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『貴方が愛したマリス砲』 作者: 暇簗山脈

貴方が愛したマリス砲

作品集: 12 投稿日時: 2010/02/27 11:20:11 更新日時: 2010/02/27 20:20:11
"霧雨魔理沙”なんて最初からいなかった。
人形師アリス・マーガトロイドは自室のベッドに籠り、震えていた。
今までのモノは幻想だったのだと。さっき私が見たモノは悪夢ではなく、現実なのだと。
彼女は鬱病の気があるのか知らないが、ネガティブな方向に物事を捉えがちだ。

「アリスー、いないのー?返事してよー」

そう、さっきから可愛らしい声でアリスを探している”ソイツ”が彼女をこれ程までに震え上がらせる原因なのだ。
普段のアリスだったら「ブッてんじゃねえわよ」とか言いながら叩きのめす所であったが、
奇妙なことにソイツが余りにも「外見だけは」彼女の知り合いに酷似していたのだ。
ソイツがこの家にやって来た時、2階の窓から玄関を覗くと確かにソイツは知り合いの顔だったのだ。
しかし、ソイツが喋りだした瞬間に「アレは私の知り合いではない」、アリス・マーガトロイドはそう判断したのだ。
そう判断したから黙ってベッドに籠るという回避行動に移った所、ソイツが勝手に侵入してきてしまった。迷惑な話である。

「アリスぅ・・・アハッ☆やっぱり部屋にいるのねー」

ソイツがアリスの部屋の前に立っている。
そう考えただけでアリスは気が狂いそうだった。

「アイツは違う・・・アイツは人間じゃない・・・そう、アイツは・・・精液!精液よ!!」

清楚な顔立ちからは信じられない程、失礼なことを言う人形師である。
アリスは精神の自己防衛のために、ソイツを精液認定したのだ。人としてどうなのだろうか、いや人ではない。

「うふふ、アリス〜私ね〜」
「今時の精液は喋るのかしら!?」
「何言ってんのよ〜」

そう言いながらソイツはアリスの布団を引き剥がそうとする。

「やめなさい!コイツ・・・ホーミング機能を持っているの!?ホーミング精子だわ!!」

ホーミング精子はお構いなくアリスをベッドから引きずり降ろそうとしてくる。
流石のアリスもキレた。

「このォッ」

アリスは、今も尚、足首を引っ張って引きずり降ろそうとしてくるホーミング精子の顎に蹴りを入れてやった。

「やめ゛っ゛」

ソイツは蹴りあげられた衝撃で軽く悲鳴を上げると脇に抱えていた瓶を床に落とした。
そんなことはお構いなしにと、ホーミング精子に馬乗りになるアリス。

「アンタなんか死ねばいいのよ!!」
「ギャイッ」

アリスが殴るたびに『メコォ』『グシャア』といったような、昔のスポ根漫画で人を殴る時みたいな効果音が発生する。
凄い力だ。魔界で相当ヤンチャしてたんだろう。

「ハァ・・・ハァ・・・」

時が経つのも忘れて殴り続けていたアリス。
返り血で顔と手が真っ赤だ。
ふとホーミング精子の顔を見る。

「・・・・・・・・・・・・・」

お互い喋らない。
沈黙が流れた。

「・・・ねぇ、まさか死んだの?」
「いだい・・・やべでよアリス・・・」

ソイツは辛うじて返事をした。 
ソイツの顔をまじまじと見つめるアリス。
血に塗れた顔面に、白黒のエプロンドレス。
金髪ヘアーに三角帽子。
紛れもない。彼女は霧雨魔理沙その人であった。

「な、なんで・・・魔理沙・・・」

アリスは気づいてしまった。彼女はやはり霧雨魔理沙であったのだ。
ただ口調が変わっただけで「他人の空似」だと勘違してしまったのだ。

「なんでそんなキモい口調になったまま死んでしまうのよぉ!!」

唯一の人間の友人の死(死んでいないが)に絶望するアリス。
友人をもっと増やすのが彼女の今後の課題だ。

「し・・・死んでない・・・勝手に殺ずな・・・」

ホーミング精子の掠れた呟きはアリスの泣き声に掻き消された。












もうあれからアリスは2時間もベッドでうつ伏せになってブツブツ言っている。
もう外はとっくの間に日が暮れて真っ暗だ。
顔の痛みが引いてきた魔理沙はアリスが落ち着くまで待とうと思ったが
このままでは埒が明かないと思い、上体だけ起こして思考する。

「うーん・・・イメチェンで口調を乙女っぽくしてみたんだがなぁ・・・やっぱり駄目か」

ちなみにアリス邸に来る前に、既に博麗神社でも実践してみたのだが、
霊夢が泣きながらゲロを吐いたので凄い傷ついてアリスに慰めてもらおうとやって来たのだ。
その結果がこれである。折れた歯の治療に思いを馳せる魔理沙であった。
ふと、魔理沙は自分が持ってきた瓶が転がっているのを見つけた。
その瓶は両手に抱えられるぐらいの大きさで、中に茶色い液体が入っている。決してウンコではない。

「そうだ・・・いいこと思いついたぜぇ・・・」

魔理沙は血まみれの顔でニタァと笑う。
アリスのベッドに近づくとブツブツ呟いているアリスに近づく。
布団の中を覗き込むと凄い形相で「わたしが・・・わたしが・・・」と言っていた。怖い。
魔理沙は布団を思いっきり引き剥がして部屋の隅に放り投げると、

「ハロー Ms.マーガトロイド」

と嬉しそうに叫びながら瓶の中の液体をアリスの体中にぶっかける。
やたらと粘性を持ったそれはアリスの体をネッチョネチョにする。

「あぶっあ、な、何よこれ!?」
「それはな・・・みたらし団子のタレだ」
「なんでそんなものを!?」
「お前が和菓子作りたいって言うから持ってきてやったんだがな、計画変更だ。今から私とネチョネチョしようぜー」

そう言ってアリスに抱きつく魔理沙。
みたらし団子のタレでベッタベタする。これが本当のネチョネチョ。

「あ、貴方は・・・魔理沙!?何故生きているの!?」
「だから最初から死んでないぜ!」

とりあえず魔理沙を引き剥がすアリス。

「そっかぁ・・・死んでなかったのかぁ・・・」
「なんだよその含みを持ったような言い方・・・」

安心してその場にへこたれるアリス。

「おい、安心するのは早いぜ・・・私がなぜ傷んだタレを無駄にしてまでお前にぶっかけたかわかるか?」
「傷んでるの!?」
「それはな、お前に顔を殴られた私の執念だ!!」
「くぅっ!」

既に体の力が抜けていたアリスだが、危険を察知し、急いで立ち上がろうとする。

「無駄だ!霧雨式☆ニードロップを食らえ!」

※霧雨式☆ニードロップとは・・・
 水鳥の如く空中に舞い上がり、鷹の如く相手の顔面に膝の一撃を食らわせる恐ろしい技。
 しかし最も恐ろしいのは、この技が相手に避けられた時の自分の膝の負担であるという。

フワリと浮かぶ魔理沙。
アリスは冷静な表情でベッドの下に潜り込んだ。
この間、実に1,27秒・・・ッッ

「ギャアアアアアア!!わ、私の膝がァァ!!」

見事、着地目標を見失った魔理沙の膝は床に全体重をもって叩きつけられた。
余りの痛みに転がって悶絶する。

「無様ね・・・」

ベッドの下から這い出てきたアリスは立ち上がると、魔理沙を見下ろした。

「いい眺めだわ・・・」
「あ、アリス・・・や、やめてくれ」

アリスから漂う殺気を感じた魔理沙は必死に懇願した。

「魔界でボコられ、春雪異変でボコられ・・・」
「わ、わかったアリス・・・話せば解る話せば」
「これは私の執念・・・マガトロ†ストンピング」

※マガトロ†ストンピングとは・・・
 「知らん・・・何それ」って言いたくなるほどどうでもいい技。
 殺傷力だけは無駄に高いので萃夢想や緋想天の時は自主的に封印したらしい。

アリスは足を持ち上げると、それを魔理沙の顔めがけて振り下ろした。

「うぉ!」

間一髪で避けた魔理沙。
額から嫌な汗が噴き出す。

「避けた・・・ですって!?」
「へっへっへ・・・最初はお前の変な勘違いで先制攻撃を許しちまったけどな・・・もう食らわないぜ?」

しかし両者共に疲れの表情が見える。
アリスがふらついた瞬間を見計らって魔理沙は行動に出た。

「今だッ!」
「きゃあ!?」

隙をついた突進でベッドにアリスを押し倒す。

「へへへ・・・パンツ見せろ」
「コイツ頭おかしいわ・・・」
「都会派なんだろ?パンツ見せろよ・・・」
「やめて!」

アリスの抵抗空しく、ロングスカートが引きずり下ろされた。
ドロワだった。

「許せねぇ!なんでお前、ドロワなんだよおおおおおお」
「日替わりだからよ」
「じゃあお前は日替わりでドロワだったりパンティだったり穿いてなかったりするのかよおおおおおおお」
「よくわかったじゃない」

魔理沙は心にダメージを負って泣きながら去っていった。














――翌日――

性懲りもなくアリス邸に現れた魔理沙に黙って紅茶を出すアリス。
しばらく沈黙が続いたが、魔理沙がおもむろに口を開いた。

「昨日のアレはな、イメチェンのつもりだったんだよ」
「・・・やめたほうが良いと思うわ」
「ああ、私もそう思うぜ。霊夢にもゲロ吐かれたし、昨日香霖堂に包帯取りに行った時もあの口調を使ってみたら『自虐ネタかい?』って言われたんだよ」
「そうよ、貴方ったらやたらと昔の話を持ち込まれるのを嫌ったくせに・・・特に『うふふ』とか思い出すのも嫌だったんじゃないの?」
「だからこそイメチェンなんだよ・・・まぁ私の野望は終わったんだがな・・・」
「はぁ・・・まあいいわ」

アリスは達観した。

「そういえば魔理沙、耳掻きしてあげるわ」
「何ィ・・・」

ニヒルな笑みを浮かべてアリスの膝にダイブする魔理沙。
あの伝説の膝枕耳掻きだ。そんなもの幻想だぞクソッ!

「アリスにしてはわかってるじゃないか」
「そうね・・・フフ」

この時、アリスは昨日のお返しに鼓膜を突き破ってやろうと考えていたのだ。
心が狭いんじゃない、こんな世界が狭いんだ。(とアリスは語っている)

「おいおい、あんまり耳の奥に入れると痛いぜ?」
「フフフ・・・」
「ま、まさかアリス!!」

「そこまでだ!」
「誰!?」

玄関の扉を勢いよく開けて入ってきたのは、あの森近霖之助であった。
紅い薔薇を咥えている。

「君だけの王子様、推参☆」

どうしようもなくキモい。表情だけは無駄にイケメン。

「こ、香霖何しに来たんだよ・・・」
「そんなヤンデレに構ってないで、ホラ魔理沙、病院へ行こう」
「や、ヤンデレって私の事!?」
「君以外にだれがいるんだ?」

霖之助はやれやれといった表情をする。
アリスは変な疑いをかけられて一気に機嫌が悪くなった。鼓膜突き破ろうとしてたくせに。

「な、なんで私が病院に行かなきゃならないんだ?」
「君の昨日の言葉遣い・・・アレは確実に精神病だ。悪化する前に頭のお医者さんへ行こう」
「なんて時代だ・・・私みたいな善良魔法使いがキチガイ扱いされるとはな・・・」
「どうしても来ないのなら、助っ人に任せるしかないな」

再び、玄関の扉が勢いよく開かれる。
白い百合を口に咥えた博麗霊夢だ。

「魔理沙ファッカー、推参(^q^)」

どうしようもなくキチガイ。こちらも表情だけは無駄にイケメンだ。

「そんなヤンデレとイチャついてないでさっさと病院に行くわよ」
「だからなんで私ヤンデレ認定されてるの!?」
「アンタだからよ!!」
「警察呼ぶわよ!」

『警察』の名を出した瞬間、二人は脱兎の如く去っていった。
口にくわえていた薔薇と百合も故意的に落としていった。正直ウザい。

「クソみたいな幻想だな・・・」
「そうね、カスみたいな幻想ね・・・」

アリスはふと魔理沙の顔を見た。
先ほどの二人の異様な雰囲気に怯えているような・・・哀れなゴミk・・・小鹿のような表情を浮かべている彼女を見ていたら、
鼓膜を突き破ろうなんて意思はどこかに消し飛んでしまった。

「アリス・・・私、どこもおかしくないよな?」
「そうね」

アリスは魔理沙の尻穴に耳掻きを突き刺した。








この「耳掻きで尻穴処女喪失事件」をきっかけに第七次マリアリ大戦が勃発するのだが
それはまた別のお話である   ――完――
[malice] 名詞uncountable
(・・・に対する)悪意、敵意、恨み


※ジーニアス英和より
暇簗山脈
作品情報
作品集:
12
投稿日時:
2010/02/27 11:20:11
更新日時:
2010/02/27 20:20:11
分類
マリス砲とか使おうとしたら逆に事故るし
1. アルマァ ■2010/02/27 20:29:05
泣きながらゲロで不覚にも
2. 名無し ■2010/02/27 20:30:13
ちょっとした小ネタを、実に面白可笑しく書くなぁ

無論褒め言葉だ
3. 名無し ■2010/02/27 20:56:49
名詞ウンコなんたらに見えて不覚

本文精液とかヤバかったけどなんとか耐えたのに…
4. 紅のカリスマ ■2010/02/27 21:16:06
以前にもあったのか、マリアリ大戦・・・。

そして、タグには同意せざるを得ない。
5. 名無し ■2010/02/27 22:27:06
使わなくても事故る俺はどうすればいいんだ
6. 穀潰し ■2010/02/28 01:00:18
普通に読んでいたはずなのに、気がつくと大爆笑していた私は……。
7. ヤマコ ■2010/02/28 01:34:26
マガトロさんはいてないんですねー

はいてない?
8. 名無し ■2010/02/28 10:13:07
第七次マリアリ対戦てww
9. 名無し ■2010/02/28 21:59:21
クソワロタ
登場人物全員うぜぇwwwww
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