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『傘の雨宿り』 作者: ドロガエル
多々良小傘は考えた。いや、考えていた。
水無月の夜にしとしとと降る霖に思考を廻らせる。
人を驚かすことに躍起になって、幾度と無く恥をかき、挙句の果てに怪我をした。
怪我をしたという事は妖怪である彼女にとっては別段、気にすべきほどの事では無かったのだが、
問題は「恥をかいた」という事である。
事の初めは山の巫女を驚かすつもりで飛び出して、
あたって砕けたうらめしや。
呆れた様のあの言葉、表は蕎麦屋と返された。
ええい、ままよ、と意気込んで、出会った夜空の散歩道
驚くどころか問答無用と返り討ち
ならばこうだと意趣返し、人間の里に行ってはみたが
花の大将に九尾の狐、おまけにスキマのぬらりひょん。
そんな妖が出入りする地で小傘のような妖怪が驚かれる訳も無く、
あわれ人間達の笑い種。
大勢の人間、小傘をぐるりと取り囲み、野次を飛ばして、礫を投げて、
小傘が倒れて蹲ると
さらに人間詰め寄って、棒で叩いて蹴飛ばして、日ごろの憂さにおさらばえ。
あの時受けた屈辱は、ばくだん岩やボム、アリスだったら堪らず爆発していただろう。
もっとも、何も無くても爆発しそうな面子ではあるが。
仕返しに、と自棄のやんぱち暴れた挙句、里の白澤に退治され、
彼女がほうほうの体で、ねぐらにしているこのあばら家に戻ったのは、今から一刻ほど前である。
「私、妖怪にむいてないのかな・・・」
よほど本日の事が堪えていたのだろうか、彼女はついポツリと呟いた。
そんな彼女の、誰に問うとも無く口にした疑問に、縁の欠けた茶碗が受ける雨漏りが、ぴちょん、と答える。
小傘はその音に、突然、茫漠とした寂しさを感じた。
その茫漠とした寂しさに、小傘に、ふとひとつの疑問が湧いた。
「私は何の為に『いる』の?」
化け傘として驚かせる為?雨傘として人と生きる為?それともゴミだと呼ばれる為?
こんな哲学的な疑問は、それこそ命蓮寺の尼僧に聴けば良い事なのだが、
小傘はそれを嫌がった。
何故なら、自分の考え浮かんだ意義は全て、人間に関係していたからだ。
驚くのも人間、傘を使うのも人間、そして其れを棄てるのもまた人間なのだ。
命蓮寺の尼僧も魔法使いとは言え、元は人間。
人間に聴くと云うのは些か滑稽な気がして、小傘はそれを嫌がっているのだ。
兎も角、自分の存在には人間が必ず関与している。
回答こそ思いつかなかったが、この自己存在の要因だけでも判明した事が、
小傘の脳内になにやらひとつの行動が思いついた。
「そうか、私が傘だからいけないんだこんな色だからいけないんだ。棄てられたからいけないんだ妖怪だからいけないんだこんな目だからいけないんだこんな所に住んでるからいけないんだ生きているからいけないんだこんな姿だからいけないんだ」
小傘はぶつぶつと言葉を紡ぎながら、自分の分身とも言える茄子色の唐傘を見つめると、
遠くで雷が鳴り、俄に雨脚が強まった。
この降り方ならば、おそらく明日は晴れるだろう。
小傘もそう思ったのかどうかは解らないが、彼女は自分の分身を、しっかと心底愛しそうに抱きしめ、
こう呟いた。
「ねえ私、私が私だからいけないんだよね」
雨脚は更に強まった。
陰鬱な雨の降る前日が嘘のような晴天の今日、小屋には茄子色の布が散らばり、黒塗りの骨だけになった唐傘が棄てられていた。
昨夜、この小屋にいたはずの唐傘お化けの少女の行方は、昨夜の雲の様に不明である。
どうも、初めて投稿しましたドロガエルと申します。
貴重な時間を使ってわざわざこんな拙い文章を読んでいただきましてありがとうございます。
さて、すみませんが、少々自己弁護させて下さい。
まず、生まれてきてごめんなさい、来世は無いように閻魔様に嘆願します。
次に、今回書いた文章は私なりの彼女への愛なのですが屈折していて判りませんよね。
ごめんなさい。
ところで、学生時代に苛められ続けて、苛めに慣れてしまった時、担任の教師から「お前は苛められるために生まれてきたのに苛めに慣れてんじゃねえよ」と言われた事があるのは私だけでしょか?
おや、あとがきが長くなりすぎました。
人間、引き際が肝心。
この辺りで失礼します。
ドロガエル
- 作品情報
- 作品集:
- 10
- 投稿日時:
- 2010/01/18 10:43:19
- 更新日時:
- 2010/01/18 19:43:19
- 分類
- 小傘
- 失踪
なにぶん初めて投稿したもので、あとがきにどのような事を書いたら良いのか分からなかったものですので。
次の機会がありましたら、今回の指摘をしっかと留意させていただきます。
それと、私は素朴な疑問であとがきに書いたまでの事で、自分語りをするつもりはありませんでした。
ご不快になられたのでしたら、お詫びします。
地の文も不思議なリズム感があって素敵でした
欲を言うならば、傘を引き裂くシーンや人間にいじめられるシーンも欲しかったかなあ
ナイス小傘
物語の切り口って人それぞれなんだなー と今更ながらに。
“自信の無いものを人に見せるな” …ちょうど今日、ある人に言われた言葉です。
ビシッとしろ、あやまんな。ここは産廃、ラストリゾート。
荒らしじゃなけりゃあ、拒みゃあしない(と、信じたい)!
うんっ、自信もって!!
大丈夫、私も同類なので貴方が小傘ちゃんを愛してるのは痛いほどよく分る
産廃は(荒らし以外)全てを受け入れる(はず!)
少なくとも心情の吐露を此処でするべきではないよ
ただ厳しいことを言いますと、私達は貴方様の描かれた創作話で楽しむわけでして。
現実を持ってこられても困ります。
電化製品がだったら悲惨だ。
で、俺はココしか見てないからよくわかんないけど、
作者の馴れ合いみたいなのが結構あるけど、
この場合は何でダメなの?
俺個人のやりかただけど、後書きで主張をするぐらいなら作品にその主張を込めると良いですよ。
作中に自分の意思や煩悩を叩き込むと、これが不思議と読む人は面白いと言ってくれたりするので。
今回の後書きの場合「構ってほしいのか」とか「可哀想アピールか」とか悪い印象を抱く人が居る。俺とかね
書いた本人がそう思ってなくても、変に推量されることもあるから気をつけて。文章は好きだから、今後頑張って〜
半ば本気の悩み打ち明けられるのとじゃ対応に困らね?まあ受け入れるけどね!
アンニュイな雰囲気が出てて良いなと思った
自分語りとは感じませんでした
作品書かないから偉そうなことは書けないけど
がんばってください
皆様のご指摘のとおり、見直して見ると確かにこのあとがきは野暮でしたね。
頂いたご指摘の数々、しかと胸に刻みます。
今回の皆様の玉言を糧に、厚顔無恥ながら、また投稿させていただきます。
そして、今回のような事を二度としないよう、このあとがきは残そうと思いますが、
ご不快な方はコメントで一言下さい。
直ちに新しいあとがきに書き換えます。
ただ作者の作品と心情をめいいっぱい文字で表現しただけじゃん
不快に思う方もいれば作品と共にあとがきに共感する人もいることを忘れないでほしいです。
このくらいで愛が屈折してるなんて言ったら産廃は悪鬼羅刹だらけになるので何も気にすることはありませんw
個人的には次回はもう少し長い話が読みたいと思うけど、あなたが納得できる話ができたらそれがどんなものでも自由に投稿して下さい。
実は今回の話も長くしようとは思っていたのですが、突発的に思いつき、
発作的に書いた為短くなってしまいました。
次回は皆様の玉言を胸に、今回よりも長いものを書いてみようと思います。
>もっとも、何も無くても〜
ここには誰も突っ込まないの?
ああそうか、アリスだったら仕方ないんですねわかりますw