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『東方スカ娘「For you」』 作者: 泥田んぼ
――鈴仙ちゃんがチョコ作るんだって。
ん? 誰のためにかって?
私のためじゃない事だけは、確定的に明らかだよこんちくしょう。
by. てゐ
「For you」
鈴仙ちゃんが調理場でチョコを作っている。
制服の上を脱ぎ、エプロンをビシっと締めて腕まくり。
鼻歌なんて歌っちゃったりなんかして。
おおノリノリだ。
腰をふりふり。耳がピクピク。
スカートに隠れた形のいいお尻。
フンフン♪ フンフフン♪
その横ににゅっと顔を出す。
「なに作ってるの、鈴仙ちゃん」
「わ、ビックリした。てゐ、料理中にはおどかさないでよね」
「鈴仙ちゃんが料理中に驚かされないでくれればいいよ。で、なに作ってるの?」
「チョコよ。見ればわかるでしょ」
「チョコ」
「そうよ。……いてもいいけど邪魔しないでよね」
失礼な。人を邪魔者扱いして。
でもイイ勘してるよ鈴仙ちゃん。
「どんなチョコ作ってるの?」
「どんなって、普通のよ。トリュフチョコ。こういう小さいの」
そう言って鈴仙ちゃんがトレイに載っているのを見せてくれた。
小さな茶色い塊だった。
形は丸くてコロコロ。
表面に皺があって萎びた梅干しのよう。
うん。これはまるで……、
「うんちみたい」
「なっ。なんて事言うのよ! 仮にも食べ物にっ」
「いやでも、うんちそのものじゃない? 丸くてコロコロしてて」
「え? 便秘じゃないのそれ。普通は……えっと…………長い、というか……ああもう何言わせんのよ!」
「ああ。鈴仙ちゃんは月の兎だから違うのかな? 地上の兎のうんちはこんなものだよ。丸くてコロコロ」
「……そうなの?」
「うん」
「ふぅん」
「あ、見たい?」
「へ?」
「恥ずかしいけど、鈴仙ちゃんになら私……」
「ち、違うわよ! そりゃちょっと興味があるけどそれはあくまで薬師見習いとしてどんなうんちが健康状態な時のうんちなのか知っておく必要があって兎たちを診る事もあるからやっぱり兎のうんちも……だから何を言わせるのよもぅ!!!」
「鈴仙ちゃんが勝手に喋ってるんじゃない……」
チョコの表面には粉がまぶしてあったり、ソースで飾り付けてあったり。
普通という割には凝っている。
「さて片づけが終わったら、あとはラッピングね」
どうやら物はもうほとんど出来上がっているようだった。
先に洗い物しちゃわないと、と袖をまくり直す鈴仙ちゃん。
どうやらうんちの話題から逃げたいらしい。
「ねぇ……これ誰にあげるの?」
「妖夢によ」
「へー」
「今日こっちに来てもらう約束してるから、来たらビックリさせるんだ」
「へー」
「あ、てゐ知ってる? 今日はね、バレンタインって言うんだよ」
「へー」
「一昨年辺りから守矢の巫女さんが広めてたの。てっきり宗教行事かと思ってたら風習(?)というかイベントらしいのよ。好きな人にチョコレートを贈る習慣があるんだって」
「へー」
「結構気合を入れて作ってみたんだけど……なかなかいい出来だと思わない?」
「へー」
「妖夢喜んでくれるかなぁ♪」
「へー……(暗黒微笑)」
ああもう。鈴仙ちゃん一人で喋ってるでしょう。
それ以上彼女の横顔を見ていられなくなって、私は鈴仙ちゃんの隣り離れて戸棚を漁った。
「ちょっとてゐ。悪戯しないでよ」
「お茶淹れる。鈴仙ちゃんも喉渇いたでしょ」
「あ、ありがと」
そう言って洗い物に戻る鈴仙ちゃん。
私は茶筒を取り出しながら、こっそり後ろを見る。
鼻歌も再開して絶好調、とっても楽しそうに片付けしてる鈴仙ちゃん。
そんなに楽しみかね、ハッ。
私は若干不機嫌で茶葉を振った。
「はい、どうぞ」
「ありがと」
湯呑に湯気を立てた緑茶。
……ズズズ
「……ふぅ。おいし」
「お粗末さま」
「…………」
「…………」
「……てゐ、これ何か入れた?」
「ご名答。永琳印の超強力下剤。姫さま用特別調整の無味無臭便意促進ばーぢょん」
「〜〜〜〜〜てゐぃぃぃっ」
やあ、お腹を押さえて顔真っ赤にしてる鈴仙ちゃんはかわいいなぁ。
まぁここいらで助け船を出してあげよう。
「おトイレはあちら」
「憶えてなさいよぉぉぉぉぉぉぉ〜〜」
ドタドタドタ...
思いっきり駆けていく鈴仙ちゃん。
「ふぅ……」
いいのかね。
「大事な大事なチョコを、置き去りで……」
机の上に置き去りのチョコレート。
ニタリと笑った。
††††††††††††††††††††††††††††††††††
こけつまろびつどうにかトイレまで辿り着いた鈴仙は、ドアがバタンと大きく音を立てるのにも構わず駆けこんだ。なぜかどのトイレも使用中だったせいですごく遠回りして、ようやく使えるトイレを見つけた時にはほとんど永遠亭を一周してしまっていた。途中、数回大きな波が押し寄せた時はもう駄目かと思った。廊下に座り込んでしまった事もあったがそれもどうにか耐えきった。直腸は割と臨界一歩手前。もう耐えられないよとぷるぷる震える腸壁に連動するようにして指先が震え、下着が上手く下ろせない。ようやく便座に座ったその時。
そこに悪魔がやってきた。扉の向こうから隠しきれない笑みを含んだ声がする。
「れ〜せんちゃ〜ん」
「て、てゐっ」
「あ、大丈夫。邪魔する気はないよ」
「そ、そう……」
鈴仙は安堵した。正直、ここでてゐに何かされたら受けきる自信がない。というか最悪洩……考えたくもない。とにかくてゐは『邪魔しない』と言った。嘘かもしれないが信じておく。というか嘘じゃありませんように! ……しかし扉の前から気配が去る事はない。
『邪魔しない』→『邪魔しないだけ』
「て、てゐ〜?」
「ん? なにかな鈴仙ちゃん」
「あの、さ。そこにいられると、その、ひっじょ〜に、ええと……しづらいというか」
「ああ、脱糞しづらい?」
「だっ」
「音出ちゃうもんね〜。特に勢いよく出すと」
「(パクパクパク)」
「びちゃびちゃびちゃって、お腹から出たものが水に落ちる音とかもすごいもんね〜。ぷぷ」
「てゐ! あのね! わたし! かなり大変なんだけどっ!」
「ああはいはい。じゃあアチラへ行きますよ」
「そ、そうだと助かるなぁ……」
やけに素直である。この場合の素直はむしろ怖い。てゐの言葉には幾つも裏がある事が常だ……だがそれを想像するには、迫りくる便意があまりに強烈すぎる。手でお腹を抑えているだけではいい加減限界である。
「ああ、でもね。鈴仙ちゃん」
「ここ、けっこう、ひと通るから」
「ではではごゆっくり〜」
パタパタパタ。
軽やかな足音が遠のいていく。
と同時に、逆方向から下働きの兎たちの談笑が近づいてきた。
「………………最悪だ」
便座について、あとはもう解放するだけだというのに、できない。出せない。おまけに肛門が空気に触れて、そこから昇ってきた冷気がヒヤリとお腹を撫でる。
出そう、に、なる。
「が、我慢……がまんよ……」
キリキリ痛むお腹をさする。
少しでも温かくなるように。
握った拳に脂汗が滲んだ。
「ふぅ…………ぅ」
ゆっくり、深く、深呼吸。
お腹の力を緩めすぎると、決壊、する、それだけは、断じて……!
『でね……なのよ』
『え〜うっそぉ〜』
『くすくすくす』
声がどんどん近付いてくる。
それに合わせて波も近づいてくる気配。
こんな時にっ。
声は今ちょうど、扉の前辺り。
そのまま早く、通り過ぎて……っ!
ガチャリ
「〜〜〜〜〜〜っっっ!?」
心臓が凍る。
大きな波が来る。
声と一緒に溢れそうになる。
唇を噛んで、なんとか、耐えた。
ガチャガチャ。
『あれ、使用中だ』
『残念。別のとこいこ』
『も〜。洩れちゃうよ〜』
ばたばたばた。
「…………ぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
どうにか、守りきったようだ。色々なものを。
ほどよく波もどうにか遠のいた。
思考に余裕が出てきた鈴仙は耳を澄ませた。
うん、だいじょうぶ。
近くにはもう誰もいないみたい。
鈴仙はようやく落ち着いてゆっくり用を足した。
……でも出す時は、自分でもなんとなく恥ずかしくなって、自分の耳をぎゅっと掴んで塞いだ。
お腹も心もスッキリ出したその後、流す前にチラリと出したモノを見てみた。
(長くて……太くて……。丸くてコロコロは、してないわよねぇ。うん、形も崩れてないし水っぽくもない。色も変じゃないし。最近ウコン茶飲むようにしてから胃腸の調子がいいわね……)
などと考えた後、なぜか自分のうんちをずっと凝視していた事に気付いた鈴仙は、慌てて真っ赤になった顔を振った。
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トイレを出た所で、鈴仙は兎の一匹に呼び止められた。
表口に妖夢が来ているという。
「妖夢っ」
「あ、うどんげさん」
今日はお招きいただきありがとうございます、いえいえこちらこそようこそおいでくださいました。
とりあえず形ばかりの挨拶を済ませ、まぁ上がってよと中へ案内する。
さてどうしよう。まだラッピングできてないし、妖夢にはひとまず近くの別室で待ってもらってお茶でも出そうかしら……などとのんびり考えていた鈴仙は妖夢の来訪に若干浮かれており、自分達が向かう先、すなわちチョコが置いてある調理場の方からやけに多くの兎の気配がする事にしばらく気付かなかった。気付いたとしても、とっくに手遅れだったわけだが。
「……? なんか騒がしいですね」
「え? そう?」
なるほど、何やらきゃいきゃい言っている。耳を澄ますと『おいしー』とか『鈴仙さまサイコー』とかいう声が聞こえてきたり……。
「………………は!? まさかっ」
「うどんげさん?」
鈴仙は駆けだした。案の定、調理場は兎たちで埋め尽くされていた。その兎波を掻き分けながら叫ぶ。
「てゐーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっっ!!」
「あ、鈴仙ちゃん遅かったねハハ」
兎たちの輪の中で口元を茶色く汚したてゐが笑う。
他の兎たちの口や指にも茶色い汚れが点々と……。
「いやー、一口お味見、と思ったら他の子たちにバレちゃってね。一人1つずつだよとは言ったんだけどみんな集まっちゃって」
頭をぽりぽり掻きながら、悪びれもせずてゐ。鈴仙が大急ぎで確認すると、トレイに載っていたはずの大量のトリュフチョコは無残に食い散らかされほとんど残っていなかった。無言の鈴仙の額に青筋がピキピキピキと浮かぶのを見て、兎たちが文字通り脱兎の如く散っていく。ドサクサに紛れて自分も逃げようとしていたてゐだったが、その襟首はガシリと掴まれた。
「……………………………………てゐ?」
「鈴仙ちゃん、一つだけ言わせて」
「弁明? 命乞? まあ一応聞いてあげるわ、なに」
「チョコ……とっても美味しかったよ」
「あらそう……ありがと。……………………でもね、私は妖夢にそのチョコを食べてもらって妖夢にその言葉を言ってほしかったのよっっ!!」
鮮やかな一本背負いが、決まった。
「うどんげさん……チョコ、作ってらしたんですか」
てゐをグルグルに縛り上げた鈴仙が振り向くと、散らかされた机の傍に妖夢がいた。その視線はボロボロになったチョコの残骸に向けられている。
「えっと……うん、そうなの……」
妖夢に、あげたくて。
その言葉は口の中で消えた。
どうしよう。鈴仙の心が悔しさと情けなさで塗りつぶされる。会心の作ができてたのに。いまさら、言ってもしょうがないけれど、でもやっぱり、妖夢にあのチョコを食べてほしかった。食べて、美味しいって言ってもらって、それで……それで改めて『好きだ』って、伝えたかった、のに……。涙なんて、出しちゃいけないって分かってる。でもやだな、抑えられないよ。妖夢が黙ってハンカチを刺しだしてくれるのが、なんか痛い。
「……ん、ありがと」
「うどんげさん。材料はまだ残ってます?」
「う、ん……材料は別の所に待避させておいたから大丈夫みたい」
「じゃあ、もう一度作ってくれますか? わたし、待ってますから」
「妖夢……」
「私も時々あるんですよ。折角作ったお饅頭を幽々子さまや紫さまに食べられちゃう事。だからお菓子とか作る時は、いつも材料を多めに確保して、数も余計に作るようにしてるんですよ。それに……」
「……」
「私もこんな欠片じゃなくて、うどんげさんの心が丸々こもったチョコが食べたいです」
そう言って妖夢はチョコの残骸を一つ摘まんで、口に入れた。
ニッコリと日向のように笑う。
「味の感想は、またその時に」
「! うん! ちょっと待ってて」
「はい」
すごいのを作ろう。
心を全部込めた、すごいのを。
鈴仙はそう心に決めて動き出した。
††††††††††††††††††††††††††††††††††
別室にて。
グルグル巻きにされたてゐと、出されたお茶を啜る妖夢。
てゐは観念したのか、それとも反省したのか、無表情で黙りこくっている。
単に、妖夢と会話したくないだけかもしれないが。
けれど妖夢の方ではそうではなかった。
「てゐさん」
コトリと湯呑を置いて口火を切る。
「なに……かな」
てゐの方も、話しかけられたら答えないわけにはいかない。沈黙は敗北だ。
「私、負けませんからね」
「何の事?」
「うどんげさんの事です」
「…………」
「少なくとも今の貴女になら、負ける気がしません。妨害しかできない貴女には」
「妨害なんて、人聞き悪いね」
「他の兎たちを巻き込んで上手く責任を分散させたつもりでしょうけど、結局は貴女が考えた計画なんでしょう? 材料となるチョコの始末を忘れていたのは失点ですが、それ以外は見事な計画だったと思います」
「何の事か分からない。そんな風にあんたが私を買っていてくれたとは知らなかったよ」
「……あくまでシラを切りますか。まぁいいでしょう」
「? ナニソレ。引っかかる言い方」
「妨害ではなく、攻めに行くのも大事って話ですよ」
そう言って妖夢はニヤリと笑う。
懐に手を入れてスルリと取り出す。
てゐの顔に初めて動揺の色が走った。
「チョコレートを作っていたのは、何もうどんげさんだけじゃ、ないんですよ?」
ふふ。薄いチョコレートの包みを口元に当てて妖夢が微笑んだ。
「……あんた、見かけより根性悪いわね」
「てゐさんにそう言ってもらえるなんて光栄です」
ウフフフフ。
うふふふふ。
何やら暗黒チックなオーラが部屋を満たしつつあったその時、
『妖夢ー。できたからちょっと来てくれるー?』
と、鈴仙の声。てゐは舌打ち。妖夢はニマリ。
「じゃ、私、鈴仙さんにコレ渡してきますねー」
満面の笑みを浮かべて妖夢が立ち去る。その浮き浮きと舞い上がらんばかりの足音を、てゐは耳をぎゅっと縮めて聞いていた。体を固くして。何かに耐えるように。完全にそれが聞こえなくなってから初めて、はぁぁぁ、と息を吐く。
「いいもん……」
その呟きは誰にも聞かれる事なく。
「……いい、もん」
その幼さは誰にも見られることなく。
「………………ぅ」
その涙の行方は、誰も知る事なく。
知られてなるものかと、てゐは唇を噛んだ。
おわり
エピローグ
「てゐ、あんた反省した?」
「…………………………」
「……だから私も悪かったって。結局縛ったまま一晩放置しちゃって……でも、元はと言えばてゐが悪いんだからね!」
「…………………………」
「うぅ、そんな目しないで……ああもぅ、だから私も謝るからっ。だから仲直りしよう。ごめんね? てゐ」
「…………ごめん、なさい」
「うん! じゃ、これあげる」
「……? なに?」
「チョコよ」
「え?」
「妖夢に上げたやつの余ったので作ったのだけど。……そんなにチョコが食べたかったのならそう言いなさいよね。私でよければ、いつでも作ってあげるから」
「…………………………………………違うし」
「ん? なんか言った」
「ううん。なんでもない。ありがとう鈴仙ちゃん」
鈴仙がくれたチョコは確かに余り物らしく小さかったけれど。
けれど小さな小さな、ハート形でした。
プロローグ
「永琳。なんか最近わたし兎っぽくなってきたかも」
「どうしてそう思うの」
「丸くてコロコロしたのが出るのよ」
「便秘でしょう」
兎の糞は便秘の時の人間のうんちに似ているそうな。
元ネタが分かった人は神奈子さまとキスする権利を進呈します。
自分のうんちを確認する鈴仙が書きたかったんですが……なんか他の部分が多くなっちゃってアチャーな感じです。スカとそれ以外がバランスブレイク。だっててゐかわいいよてゐ。てゐ可愛いからしょうがなかったんだよ!
どうにか14日深夜には間に合ったか、な……? って全然ダメダメな気がしますがとりあえずこれにて投稿完了。素敵企画してくださったウナルさん、参加者のみなさま、お疲れさまでした。もし次があれば……あるかな? あるよね。次こそはもうちょっとハァハァできるのを目標に。
泥田んぼ
作品情報
作品集:
12
投稿日時:
2010/02/14 19:10:50
更新日時:
2010/02/15 04:10:50
分類
東方スカ娘
因幡てゐ
鈴仙・優曇華院・イナバ
魂魄妖夢
注意:百合、微スカ
いや、ほんと、マジで!
このてゐ、持ち帰りしたくらい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
うどみょん・・・これももっと広まるべきだと。
素直になれないてゐカワイイですね
うんこ入ってないやつ
トイレのドアの前で聴き耳立てて張り付いていたくなるくらい