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『雛様がみんなの厄を取ってくれるようです』 作者: のり塩
妖怪の山の麓に広がる森で二人の少女が並んでいた。秋穣子と秋静葉の姉妹神である。
二人は身体を縄できつく縛られ身動きが取れない状況だ。
二人は怯え切った目で前を見つめている。二人の視線が交わる場所にはゴスロリ調の服を纏った神がいた。
そしてその手には大きな斧が握られている。無機質な刃に青ざめた秋姉妹の姿が映っている。
「ひ……雛、あんた何を考えてるの!? 冗談にしてはたちが悪すぎるわよ!!」
穣子は強い口調で言い放ったつもりだが、その声が震えているのには自分自身気付いていた。
雛の方はというとずっと同じ調子でにこにこ笑ってる。
「冗談なんかじゃないわよ穣子ちゃん。あなたたちの身体には悪い厄が流れてるからそれを集めてあげるのよ」
普段と変わらぬ口調で喋りながら雛は銀色の刃持つ斧を振り被る。
「い……いや……やめてええええええええ!!」
穣子の叫びも聞かず雛は思い切り斧を水平にフルスイングした。一瞬で穣子の首がすっ飛び宙へ放り出される。
首の断面からは大量の血が、まるで水道管が破裂した時のように勢い良く噴き出した。
静葉の眼前にぼとりと穣子の首が落っこちる。穣子はもはや何も映し出さない瞳で姉を眺めていた。
「み……みのりこ……う、うわああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
目の前で妹を殺害され狂乱する静葉。身を捩りながら耳をつんざく絶叫を上げる。
一方雛は穣子の首から迸る血を雨粒のように浴びながら、視線を静葉へ移した。
「さあて今度は静葉ちゃんの厄を取ってあげないとねぇ、うふふふふ」
「あ、ああ……」
今度は自分が標的にされたことに気づき声が出なくなる静葉。雛は斧を後ろへ振り被り静葉の頭目掛けて振り下ろした。
重い一撃が静葉の頭部を縦に両断する。
「ぐげええ!! ぐ……ぐがあぁ……」
雛は薪割りの要領で何度も何度も斧を振り下ろす。そのたびに静葉の内臓や筋肉や骨格が纏めて切断される。
やがて静葉の右半身と左半身が完全に分かれて左右へ倒れる。切断面からは脳や内臓がよく観察できた。
その様子に雛は満足げに一息吐く。
「これで秋姉妹の厄は祓われたわ。でもこの妖怪の山にはまだまだたくさんの厄が渦巻いている。それを取り除くのが私の仕事。
さあこんな所でじっとしてる暇は無いわ」
そうして雛は四つに分かれた秋姉妹の死体を残してその場から飛び去った。
妖怪の山を流れる川のほとりで今度は一人の河童が雛に捕まっていた。河城にとりである。
「ひいっ!? や、やめてよう雛!! 何でこんなことするのさ!!」
「あら、にとりの方こそ何故暴れるの? 私はにとりの身体に溜まった厄を取ってあげたいのに」
雛はそう言ってにとりがいつも被っている帽子を払い除ける。そして妖しい手つきで頭を撫でた。
「ん〜、にとりの身体で一番厄がありそうなのは……ここね!!」
雛は一本の鉄で出来た針を取り出した。長さは30センチ程度で針の中は空洞であり、ちょうどストローのような構造をしている。
この鉄の針をにとりの頭へ突き刺した。
「ぎゃああああああああああ!? いっ、いだいよおおおお!!」
針は頭がい骨を難なく貫き脳みそを掻き分ける。そして雛は針のもう一方の先端に口を付け、にとりの脳みそを吸い始めた。
「ひぎいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃ!? うきょああああああああやめでえええええええええええええええ!!」
「うーん、にとりの脳みそ厄が一杯で美味しい♪」
ちゅるちゅる音を立てながら少しずつにとりの脳を飲み干していく雛。にとりはびくんびくんと身体を痙攣させながらもがいていた。
「ふきょおおおおお、あへひゃああああああああああ、うけ、はぴぽおおお、ろおっれべえええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ」
意味を成さない声を出しながら白目を剥くにとり。やがてだらりと手足が垂れ下がりぴくりとも動かなくなった。
「ふうう……これであなたは大丈夫よにとり。……ああお礼なんていいのよ。同じ人間好きとして当然のことをしただけよ」
頭の中が空っぽになったにとりを置いて雛はさらに山の上を目指し始めた。
滝の裏にある哨戒天狗部隊の詰め所は慌ただしくなっていた。
見張り番の報告によると異様な気を放つ黒い塊が天狗の里に接近しているとのことだった。
この事態に、犬走椛が所属する白狼天狗の警備隊が防衛のために出動した。椛が見ると報告通りの黒い塊が近寄って来る。
あれは一体何なのか、天狗の里に危害を加える気なのか。相手の正体は分からぬが放っておけば大変なことになると、椛の持つ野生の本能が
告げていた。
「そこの者、止まれ!! ここから先は我ら天狗の住む場所である。部外者は即刻立ち去るのだ」
隊長の白狼天狗が語気を強めて警告するが、謎の塊は止まらない。白狼天狗たちは剣と楯を構える。
椛が目を凝らして見ると、そこにいたのは自分のよく知っている厄神だった。
何故彼女がここにいるのか。不用意に天狗のテリトリーに近づけば攻撃を受けることは、山の住人である彼女も重々承知のはずなのに。
「ええい構わん!! 総員攻撃開始!!」
「た、隊長待って下さい!! あれは……」
椛の言葉を遮り、無数の弾幕が雛目掛けて放たれた。激しい閃光と爆発音が辺りを包む。
「やったか!?」
隊長と椛、そして他の白狼天狗たちは固唾を飲んで噴煙巻き上がる場所を注視する。
もうもうと立ち込める煙が晴れた時、そこには雛が全くの無傷で立っていた。
「ば、馬鹿な!? あれだけの弾幕で何故かすり傷一つ負ってないのだ!?」
部隊の中に動揺が広がる。一方雛は身体に付いた土を払いながら溜息を吐く。
「まったくもう邪魔しないでほしいわねえ。そうか、厄が溜まってるからこんなことするのね。ならば……その厄浄化してあげましょう」
“悲運「大鐘婆の火」”
雛がスペルを発動させると激しい炎が巻き起こり白狼天狗を襲う。次々と火達磨になりながら墜落していく白狼天狗たち。
「や、止めてください!! 雛さん、どうしてこんな真似を……!?」
椛が雛の凶行を止めようと近寄った時、椛の身体にも紅蓮の炎が襲いかかる。
「ぎゃああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
断末魔の叫びを上げながら椛は真っ逆さまに落ちて地面に激突した。全身炭になった白狼天狗の焼死体がそこに残った。
「ふう、これで邪魔者はいなくなった……と思ったらまた湧いてきちゃたわ」
雛の前に現れたのは射命丸文だった。漆黒の翼を広げ、その手には嵐を起こす天狗の団扇が握られている。
新聞記者では無く強妖としての文がそこにいた。
文は雛の姿を観察する。雛の周囲にはどす黒いオーラが纏わりついていた。圧迫感すら感じさせる膨大な量の厄。
これは楽な戦いにはならないなと文は覚悟を決めた。
「あやややや……これは厄神様。随分派手にやってくれましたね。山を乗っ取るおつもりですか?」
「乗っ取る? まさか。私は厄を取ってあげるの。何だったら文さん。貴方の厄災も全て引き受けましょうか?」
「ふざけるんじゃないわ……これだけ多くの同胞を殺しておいて……。椛まで……私を慕ってくれたあの子まで……。
天狗の力を思い知りながら消えなさい!!」
文が団扇を振るうと竜巻が発生してたちまち雛を飲み込む。間髪入れずに大量の弾幕を浴びせかける。
これが文の本気。並の人妖なら木端微塵になってるだろう。しかし……。
「今なんかしたの?」
「!? き、効いてない!?」
雛は平然とした様子で変わりなく立っていた。こんなはずはない。文は再度怒涛の攻撃を繰り出す。
突風を二重三重にも発生させる。周りの大木が根こそぎ吹き飛ばされ地面が抉り取られる。だがそれでも雛は余裕の表情を崩さない。
「心地良いそよ風ね。ありがとう文さん」
「う……くそおっ!!」
いつもの余裕も冷静さも今の文からは吹き飛んでいた。力任せに弾幕を張るが、手ごたえは全くない。
(落ち着け……冷静になるのよ。何故攻撃が効いてないのか……ん、あれは……!?)
文は休み無く弾を射出しながらも雛の周囲をよく観察する。そして気付いた。
弾が雛に届いてない。全部雛の周りで掻き消えてしまう。まさか雛の身体を覆う厄がバリアの役割を果たしているのか。
だとしたらどうすれば勝てるのか。文が答えを出しあぐねていると雛が一歩前に踏み出した。
(まずい!)
文はその場から瞬時に移動し雛と距離を置く。接近されては勝ち目がない。とりあえず今は自慢のスピードを活かして敵をかく乱させるのが手だ。
間合いを取りながら戦い、その間に弱点を見つけられれば……。文はわずかな勝機を見出し、疾風となって雛の周りを飛び回る。
「あんたがパワーならこっちはスピードよ!! あんたは一生私には追いつけない!!」
だが次の瞬間。視界に捉えてたはずの雛が突然消えた。文は驚いて辺りを見回す。すると後ろに気配を感じた。
振り返るとそこには雛が居た。一瞬で至近距離まで文に接近したのだ。文ですらそのスピードを視認出来なかった。
「これはこれはお久しぶり……」
「あ……ああああ……」
勝てない。どうあがいても。
この時文は生まれて初めて圧倒的な恐怖と挫折感を感じていた。あまりの恐怖と悔しさに涙を流した。これも初めてのことだった……。
「た、たすけて……」
口を突いて出てきたのは嘆願だった。雛はそんな文を見てにっこり笑う。
「もちろん助けてあげる」
「え……」
自分は助かる。そんな希望がよぎった。だがその希望はすぐに消え去る。
「今厄を取ってあげるからね。これであなたも助かるわよ」
「厄って……いや……いやあああああああああああああああああああああああ!!」
次の瞬間白狼天狗隊を全滅させたあの炎が文を全身を飲み込んだ。
「うがああああああああああ!! ぎゃああああああ!! ぐぎゅああああああああああああ!!」
空中でもがく文だったがやがてゆっくりと地へ落ちていく。
最期に脳裏に浮かぶのはいつも自分に笑いかけてくれた椛の姿だった。
(ごめんね椛……仇を討て……なか、た……)
こうして千年の時を生きた鴉天狗は全身を黒く染め上げて土に塗れた。
夕日に染まった守矢神社の境内。神奈子、諏訪子、早苗の三人は来るべき脅威に立ち向かうため臨戦態勢で待っていた。
「早苗」
「何でしょうか神奈子様」
「これから始まる戦いは弾幕ごっこじゃない。本当の殺し合いだ。……覚悟はいいかい?」
神奈子は真剣な眼差しで隣にいる早苗に問い掛ける。
「大丈夫です。命を賭けて戦う覚悟は出来てます」
「そうか……すまないな早苗」
「何故謝るんですか」
「おまえをこんな戦いに巻き込んでしまって……私たちがおまえを幻想郷に連れて来なければ平穏な生活が送れたのに……」
「何言ってるんですか。私は望んで幻想郷に来たんですよ。神奈子様が謝る必要ないじゃないですか。それに……私には神奈子様と諏訪子様が
ついていてくれます。これ以上頼もしいことはありません」
「……ありがとうよ早苗。私たちも……お前がいてくれて頼もしいよ」
「来るぞ。神奈子、早苗、戦う準備はいいね?」
諏訪子の言葉に二人は身構えた。
現れたのは雛だった。その身は巨大な厄に覆われている。周りの空間が歪んで見えるほどだ。対峙する三人も予想以上の厄の力に息を呑んだ。
「これはもはや厄神じゃない……邪神だ。祟り神の私ですら肌がぴりぴりするよ……」
諏訪子の呟きに二人も無言で同意する。境内にいる三人の姿を見て雛の顔が綻んだ。
「あらぁ? みんなして待っててくれたの? うれしいわぁ。ごめんなさいね、厄を取ってほしいって人がたくさんいたもんだから
ここまで来るのに時間がかかっちゃって」
神奈子がずいと前に出て雛に話しかけた。静かな口調だが神の威厳が籠った声だ。
「雛……あんたの目的は何だい? 山の支配か、幻想郷の支配か?」
「へ? 何言ってるの。私はみんなの厄を取ってあげてるのよ」
雛は真顔で話す。心底自分のやってることに疑問を持って無いらしい。
「あんたがやったことは厄祓いじゃない。ただの殺戮だ」
「ひどいわねえ。親切心でやってるのに。まあいいわ。そうやって人を疑うのも全部厄のせい。厄を取ってすっきりすればあなたたちも
私に感謝するわ」
話し合いは無駄だと判断した神奈子は、後ろを振り向き早苗、諏訪子に合図する。
「仕方ないね……。あんたは幻想郷の厄を集めてくれていた神だ。手荒な事はしたくなかったけど……これ以上あんたに好き勝手されたら幻想郷は
大惨事になる。だからここで倒させてもらうよ!!」
神奈子、諏訪子、早苗の三人は一斉に雛を取り囲み、三方から攻撃を加える。だが厄の壁は三人の必死の攻撃も防御する。
「くるくる〜」
「!?」
中央にいた雛がくるくる回り始めた。それにつられて周囲の厄も渦潮のように回転し出す。猛烈な厄の奔流に三人は飲み込まれ、吹っ飛ばされた。
「はぁはぁ……な……なんて強さなの……!?」
「三人がかりで歯が立たないなんて……」
「雛……お前それだけの力を手に入れるのにどれだけの妖怪を犠牲にしてきた?」
「犠牲? 私に厄を取ってもらえたんだからむしろ光栄と言うべきでしょう……」
「くっ!!」
三人は再び躍りかかる。神奈子は太いオンバシラを雛に向かって投げ付けた。だが雛が軽く手を払うとオンバシラは粉々に砕け散る。
諏訪子が鉄の輪を武器に迫るが、雛が諏訪子に向け手をかざすと諏訪子の身体が数十メートルも吹っ飛んだ。そのまま神社へ激突する諏訪子。
「諏訪子ぉ!!」
「あ〜あ、かわいそう。厄をその身に宿したままにしとくから痛い思いをしなくちゃならないのよ」
「きさまぁぁぁぁぁぁ!!」
激昂する神奈子は再度オンバシラを雛目掛けて投げる。
「愚かな人たち……厄の恐ろしさを思い知るがいい!!」
怒りにまかせて攻撃したせいかオンバシラは雛の横を掠めて飛んでいった。そしてその先にいたのは……。
「あ……!?」
「早苗っ!?」
早苗の視界がオンバシラに遮られる。不意の出来事に避ける暇も無く。
「ぶぎゃああああああああぶぅぅぅぅぅぅぅ!!」
早苗の顔面にオンバシラが直撃した。頭が砕け散り脳漿が散乱する。頭を潰された早苗はびくんびくんと身体を震わせいた。
「あ、ああ……さ、なえ、さな……」
「あらやだ神奈子様ったら自分で早苗ちゃんの頭ぐちゃぐちゃにしちゃたあ〜。いけないんだぁ。私に厄を取ってもらってたらこんなことには
ならなかったのに」
自分の手で早苗を殺してしまった。そのショックに呆然とする神奈子。
「でも早苗ちゃんの身体にはまだ厄が残ってるわね。安心して神奈子様。早苗ちゃんの厄は私がちゃーんと取ってあげるから。ふんっ!!」
雛が手をかざすと、早苗の残った身体が爆散した。腕や足や肉片が辺りへ散っていく。
神奈子の頬にべちょりと早苗の血が付き、足もとに腕が転がった。
「う……うあ……うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
神奈子は手を強く握りしめ雛に殴りかかった。
「おまえのせいでさなえがああああああああああああああああああ!!!!!」
「いやだ責任転嫁してる。偉い神様がそんなことしちゃダメでしょ〜?」
神奈子はふわりと身体が浮くような感覚を覚える。そしてそのまま地面に倒れ込んだ。動けない。身体がどうも軽い。
自分の身体を見てようやく原因に気付いた。視線の先に下半身が転がってる。一瞬にして胴体を切断されたのだ。
「ぐああぁ……あああ……!」
腕を使い地べたを這いずる神奈子。雛は微笑みを浮かべながらゆっくりと神奈子へ近付いていく。
一方神社に叩き付けられ気を失っていた諏訪子はようやく意識を取り戻した。今だ霞む視界に飛び込んできたのは地獄絵図だった。
辺りに散乱する早苗だった肉塊。そして上半身だけでもがく神奈子の姿。その瞬間諏訪子の理性は消えた。
「うがああああああああああああああああああ!! 殺す!! 殺してやるうううううううううううう!!」
獣のような雄叫びを上げながら雛に突進する諏訪子。だが雛は少しも動じず素早い動きで諏訪子の首を掴む。気道が圧迫され呼吸が困難になる。
「ぐがああ……!! きさまぁぁ!!」
「厄いなぁ……あなたとっても厄いなあ。祟り神だけあって一番厄い。私が助けてあげないと。まずは……この目玉が厄い!!」
雛は諏訪子の右目に深々と指を突き入れた。そして思いきり眼球を引き抜く。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
絶叫する諏訪子をよそに雛の手は止まらない。
「こっちの目玉も!!」
「ぎいいいい!?」
「この鼻も!!」
「ああああああああああああああーーーーーーーー!!」
「この耳も!!」
「あぐがああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「この歯も!!」
「ほごおおおおおおおお!?」
次々と諏訪子の顔のパーツをむしり取っていく雛。さらにその身体に腕を突き射し、生温かい臓物を引っこ抜く。
「この肝臓も!! 腎臓も!! 脾臓も!! すい臓も!! 胃も!! 腸も!! 子宮も!! 肺も!! 心臓も!! 脳も!! 全部が厄い!!」
山積みになっていく諏訪子の内臓。あらかた臓物を摘出するとその場に諏訪子の抜けがらを放り捨てる。
目の前で親友を惨殺された神奈子はもはや戦う意思を失くしていた。これは夢なんじゃないかと自問自答した。
だが辺りに漂う血と肉の臭いがその考えを否定させる。
「さてと……あとは神奈子様だけね。おまちどうさま」
「ひ、な……」
雛が神奈子に近寄ると突然神奈子が力を振り絞り雛に抱き付いた。
「何のつもり?」
「もういい……もういいんだ雛……。厄を集めなくても……」
雛は振り払おうとするが、神奈子は強くしがみ付いて放さない。
「お前は今まで人間のため、妖怪のために厄を集めていた。お前がいてくれたから幻想郷の人妖は厄に苛まれることはなかった。でも……その役目が
お前の心を狂わせてしまったなら……お前はもう厄を集める必要は無い……。お前は充分がんばったよ……だからもうがんばらなくていいんだ……」
雛の動きが止まる。心なしか周囲の厄も落ち着いてきた気がする。神奈子は戻って欲しかった。元の優しい雛に。
しばらくして雛は口を開いた。
「は? 何言ってんの、このオバサン」
「え?」
雛は神奈子の身体を振り解く。
「私は自分の仕事をこなしに来ただけよ。説教されに来たんじゃないわ」
「ひ、雛……もう止めろ。これ以上人を殺めないでくれ……」
「オンバシラババアは素直に厄取ってもらえばいいのよ。まったく手間取らせて」
「雛、話をき……」
神奈子の言葉も聞かず、雛は神奈子の腕を掴むと宙へ放り投げた。そして落下してくる神奈子の上半身に拳を叩き込む。
「ヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナ
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YAKUIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIII
ヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナ
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ヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナヒナ」
「ヤッダーバァアァァァァアアアアア」
燃えるゴミは月・水・金
こうして雛はヒナヒナのラッシュを神奈子に喰らわせ守矢神社を壊滅させた。
「ふ……うううう……だいぶ厄が溜まったわ……うぶううっ!!」
突然雛の腹が膨れ上がる。傍から見ると妊婦のようだ。
「うご……厄が身体から溢れちゃう……ぐぎょおおおおおおおおお!!」
雛は口から勢い良くゲロを吐いた。さらに尿道から止め処なく黄金水を噴射した。
肛門からは臭い大便を垂れ流し、乳首からは母乳を水鉄砲の如く発射する。
「うぎょおお、やくを、もっとやぎゅををををを、ぐぎょがぼおおおおおおおおおおおおおおお」
雛が禍々しい唸り声を上げた瞬間、雛の身体が破裂した。溜め込んだ厄が一気に放出され妖怪の山を包んでいく。
草木が枯れ、川の水が濁り、山に住む妖怪は全て厄によって死に絶えた。幻想郷の一大勢力である妖怪の山が滅亡した瞬間だった。
「紫様、山の方は……」
「心配無いわ。山の周りに結界を張り巡らして厄が流出しないように手を打ったわ。これで厄が他の地域に悪影響を及ぼすことはない」
「そうですか……。しかし守矢の神々や天狗たちが滅びるとは……誰が予想出来たでしょう」
「そうね……。一仕事したらお腹減ったわ。藍、さっさと夕食の準備しなさい」
「分かりました」
藍は九つの尻尾をたなびかせて台所へと消えていく。居間で一人になった紫の耳に話し声が届いた。
「ねえねえ藍様。今日は忙しそうだったけど何かあったんですか?」
「いやお前は気にしなくていいんだ。さ、夕食の支度をするから橙も手伝っておくれ」
「は〜い」
いつも通りの式たちの会話。さきほどまで処理に追われていた紫はほっと安堵した。
しかし……まさか厄神がこんな大惨事を起こすとは。厄神が死んだ以上、新しい厄神を用意する必要があるがこちらで管理すべきか。
他の幻想郷住人に対する説明も大変だ。妖怪の山が壊滅し、大きな動揺が広がっている。これを沈めるのは骨が折れそうだ。
紫が今後のことを思案していると。
「お前は……ぐほおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーー!!」
「きゃあああああ、らんさまあああああああああああ!! ぎいゃあああああああああああああああああああ!!」
けたたましい悲鳴が台所の方から上がる。
「藍、橙!? 一体なにごと……」
紫が慌てて台所へ飛び込むと、そこにあったのは五体がばらばらになった式たちの姿だった。
「――――――――――!? これは……」
「こんにちはスキマ妖怪さん」
背後から声をかけられる。紫が恐る恐る振り返るとそこにいたのは―――――他ならぬ雛だった。
「なぜ……あなたは死んだはず……!?」
「この世に厄がある限り私もまた存在し続ける……。ところであなた……厄いわね? うふふふ……」
「やめなさい……やめてっ……うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
紫が最期に見た光景。それは黒い厄の中でただ微笑む厄神の姿だった。
今日は楽しい雛祭り。そう今日が雛祭りなんだ。
間違ってるのはカレンダーの方なんだ。今日こそが雛祭り。そうに違いないんだ……。
のり塩
作品情報
作品集:
12
投稿日時:
2010/03/05 08:41:53
更新日時:
2010/03/05 17:41:53
分類
雛
風神録メンバー
グロ
ぼくのかんがえたさいきょうのひなさま
みんな血祭り
途中までまじめに読んでたのにぃ!
あややベジータ化あたりからはギャグ過ぎ感w
もう少し文を追い詰めて欲しかったです。