ。お注射されて、おちんちん大きく膨らませてね。身体を縛られるの。本人は出したい出したいって言うんだけど、お姉ちゃんがおちんちんを縛っちゃったから出せないの。お燐がイクまで射精禁止なんだって。白目向いてアヒアヒ言って面白かったなー。その後、他のペットにお尻犯されてたよー。最後はお姉ちゃんがね――」

「もういいよ。そこまでだよ」





こいしの口を閉ざすように萃香は言った。

その顔は般若のごとく歪み、口の端からは鋭い牙が見えていた。

麦色の瞳はこいしを、いや、こいしの先にいる誰かを見つめていた。





「こいし」

「ん?」

「なんでそんなことを教えてくれたの?」

「お姉ちゃんを取り戻したいからかな。カナカナカナカナカナカナナナナナ。刀で打ち首獄門引き回し。最後にクリーム。さあどうぞ。……ぐすんっ」





萃香の問いかけにこいしは頬に指を当てながら答えた。

その顔はとても嘘をついているようには見えなかった。

まるで湧き水がごとき透明な瞳を萃香に向けてくる。

そして、今度は突然涙を湛えて、萃香に泣きついてきた。





「萃香ぁ。聞いてよ。最近お姉ちゃんが冷たいの。“あぶそりゅーとぜろ”なの。私のこと無視して、あの人間とばっかり遊んで。お燐やお空もだよ。あの人間が来てからずっとあの人間に構ってばっか。私と遊んでくれないの。私だってお姉ちゃん達と遊びたいのに。のにのにのにのに……。えーん! えーん!」

「あー。はいはい。だから、私に人間を連れて行ってもらおうと?」

「……うん。そうすれば再び始まるお姉ちゃんとの日々。共に苦労を過ごすことで、姉妹の愛は再びオリハルコンのように強く結ばれるの。赤い糸はミスリル製。赤い靴はチタニウム。硬化テクタイトって素敵じゃない?」





こいしの言葉を聞き、萃香は納得したと頷いた。

みずから心を閉ざしたというこいし。

信用できるのは姉と姉のペットくらいだったと聞く。

それ故にさとりへの依存心は強い。

男が現れたことによって、構ってもらえなくなったこいしは、男と萃香が何かしらの関係を持っていたとどこかで知り、邪魔な男を連れ去ってもらおうと考えたのだ。





「まったく……いい口実じゃないか………シャクだけど」

「え? なんてなんてないんてーる?」

「なんでもないよ」





萃香は一度言葉を区切り、くちびるを一文字に結んだ。

腕を組み、木目の浮かぶ天井を仰ぎ見る。

結局はどこかで折れねばならない。

そして、今折れねば男がどうなるかはわからない。

決断は二択。

助けるか。見捨てるか。





「……わかったよ。その代わりあんたにも協力してもらうよ」

「うん。あの人間を連れて行ってくれるなら、何でもいいよ。いやよいやよも好きのうち?いいよいいよも嫌いの内? ツンデレだよ! ツンデレお姉ちゃんだよ!」

「じゃあ、まずは地霊殿の構造から。それと中にいる連中で弱点とかわかるなら教えておくれ」

「いいよー。ああ、楽しみだなあ。私ね。お姉ちゃんの身体を洗うのが夢だったの。垢で汚れたお姉ちゃんの身体を丁寧に洗うの。指の間に舌を這わせて、お尻の穴をスポンジで擦って、鼻くそほじり出すの。耳掃除して、お姉ちゃんの爪垢を煎じて飲むの。やん。こいし。お姉ちゃんになっちゃう。あったま良いー!」





その光景を想像しているのか、こいしの頬は赤く染まり、両手で顔を隠している。

このままでは無意識に逃避されそうなので、萃香はこいしを揺り動かして意識を現実に戻してやった。

こいしは萃香が聞いたとおり、地霊殿の構造や中にいる妖怪の能力などを知る限り喋った。

随分と話を聞きだすのに時間を食い、気付けば夜になっていた。





「なるほどねえ。そいつは、うーん。ちょいと面倒だ」

「そうなの?」

「正面突破をしようにも敵が多すぎる。あいつが敵の手の中にある以上、時間はかけられない。その上、妖怪は面倒な奴らだらけだ」





とりわけ、さとりの能力が厄介だった。

無意識を操る故にさとりの能力が利かないこいしならともかく、他の妖怪ならば出会った時点で手の内が読まれてしまう。

さらにお燐、お空などの妖怪化したペットも十二分に脅威だ。

取り分け地獄烏のお空は山の神の力添えで、強力な熱を操ることができる。

それに男が向こうの手の中にあるのも痛い。

それは、人質にも盾にもできるということ。

さとりがどういう理由で男を攫ったのかわからない以上、最悪の場合を想定して動かなければならない。

敵を無力化し、なおかつ無事に男を連れ戻す方法。

なかなかの難題に、萃香は頭を悩ませた。





「あ。そうだそうだソーダ」

「ん? なんだいこいし?」

「んーと。あんまり役に立たないことかもしれないけど。お姉ちゃんにも苦手なものがあるよ」

「このさい何でもいいよ。聞けるだけ聞かせておくれ」

「うん。わかった。」





こいしから言ったさとりの“弱点”。

それを聞いた時、萃香の中で一つのアイデアが生まれた。

だが、それを実現させるにはまだ人手も情報も足りない。

萃香とこいしはその二つを集めるために行動を開始した。









三日月の下。萃香達は妖怪の山にいた。

そこには夜中に押しかけて、協力を仰いだ友人の鬼、星熊勇儀の姿もある。

山を流れる川。その川のほとりに立つ萃香達。

三人の間には河童の河城にとりが挟まれていた。

こいしの証言から『地霊殿は河童の手によって手が加えられている』と知った萃香が先程ふん捕まえたのだ。

萃香は近くの木に腕を突き立てた後、にこりともせずにこう言った。





「今から質問をするよ。答えなかったら殺すね。うそをついていると思っても殺す。ケツに手を突っ込んで口まで貫通させて殺す。ケツ穴拡張されたくなかったら、正直に答えること。わかった?」

「ひ、ひゅい!」





悲鳴に近い返事をして、にとりは自分の知る限りのことを喋った。

お尻の穴に拳骨を当てても証言が変わらないので、信憑性ありと萃香は判断した。





「よし……行けそうだね」

「行けそうか」

「イク? イっちゃうの? 大変。コンドーム付けないと」

「なんでさ。それに先走り液にも精子が混ざっているかもしれないから、挿れる前に付けないと。それはともかく作戦が決まったよ。あんたにも協力してもらうからね。もちろん勇儀にも」

「おっけーだよ」

「任せときな。あいつには私もまた会いたいからねえ」

「あ、あのぉ。私ははいつまでこうして……」

「うるさい。じゃあ、作戦を話すよ。いいかい? まず私が……」





川原に座り込み、打倒地霊殿について語りだす三人。

その横ではにとりがお尻丸出しの格好で放置されていた。

結局、三人の会議は一時間ほど続き、にとりはお腹の冷やしすぎで下痢になった。







◆     ◆     ◆







「お空。私ちょっと出てくるね。火力はそのままででいいよ」

「うん。わかったよ、お燐」

「10分くらいで帰るから。じゃあよろしくね」





新しい死体でも入ってきたのか、鼻歌を歌いながらお燐は猫車を押して灼熱地獄から出て行ってしまった。

帰ってくるまでわずか10分。

いくら鳥頭のお空でも、そのくらいの時間なら問題なく管理できるはずだ。

そう、何も起こらなければ。





「お空」

「んん? あ、こいし様。どうしました?」





お空の背後にこいしが立っていた。

まるで何もない空間から突然現れたかのような登場だったが、こいしが無意識で行動している間は他の人物もこいしを意識できないと知っているお空は取り立てて驚かなかった。

こいしはお燐や他の妖怪がいないことを確認すると、お空にこう言った。





「火力をもっと上げなくていいの? 今日は目一杯上げるんでしょ?」

「え? 目一杯? 火力を?」

「そうそうソウ」

「あれ? でもさっきお燐がこのままでいいって。……あれ?」

「違うでしょ。お燐はもっと火力を上げといてって言ってたよ」

「んん? んんにゅぅ?」





こいしの言葉と自分の記憶の食い違いにお空は頭をひねった。

だが、こいしの言葉を聞いているうちにだんだんとお燐は「火力を上げて」と言っていたような気がしてきた。





(あれ? お燐はそのままでいいって言ってたような?)

(本当はもっと上げてって言ってたの?)

(そうだ! 確かにお燐は火力をもっと上げてって言ってたよ!)





わずか三行で、お空の記憶は上書きされてしまった。

お空の記憶力は揮発性。

三歩歩けば忘れ、新しい記憶に上書きされていく。

お空は慌てて『お燐の言ったとおり』火力を全開まで上げるため動き出した。





「大変だ! もっと火力上げないとお燐に怒られちゃうよお!」

「そう、とにかく火力を強くするの。強く強く強く強く強く強くよくよくよくよくよ」

「わかりました! 火力を強くですね! 黒い太陽! 八咫烏様! 私に力を!! とりゃああああああああああああああああっ!!」





気合のこもった声を上げ、お空は制御棒を振り回した。

灼熱地獄の火力は一気に上がり、目の前まで火柱が上がった。

それでも満足しなかったのか、お空はひらすら火力を上げ続けた。





「くすくす。そうそう頑張ってね。お空。私とお姉ちゃんの愛のためにね」





こいしは猛烈な勢いで燃え盛る炎を見ながら、口元に笑みを作った。

そしてあらゆる者の意識の外に飛び出し、灼熱地獄を後にした。



地霊殿から真っ赤な炎が上がるのを確認した萃香と勇儀はにとりから巻き上げた発明品を使い、地霊殿へと侵入した。

彼女らの予想通り、それに気付く妖怪はいなかった。







◆     ◆     ◆







お空がこいしに言われるまま火力を上げだした頃、さとりは地霊殿の中に作られた風呂場にいた。

地霊殿では灼熱地獄の熱を利用した発電や発熱が行われている。

山の神が産業革命の一環として行っているものだ。

もともと地底には豊富な温泉が沸き出していたが、大自然こと湯が熱い日もあれば冷たい日もある。

だがこのシステムが確立してからは、安定した湯温で温泉に入ることができた。





「うぅ……染みる」





シャンプーの泡が目には入り、さとりの両目からうっすらと涙が出る。

できればさっさと終らせたかったが、地霊殿の主としてのプライドがそれを邪魔した。

無論、シャンプーハットなどもっての他だ。

側頭部の髪や耳の裏までしっかりと指を絡める。

その間、さとりはぎゅっと目をつむり続けた。

そして桶にお湯を汲み、一気に頭にかけた。





「!!!!!!! ――っ、きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」





瞬間、絶叫した。

さとりが頭を洗っている間に、湯船のお湯は煮えたぎり、ボコボコと蒸発すら始めていたのだ。





「な、な、な、一体これは!?」





考えるまでも無い。

灼熱地獄で何かがあったのだ。

そしてこんな状況になる心当たりが約一名いた。

さとりは真っ赤な身体にタオルを巻いて、お風呂場から飛び出した。









「さ、さとり様!? どうかしました!? それにその格好!! タオル一枚じゃないですか!?」

「お燐! お空はどこですか!?」

「え? いつも通り灼熱地獄にいると思うけど……。お空がまた何かしたんですか!?」





途中、死体のたっぷり詰まった猫車とさとりは出会った。

さとりの方はバスタオルを身体に巻いただけの姿だ。

それを見てお燐も緊急事態と察し、さとりの後に続く。

見れば、危険を察知したのか地霊殿のペット達が次々と逃げ出していた。





「あれ? さとり様、お燐。そんなに慌ててどうしたの?」





息を切らせながら飛び込んで来た二人を見て、お空はのうてんきな声を上げた。

すでに炎は地底の天井に届かんばかりに大きくなっている。

その炎の壁の前でお空は楽しそうに、制御棒を振っていた。





「お空! 何してるの! 早く火力を弱めて!」

「え? でもお燐が火力を強めろっていったんでしょう? 目一杯強くしろって」

「言ってないよ! 言ってないよ! 言ってないよそんなこと!!」

「うそ。確かにそう言ったもん」

「だー! かー! らー!」

「とにかく、火力を弱めなさい! お空!!」





さとりに言われ、納得いかないといった顔をしながら、お空は制御棒を振るった。

だが火力を調整しても、すでにこれだけ大きくなった火はすぐには収まらない。

猛るようない勢いで地霊殿中を照らし、天井まで届きそうだ。





「お燐! 緊急消火装置を!!」

「はい! さとり様!」





お燐は灼熱地獄の端にあるレバーに向かった。

ここ地霊殿を改築した際に、河童に取り付けてもらった装置を起動するためだ。

あのレバーを引けば周囲に設置されたスプリンクラーから水が出る。

水はタンクに溜めてあるので、渇水になっても作動する。

お燐は保護用のガラスの箱を割り、中にある赤いレバーを思いっきり下げた。



けたたましい音と共に周囲の壁からノズルが伸びてくる。

そして、その中から大量の水が放たれる。

やがて炎は水によってゆっくりと消火されていく。

そしてお空はさとりとお燐によってこってりと叱られる――――はずだった。









放水が始まった瞬間、三人の目の前が赤に染まった。









「っっつ!!?」

「きゃっ!!?」

「うにゅ!!?」





強烈な炎と爆風を受け、三人は吹き飛ばされた。

壁に後頭部をぶつけ、意識が飛びそうになるのをさとりは何とか耐え切った。

まるで爆発。

ちりちりとした熱で髪が焦がされるのをさとりは感じた。





「な、何が……」





さとりはバスタオルを押さえつつ、辺りを見回した。

辺りは急速に冷やされた蒸気によって真っ白に染まっていた。

その間にも、まるで火花のようなものがチカチカと霧の中で瞬いている。



立ち上がろうと、壁に手をつくさとり。

だが、その足の力が急速に抜けていく。

さらに胸元から込み上げる強烈な圧迫感。

全身の血が顔に昇ったように赤くなっていく。

平衡感覚は失われ、ぐらぐらと視界が揺れる。

耳に届く二人の声も、第三の目に届く心の声もどこか遠くの世界のように感じる。

これと同じものをさとりは知っていた。

幾度と経験しても慣れない嘔吐感。





「で、でもなんで……」





訳もわからず疑問をそのまま口にするさとり。

その答えは霧の中から現れた。

まるで空間から溶け出すように、青い服を着た一人の鬼が姿を現したのだ。





「やあ、古明地さとり」

「い、伊吹萃香っ!?」





叫び、さとりは口を押さえた。

その様子を見ながら、萃香は笑みを作る。





「無理しない方がいいよ。気持ち悪いんでしょ? 大声なんか出しちゃダメだよ」

「あ、貴方……っ!!」





その時、さとりは萃香の心の中を読み取った。

同時にその危険な行為に冷や汗を流す。



萃香たちの作戦はこうだった。

まず、お空を騙し灼熱地獄の火力を上げさせる。

そうすればお燐やさとりは何があったのかと灼熱地獄に集まるだろう。

すぐさまさとりはお空に炎を抑えるように言うが、一度上がった火力はすぐには下がらない。

と、なれば消火装置を作動させるのは自然な流れだ。

ここで萃香の細工が生きてくる。

消火用に溜めておいた水。そこに萃香は酒虫の体液を混ぜておいたのだ。

水は酒に変わり、ノズルから出てくるのは大量のアルコールだ。

結果、炎はアルコールに引火し爆発。だが、同時に水分も含んだそれは大量の蒸気となり、こうして辺りを包む。





「な、なんて無茶を……」

「無茶か。でも無茶を通さないといけない事態もあるもんでね。長く生きてるあんたならわかるだろう? この地霊殿を落とすつもりでかからなきゃできないこともあるんだよ。でも……」





そこまで言って萃香は笑った。

全てを見通すような笑みをさとりに向ける。

瞬間、さとりは自身の心が見通されるような怖気を感じた。





「まさかあんたがこんなに酒に弱いとはね」

「……くっ!」

「ここに充満している酒気だけで顔真っ赤だよ。私にとっちゃこんなもん、朝霧と変わらないんだけどねえ。そう言えば宴会のときもほとんど顔出さなかったね。『私がいるとみんなが嫌がる』なんて言ってたけど、本当は酒に弱いのを知られたくなかったのかい?」

「……………」

「図星みたいだね。さて、どうしようかな。あいにくと私もちょっと酔いがまわっていてね。とにかく暴れたい気分なんだ。腹を殴ってゲロを吐か――」

「「さとり様!!」」





そこに声がかかった。

それを聞き、萃香は背後を向く。

そこには爆発から立ち直ったのであろう、お燐とお空の姿があった。

二人とも殺気立った表情で萃香を睨んでいる。

だが、二人とも酒気にやられたのかどことなく顔が赤い。

特にお空はさとり程ではないにせよ、ゆらゆらと足元が千鳥足になっていた。





「おや。猫と烏のお出ましだね。でも、鬼退治には面子が足りないよ。きび団子をあげるから桃太郎を連れておととい来な」

「さとり様から離れろ!!」

「お前もフュージョンしてやろうか!!」





お燐が叫び、お空が制御棒を振るう。

それを見て、萃香は凶暴な笑みを浮かべた。

それは敵意がない事を示す笑みではない。

ただ、これから始まる合戦を楽しむだけの笑み。

拳を胸の前で合わせ、犬歯をむき出しに、首を回す。





「面白いねえ。ちょうどいい遊び相手だ。遠慮はいらないよ。二人まとめてかかってきな」

「あたいらの力を舐めてくれるなよ! いくよお空!! 死霊『食人怨霊』!!」

「あいよ!! 灼熱地獄に飲まれて死んじゃいな! 爆符『ギガフレア』!!」

「鬼は地獄のアルバイターさ。死体も炎も慣れっこってね! 疎符『六里霧中』!!」





お燐が怨霊を放ち、お空が制御棒から爆炎を撃つ。

だが、一瞬早く萃香の身体が霧に紛れ、その姿を消す。

怨霊は迷ったように壁の前で停止し、爆炎はふらついていたさとりの身体を吹き飛ばした。





「しまっ! さとり様!!」

「戦いの中よそ見かい? ぬるいねえ! 灼熱地獄が聞いて呆れる! 酔神『鬼縛りの術』!!」

「きゃっ!!」





お燐が倒れたさとりに気を取られた瞬間、周囲の霧から萃香が現れた。

同時に萃香の持つ鎖がお燐に巻き付き、その力を吸い取りつつ拘束していく。

お燐は足掻くが、鬼の力に押さえられ、さらに力を抜き取られては成す術はなかった。





「くっ!」

「おっ? まだ動けたのかい。でも足元がふらふらだよ」





吹き飛ばされたさとりは壁に手を付きながら、無理矢理立ち上がった。

ここで動かねば全てはお終いだ。

さとりはその胸の第三の目を開き、相手の心を読んだ。

一瞬にしてそれは弾幕として再現される。さとりが選んだのは――





「想起『光と闇の網目』!!」

「この光……紫の力かい!? なるほどねえ、いい選択だよ!」

「眠りの中にこそ恐怖がある! 記憶の眠りに飲まれて沈みなさい!!」





さとりは“スキマ妖怪”八雲紫の力を呼び起こした。

幻想郷でも随一の力を持つ紫の力を前には萃香もおいそれと手が出せない。

そして、それが萃香に目がけて襲い掛からんとした瞬間、さとりは頭部に衝撃を受けた。





「本能『イドの解放』♪」

「―――ッッッ!!」

「ダメだよ。お姉ちゃん。『メッ!』だよ。めめめめめめめめめめめめめめめめ。めとぬって似ているよね? めをぐるぐる回したらぬ? じゃあ、おめめをぐるぐるしたらおぬぬ?」

「こ、こいし……!?」





さとりの攻撃を妨害したのはこいしだ。

ハート型の弾幕を飛ばし、さとりの身体から自由を奪う。

こいしはハートの弾幕を飛ばしながら霧の中をぐるぐると回っている。

その顔は当然のように赤い。

だが、無意識で行動できるこいしは酔っていようと関係が無いようだ。





「お姉ちゃん! 待っててね! すぐに助けてゲルから! 開放。介抱。介抱戦線!!」

「無駄な抵抗は無駄だよ」

「――つぅ!」





さらにお空の背後から勇儀が飛び出してきた。

こちらもまるで空間から溶け出したかのようだ。

鬼相手とはいえ、お空が全力を出せれば勝負はわからなかったはずだ。

だが、この状況ではもはや逆転の目はない。

萃香たちの企みを事前に察知できなかった時点で、勝敗は決していたのだ。

さとりは自らの不覚を恥じ、くちびるを噛んだ。

腐った牛乳のような味を感じながら、さとりの意識は沈んでいく。

身体に巻かれたバスタオルが力なく落ちた。







◆     ◆     ◆







トイレの扉が開く音を聞き、男は仰向けの姿勢のまま身体を硬直させた。

この音を聞く時、行われるのは二つに一つ。

誰かが排泄するか、男を嬲るか。





「………………」

「どうぞ……お使いください」





さとりの声が聞こえないことから、男は誰かが自分を便器として使いに来たと判断した。

人間としてあるまじき言葉を吐き、男は口を開ける。

だが、男の予想した肌の感触はいつまで経っても来なかった。

代わりに来たのは男の陰茎にふれる暖かい指の感触。





「…………っ!」





それは優しい愛撫だった。

男の陰茎を上から下まで緩やかに往復し、鎖のスキマから軽く刺激を与えてくる。

亀頭をくすぐるように指で撫で、睾丸をくにくにといじる。

男は今までに無い甘い愛撫に興奮を隠せなかった。

遂に男の陰茎はむくむくと質量を増し、鎖まで届こうとしていた。

それでも男は必死に堪えようとする。

そんな男の耳に甘い誘惑の声が届いた。





「……我慢しないでいいのに」

「!!」





その声が男に届くのと、鎖が千切られるのはほぼ同時だった。

鎖から開放された陰茎は己を誇示するように、高くそびえ立った。

軽い重量が自分の腹に乗るのを感じる。

目隠しは取られた。





「萃香様!!」

「久しぶりだね。まだ生きてたの? って、うわっ……!」





萃香は自分の手の中を見た。

鎖から解き放たれた男のイチモツは白い液体を飛ばしながら、ビクビクと震えている。

萃香は白く濡れたそれを舐め取り、いつもの不敵な笑みを浮かべた。





「……いくらなんでも早すぎだろ? どれだけ溜め込んでたんだよ」

「い、いえ。萃香様の顔を見たらつい……」

「ん? 私に欲情したの? 顔見ただけでイッちゃうくらいに?」

「はい」

「………………そっか……そっかそっか」





萃香は何度か頷いた。

心なしか、その顔はいつもの意味深な笑みよりも楽しそうだった。

そんな萃香の様子を男は不思議そうに見ていた。





「萃香様。もしかして、私を心配して――」

「調子に乗るなよ。玉潰れて女の子にでもなってみる? んん〜?」

「イダダダダッ!! や、止めてください!」

「だったら、その軽い口を閉じるんだね。沈黙は美徳だよ」





男の陰茎を握り締め、萃香は男の口を無理矢理閉じさせた。

その顔は酒を呑んだときよりも赤く染まっていた。







◆     ◆     ◆







「さて、行こうかね」

「す、萃香様……せめて何か着る物を……」

「私に逆らった人間に、なんでそんなことしてやらなきゃならないのさ」

「ああっ! まだ根に持っている」





意気揚々、萃香は地底の空へと飛んだ。

その背にしがみ付く男は素っ裸のままだ。

全裸姿で小さな少女にしがみ付くのはかなりの羞恥であったが、もし力を緩めようものなら地底に真っ逆さまだ。





「そういえば、萃香様。さとりさん達は……」





その言葉に萃香は笑みを返す。

それは確かに笑顔なのだが、男にはどうしても萃香が笑っているように見えなかった。





「なに? さとりの事が気になるのかい? こんな時に?」

「……え、あ、す、萃香様?」





訳もわからず、身を引く男。

強烈な圧迫感に金玉が縮み上がる。

萃香はぷいと視線を戻してしまった。





「……ま、お前が誰をどう思おうと勝手だけどさ」

「え、萃香様? 今なんて?」

「なにも言ってないよ。耳にウジでも湧いたんじゃないのかい? とにかく、さとり達は元気だよ。五体満足。たぶん怪我もしてない。今は眠らせて私の家に招待してるよ」

「そうですか」





ほっと男が息を吐くのを、萃香はうなじに感じた。

それを受けて、萃香の眉間にシワがよる。

心臓の鼓動が不規則になるのを萃香は感じた。





「萃香様」

「喋ってると舌噛むよ」

「助けてくれてありがとうございます」

「……………別に」

「萃香様には感謝してもしきれません。今の私があるのは萃香様のおかげです」

「……くすぐったいよ」

「だから、萃香様にはいつもの萃香様のままでいて欲しいんです」

「……………」





萃香の身体に回した腕に力がこもる。

それを感じながら、萃香は男の言葉を待った。





「萃香様はいい人です」

「人じゃないよ。鬼だ。それに良くもない」

「じゃあ、いい鬼です。私に協力してくれました」

「たまたま興味がわいただけさ」

「私の夢を信じてくれました」

「馬鹿な夢だけどねえ」

「私のことを怒ってくれました」

「筋が通らないことと弱きな奴が嫌いだからさ」

「何度も身体を重ねました」

「……そうだね」

「私にはわかります。萃香様はいい鬼です」

「……さとり達を許せっての?」

「お願いします」

「散々酷い目に会わされたのに?」

「私の身体なんてどうでもいいんです」

「どうでもいいわけないだろ!!」





突然、上がった萃香の声に男は驚いて危うく腕を離してしまうところだった。





「あんたは一人しかいないよ。せっかく助かった命だ。大事にしなよ」

「す、すみません。……でも、それはさとりさん達も同じでしょう」

「そりゃそうだけど……」

「もう、怖い萃香様は見たくないんです」

「…………っ」

「お願いします」





恐らく頭を下げているのだろう。

男の前髪が萃香の首元に当たる。

それを感じながら、萃香は意地の悪い笑みを浮かべた。





「知ってるかい? 命乞いや取引を持ちかけるなら、それに見合った対価を払わないといけないんだよ? あんたは私に何をくれるんだい? あいつらの命をなんで買おうというんだい?」





その言葉に男は抱擁で答えた。

萃香の髪に顔をうずめ、耳元に囁いた。





「ずっと萃香様の側にいます」

「……っ!!!?」

「絶対に離れません」

「な、な、な」

「一生、うんこしながら暮らしましょう。萃香様」

「―――――っ、本気で言ってるのかい?」

「……今回のことで私のパートナーは萃香様以外にはいないと確信しました」

「〜〜〜〜〜〜っ!」













「萃香様のうんこを見たい。

萃香様のうんこを舐めたい。

萃香様のうんこを食べたい。

萃香様のうんこを握りたい。

萃香様のうんこに頬ずりしたい。

萃香様のうんこを塗りたい。

萃香様のうんこを陰茎にまぶして、萃香様の小さな身体を心行くまで抱きたい。

私は萃香様と居たいです」













萃香の顔が赤く染まる。

男の言わんとする意味がわかっているからだ。

随分と長い間、二人は一言も喋らなかった。

だが、やがてゆっくりと崩れるように萃香の口が動いた。





「言っとくけど、死ぬまで離さないよ? 橋姫じゃないけど、鬼は嫉妬深いんだ」

「萃香様……っ!」

「あんたがジジイになった後も、ケツに手を突っ込んでうんちを出させてやる。尿瓶を持って世話してやるからな。私も絶対離さないからな」

「――はい!!」





男と萃香は地底の空を飛ぶ。

二人の身体は酒を呑んでいないのに、ポカポカと温かかった。

まるで溶け合っているかのように。



























〈つづく〉
まずは謝罪を。すみませんでした。

前回の排泄主義者シリーズから約3ヶ月。随分と放置してしまいました。それでも最後まで読んでくれた方々、ありがとうございます。

さて、今回は排泄主義者と萃香にも色々進展があったわけですが……書いていてメチャクチャ恥かしかったです。



『何やってんだよこいつら! 何書いてんだよ作者! あーっ!全身をかきむしりたい!!』



という衝動に駆られました。こんな文章がネットの波に乗ると思うと、恥辱を通りこしてマゾヒスト的快感です。あ、やっぱ恥かしいです。

しかも、テンポを優先した結果、肝心のスカトロ部分は少なめ。これでいいのか排泄主義者。さらに酒でこんなことができるのかとつっこみを入れられそうです。

ともあれ、排泄主義者の冒険はまだ続きます。最後までお付き合いいただけると幸いです。
ウナル
http://blackmanta200.x.fc2.com/
作品情報
作品集:
10
投稿日時:
2010/01/15 11:39:33
更新日時:
2010/01/15 20:39:33
分類
排泄主義者
スカトロ
伊吹萃香
古明地さとり
古明地こいし
1. 名無し ■2010/01/15 21:27:28
うおおおおおおおお!!!

まってました。憶測ですけど、さとりん好きになってたんだろうな
2. ぐう ■2010/01/15 21:37:09
ずっと待ってました、排泄主義者シリーズの復活を

スカ作品なのになぜこんなに感動してるんだろう・・・
3. 名無し ■2010/01/15 23:13:04
キター
4. 名無し ■2010/01/16 01:06:39
お帰り!
5. 名無し ■2010/01/16 05:12:16
心を読めるが故にツライお仕置きを!たっぷりとさとりに!!

しかし酒に弱いさとりは良いな
6. 名無し ■2010/01/16 20:09:13
スリル満点だな!
この後さとりはこいしに、○○で××な事をされる可能性大。
7. 名無し ■2010/01/17 10:02:04
むしろ地霊組は「さとりの受難」に続きそうだな
8. 名無し ■2010/01/18 20:37:49
いい話だったのにラストのうんこ連発で吹いた
9. ウナル ■2010/01/18 23:51:00
久々のレス返し

1:お待たせしました! さてどうでしょう?

2:感動してもらえたならこんなに嬉しいことはありません。

3:クルー

4:ただいまです!

5:何か弱点を、と思い、お子様な弱点をつけてみました

6:こいしちゃんの愛情表現は過激です

7:本編ストーリーを進めるか、エロをしっかり書くか。それが問題だー

8:むしろ、うんこを書きたかったのです(笑)
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