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『超高齢者戦隊ババレンジャー【第8話】(後編)』 作者: どっかのメンヘラ
「えへヘ・・ごハン・・・がむっ・・・ばりばりばり!!!」
文が阿求の頭皮を剥がし始めた。まるでお菓子を包む銀紙のように簡単に剥がれて行く。「いっ・・・いやああああ!!!!」
里の女が一人叫び声を上げた。しかしその声もアリスの禍々しい紫の光の玉で中断された。
「いやあああ!!・・あ・・あれ?」
紫の玉は女のみぞおちに当たると、まるですり抜けるかのように女の腹に吸い込まれていった。
「あれ・・・あ・・あぁぁ・・・ああああ!!!」
女の体の肉がどんどん垂れてきた。まるで水を入れられたビニール袋のようだ。
「あああ!!あぁ・・・あぁ・・・。」
女の叫び声は弱くなり、地面に崩れ落ちるようにへたり込んだ。たるんだ皮膚からは青い色のドロドロした液体が皮膚を破り流れ落ちる。女の体はくしゃりと潰れて中から液体があふれ出した。女の体の皮膚以外の組織はすべて溶けて青い液体になってしまった。
「静かにしていてくれないかしら?この子こう見えてデリケートだから。騒いだら何をするかわからないわよ?」
「うあああああ!!!」
「いやあああ!!助けて!!!!助けて!!!」
周囲の人間が大騒ぎで右往左往し始めた。いつもの平和な里の風景は地獄絵図と化した。
「いやああ!!お母さん!!いやああああ!!!」
「いやだああ!!俺はまだ死にたくない!!!助けてくれえ!!!」
文は騒いでいる人間達にはまったく目もくれずただ阿求の頭蓋骨のてっ辺を割って脳を穿り出しすすっていた。
「ちっ!」
アリスが大きく舌打ちした。
「静かにしろって言ってるのに・・・。いいわ、永遠に黙らせてやるわ。」
アリスが右手に魔力をため始めた。
「やめろおおおおおおおお!!!」
誰かの叫び声が聞こえた。
「騒ぐな!!!!今すぐ落ち着くんだ!!!!死にたくなければ落ち着いて私の言うことを聞け!!!!」
声の主は慧音だった。
「騒ぐな!皆、私の後ろに付くんだ。さあ!」
慧音の大声に驚きながらも人間達は騒ぐのをやめて慧音の指示に従った。
「・・・まあ、誰かと思ったら上白沢先生じゃないの。こんにちわ。」
アリスは慧音を見るとわざとらしく驚いた声を上げてお辞儀をした。
「お久しぶりですね先生。お元気そうで何よりです。」
にこやかに返事を返すアリスに激しい怒りと憎しみの表情を返す慧音。
「アリス・マーガトロイド・・・まずお前に質問する。諏訪子を殺したのはお前か?東風谷早苗が行方不明になった原因はお前か。古道具屋の店主を殺したのはお前か?霧雨魔理沙を襲ったのはお前か?命蓮寺を襲って寅丸星に深手を負わせたのはお前か?」
慧音は自分の感情を極限まで抑えてアリスに質問した。
「あらあら慧音先生ったら、そんなに一度に質問されたら困るじゃない・・・。まあ簡単に答えれば『だいたい正解』って所かしら。」
せせら笑いながらアリスは質問に答えた。
「なるほど・・・そうか・・・。」
慧音は静かに答えた。
「あら?今の説明で満足していただけましたか?おせっかいで詮索好きな先生のことだからこんな簡単な説明じゃ満足してもらっ・・・。」
フシュっ・・・・・どおおぉぉむ・・・・・。
アリスの頬の横を青い何かが通り過ぎた。アリスの後ろ、遠くのほうで何かが爆発する音がした。
「・・・なるほど、話し合いの時間はもうおしまいですか。」
アリスの頬に一筋の赤い線が付き、そこから赤い血が垂れる。
「アリス・マーガトロイド・・・最期に言い残す言葉はあるか・・・?」
慧音は今までに誰も見たことの無いような形相で睨みつけた。
その般若か阿修羅のような形相に里の人間達はおろか紫ですら凍りついた。
「その言葉をそっくりそのままあなたに返しますね。」
「覚悟しろ・・・今日がお前の命日だ!!!」
慧音はまた次の弾幕の準備を始めた。
アリスは何も言わなかった。ただぞっとするほどの狂気に満ちた笑顔をその顔にたたえた。
(や・・・やばい・・・こいつ完全に狂ってるわ・・・。)
紫のババァブレインはやっと現在の状況に付いて来れた様だ。
「ア、オイシソうなこドモ・・・。」
文は阿求の空になった頭を捨てた。
文の視線の先に居たのは手に近所で買ったコロッケを持った一人の太り気味の男の子だ。
「ほえ?」
文はニヤニヤしながら手に持っていた扇を振り上げた。
「危ないっ!!」
誰かが叫んだ。
その声に反応した慧音は振り返った。
「うわあああ!!」
その視線の先には真っ先に自らの命の危険を感じ取り横っ飛びに自分の重たい体を退けようとする少年が居た。
「鉄平!!!」
慧音がその少年、自らの教え子の鉄平を庇う為に駆け出した。
しかし遅すぎた。
ひゅっ・・・。
少年の脇を何かが通り過ぎた。透明な何か、いやそこの空気が歪んだようにも見えた。
ばしゅぅ!
目の前で少年の横腹が裂けた。慧音の目の前、ほんの3メートル先で。
「あ、あぁ・・・。」
少年は何もわからないまま地面に倒れた。
どさっ!
慧音は勢いあまって地面に倒れこんだ。慧音は上体を起こし土ぼこりだらけの顔で少年の方を見た。
「・・・鉄平・・・?」
少年は腹から多量の血を流して倒れていた。ピクリとも動かない少年の周りを赤い水溜りが囲ってゆく。
「鉄平・・・おい・・・。」
慧音は少年の元へと近づいた。少年の顔が慧音の方を向いた。
「・・・せんせぇ・・・痛い・・・助けて・・・。」
慧音は少年に手をさし伸ばした。少年の手が慧音の服の袖をつかんだ。
「・・・鉄平・・・鉄平・・・!」
慧音はただ呆然としたまま鉄平の顔を見つめていた。その間にも彼の手から段々と力が抜けていく。
「先・・・生・・・・・・。」
慧音の服の袖から少年の手が離れた。そのまま少年はぐったりと動かなくなってしまった。
「鉄平・・・鉄平!・・・起きろ!・・・おい・・・鉄平!」
少年は少しも動かなかった。
少年の顔は少しずつ青ざめていった
慧音の体がわなわなと震え始めた。頬に一本、また一本と涙が伝った。
「鉄平・・・そんな・・・嘘だ・・・。」
嘘だ。起きろ。慧音は何も答えない少年に向かってぼそぼそとつぶやき続けた。
「鉄平・・・そんな・・・嫌だ・・・鉄平・・・鉄平・・・。」
慧音はショックでもはや完全にまともな思考を失ってしまっていた。
アリスは目の前で起きていることに身震いした。
(ちんけなお涙頂戴シーンでもリアルでやるとゾクゾクさせられるわね・・・。)
アリスは性的興奮にも似た感情を覚え思わず口元を緩ませた。
「えへヘ・・・ゴハン・・・ゴハん・・・。」
文は呆けた笑顔のままふらふらと二人の所へ近づいてきた。
しかし文と慧音たちの間に誰かが立った。紫だ。
「死にたくなかったらもうこれ以上人を傷つけるのはやめなさい。もしNOというのであれば私は容赦しないわ。」
紫は文に向かって忠告をした。文が紫の言葉を聞いて正気を戻すという非常にわずかな可能性をかけて文に忠告したのだ。
紫は操られて残虐な行為に及んだ文を出来れば傷つけたくなかった。
「さぁ、撤退するなら今のうちよ。」
文はただニヤニヤとしながら紫に言い放った。
「・・・ジャマ・・・どいテ・・・。」
紫は悲しげにつぶやいた。
「仕方ないわね。実力行使に出るしかないわね・・・。」
そのときだ。紫は肩を誰かにグッとつかまれたような感覚を感じ、そして体を横に思いっきり押しのけられた。
「いてっ!!いたたた・・・。」
腰をさすりながら顔を上げた。紫を押しのけたのは慧音だった。
「ちょっと!なにするの・・・!」
紫は慧音への抗議の言葉を途中で飲み込んだ。
「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す・・・・・。」
慧音はぶつぶつとつぶやきながら文の前に出てきた。
完全に理性を失った目からはとめどなく涙が流れ出ていた。
「どいテ・・・。」
目の前に立ちはだかった慧音に向かって文は表情一つ変えずに言った。
「ねエ、ドイテ・・・!!」
どしゅぅ!!ずごぉ・・・!!
慧音は至近距離から文に弾幕を食らわした。
文は寸前で扇で防いだが反動で吹き飛ばされ後ろにあった魚屋に突っ込んだ。
「慧音・・・?」
紫がつぶやきかけたその時だ。
魚屋に立ち込めている煙が膨れて、そこから煙の塊が飛び出した。慧音はその塊に弾き飛ばされ、2mほど飛んで地面に落ちた。
煙がかき消された。半壊した魚屋から文が出てきた。文の服はあちこち破れかけていた。文は地面に落ちた慧音を見た。慧音の服や肌には鋭利な刃物で切られたような細かい切り傷が無数についていた。
大小の細かい切り傷がめいめいに血を流しだす。しかし慧音は傷だらけの体を起こし立ち上がった。その程度の傷は彼女の怒りを止める理由にはならなかった。
文の顔からは薄気味悪いニヤニヤ顔は消えていた。
「・・・ごシュジンさま、あイつジャマ。」
アリスが不敵な笑みを浮かべた。アリスの体はもはや半分以上が黒い霧になって霧散し始めていた。
「あいつを殺しなさい。命令よ。」
「うああああああああああ!!!」
怒号があたり一面に響いた。文の怒号ではない。
慧音は文に無数の弾幕と光線を浴びせた。あたりはその光で太陽の光がかすむほどに輝く。
閃光が止み辺りが煙に包まれた。風が少しあったためか煙はすぐに晴れた。
「ごほ!ごほ!慧音!!落ち着いて・・・あれ?」
文も慧音も跡形も無く消え去っていた。二人が居たところにはただ50cmほどえぐれた黒こげの地面しかなかった。後ろの魚屋は慧音の弾幕が被弾したのか光線の熱の所為かわからなかったが黒い煙を立ち上らせながら燃えていた。あたりに魚が焼ける生臭い臭いが漂う。
「あれ・・・二人はどこへ行ったの・・・。」
もしかして二人とも吹き飛んでしまったのか?いや、だとしたらあたり一面に破片が散乱しているはずだ。
「・・・なんてこった・・・。」
自分の店を燃やされた魚屋の主人がつぶやいた。自分の店ではなく、上を向いて。
ほかの通行人たちもあ然としていた。
とりあえず虫の息の少年を腰の痛みに耐えながら抱きかかえ安全なところに移そうとしていた紫も上を向いた。
慧音の周りを文が飛び回っている。上に下に右に左に前に後ろに、げたげたと下品な笑い声を上げながら扇を振り回し続けた。扇を振り回すたびにそこから衝撃波が発生し、慧音の体に多くの切り傷をつけた。
しかしその透明な刃も慧音の激しい怒りを止める理由にはならなかった。慧音は怒号を上げながら文に向かって弾幕を放っていた。しかしその弾幕はもういつもの左右対称の整然と整った弾幕ではない。玉の数、大きさ、方向すべてがめちゃめちゃだ。
「げへへへへ!へたくソ!!ヘタくソ!!」
「うがああああ!!よくも鉄平を!!死ね!!死ね!!死ね!!死ねええええええ!!!」
もはや慧音にはいつもの理性的な面影は微塵も無かった。どれだけ翻弄されようとも体にどれほど傷を受けても文に立ち向かい続ける。額の切り傷から流れた血が充血しきった目から流れ出した涙と混ざり頬を赤く染める。まるで血の涙を流しているように見えた。
「この子をお願い!なるべく安全なところへ運んで頂戴!」
紫が少年を近くに居た通行人に託した、その時だ。
ちゅどどどおどおおどおおおん!!!
赤と青の無数の弾幕が空から降り注いで地面に一列の穴を開けた。
あたりから住人の悲鳴が上がった。
「うあああ!!熱い!!痛い!!」
煙を上げる黒こげの穴の隣で一人の初老の男が自分の右腕を抱えてうずくまっていた。慧音の弾幕の流れ弾に被弾してしまったのだ。
しかし慧音はそんな地上の様子にも気づかず文めがけてむちゃくちゃに弾幕を放ち続けた。
外れた弾幕は四方八方に散らばり人里のあちらこちらから煙を立ち上らせた。
紫は急いで慧音のもとへ飛んでいった。しかし高速で飛び回る文を追いかけながらしっちゃかめっちゃかに弾幕を張る慧音に紫はなかなか追いつけない。二度ほど慧音の弾幕に当たりそうになった。
「はっはッハっはっは!!!オソイヨ!!!コッチまデオイデ!!!ゲヘヘヘヘ!!!」
「待ちやがれこの殺人鬼がああああ!!!八つ裂きにしてやる!!殺してやる!!!」
これ見よがしに慧音の視界の中を縦横無尽に飛び回る文に慧音は闇雲に弾幕を発射し続ける。
外れた弾幕が人里の民家の屋根を穴だらけにしてビームが公衆便所を吹き飛ばした。しかし慧音の怒りは収まらない。
目の前でわが子同然の生徒を傷つけられ激昂した慧音の目にはもはや文、いや、愛する者を傷つけた殺人鬼の姿しか映っていなかった。
「ゲタゲタゲタゲタゲタ!!!!!」
文が君の悪い笑い声を上げながらいきなり錐もみし墜落するように地面へ急降下した。地面に墜落するぎりぎりのところで体勢を立て直しまるで地面に張り付くように飛び始めた。
人里の民家の間の道を地上3mの高さを保ったまま猛スピードで飛び回る慧音と文。そして二人を追いかけ民家の上を飛ぶ紫の三人が人里を飛び回る。
慧音は文に向かって弾幕を飛ばすが動きの早い文には少しも当たらず、周りの建物の壁や地面に穴を開けるばかりだった。
「慧音!!挑発に乗っちゃダメ!!!こんなところで弾を撃たないで。」
紫の言葉も慧音には届かなかった。慧音は怒り狂う雄牛のごとく暴走していた。
「死ね悪魔!!!」
慧音が放ったビームをまるで走り高跳びの背面飛びの様によけた。ビームはそのままそれて爆発するかのような土煙を上げながら地面をへこませ焦がした。
「ゲヘヘヘヘ!!!バーカ!!バーカ!!」
文は慧音を挑発しながら慧音に近づいた。慧音は文にさらに近づこうと加速した。
「慧音!!!危ない!!」
紫が叫んだその瞬間、慧音の目の前から文が消えた。そして目の前にあったのは道の突き当たりに建っていた長屋の端の壁だった。
どごおぉばきゃどがしゃどごぉぉん・・・。
慧音は壁に激突した。長屋の端三軒の襖から煙が漏れた。屋根がゆれて土煙を落とす。
慧音は長屋の端から一番目と二番目の部屋の壁に大穴を開けて三番目の部屋に墜落した。
「慧音!!大丈夫?!!慧音!!」
紫は三番目の部屋の障子を開けた。中には体中傷だらけになり畳に横たわっている慧音とその部屋の住人であろう男が腰を抜かしていた。その男は昼飯の途中だったようだ。あたりに真っ二つに折れたちゃぶ台と蕎麦、お椀の破片が散らばっていた。
「せ・・・先生・・・大丈夫ですか・・・?」
男はどうも慧音の元教え子のようだ。
慧音はごぼっとむせた。畳が赤く染まる。
「慧音!!大丈夫??慧音!!」
もはや慧音の体力は限界に近づいていた。
しかし慧音はぼろぼろの体を起こして天井を睨み付けた。
「・・・殺す!!」
そして飛び立とうとしたその時だ。
「慧音!!やめなさい!!これ以上戦ったら死んじゃうわ!!」
紫が慧音を羽交い絞めにして押さえつけた。
これ以上人里を破壊されたらたまったものではないし第一慧音の命が危ない。
「がああああ!!!放せ!!!放せ!!!はっなっせっ!!!」
しかしまだ怒りが収まらない慧音は紫の腕の中で大暴れする。もはやいつもの理性的な様子は見て取れない。
「放せやクソババァァァァァアアアアア!!!!!」
ごっ!!
「おまぁ!!!」
紫を振りほどこうとして慧音は思いっきり後ろにのけぞった。慧音の固い後頭部が紫の顔面を容赦なく打ち付けた。
「死ねええええ!!!!」
紫の束縛から解放された慧音は天井に向かって弾幕を放った。弾幕はいとも簡単に屋根を吹き飛ばした。慧音はそのまま怒号と共に飛んでいってしまった。
「ぐぐぅぅぅ・・・。こんのドアホハクタク!!!!」
鼻血をたらす鼻を押さえながら叫ぶ紫。しかしそこに大穴の開いた天井はあっても慧音は居なかった。
「ちくしょー!!どうやったら止められるのよあいつ!!!」
紫は鼻血を流しながら地団駄を踏んだ。
その時だ。
「がああ!!放せ!!放せ!!クソババァ!!!」
「紫!!!スキマをあけろ!!!」
頭の上のほうから誰かの大声が聞こえた。
「え?!誰?!」
「早く!!早くしろ!!!」
紫が慌ててスキマを空けたその瞬間。スキマの中に向かって青いものが落ちてきた。
紫がその青いものを慧音だと理解する前にそれは隙間の中へと消えていった。
「い・・・いったい何が・・・。」
呆然とする紫の上から声が聞こえた。
「まったく・・・慧音は怒るとすぐ見境なくなっちゃうんだから・・・。しばらくそこでおとなしくしてな。」
紫は上を向いた。そこにはとても懐かしい顔があった。
「・・・神奈子・・・。」
そこには空中で胡坐をかく神奈子が居た。神奈子は少し恥ずかしそうに笑っている。
「へへ・・・遅くなってごめん。」
「神奈子・・・。」
紫の顔から思わず微笑みと鼻血がこぼれる。
「よく帰ってきてくれたわ・・・。ありがとう。」
神奈子が手を差し伸べ紫の手をとった。
「でも何でいきなり・・・・。」
「理由は後で話すよ。そんなことよりさ、あいつを全力で倒そうか・・・。」
その時だ。
「ちょっと待ったあああ!!!」
しゃっ!カーン!!
突然障子が勢い良く開いた。
「白玉楼のお嬢様差し置いて二人だけでいい顔しないで頂戴!!!」
「幽々子!!!」
扉を開けたのは幽々子だった。
「話は阿求から聞いたわ!!今すぐに戦いましょ!!」
幽々子がいきがっていたその時だ。
「あらあら、ババレンジャーのブレインを忘れてもらっては困るわね。」
部屋の戸口にもたれかかるババアが一人。永琳だ。
「永琳!!きてくれたのね!!!」
永琳は自慢の銀髪をかき上げた。
「うーん・・・来たというか追い出されたというか・・・。」
紫は涙ぐみながら3人を見た。
「皆・・・皆戻ってきてくれてありがとう。」
「げへへへへへへへへ!!!!」
しかし感動のひと時も下品な笑い声にかき消された。
天井に開いた大穴から文が真上から急降下してババァたちに向かって来るのが見えた。
「しまった!!上をとられたわ!!!」
紫が叫んだその時だ。
「げたげたげたっぼはぁ!!!」
いきなり飛んできた何かが文の腹に命中した。文はババァたちの視界から消え去った。
文の腹に命中したものが紫の目の前に落ちてきた。「4500円」と書かれた値札が付いているこのハンマー、これは・・・。
「え!?」
紫が呆けたような声を上げたその時だ。
「皆さん!!私のこと忘れないでくださいよ!!!」
穴の上から白蓮が颯爽と降りてきた・・・が顔から着地してしまった。
「白蓮!!大丈夫?!」
「あいてて・・・大丈夫ですよ・・・。」
白蓮は鼻血をたらしながら起き上がった。
「白蓮!!あなたも戻ってきてくれたのね!!ありがとう!!」
「いえいえ・・・ちょっと粉わさび切らしてたもので・・・。」
白蓮は頭をかきながら答えた。
「さて、役者もそろったみたいね。」
「グアアア!!ジャマスルヤツだレダ!!デテコイ!!デテコイ!!!コロス!!コロス!!」
「むむっ!!悪人に正体を聞かれたら答えるのが正義の味方の義務ね!!いくわよ!!1.2.3.・・・ウォリャッ!」
そして5人は長屋の天井の穴から勢い良く飛び出した。
「スキマの心は正義の心!悪をスキマの彼方に葬り去る女!ババァパープル八雲紫!」シャキーン!
「オンバシラは悪を打ち砕く正義の刃!ババァブラウン八坂神奈子!」シュピーン!
「親の健康子の健康!大事な人の健康を守る女!ババァレッド八意永琳!」ピキーン!
「悪党たちを冥界の旅にいざなう女!ババァブルー西行寺幽々子!」ピカーン!
「此岸の崖っぷちから戻ってきた正義の味方!ババァブラック聖白蓮!」パァーン!
「5人そろって!超高齢者戦隊ババレンジャー!ただいま参上!」
5人がそれぞれ戦隊ものでお馴染みの名乗り口上ときめ台詞を叫び終わると同時に、彼女たちの後ろで爆音とともに紫、茶色、赤、青、黒の煙が噴出する。
「ギギギ・・・オマエラカ!!アヤノジャマスルヤツ!!!」
文は自分の邪魔をされたことに対してかなりご立腹な様である。
「悪いけどあいにく正義の味方の仕事は悪人の邪魔をすることなんでね。」
神奈子がせせら笑った。
「さぁ、覚悟しなさい!!!今までの悪行を償ってもらうわ!!!」
紫が無数の蝶のような弾幕を文めがけて展開した。
「ダマレ!!クソババァ!!」
文が扇を振るった。扇から出た透明な刃が蝶を粉々に粉砕する。
「何っ!!」
そして文はまた扇を振るった。
「シネクソババァ!!!」
「うわわ!!!」
「ひいいぃ!!」
神奈子に向かって発射された透明な刃を神奈子はオンバシラで何とか防いだ。隣に居た白蓮もハンマーのヘッドではじいたようだ。あたりに金属音が響く。
「ひいぃぃ!!危なかった・・・。」
「ああ!オンバシラが真っ二つだ!!!」
紫は冷や汗をたらしながら文を見た。彼女の脳内に刃物で切られたような傷を体中に付けられた慧音の姿が浮かんだ。
「アレはいったい何なの・・・?」
「あれは『鎌いたち』ね・・・間違いないわ・・・。」
永琳が言った。
「何?!知ってるの永琳?!」
永琳は自慢の銀髪をかき上げた。
「ええ、鎌いたちというのは激しい気圧差によって旋風を巻き起こされ『空気の刃』が出来る現象よ。いうなれば衝撃波にも近いともいえるわね。」
「すごいわ永琳!!あなた物知りなのね!!」
永琳はふふんと鼻を鳴らした。
「伊達に月の頭脳名乗ってないわよ。」
永琳が自分の前髪を払ったとたん、首が取れた。首の断面から血が噴水のように噴出した。
「ぎゃああああえぇぇぇりぃぃん!!!!!」
永琳の首と体が真っさかさまに落ちていった。先ほど飛び出て来た長屋に墜落した。先ほどの住人の男の悲鳴が聞こえた。
「ギャハハハハ!!!シンダ!!シンダ!!!」
文が下品な大声を上げて笑った。
「何してんのよこのアホ天狗!!解説役に攻撃するなんて卑怯よ!!」
「このアンポンターン!!」
「不意打ちしていいのは正義の味方だけよ!!」
「このヤリマンビッチめ!!!ケジラミもらっちまえ!!」
紫たちが抗議の声を上げた。
「アンタ何してんのよこら!!!折角の月の頭脳のカリスマの見せ所だったのに!!!」
下から復活した永琳が相当ご立腹な様子で飛んできた。
「もう許さないわよ!!!」
永琳はどこからとも無く弓を取り出した。
「喰らえ!!!」
弓はひゅうと音を立てて文めがけて飛んでいった。
どしゅっ!!
文の右腕に弓が刺さった。
「よっしゃ!!大当たり。」
永琳がガッツポーズをとった。
しかし文は微動だにしない。
文の口角がにやりと歪んだ。
ババレンジャー達はあ然としながらその様子を見た。白蓮はびびって目をつぶり両耳をふさいでいた。しかし文はまったく痛がる様子を見せない。
「ケケケケケ・・・・。」
「ひ・・・ひいいい!!!死ね!!死ね!!」
永琳は弓をさらに取り出し立て続けに3発はなった。
どしゅ!どしゅ!どしゅ!
1本は腹に、1本は胸に、1本は右足に。文の体に3発立て続けに矢が刺さった。しかし文は少しも表情を崩すことは無い。
文はおもむろに矢の刺さった腕の傷を指でほじくり始めた。
傷口から血があふれて文の右手とその手の中にある扇をぬらした。ぐちゃぐちゃと言う音がババレンジャー達にも十分聞こえた。すっかりびびりきってるババレンジャー達に向かって、文は舌を出してげへげへ笑いながら答えた。
「ゼーンゼンイタクナイヨオオォォォ!!!!」
彼女の舌はその先から涎を振りまきながらひらひらと振るえ、狂気に歪んだ目は血走って真っ赤だった。
その様子にババァたちはすっかりドン引きしてしまった。
「いやあああ!!化け物おおおお!!!」
「ひょえええええ!!!」
「ひいいなんまんだぶなんまんだぶ・・・。」
しかし紫は違った。
「皆!!何怖気づいてるの!!!正義の味方がそんなんでどうするつもりよ!!!」
「でも紫!!あんな化け物どうやったら対抗できるの??」
幽々子が半べそをかきながら叫んだ。
「そこはあんたが考えるところでしょ!!」
「何よそれ!!私に全部丸投げしてんじゃないわよ!!!」
幽々子と紫が敵を目の前にして仲間割れを始めてしまった。自分勝手なババレンジャーにはよくあることである。
「あんた達何やってんだよ・・・けんかしてる暇じゃないだろ!!!」
神奈子があきれたような声を上げて二人を制止した。
文はその間も奇声を発しながら腹の傷に手を突っ込んで矢を引きずり出していた。文が手を傷口から抜くと鏃と血と一緒に腸まではみ出てきた。
「でもどうしたらいいんでしょうか・・・?あんなクレイジィな相手に勝てる気がしません・・・。」
白蓮が頭を抱えてる脇で永琳は静かにその月面一のババァブレインをフル回転させ始めていた。
(う〜ん相手を圧倒するにはどうしたらいいかしらね・・・相手はどうも痛覚が無いだけみたいで別に不死身って訳でもないのよね・・・相手がビビるぐらいやばいことしてひるんだ隙に総攻撃しかけるなんて作戦もありよね・・・・・・あ、そういえばビビるで思い出したけど幽々子の料理マジでビビるぐらい激マズよね・・・あいつの作った料理食べると100%の確立でくだすのよね・・・あれで何枚私のパンツダメにしたことやら・・・そういえば今日は黒レースのスケスケパンツ履いてきたんだっけ・・・あれ裏が見えるぐらいスケスケなのよね・・・待てよ!・・・スケスケパンツ・・・スケスケ・・・。)
ぽく・・・ぽく・・・ぽく・・・ちーん!!
「いい作戦を思いついたわ・・・。」
永琳は持ち前のババァブレインをフルに利用したババァ式連想法から完璧な作戦を導き出した。
「ちょっと、紫。」
永琳は紫を呼んで耳元で自分の作戦を話した。
「なになに・・・ふむふむ・・・なるへそ・・・やってみる価値ありね・・・。」
「ゲヘヘヘヘヘヘ・・・オニク・・・オニク・・・。」
文は矢が刺さっていた傷口から血を流しながら幽々子にじわじわ近づいてきた。
「うわわ!!やっ!!やめなさい!!!私は美味しくないわよ!!!!」
幽々子は弾幕を放ったがビビり腰なせいで少しも当たらない。文がおもむろに攻撃態勢に入った。
その時だ。
「待ちなさい!!!」
後ろから凛とした声が響いた。
「永琳!!」
声の主を理解した幽々子は振り返った。
「・・・え?」
そこには確かに永琳がいた。いたのだが・・・。
「永琳・・・何その格好・・・。」
永琳はすっぽんぽんにガーターベルト一枚で頭に黒のスケスケパンツを被り頬を膨らましていた。すぼめた口が肛門を髣髴とさせる。薄いパンツの生地の下から妙に鋭い眼光を放っている。
「残念!!私は八意永琳ではない!!!私は月の向こうのKetz-18星雲(けっつじゅうはちせいうん)からきた正義の星雲戦士ケツ顔星人だプップスー!!」
幽々子の口があんぐりと開いた。
「な・・・何してるの・・・。」
神奈子が目を点にしている。
「永琳・・・気は確かか・・・?」
しかしケツ顔星人は憤然と答えた。
「だから私は八意永琳ではないと言っているだろう!!!正義の星雲戦士ケツ顔星人だプップスー!!!以後お見お知りおきを!!!」
「ど、どうしよう紫!!永琳があまりに相手がヤバすぎて変になっちゃったわ!!!」
幽々子はびーびー泣きながら紫に泣きついた。
「大丈夫よ。」
しかし紫の反応は涼しげだった。
「狂気に染まった相手をそのさらに斜め上を行く狂気で対抗するなんて彼女らしい考え方ね・・・。」
紫の顔からは不敵な微笑みすらこぼれていた。
「紫・・・何言ってるのかわかんない・・・。」
幽々子はあきれ返っていた。
いつもは能天気な白玉楼のお嬢様幽々子もこの状況に絶望しきっていた。この期に及んで紫まで変になってしまった。
(ああ・・・せっかくババレンジャーが復活したのにもう壊滅の危機だなんて・・・どうしたらいいの・・・?)
「・・・ナンナンダ、オマエ。」
「何度も言わせるな!!!私は正義の星雲戦士ケツ顔星人だプップスー!!!今日は悪事を働く貴様を退治しにはるばるここまでやって来たのだプップスー!!!」
永琳はますます頬を膨らませた。
「さあ!!貴様を私の自慢のA-Gate(エイ・ゲート)で一網打尽にしてやる!!かかって来いプップスー!!!」
ぶびびびちびちびち!!!
そういって永琳はすぼめた口から妙にリアルな屁の音を出した。音だけのはずなのに今にも悪臭がにおってきそうである。
「ウウウ・・・ナンダコイツ・・・。」
「ははははは!!!!私のA-Gateから漏れ出したエネルギー波に相当びびっているようだな!!!」
そういうと永琳、いや星雲戦士ケツ顔星人はプーッスッスッスと笑い声を上げた。
「うおおお!!突撃いいいい!!!」
「ウワワワワワ!!!クルナ!!クルナ!!」
文は扇を振り上げ空気の刃を放った。しかし永琳の不意打ち攻撃で気が動転してうまく当たらない。
「それぃ!!!捕まえたぞ!!!悪人め!!!」
永琳は文の扇をサマーソルトキックで弾き飛ばすと文に抱きついた。そして永琳は肛門のようにすぼめた口を文の口に近づけた。
「さぁ改心しろ!!!キッス・マイ・アス!!!」
「グアアアアヤメロ!!!キタナラシイモノヲチカヅケルナ!!!!ヤメロバカ!!!」
文が嫌悪感むき出しで抵抗する。しかし星雲戦士ケツ顔星人はお構いなしである。
「ギャアアヤメロウムッ・・・ング・・・ウムゥゥゥ!!ムゥゥゥゥ!!!」
「ぶちゅうぶりゅびびびぶちゅぶちゅびちびちむちゅぅちゅっちゅうぶりぶり・・・。」
抵抗する文を抑えて永琳は無理やり文の唇を奪った。あたりに熱烈なキスの音と無駄にリアルな屁の音が響いた。
「う・・うわ・・・。」
作戦の全容を知っている紫もさすがにドン引きした。やはり目の前にするときついものがある。
抵抗していた文が段々と抵抗しなくなってきた。いや、動かなくなって来た。
「ウギギギギ・・・モウ・・・ヤメ・・・ロ・・・・。」
星雲戦士ケツ顔星人の悪夢の接吻が彼女のエナジーをすべて奪い取ってしまったようだ。
「プップスー!!今よ紫!!」
「よし!!ウォリャッ!!!!」
その時だ。文の上下左右斜めにスキマが開いた。そして四方のスキマから何本もの緑色の気持ち悪い触手が飛び出し文の手足を絡めとった。
「ふっふっふっふ・・・作戦成功ね。」
永琳はお尻顔をやめて頭のパンツを取ると不敵な笑みを浮かべた。
「ナン・・・ダト・・・。」
「まんまと引っかかったようね。鴉天狗さん。」
文は激しく暴れて触手をはずそうとするががっしりと永琳に羽交い絞めにされて動けない上触手はますます絡みついてはなれない。
「クソッ!!!ハナセ!!!」
「ふっふっふ・・・完璧な作戦だったわね。」
そう、実は永琳の奇行は非常にすばやい文の動きを封じるための茶番劇だったのだ。
「すごい・・・あの人たちすごすぎ・・・・・・。」
「紫・・・あたしゃあんたのこと超えられそうにも無いよ・・・。」
「もうすごすぎて何がなんだか・・・。」
永琳達の意図をやっと理解したババレンジャー3人は感銘のため息を漏らした。
「ババァドモ!!!!ナニヲスルキダ!!!」
文は手足をばたつかせながら抵抗した。しかし触手は余計に絡まって外れそうも無い。
紫は文の周りにさらに多くのスキマを展開した。
紫のどこまでも冷徹な目が文を見つめた。文は抵抗することも忘れてその目を見た。
「自らの欲望の赴くままに殺戮を繰り返す悪しきものよ、永遠の眠りにつきなさい・・・。」
幻想郷最強を誇る大妖怪、八雲紫の再臨である。
そして紫は自分の目の前にスキマを展開し、スキマの中へと無数の弾幕を発射した。その瞬間永琳も腕を解き上のほうへと飛び去った。
「ガアアア!!ナニヲスルキダ!!!ハナセ!!!ハナセ!!!シネ!!クソババァ!!!シネ!!!」
文が紫に悪態をついた。しかし紫の表情は何一つ変わらなかった。
その時だ。
永琳が突然腕を放し上へと飛び去った。そして文の周りに展開されたスキマから無数の弾幕が飛び出てきた。
「アギギギガガガアアアガガガアガッガアアアアア!!!!」
四方八方から発射される激しい弾幕が文の体をどんどん削っていった。
文の腹は破けて内臓が飛び出し撒き散らされ、体中の皮膚がえぐれ肉片と血を撒き散らした。
今の文には痛覚は無い。しかし体が削られることにより少しずつ生命が脅かされていることに気づいた。
「よっし!作戦大成功ね!!!」
どんどんぼろぼろになってゆく文の頭上でガッツポーズをとる永琳。
その時だ。
ずしゃ!!!
上から降ってきた弾幕に右の乳をもがれた。
「ぎゃばぁあ!!!???」
慌てて永琳が頭上を見るとそこには紫のつくったスキマがあった。
「あぎゃああばばばばばばば!!紫!!!何で私の逃げる方向にスキマ作っちゃったのよ!!!あがぼぼぼぼぼおおお!!!!」
弾幕を頭から浴びせられ血と脳漿と肉片をばら撒いている永琳を見ながら、紫はZUN帽をぽりぽり人差し指の先で掻きつつしょんぼりと答えた。
「ごめん、間違えちゃった・・・。」
「クソウ!!!ババァドモ!!!ガバボァ!!!」
文は怒号を上げながら怒鳴り散らしていたがその声も段々と弱まっていった。
「オボエテイロババレンジャー!!!!アヤノゴシュジンサマガホウッテオカナイゾ!!!ウガアアアアアアアアアアアア!!!」
文は最後に恐ろしげな怒号を上げて息絶えた。それと同時に触手が解けてスキマが閉じた。
文の血だらけになった体はぐちゃりと地上に墜落し、それっきり動かなくなった。
ついでに文の隣にぐちゃぐちゃの永琳もおっこちてきた。
紫はそっと文の傍に降りた。そして神妙な顔で少し文の頭を靴のつま先で小突いてみた。
つんつん。
あやはピクリとも動かなかった。紫の表情は笑顔へと変わった。
「・・・・・勝った・・・・悪は倒されたわよ!!!!私達の勝利よ!!!!」
「よっしゃあああああ!!!」
あたりにババァたちの勝利の雄叫びが響いた。
ババレンジャー完全復活の瞬間であった。
霧の湖のバカ十字団の前線基地のコテージ、その下にある暗い地下室の一室にチルノはいた。白い毛と真っ赤な血溜りの真ん中で跪き、嗚咽を漏らしていた。
「ぐすっ・・椛ちゃん・・・ひぐぅ・・・ごめんね・・・椛ちゃん・・・・・・騙してごめんね・・・・・でも・・・でもこうしないとあたいここに居られないの・・・ぐしゅ・・・ごめんね椛ちゃん・・・。」
チルノは椛の世話をしているうちに椛に上がうつってしまった。最初は相手を油断させるために椛と仲良くなろうとしたが人を疑うということを知らない椛はチルノの言葉を何一つ疑おうとはしなかった。いつしか二人の間には信頼関係が生まれた。
チルノにとって文は友達に近い存在になっていた。しかしチルノは彼女を裏切った。要するに彼女をアリスに売った。その結果がこれだった。
「ひっぐ・・・椛ちゃん・・・椛ちゃん・・・。」
チルノの涙が椛の血の上に落ちた。透明な涙は一瞬にして赤黒い血と同化した。
チルノのすすり泣きは地下室の中で響き続けた。
「くそおおおおおお!!!あのアホ鴉!!!!何負けてんのよ!!!」
コテージにアリスの怒号が響いた。
アリスは怒りのあまり訳のわからない叫び声を上げて机をけった。
机の上に置かれていたアリスが遠くを見るときに使う魔法の鉛の水盤が机から落ち、あたりに水を振りまいた。水が赤いカーペットをぬらす。
「くっそ・・・あのババァども思ったより強いわね・・・・。」
アリスは悔しさをかみ締めるように歯軋りした。
「クソババァ共・・・殺す・・・必ず殺す!!!!」
アリスは誰かに誓うかの様につぶやいた。
「さて、そういえばあいつらの魔法増強してなかったわね・・・。」
アリスは何かを思い出したようつぶやいた。
「後で命令しておかないとね・・・。」
「こいつですね。私を殺した犯人は。」
ぼろぼろになった文を見下ろしているのは、文に殺された阿求だ。
「よくも私を殺してくれましたね。これはお返しですよ。」
ぼこ!!
阿求は文の血だらけの顔をけった。横を向いていた文の顔が上を向いた。
「まったく頭にくるツラですね。もう一回けってあげましょうか。」
ぼこ!!
阿求はまた顔に蹴りを入れた。
「あらあらなんかもっとけりたくなってきてしまいましたね。」
ぼこ!!ぼこ!!
「何か気分が乗ってきましたよ!」
ぼこ!!ぼこ!!ぼこ!!
「ヘイヘーイ!!!」
ぼこ!!ぼこ!!ぼこ!!ぼこ!!ぼこ!!
「ヘイヘイヘイヘイヘーイ!!!!」
阿求はさっき殺されたはずだ。しかし何故ここで文の顔に蹴りを入れ続けているのか。
実は阿求はもう死んでいる。もう死んではいるが転生の儀式の前に死んでしまったので稗田の血筋のせいで亡霊になってしまったのである。
阿求自身はこの世に未練など何も無かったが病弱な肉体から開放されたため少々テンションが上がっているようだ。
「ヘイヘイヘイヘヘーイ!!ヒャッハアアアア!!!」
ノリノリになって文の死体をけり続ける阿求の近くでババレンジャーの5人は再会した喜びを分かち合っていた。
「皆、良く帰ってきてくれたわね。ありがとう。」
紫の言葉に皆が照れた。
「いやぁ阿求が来たから・・・。」
「いやぁ弟子に追い出されちゃったから・・・。」
「いやぁ粉わさびを買いにきたら偶然・・・。」
神奈子は一呼吸置いて、答えた。
「実はさ、諏訪子が教えてくれたんだよ。」
「え?」
4人は同時に声を上げた。
神奈子は静かに語りだした。
「酔いつぶれて寝てたらさ、夢の中に諏訪子が出てきたんだよ。それでさ、こんなところで寝てる場合じゃない、人間の里で大変なことが起きてるって伝えてくれたんだ。私がここへ来れたのも、また戦う勇気が出たのも、皆諏訪子のおかげだよ。」
神奈子は切なげな顔をしながら言った。
「きっと・・・あの世から少しだけ戻ってきたのかもしれないわね。」
5人はしんみりとした気持ちで夕焼けを見た。
あたりにはただノリノリな阿求の掛け声とキック音だけが響き続けた。
しかし彼女たちは知らない・・・彼女たちが知らない間に悪人たちは着々と次の作戦に向けて不気味に動き出していることを・・・!
行け!超高齢者戦隊ババレンジャー!進め!超高齢者戦隊ババレンジャー!
そういえば紫のスキマに叩き込まれた慧音はいったいどうなったのであろうか?
時は少し戻ってここは八雲家。
藍がニコニコしながらお皿に盛られた煮物を台所から持ってきた。机の上にはおいしそうな焼き魚やお味噌汁が並んでいる。
橙がおわんにご飯を盛り付けて持ってきた。お昼ごはんの用意の真っ最中である。
「よし、じゃあ席について。」
「はーい。」
藍と橙は席に着いた。
「今日はいいお魚が手に入ったんだ。」
「わーいお魚大好きー!!」
橙はうれしそうに笑う。藍も橙が喜ぶのを見ながらうれしそうに微笑んでいる。
「いただきまーす!!」
二人同時にいただきますをした。その時だ。
「ぅぁぁぁぁぁああああああああああ!!!!!!!」
いきなり頭上から声がしたかと思うと。頭上にスキマが開いた。
ぐしゃーん!!!
食卓の上に何かが墜落した。
食器はすべてぶちまけられ、橙の帽子の上に焼き魚が着地した。
「・・・なっ・・・なんだぁ!!!」
藍が声を上げた。
めちゃくちゃになった食卓の上に血だらけで虫の息の青い服を着た女が倒れていた。
「ってあわわわわわわ!!!けっけが人だ!!!何か知らないけどけが人が降って来た!!橙!!!早く!!救急箱!!!救急箱!!!」
「ひょええええ!!」
二人は大騒ぎしながら慧音の手当てをした。結局二人はお昼ご飯は抜きになってしまったのであった。
超高齢者戦隊ババレンジャー
第8話 完
どうも、お久しぶりです。
大分間が開いてしまって申し訳ないです。
どっかのメンヘラ
作品情報
作品集:
12
投稿日時:
2010/02/26 15:04:46
更新日時:
2010/02/27 09:55:18
分類
幻想郷最凶のババァ軍団
老害
超お久しぶりだよ三級品
えーりん想像したけど、自分でも引くわ←
〇 情がうつってしまった。
ではないですか?