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『東方地獄八景1/4』 作者: nekojita

東方地獄八景1/4

作品集: 12 投稿日時: 2010/02/22 17:06:37 更新日時: 2010/05/19 01:55:45
落語パロです。
  



 






「お〜〜〜〜〜いっ! そこにいるのはパチュリーじゃないか?」




「よう、パチュリー。こんなところで会うとはな」
「ま、魔理沙? よかった。知らない人ばかりで、ちょっと不安だったの」
「私もだ。ここからは一緒に行こうぜ」
「そうね。ありがとう」


「お前が死んだって聞いた時はびっくりしたよ。生まれついての魔女様より、絶対私の方が先に逝くんだと思ってた」
「死は突然やってくるものよ」
「ご愁傷様です」
「お互いさま……ところで魔理沙、あなた確か私の葬式を手伝いに来てくれていたわよね」
「えっ!? 知っていたのか。それほどでもないぜ」
「棺桶の隙間から見てたのよ。あなた、あの時は元気だったわよね。どうして死んでしまったの?」
「ああ、お前が死んだ二日後だ。お前の図書館から、お前が最後に読んでたって本を借りたんだ」
「あなたまた」
「いいや違うぜ。小悪魔が魔界に帰るからって、最後の司書の仕事だって言って、貸してくれたんだ」
「それからどうしたの」
「そこに書いてあった実験をやってみたんだぜ」
「……」
「そしたら爆発した」
「……あなた、馬鹿ねえ。それ、私が最後にやった実験にきまってるじゃない」
「ああ!」
「そうよ。それと同じ爆発で私は死んだのよ」
「ご愁傷様です」
「それはもういい」
「迂闊だったぜ」
「迂闊すぎるわよ」
「それにしてもお前のはいいお葬式だったぜ。客も多かったし、香典も集まったし。私の葬式もあんな感じでやってくれてるかなあ」
「そうだ魔理沙香典!」
「ん?」
「あなた、香典から五千円ちょろまかしたでしょう!」
「え? な、何の話だ?」
「とぼけても無駄よ」
「なんで知ってるんだ」
「語るに落ちたわよ」
「何の事だ」
「これから閻魔さまが待ってるのよ」
「閻魔っつっても映姫だろ……、まあ、いいや、仕方ないな。ちょろまかしたぜ! で、なんで知ってるんだ」
「棺桶の隙間から見てたのよ。確かにいいお葬式だったわ。レミィが泣いてる。ああアリスも来てくれてるなあなんて思いながら」
「え? あれって見れるものなのか。でも私は自分の葬式見てないぜ」
「まだやってないんじゃない? 誰にも気づかれてないとか」
「うわっ、それってさびしいなあ」
「話をそらすな。ちょろまかしたでしょう」
「確かにちょろまかしたぜ! でもあれは……」
「へえ。言い訳なら聞いてあげようじゃない」
「そうそう、あれは人助けなんだぜ」
「どういうふうによ」
「中国が金を数えてたんだけど、一回数えて、『あれえおかしいな五千円多い』、もう一回数えて『あれえやっぱり五千円多いうわあああ』なんてやってたものだから、私が仏心を起こしてそこから五千円札をぱっと一枚ぬきとったら、三回目数えていた中国も今度は『やった合った合った』なんて大喜び!」
「そんな人助けが」
「そんなことよりパチュリー、私が葬式を手伝ったお前が、どうして私とおんなじ場所にいるんだ?」
「私は喘息が苦しくて…、あんまり早く歩けないの。……放って行ってくれても結構よ」
「いやいや。今更急ぐ旅でもないぜ。ゆっくり行こうゆっくり行こう」
「ありがと」




「しかし、さっきから暗い顔してどうしたんだ」
「考え事をしてるのよ。それより、こんなところでそんなに暢気なあなたの方こそ変よ」
「もうあれだ、折角だからむしろ陽気に行こうぜ」
「…あなた、私と一緒にこっちに来れたのが、よっぽどうれしいらしいわね」
「地獄の道連れができたし、本は返さなくてよくなったし」
「そこかよ」
「うん、で、考え事って何だ?」
「私は、地獄と極楽の絵というのを見たことが有るのだけれど」
「ふむふむ」
「名前は忘れてしまったけれど、三途の川のほとりに、亡くなった人の服を剥ぐというお婆さんがいるというじゃない」
「聞いたことあるぜ。何とかのババアとか言ったか」
「そりゃあまあ何とかのババアでしょうけど」
「ん。で、そのババアがどうしたんだ」
「ババアより服よ。川を渡る前に裸にされるなんて嫌でしょ。お金か暴力で解決できないかしら」
「女を騙くらかして誤魔化してうんと言わせるのは私の得意技だぜ」
「何を偉そうに」
「なんだよ、お前が神社で喧嘩して賽銭箱壊したとき、私が15万請求してきた霊夢を『満足させて』、7万まで負けさせたじゃないか」
「あなたあれはあなたがほとんど悪い…、ちょっと待って。7? あなた10万まで負かったって言ってきたんじゃなかった?」
「え? し、しまった!」
「差額の三万は」
「わ、私の懐に」
「魔理沙!」
「すまん!」
「…………ま、いいわ。今のうちに言っておいて、良かったわね、魔理沙」
「ん? なんで良かったんだ?」
「懺悔と言って、きちんと言ってしまえば罪が軽くなるのよ」
「罪が軽くなるからどうしたっていうんだ」
「バカね、これから閻魔様の裁きがあるのよ。私が極楽に行って、あなたが地獄に行ったら嫌じゃない」
「魔女という時点で罪がどうとかいうのはもう意味がない気が」
「そんなことないわ。私は結構ただしい生活をしていた筈」
「ふん。ま、私が黒になることはまず無いと思うが、一応その懺悔というやつをやっておくかな」
「その自信はどこからくるのよ」
「図書館から本を借りていたのは私だぜ、パチュリー」
「オーケー知ってる。というかあなたの中で悪いことのカウントに入っているのに吃驚だわ。あれは死んだら返してもらうことになってたでしょ。私も死んじゃったし、ノーカンでいいわ」
「あと…」
「えっ!? 他に有るの?」
「お前の持ってた赤い宝玉の指輪を盗んだのは私だぜ」
「え? ああ、あれか! なくしたと思ってた! まあ、いいわ。許す許す」
「あと」
「……」
「水晶玉は私が割っちゃったので隠したぜ」
「水晶玉! あれあなたも探してくれてたじゃない! 『どこだどこだー!』って、ほとんど半日、図書館の中を!」
「カモフラージュだぜ!」
「…………」
「ぜ!」
「ま、まあいいわ」
「あと他に……」
「教会の神父ってきっとめちゃくちゃ疲れるんでしょうね」
「お前の魔力増幅リボンを普通のリボンと取り替えて……」
「もう、もういいわ、全部あなたにあげたことにする。これで帳消しね。でも他の人から盗ったものは、知らないわよ」
「他の人からは、盗ってないぜ」
「何故?」
「持ってくのはお前の所からって決めてたからな」
「大概にしろよ」










「どうやら、これが三途の河らしいが」
「絵によるとその何とかのババアは、柳の木の下に立っているそうだわ」
「柳どころか木の一本も無い」
「切り株がここに一個あるけど……」
「誰かに訪ねるのが早いな。しめた。こんなところに茶店があるぞ」
「交渉は魔理沙の役目なんでしょ。私はここで待ってるわ」
「じゃ、行ってくるぜ」


「ん、おい小町、小町じゃないか。暢気にお茶飲んでる場合じゃないよ」
「すいませんすいません映姫さま明日からは心を入れ替えて……って、魔理沙じゃないか」
「私だぜ」
「え、魔理沙? 魔理沙!? あの破壊神、トラブルメーカー魔理沙がこっちに? 何か彼岸に御用でも? それともホントに死んじゃったんですか?」
「両方だぜ。本当に爆死しちゃったから、地獄の国盗りをやりに三途の河を渡りに来たのだ」
「ホントに死んじゃったんですか! 吃驚したなああの魔理沙さんがこんなにあっさりと命を落としちゃうなんて」
「それより小町、何とかのババアってのがここにいるって聞いたんだが」
「何とかのババア? ああ、葬頭河のババア」
「へー、それでショーズカって読むのか」
「なんで葬頭河の婆さんを探してんの? 着物をはぎ取られたい? 魔理沙ってMだったっけ」
「どっちかっつーと私はS……、Sに、なりたい……」
「なんにせよ、その、そういう事はもう今はやってないんだ。そういう事はもう全部民主的にやろう、着物をはぐなんて野蛮な、前時代的な事はよそうって話で163代目のババアの時に決まった」
「ふーん、じゃ、今はもう居ないのか」
「それがその代のババアが怒ってね。うちは代々伝統的に亡者の着物を剥いできたんだ。権利とか格式とかにかかわる。それをお触れが出たからって、はいそうですかってやめられるかい、って」
「そりゃ大変だな」
「こうなったら茶店でも開いてやる、ってできたのがこの店。今の店主はそのババアから数えて七代目のババア」
「なんで茶店だ。紆余曲折しすぎだろ」
「喫茶店を経営するのが夢だったらしい」
「ババアが夢持つと大変だな。喫茶店は茶店とは違うだろ。じゃあもう着物をはぎ取られる心配は無いんだな?」
「ああ。そうだな。河のほとりの切り株がその柳を切り倒した跡。地獄名所旧跡に指定されていて休みになると小学生がうじゃうじゃとカメラ持ってやってくる」
「へえ。それらしい切り株ならもう見たよ」
「だったら、見逃したんだろうけど石碑が有った筈だ」
「あとで探してみるよ」



「ところで魔理沙は歩きかい?」
「は? 歩きじゃない人が居るのか?」
「車が普及して交通事故が増えてからは高速道路でわーっと正面衝突してそのままわーっとこっちに突っ込んでくる面々の多いのなんの」
「車を船に乗せて運ぶのか?」
「確かに車ごと運んだら早いってんで前までカーフェリーが走ってたんだが、随分前に地獄改造計画なんて言って車用の橋がかかってからはわーっと三途の河を渡って行くようになった」
「無茶苦茶だな」
「今じゃ南北二つの自動車道と他に環状線やらなんやらが通ってて魔理沙ももし箒なら原付と同じ扱いでそこを走れる」
「へー。走り屋の血が騒ぐぜ。峠を攻めてみようかなあ。もう一回死ぬ事はないだろうしなあ」
「それがどっちの路線も渋滞が酷いし政治家の圧力で回り道しているからあんまり道もよくないそうだ」
「ふうん」
「それで昨今民衆の声が高くなって今地獄中央自動車道ってのを建設中で、これが河のこっち側から閻魔庁まで直通で今までより五時間早く向こうに行ける」
「……、いや、こんなことはどうでもいいのかもしれないけど」
「……何?」
「今までより五時間早く閻魔庁に着いて、どうするんだ?」
「さあ。五時間早く着いた人に聞いてくれよ」
「……どっちにしろ私は歩きだぜ」
「そうか。じゃああたいの手漕ぎ船に乗せてやろう」
「パチュリーも一緒だけど、大丈夫か?」
「大丈夫大丈夫」
「しかし自動車道が通ってるのに、手漕ぎ船とはローテクだな」
「いや、あたいが入った時既にモーターボートで、どんどん技術が進んで行って一時期機械管理の大型貨客船が巡航していたんだが、これはプログラムがいい加減で事故って大惨事で何人も生き返る事態に」
「あらま」
「戻そうって話になって、じゃあいっそ一番最初まで戻してやれって昔ながらの手漕ぎ船に戻したところ、これが手作りの味とかなんとか言われて大好評、地獄文化遺産にされてもう変えるにも変えられない」
「で、休日には」
「小学生や修学旅行生がカメラ持ってやってきてパシャパシャパシャパシャ」
「大変だな」
「大変だよ」
「魔理沙、何かわかった?」
「いけね、待たせてたんだった」
「わかったわかった。あとなパチュリー、すぐそこで懐かしい顔に会ってな。そりゃここに居るのが当然の人物なんだが……」
「ばあちゃんばあちゃん、ここに茶代置いとくよ」



「身を乗り出さないでよ魔理沙、はまったら生きるぞ」
「ちょっと未練が無いでもないから飛び込んでみようかしら」
「待て待て紫もやしさん。棺に入れられた人が生き返ったら、土の下の棺の中でどんどんぎいぎい棺を叩きながら、飢えて苦しんで、またこっちに舞い戻ってくる」
「私なんかの場合はどうなる。死体は爆散したと思うが」
「一瞬生きて、体の引き裂かれる、死ぬ苦しみを味わって戻ってくるだけさ」
「それはいやだな」
「私も、帳簿と人数が合わなかったらまた始末書ものだからやだねえ。でも、……そうそう、もしも渡し賃が払えなかったら、ここで強制的に飛び込んでもらう事になるよ」
「六文銭だっけ?」
「昔はひたすら六文銭で徴収していた。すると此岸で文銭の高騰したのなんのって。来る人はみんな円しか持ってないもんだから、使えない円よりも余分に一文銭一枚でも持ってりゃひと財産。此岸で立ち往生する者多数」
「時代遅れなのかどうなのかよくわからないわね」
「六文銭文化っつって、こっちがわでそれをめぐる商業ができたんだけれど奴隷労働と浮浪者のたまり場になって」
「そりゃ一文無しだらけじゃ治安も悪化するぜ」
「ついに円で徴収するようになった。これでも大昔の話だけどね」
「それでいくらだ」
「いくらなの」
「死因によって違うんだけど、あんたがたは二人とも『はっく』で72だな」
「え?」
「爆死だから、『はっく』72」
「ダジャレじゃない」
「昔からなんでもこれで決めてるんだ。たとえばタバコで死んだのはすっぱすっぱのはっぱ64、ゴリラに蹴られて死んだのは、ごにが10、ゴリラ10っつって10、……」
「わかったわかった、わかったぜ、それで72円?」
「72000円」
「なんでだ!」
「先月までは72円、今月からは72000円。労働組合が頑張りすぎて度重なる物価高、円安も加わったインフレのあおりで閻魔庁が1000倍取っちまえってお触れを出したから今月から千倍になって」
「地獄の沙汰も金だな」
「早く出せ」
「千倍とはひどいわ」
「うわー先月に死んだら良かった」
「無茶苦茶言うな」
「悪いけど立て替えといてくれ」
「本当に落とすぞ」










 


ごめん90パーセントの確率で続かない
ラジオ出るかも。今週末金土日くらい。
ほぼ突発開催になると思うので実況スレを凝視すべし!
俺様が出るからお前ら聞けよ。←黒幕に言わされています


ずいぶん前にSSSスレに書きこんだものが進んだので。
台詞回しの練習。あと3人会話が難しいとか聞いたので腹が立って。
nekojita
http://www.geocities.jp/nekojita756/text.html
作品情報
作品集:
12
投稿日時:
2010/02/22 17:06:37
更新日時:
2010/05/19 01:55:45
分類
台詞のみ
魔理沙
パチュリー
小町
あとがきが本題かも
落語
1. 名無し ■2010/02/23 09:09:14
なんか読みにくい感があるけど、よく読んだら地味に面白い
2. 名無し ■2010/02/23 10:33:56
独特だな。
でも判らないわけではないし、面白い。
3. 名無し ■2010/02/23 19:36:52
こういうの好き
4. ばいす ■2010/02/24 15:20:41
パロ元を知らないけどジョークのセンスが良くて楽しめた、飲み屋で聞こえてくる酔っ払ったおっさん同士の会話みたい
脱衣婆と小町を同一視する話を見たことあるけどそれはこの話じゃ関係ないのね。
5. 名無し ■2010/02/26 22:03:46
ええええええ続かないの……。
面白いよコレ。いい雰囲気だ。
6. 名無し ■2010/03/06 12:48:24
こういう話大好き
できることなら続いてほしいが…
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