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『つき』 作者: 穀潰し
あの子が欲しい
あの子じゃ判らん
相談しましょう
そうしましょう
「そういうのなら、貴女も庭の1つぐらい作ってみればいいじゃない」
霧雨魔理沙とアリス・マーガトロイド、2人の魔女はいつものようにお茶会をしていた。
2人の話題は魔法関連ではじまり、やがて巷の噂、料理のレシピ、果ては身の回りの環境にまで脱線した。
その際「アリスの家は小綺麗に纏まってるよな。小さいけど菜園もあるし」と魔理沙が言い出したのだ。
まぁ、紅茶の葉もそうそう手に入る物ではないからね、と答えたアリス。先の台詞は彼女が後に付け加えた物だ。
「って言ってもなぁ……私は畑なんて耕したことないし、菜園なんて以ての外だ。せいぜいキノコを見つけるぐらいしかできないな」
笑みを浮かべてそう言う魔理沙に、アリスは苦笑しつつ答える。
「誰も私の真似をしろなんて言ってないわよ。それに貴女の家は魔法の森の近くなのだから、まともな植物なんて育つ訳無いじゃない」
「そりゃそうだ。全部森の障気にやられちまう」
「庭って言っても多々あるわ。冥界のお屋敷みたいな枯山水でも良いし、紅魔の館みたいな庭園でも良い。なんなら向日葵畑みたいにしてもいいのよ」
「最初と二番目はともかく、最後のは嫌だな。何だからおっかないオマケまで付いてくるような気がするぜ」
傘を差すような真似をする魔理沙。その姿に苦笑を返しつつ、アリスは提案する。
今頃噂されたフラワーマスターがくしゃみでもしているだろうか。
「そうね……貴女の家だったら少し小さめの池でも作ってみれば?」
「池?」
「そうよ。貴女確か水気でしょ? 自分と同じ気の物を身近に置けば魔力や気の回りも良くなるって言うわ」
「へぇ、そうなのか? 水気ってのはパチュリーから聞いてたが、そこまでは知らなかったぜ」
「七曜の魔女と言ってもあの娘は西洋が主体よ。東洋の風水まで取り入れてはいないわ。それに風水だけではないわよ。貴女の家、周りに木がないでしょう? ちょうど太陽の光が入るようになっている」
「それはそうだけど……それがどうかしたか?」
「良いものが見られるかもね。まぁ騙されたと思って1つ作ってみなさい。そうね……だいたいこの辺りかな?」
そう言ってアリスは図面を引いた。魔理沙の家の周囲を事細かに記述したそれに、件の「池」を書き込む。
はい、と渡されたそれを受け取る魔理沙。
「おお、図面まで貰っちゃって何だか悪いな」
「そう思うなら持っていった魔導書返してほしいわね」
「その注文は受け付けておりません、だ。まぁ、今度お茶でも奢るさ。何処かの紅白巫女がな」
「はいはい、期待なんて端からしてないわよ」
アリスの返しに、溌剌とした笑みを浮かべ、外へと飛び出した魔理沙。
その後ろ姿を見送った後、アリスは部屋へと戻り、そこで思い出したかのように手を打った。
「そうだ。人形作成の続きをしないと」
数日後、アリスは魔理沙の家の庭にいた。そこには突貫工事で池が作られていた。
今2人は、その池を覗き込んでいる。
アリスは仕事の完璧ぶりに笑みを浮かべ、そして魔理沙はしきりに感嘆の声を上げていた。
「どう? なかなかの物でしょう?」
「おお……こいつは風流だな……」
目の前の小さな池―――魔法で掘り返し均した後、水を溜めた物―――を見て、魔理沙は溜息を漏らした。
そこには満天の星と月が映り込み、水面の揺らめきを受けてゆらゆらと動き続けていた。
一時として同じ形にならないそれらを目にして、魔理沙は好奇心旺盛な子供のような表情を作る。
その姿にアリスは笑みを浮かべた。
「さて、水の循環は魔法で何とかなるけど、水面のゴミは出来るだけ取っておいた方が見栄えするわよ。メインが映らないと、意味が無い、のだから」
「判ってるさ。いくら私だってそれぐらいの考えはあるんだぜ」
「そう……じゃ、私はこれで失礼するわ。今新しい人形を制作中なのよ」
そう言って帰路につこうとしたアリスに、魔理沙は満面の笑みを浮かべて礼を述べた。
その表情を眩しそうに眺め、アリスはこれぐらいお安いご用よ、と軽く言い放つ。
もっともアリス自身も笑みを隠せていなかった。
去っていくアリスを見送った後も、魔理沙は水面を見続けていた。
次の日から、魔理沙の日課に「水面を見る」という行為が加わった。
天気のいい日はキラキラ光る水面を、曇りの日はひっそりと落ち着いた鏡のような水面を、雨の日は波紋を無数に浮かべる水面を、そして夜には空を切り取ったような水面を。
1日たりとて同じ姿はない。それが魔理沙の好奇心を大いに刺激した。
そればかりか、最近体の調子もいい。アリスの言っていた「自分と同じ気の物を近くに置くと気の回りが良くなる」とはおそらくこの事なのだろう。
こりゃほんとにアリスに紅茶でも奢ってやった方が良いかな?
そんな事を考えながら、魔理沙は次の日課をこなす為、家を後にした。
そんなことが続いたある日の晩。
魔理沙と、お呼ばれしたアリスが美しい満月の映る水面を眺めていると、ドサリっと何かが落ちてくる音が響いた。
2人が音のした方へ目を向けると、そこには一匹の烏が転がっていた。羽毛をまき散らし、羽を無様に広げて、肉片を飛び散らしたその烏は、間違いなく息絶えていた。
「誰かしら……趣味が悪いわ。魔理沙、貴女誰かに恨まれるようなことした?」
「どういう事だ?」
無表情で言ったアリスに、魔理沙は怪訝な表情を向ける。
「その烏、どう見ても腐ってるわ。つまり死んでからかなり経ってる。そんな物を投げ込むなんて悪意有るとしか言えないわよ……仕方ないわ、魔理沙、ちょっと退いて」
そう言うとアリスは魔法で庭の一角を掘り返した。そしてそこへ烏の死骸を埋める。
「お、おいアリス。そんな不吉な物埋めないでくれよ」
「だからってその辺りに放り投げちゃ、こんなことした犯人と同じじゃない。それとも、田舎の魔法使いはそんなことが平気で出来るのかしら? 不安なら巫女に御祓いでもして貰えば?」
アリスの言葉に、む……と押し黙る魔理沙。仕方なくアリスの前に進み出て埋められた烏に手を合わせた。
お前さんも運がないな。こんな陰気なところに埋められて。
同情だろうか、そんな事を心中で呟く魔理沙の背中に、アリスが声を投げ掛ける。
「あら魔理沙。意外と勇敢なのね」
だから、見えなかった。
アリスの口が歪んでいたことに。
ある日魔理沙は奇妙な夢を見た。
真っ白な部屋に閉じこめられる夢だ。
家具も何もない。あるのは病的な程真っ白に塗られた四方の壁のみ。その中に魔理沙は閉じこめられていた。
「誰だよ、こんな悪ふざけする奴は! 私に用があるなら直接言えばいいだろうが!!」
答えはなかった。
ただ、魔理沙は閉じこめられ続けるだけだった。
そんな夢を見る日が数日続いた。しかも夢の中の部屋はだんだん狭まってきている。
これは何かの暗示なのだろうか。
そう思う魔理沙だったが、相談できる人間などいる筈もない。竹林の医者は夢の病状までは扱っていないだろう。ましてや紅白の巫女など論外だ。
どうせ「実験中に変な薬でも吸ったんでしょ?」と言われて終わるのが目に見えている。
自分で何とかするしかないか。
そう考えた魔理沙は、対策として家の回りに結界を張った。
もしタチの悪い妖怪の仕業なら、これで防ぐことが出来る。そう考えていた。
それが功を制したのか、妙な部屋に閉じこめられる夢は見なくなった。
「これで快適な睡眠を楽しめるぜ」
確かに白い壁に囲まれる夢は見なくなった。
しかし、今度は普通の夢の中に『人影』が映るようになった。
そいつは最初、ぼんやりとしか見えない程度に遠くにいた。
次に日には、辛うじて人の形をしていると判る程度に遠くにいた。
その次の日には着ている服の色が見える程度に遠くにいた。
その服の色がとても見覚えがあることに魔理沙は気付いた。
ただそれが誰の服かは思い出せなかった。
ただただ不気味だった。
その次の日の次の日、そいつは身体の輪郭が判る程度に遠くにいた。
その次の日の次の日の次の日、そいつは服の柄が判る程度に遠くにいた。
その次の日の次の日の次の日の次の日、そいつは髪型が判る程度に遠くにいた
その次の日の次の日の次の日の次の日の次の日、そいつは――――。
「随分と酷い顔してるじゃない」
久しぶりに顔を見せたアリスの第一声はそれだった。
それに力無く笑って答えた魔理沙の目の下には、濃い隈が浮かんでいた。
綺麗だった金髪の髪もぱさついていて、瑞々しかった肌もかさついていた。
病人と間違われる程変貌した魔理沙は、アリスにことの顛末を伝えた。
毎日夢の中に奇妙な人物が出てくる。それがだんだん近づいてくる。とても不気味なんだ。
だから寝るのが怖い。今は出来るだけ寝ないようにしてる
魔理沙の言葉に、そう、とアリスはそれだけ答えた。
その素っ気ない態度に怒る気力すら今の魔理沙には残っていなかった。
ただ今の瞬間すら襲い来る睡魔に抗っていたのだから。
寝るのが怖くなった。
でも昼に寝ても、一瞬の居眠りであっても、あいつは近づいてくる。
もう表情が見えるぐらいまで近づいている。
もし触れるまで近づかれたらどうなるんだ。
怖い。怖い。怖い。怖い。
そんな事が繰り替えされる中で、魔理沙はどんどん憔悴していった。
それに比例して夢の中の「あいつ」も近づいてきた。
いまやハッキリと姿が判るようになっていた。
その姿を夢の中で目にした瞬間、魔理沙は総毛立った。
起きた後も鳥肌が収まらなかった。
夢の中で近づいてくるのは魔理沙自身だった。見覚えのある黒白の衣装。緩くウェーブのかかった金髪。頭には特徴的なトンガリ帽子。
帽子の庇と顔にかかった金髪での所為で顔は殆ど見えなかった。
唯一見えたのは、真っ赤な中身を見せる口だけだった。
それはまるで三日月のような笑みを象っていた。
もう何日もまともに寝ていない。もう時間の感覚もない。
寝たら「あいつ」が来る。
もう手を伸ばせば届くくらいまで近づかれてる。
寝るもんか。寝るもんか。一瞬だって寝るもんか。
睡眠不足でボンヤリとする頭で、魔理沙はそれだけ考えていた。
それ以外のことは、既にまともな思考が出来そうになかった。
そう、それこそ一番手っ取り早い『友人に縋る』という選択肢すら思い浮かばない程に。
そんな憔悴しきった彼女を唯一癒してくれるのは、あの池だった。
寝不足の頭でぼんやりと水面を見ていた魔理沙。すると彼女の目に不思議な物が映った。
水面に映っていた月に烏の影が入った。鳥が出てきたのかと頭上を見上げても、天には月以外なにも無かった。
水面に目を戻すと、その影は消えていた。魔理沙は目の錯覚だろうと考えた。
そう考えたかった。
そう考えざるを得なかった。
いつものように水面を覗いていた。
いつものように映る月を見ていた。
いつものように形の変わる世界を見ていた。
自分と一緒に「あいつ」が水面を覗き込んでいた。
「うわぁああああああ!!」
絶叫と共に机から跳び上がった。
どうやら魔理沙は机の上でうたた寝していたらしい。
飛び起きた衝撃で紅茶のポットやティーカップが床に落ちたが今の魔理沙は構っていられなかった。
その身体はそれと判る程震えていて、目は大きく見開いていた。奥歯をカチカチと鳴らし、顔には冷や汗が吹き出ていた。
「嘘だろ………」
追い付かれた。
追い付かれた。
おいつかれた!
どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう!
幼い子供のようにひたすら怯えた。
忙しなく部屋を見渡す視線が、机の上に放り出してあったミニ八卦炉に止まった。
彼女はそれを握りしめる。ある男性に作ってもらったそれだけが魔理沙の頼りだった。
と、同時に家のドアが叩かれた。
トントン。
来た。
そう魔理沙は確信した。
「誰だ!」
叫ぶ。
トントントン。
答えは聞こえない。かわりにドアを叩く音は続く。
「一体誰なんだよ!」
答えは聞こえない。
トントントン。
ドアを叩く音は続く。
「何だってこんな真似するんだ! 私が何かしたか!?」
殆ど泣きながら魔理沙は叫んだ。
トントン………。
答えは聞こえない。でもドアを叩く音が止んだ。
魔理沙は自分の荒い息だけがいやに耳についた。
居なくなった? 諦めたのか?
そう魔理沙が淡い期待を抱いた時だった。
ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンッ!!
「ひぃぃいいいいい!!」
ドアをうち破らんばかりの音に、魔理沙は恥も外聞もなく叫び声を上げた。
逃げないと。
逃げないと。
にげないと!
つかまったら……!
這うようにその場を後にする魔理沙。
ドアは駄目だ。窓から逃げよう。そう考えて寝室へと移動して。
そこで彼女は硬直した。
寝室はカーテンも閉めていないのに薄暗かった。
何で? どうして? いまはよるなのか?
混乱する頭にはこれ以上の問題は酷だっただろう。
でも、それだけでは済まなかった。
バンッ!!
何かを叩き付けるような音が窓から響いた。
ぎしぎしと油の切れた機械のように魔理沙の首がそちらへと向く。
「ぃっ………………」
そして彼女の喉から引きつった音が漏れた。
何故なら。
寝室の窓には。
びっしりと黒い羽がまとわりついていたのだから。
「…………………」
声すら出なかった。何処か遠くでドアが壊れる音を聞いた魔理沙は、知らず知らずのうちにミニ八卦炉を持ち上げて、それを窓へと向けた。
夜空に一筋の光が走る。
それに縋るように、1人の少女が飛び去っていった。
「そう。そんなことがあったの」
家の前で泣き崩れていた魔理沙を招き入れたアリスは、事の顛末を聞いてそう呟いた。
彼女は魔理沙に温かい紅茶を振る舞うと、あとは魔理沙の話しにじっと耳を傾けていた。
その酷く冷静な目が、今の魔理沙には何より有り難かった。
「あの時からずっとか……辛かったでしょうね」
魔理沙の髪の毛を優しく撫でながら、アリスは呟いた。
子供扱いするようなその行為が、今の魔理沙にはとても嬉しかった。
安心した反動か、ボロボロと涙を零しながらアリスに縋り付く魔理沙。
そんな彼女を愛子ながら、アリスは笑みを浮かべる。
その笑みはとても優しいモノで。
まるで母親が子供に向けるようなモノで。
アリスなら助けてくれる。
自然と魔理沙はそう考えていた。
だから。
「もうそこまで来ちゃってるのね」
だから、彼女が呟いた言葉を理解できなかった。
「………え?」
呆然と聞き返す魔理沙に、アリスはその顔に笑みを浮かべた。
その笑顔はとても綺麗で。まるで人形のようで。
まるで貼り付けてるみたいだった。
「魔理沙、私言ったわよね? 貴女の家に烏を埋めた時、『勇敢ね』って。その意味が分かるかしら?」
「………分かんない」
小さく首を振る魔理沙に、アリスは溜息を漏らす。
「まぁ、それも当然か。知ってたらあんなことしないでしょうね………………ねぇ魔理沙、いくら可哀想だからって無縁仏に手を合わせちゃだめよ?」
そこでアリスは笑みを消し去った。
「憑いて来ちゃうんだから」
その声に温度は無かった。ありのままの真実を伝えているだけ。
もはや魔理沙に声もなかった。
アリスの告白は続く。
「ねぇ魔理沙。貴女は私が提案した池をとてもとても気に入ってくれたわね。毎日毎日眺めて。そして………そう、今日みたいな満月の日は特に喜んでくれてたわね。それがどんな忌み事かも知らないまま」
「…………ぇ?」
辛うじて声を絞り出した魔理沙に、アリスは出来の悪い子供を見るような目を向けて言い放った。
「ねぇ魔理沙、「月」は「憑き」とも言えるわね。しかも水面に映った偽物なんてとても嫌われる物。貴女はそんなことも気付かずに、ただ無邪気に喜んでいたのね。その所為で、貴女を慕った色んな『モノ』が貴女を仲間にしようと近づいていたとも知らずに」
滴るような笑みを浮かべて、アリスは言い放った。
魔理沙の口がどうして、と動いた。
アリスの顔から笑みが消えた。
「どうして? 簡単よ。ええ、都会派の私にしては随分と単純すぎる理由よ。最初は貴女を少し懲らしめるだけだった。他人の物を勝手に持っていく盗み癖、ずけずけと土足で踏み回る図々しさ、品性の欠片もない傍若無人な振る舞い、全てが気に食わなかった。でも何時だったかしら、ある日それは貴女の特徴だと気付いた。それからよ。貴女のことがとても、とても綺麗に見えだしたのは」
「………」
「私にはない物、私には出来ないこと、私には感じられないこと、その全てを貴女は持っていた。貴女の笑顔が、貴女の言葉が、貴女の行動が、今の私には全て眩しかったわ。だからね、魔理沙」
呆けている魔理沙の耳元で、アリスは囁いた。
「貴女が欲しいの」
そう囁いたアリスの手に、いつの間にか人形が一体乗っていた。
黒白の衣装に、特徴的なとんがり帽子の下は軽くウェーブのかかった金髪。そして手には縮小された竹箒。
それは霧雨魔理沙そっくりな人形だった。
「魔理沙。貴女は今日『追い付かれた』わよね」
人形使いの少女が嬉しそうに呟いた。
それと同時にドアが『何か』に叩かれた。
トントントン。
「ねぇ魔理沙。貴女はとっても人気なのね。あんなに『憑いて』来てるわよ」
そう囁いたアリスの指差す先、窓の向こう側。
無数の目が、こちらをじっと見つめていて。
魔理沙がそれを烏の目玉だと気付いたのが。
彼女の見た最期の光景だった。
「あらアリス。あんたが来るなんて珍しいわね」
「まぁ一仕事終わったから息抜きもかねたちょっとした散歩をね。にしても相も変わらず閑古鳥が鳴いてるわねぇ……」
「五月蠅いわよ。喧嘩売りに来たんならとっとと帰りなさい。私にはそんな無駄にお金使う気はないのよ」
「使いたくてももともと無いんじゃそれも無理な話ね……冗談よ。あ、そうだ。霊夢にも紹介しておくわ。私が新しく作った子よ」
「……随分と悪趣味ね。どこかの黒白そっくりじゃない。もうちょっと外見を選ぶことは出来なかったの? その子もそんな陰気な姿になりたくなかったでしょうに」
「まぁ失礼ね。今までの中で一番完成度は高いわよ。それこそ『人間とそっくり』なぐらいね……」
今晩は筆者の穀潰しです。まずは此処までお読み頂き有り難うございます。
パチュリー編執筆の息抜きとして書いていたのに、何故こんな事に? よく解りません。
またお気づきの方もいらっしゃると思いますが、この作品では「記憶を追いかける女」という怖い話しを一部真似させて頂いております。原作の方はより一層不気味ですので、お暇が有れば一読頂けるようお願い申し上げます。
なお、作中の行為は全て筆者の独自解釈による物です。もし再現されても何も起こりません。
また。
な に が 起 き て も 責 任 は 持 て ま せ ん。
返信
>1
表現力不足の為、文章が判りづらかったですね。申し訳有りません。
その解釈で合ってます。
>2
霊夢のとき……ということはあちらのSSもお読みになっているのですか。
あの作品は「自身」が迫ってくる描写がとても素晴らしいと思います。
>救いがない
上げて落とすといい顔をします。
>3
はい、変更しました。
確かにこちらのほうが壊れている感じでいいですね。
>4
爆発するだけじゃないんです。
たまには加害者になっても良いじゃない。
>5
あ、その手がありましたね……。どこぞの禁書みたいに人皮で人形作ってもよかったかな。
魔理沙の外側は憑いてきたモノにくれてやったと言うことで。
穀潰し
- 作品情報
- 作品集:
- 11
- 投稿日時:
- 2010/01/30 13:35:06
- 更新日時:
- 2011/09/26 10:12:06
- 分類
- 霧雨魔理沙
- アリス・マーガトロイド
- 東方百物語『記憶を追いかける女』『映る月』
この方がルナティックな感じでいいな