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『アレ集』 作者: 蓋の鍋
『東方スキンケア』
お肌。
それは乙女であれば誰しもが気にするものであり、
顔、
二の腕、
脚、
等、多岐にわたる部位でありながら、女性の魅力を引き立てる要素に深く関わっているのである。
ここ幻想郷においてもそれは変わることは無く、今日も今日とて、乙女(girlFlg == false)達はスキンケアに大忙しであった。
「妖夢ぅ〜、今夜は牛乳風呂でおねがーい」
「ええっ、今夜もですか? ただでさえ牛乳の消費量が尋常で無いというのに……ああ、白玉楼の財政が傾きにけり」
「そんなの私のお肌に比べればどうでもいいことじゃない」
「よかねーよアバズレ」
楼観剣の柄で主の頭を強く小突きながらも、主想いの優しい妖夢はしぶしぶ人里まで牛乳を求めた。
「おじさん、一番安いのでお願いします」
「あいよ! ちょいと待ってな」
牛乳屋の親父が一円札を二枚ほど受け取ると、店の奥へと引っ込んだ。
店の奥には、名札の書かれた扉が百八ほどならんでおり、ちょうどその真ん中当たりまで歩を進めて、
「入るぞ」
と所々漆の剥がれ落ちた木製の扉を開けた。
居たのは、神社の紅白巫女こと、博麗霊夢だ。
彼女は数日前にこの仕事にアルバイトとして雇われたのだった。
「3合だ。何分かかる?」
「そうね、大体10分くらいかしら。急ぎ?」
「ああ、お得意さんでな。できれば早い方がいい。できるか?」
「やってみるわ」
そう言って霊夢はおもむろに、襦袢の胸元に手をかけた。
あっという間に慎ましい胸を露出させると、何を思ったか――いや、これこそが彼女の仕事である――己が乳首を指でつまみ、
「おじさん、瓶」
「あいよ!」
透明の一升瓶の口にそれをあてがい、なんと母乳を搾り出し始めた。
幻想郷では常識にとらわれてはいけない。
この巫女、実は処女のくせして母乳を出す程度の能力をひそかに身につけていたのだ。
この事は彼女の無二の親友、霧雨魔理沙どころか幻想郷の安寧を守る妖怪、八雲紫さえも知らない事実である。
「3合、3合っと……ふぃ〜、こんなもんかしら」
「おっ、さすが霊夢ちゃん! 仕事が早いねーっ」
「当たり前でしょ。ほれ、持っていきなさい」
生温かい透明の瓶には、白く濁った液体が泡立ちながら揺らめいている。
これこそが牛乳屋の真の姿であり、亡霊の姫、西行寺幽々子の美貌の根源である。
ただの牛乳風呂ではカバーしきれない細かな点も、この霊験あらたかな生乳で作った湯船なら万事大丈夫というわけだ。
「まいど!」
こうして幽々子は今夜も無事にスキンケアできるのであった。
Fin.
『妖夢 vs 妖夢』
最近、妖夢は悪夢にうなされていた。
これもすべて大図書館の動かない人――ムキュリー・ノーレッジ――が持ってきた『銀狼怪奇大全』のせいだった。
『銀狼怪奇大全』とは、妖怪の山に住む哨戒天狗の一人である椛が記した一冊の書物である。
幻想郷に起こり得る怪異を伝聞推定で書き連ねたもので、人体の自然発火、首切り騎馬、涅槃の死神、等、実に胡散臭い仕上がりになっ
ている。
さて、その中の一つに、ドッペルゲンガーという話があった。それこそが、妖夢を困らせる正体だ。
「妖夢、私よ、妖夢」
「誰、ですか?」
「私は魂魄妖夢です」
ドッペルゲンガーとは、もう一人の淫靡な自分である。
犬っころの話によると、そのドッペルゲンガーに遭遇したものは命を落とすのだそうだ。
現に、椛はこの書物を入稿した数日後に消息を絶っている。
そんなエピソードもあってか、元々そういった類の話に抵抗力の無い妖夢はあっさりと、著者の思うツボにはまったのだった。
「わあああああああああああああああ!!!」
今夜も白玉楼に妖夢の寝ぼけた絶叫がこだまする。
流石の西行寺幽々子も、毎晩毎晩夜中に起こされては堪らんということで、ある人物に相談した。
「もう毎日よ、毎日! 信じられる!?」
「まあまあ、ちょっと落ち着きなさいよ。ほら、玄米パンでも食べて」
「もぐ。まったく、快眠はスキンケアの磐石なのよ? なのにあの子ったら、毎晩毎晩……もおぉー、どうにかして!」
「やれやれ、こまったものね」
八雲紫、その人である。
彼女の手にかかれば幻想郷で発生する大概の問題は解消される。とっつきにくい人物ではあるが、味方になると大変心強い。
幽々子の友人であるからして、この手の悩み相談は日常茶飯事なのだが、今回はちょっと手を焼きそうな気配を紫は感じていた。
「そのドッペルゲンガーっていう得体の知れないものは、実際に存在するの?」
「知らないわそんなこと。もぐもぐもぐ」
「あんた、食べてばかりいないでちょっとは一緒に考えなさいよ」
「嫌よ! 考えるのが嫌でここに来たんだから」
紫は鉄扇で幽々子を殴った。血も出た。
「妖夢が恐怖しているのは、ドッペルゲンガーそのものじゃなくて、それと遭遇した後の自分ね」
ならば、いっそドッペルゲンガーに会う前に妖夢本人を殺してみてはどうだろう。
そうすれば、死ぬだのなんだのと恐れる心配はないのである。
もっとも、半分は幽体のくせに死を恐れるとは、それこそ不気味なことではあるが。
「だめよ! 妖夢は殺させないわ!」
「まだ何も言ってないじゃない。例えばの話よ」
「例えでもダメ! まったく、そんな恐ろしい方法がホイホイ思い浮かぶなんてどうかしてるわ」
「ちょっと待ちなさいよ。あんた、そんな言い草――」
「行きましょ、妖夢」
「はい」
「えっ、いたの?」
……。
飴色の夕焼けが山の向こうへと沈んでゆく。
生ぬるい風が幽々子と妖夢の間を吹き抜けていった。
「まったく、せっかく足を運んだって言うのにすっかり無駄足になっちゃったわ」
「そうですね……すみません、私のせいで」
「何言ってるのよ。妖夢は悪く無いわ。けどね、妖夢。あんな胡散臭い本に振り回されるのはちょっといただけないわ」
「はい。反省しています。反省してはいるのですが、その……」
「怖いの、ね。まったくもう、あんなの嘘っぱちに決まってるじゃない。何よ、ドッペルゲンガーって。おいしいの?」
ところが、冥界へ帰る途中、幽々子と妖夢はとても信じられない光景に遭遇した。
なんと、数里先にどう見ても妖夢にしか見えない少女が紫の隣に並んでいたのだ。
「わあああああああああ!! で、で、で、出たああああぁぁ!!」
「お、落ち着いて妖夢!」
「死ぬぅっ! 死んじゃいますぅぅー!」
「だ、だ、大丈夫よっ! あれはただの幻よ、そう、幻!」
「おめーにも見えてんじゃねーかよぉ! いやだいやだいやだ、死にたくない死にたくない!!」
半狂乱になった妖夢は腰の黒鞘に手をかけ、あっというまに太刀を抜いて主に切りかかった。
袈裟を絶つようにして振るわれた刀は、幽々子の体を易々と薙ぎ払った。
臓物やらドロドロになった玄米パンやらが地面へと落ちて行く。
「ああっ! なんて酷いことを!」
そのあまりにも衝撃的な出来事に、数里先に居た妖夢っぽい少女は恐怖に声を震わせながら走り去っていった。
「うあぁ……うわぁああぁぁぁぁぁぁ!!」
血のついた刀を抜き身のままに、妖夢はそれを追いかける。
あっという間に両者の距離が埋まった。
「助けてぇ! やめてー! だ、だ、誰かあぁぁ!!」
「あいや待たれいぃ!」
「誰かーっ、誰かーーーーーー…………あっ!」
風を切る音と共に、人の頭が夕焼けのシルエットとなって空へと飛んでいった。
これ、よくよく見るとりんごのように見えなくも無い。
皆さんもドッペルゲンガーには気をつけましょう。
Fin.
『紅美鈴の乳房(アトリエ)』
気功の達人である美鈴はサイドビジネスを始めて、一発当たった。
本人もまさかそんな上手くいくとは思わず、突然自分のもとに転がり込んできた大金を前に、自室で狼狽するばかりである。
「どうしよう、こんなお金、私じゃ使いきれそうにもない」
「なら、私に頂戴よ」
えっ、と驚いて隣を見ると、ムキュリーが死んだような目つきでこちらを見つめていた。
いつの間にいたのか、その隣では小悪魔が笑顔で本を携えていた。
「パチュリー様、いつからそこに? というか、ここ私の部屋なんですけど」
「幻想郷では常識にとらわれてはいけないのよ」
「それ、私の台詞ですよぉ!」
今度は東風谷早苗がいた。
美鈴は、部屋に隙間でもあるのではないかと疑った。実際あった。
「それはそうと、お金を欲しがるだなんて、何か欲しいものでも?」
「アトリエが欲しいわ」
「アトリエ? なんですかそれ」
「そっか。あなた、魔法には疎いのだったわね」
コホンと咳払いをし、ムキュリーがベッドの上に立って得意そうな表情を浮かべる。
ムキュによるアトリエ講座が始まった。
「アトリエというのは、簡単に言うと、魔法使いが私用する実験施設の俗称よ」
「実験? 何の実験ですか?」
「例えば、爆発性のある魔法薬の調合とか、悪魔召喚の魔法陣のテストとかね」
「へぇぇ。そうなんですか。でも、そんなの別に自室でやれば済む話じゃないですか?」
美鈴の純粋な質問に対して、小悪魔は信じられないといった表情で抱えていた本を床に落とした。
「じゃあ、逆に聞くけど、卓袱台の上で幻想郷の命運をかけた弾幕合戦が始まったらどう思う?」
「雰囲気ぶち壊しですね」
「つまり、そういうことよ。物事はね、一に雰囲気、二に雰囲気。三、四がなくて、五に雰囲気なのよ」
「なるほど! そういうことだったのですね! やはり幻想郷では」
小悪魔が拾い上げた魔術書を似非巫女に投げつけた。
刹那、早苗の体の穴と言う穴から血が吹き出て、あっという間に絶命した。
「さて、話を戻すわ。私は確かに図書館という十分な施設を所有してはいるけど、あそこは厳密にはアトリエではないの」
むしろ、禁書やら魔導書が数千冊が保管されているので、下手に魔法実験を行なうと紅魔館が跡形もなく消失しかねないのだと言う。
美鈴は次第に、パクチーの言いたいことが分かってきた。
つまり、こうだ。
今のままでは大事な館の人々が危ない。だから、アトリエを作って安全な実験を行ないたい。
そう考えた。
この人は普段何もしないで自堕落な読書ライフを送っているだけかと思ってたが、そんなにまでも館のことを考えているなんて。
美鈴は思わず涙した。
「パチュリー様っ、ぜひ私のお金を平和のために役立ててください!」
「分かってくれたのね。嬉しいわ」
のそのそと近寄ってきたパチュリーが、美鈴の頬にそっと口付けをした。
美鈴が文字通り紅くなった。
数日後、紅魔館の横に大きなパチュリーを模した建造物が出来上がった。
「誤解よ! これは正真正銘、アトリエなのよ!」
「嘘です! こんな趣味の悪い建物がアトリエなわけないじゃないですか! 嘘つきっ! 信じてたのに……最低です!」
小悪魔が割って入る間もなく、美鈴が放った本気の掌底がパの顔面を突きぬいた。
その衝撃が建物全体にまで及び、大きなアトリエはことごとく崩壊して瓦礫の山と化した。
真実は小悪魔しか知らない。
Fin.
『雨の日は着物が濡れて大変です』
多々良小傘という少女は実は妖怪です。
人を驚かせるのが大好きです。
ある雨の日、寺子屋から帰ろうと傘立てに手を伸ばしたら、
「ばあっ!」
傘立てに太ももから下をさした小傘さんが、いきなり現れたのです。
さすがに私も面食らってしまい、ぬかるんだ地面に尻餅をついてしまいました。
下着まで濡れて、気分は最悪。
目の前にニヤニヤとこちらを見下ろす小傘さんに殺意を覚えました。
しかし、相手は妖怪、私は人間。正面からぶつかって勝てる相手ではありません。
私は腹の中で煮えくり返る胃液を堪え、作り物の笑みを浮かべてこう言いました。
「あーびっくりした。こんな滑ってしまうなんて、本当に雨の日は危険ですね」
小傘さんの笑みに亀裂が走り、私を見下ろす顔に疑問の文字が浮かびました。
私は考えました。
この妖怪少女は人を驚かすのが大好きだから、逆に無視されるのは苦手である、と。
私はとことん無視してやろうと思い、わざとらしい独り言を言ったのです。
「何言ってるの? 今、私に驚いたでしょ!」
無視。
私の悲鳴を聞いて慧音先生が奥から現れました。
「どうした、すごい悲鳴だったが……ん?」
「何でもありません、ただ滑って転んだだけですので。お恥ずかしながら」
いや、と口を開こうとした慧音先生に素早く目配せをします。
む・し・し・て・く・だ・さ・い
「すごい雨ですね。でも、私、傘を忘れてしまったみたいです」
「えっ……あ、ああ、そうだな。ひどい雨だなこれは」
釈然としないながらも、聡明で頭がキレる先生はすぐに状況を把握したようでした。
「こんな酷い雨の中、傘も差さずに帰れないですね」
「あ、ああ。たしかに、傘が必要だなこれは」
さりげなく傘立てに目をやると、小傘さんの顔に書かれた疑問の文字が先程より二周り程大きくなっていました。
次第に、不快の色が露になりました。
人を驚かせたと思ったら勘違いで、今度は自分が無視されるという仕打ち。
この妖怪少女には耐え難い屈辱でしょう。
「ちょっと、何無視してるのよ! ねえ、聞こえてるんでしょ!」
「雨、止みませんかね」
「ちょっと!!」
愉しい。
もう少しこの状況を長引かせて、心に溜まった汚泥のような殺意を楽しみたかったのですが、そうも言ってられません。
私には帰ってから宿題と日記をつけなくてはならないのです。
宿題は慧音先生お手製ですから大変難しく、日記は今日記憶した全ての事象を克明に記さなくてはならないので時間がたくさんかかりま
す。
正直、私にはこんな茶番に付き合ってる暇は無いのです。
「ねえってば!」
ガタガタと小賢しく傘立てを揺らして飛び跳ねる姿が、何とも腹立たしい。
慧音先生の視線が小傘さんと私を行ったり来たりしています。
これ以上先生に迷惑もかけられませんし、時間も無いですので私は雨に濡れて帰ることに決めました。
「それでは、さようなら」
「ああ。気をつけてな」
慧音先生に一礼をしてから、私は小傘さんの体を掴んで力の限り引っ張りました。
あっという声と、徐々に傾いていく傘立て。
相変わらず小傘さんの足は傘立てにはまったまま。
傘の骨が折れる音と大きな物が倒れる鈍い音がしたのはほぼ同時でした。
軒をくぐり、後ろ髪を引かれる想いで寺子屋を後にしました。
Fin.
『寺子屋』
大妖精こと大ちゃんは大変真面目なのだが、どうにも気が弱い節がある。
仲間内で遊んでいる時も、相手が可哀相だからといってわざと負けてあげたり、嫌な事があっても決して態度にはしなかった。
チルノは馬鹿だからそんな大ちゃんを気遣うこともできず、ルーミアはお菓子食ってばかりだし、橙は5時には帰ってしまう。
大ちゃんは次第に心を病んでいった。
口数はほぼ0に等しくなり、食事も満足に取らなくなった。
そんな彼女の変化に気がついたのは、上白沢慧音、通称けーね先生だった。
「大ちゃん、ちょっといいか?」
授業の終わり、とぼとぼと一人、寺子屋を後にしようとした大ちゃんをけーね先生は呼び止めた。
空ろな視線が何とも痛々しい。
「最近、何か悩んでいることがあるだろう? 良かったら先生に話してくれないか?」
場所を先生の自室に移して、できるだけ穏やかにけーね先生は大ちゃんに語りかけた。
しかし、大ちゃんは弱々しく頭を横に振るだけで話そうとはしない。
「先生、大ちゃんの力になってあげたいんだ。なあ? 先生に話してごらん」
「……悩みなんて、ないです」
「大ちゃん……」
きゅっと固く結んだ大ちゃんの唇が段々白くなっていくのを見て、けーね先生は胸が締め付けられた。
この娘はきっと、すごい良い子だ。良い子ほど悩みを持ちやすく、溜め込む傾向がある。
長らく教師を続けていると、例え相手が妖怪であろうと何であろうと力になってあげたいと心の底から思うようになる。
けーね先生は、生徒が大好きだった。
本当に大好きだった。
だから、大ちゃんのいじらしい態度に我慢できなかった。
「っ!」
突然のことに大ちゃんは悲鳴を上げることもできなかった。
それもそのはずで、声を上げるはずの口はけーね先生の唇によって塞がれていたのだ。
「大ちゃん、本当にお前は可愛い奴だな。先生、ずっと我慢していたのにお前がそんな態度するから」
「あっ……あっ……」
ようやく状況を把握した大ちゃんは久しぶりに激しく鳴動する心臓に、ただ驚いていた。
まだこんなにも自分は感動できるのだ、と。
大ちゃんの表情に僅かではあるが明るさが戻っていた。
「ひょっとして……接吻は初めてか?」
けーね先生の目元に笑みが浮かんだ。何とも微笑ましいと思った。
「安心しろ、先生も初めてだ」
「えっ……あっ……そう、なんですか」
「ああ、そうだぞ。私の歴史に接吻の記録はないからな」
「……そう、ですか……なんだか、ちょっとだけ……ちょっとだけ、うれしいです」
「先生も嬉しいぞ。さっ、大ちゃん。続きをしよう」
「えっ、あの……続きって……?」
けーね先生の口の端が自然と上がって弧を描いた。
こぼれる吐息も徐々に速くなっていることに大ちゃんは気づかない。
「大ちゃんはたしか、もう初潮を迎えているんだったな」
もうすっかり大ちゃんは元気を取り戻し、顔を真っ赤にさせた。
「恥ずかしがることは無い、立派なことだぞ。先生、大ちゃんは本当に立派な子だと思う」
「や、やめてください……わたし、そんなこと」
「先生にはわかる。チルノやルーミア達のお姉さん役になってあげてるじゃあないか。えらいぞ」
けーね先生の白い手首が素早く動き、大ちゃんの頭をそっと撫でてあげた。
一瞬ビクッと拒否されたものの、やがて、心地よくなったのか、大ちゃんは目を細めた。
白い手首がまた素早く動き、大ちゃんのまだ膨らみかけの胸へ、
……。
「あっ」
「どうした? 大丈夫、先生に任せなさい」
「いえ、あの……」
「そう怖がるな……大丈夫、だいじょうぶ。大丈夫だからな。な?」
「あぅ……ひゃぁ……や、やめて……」
「かわいいなあ、大ちゃんは」
取り戻した元気は一転、得体の知れない事への恐怖へと変わっていくの大ちゃんは感じた。
まだ、早すぎるのだ。その行為自体が。
このままでは何か酷くいけないことになる、誰かに助けて欲しい。
そんな情けなくも切実な願いを込めて部屋を見渡してみるも、希望はどこにもなかった。
「いたいっ!」
「あっ、すまん。ちょっと力が強かったな」
発育中の乳房は大変敏感ですので、ご了承ください。
少なくとも、大ちゃんには快楽どころか苦痛でしかなかった。嫌悪感で口から戻しそうになる。
乳首にヌルリとした感触を感じ、思わずえずいた。
「さてさて……大ちゃんの大事な所を見るとしようか」
「や、やめてください! ……おねがい、誰か……チルノちゃん……たすけて……」
「チルノ? 大ちゃんはお姉さんだろ。自分より弱い相手に助けを請うなんて、先生悲しいな」
「たすけてええぇーーっ!!!」
大ちゃん自身、自分の口から発せられたその大きな声に驚いた。
けーね先生の表情が驚愕から歪んで、まるで見たことも無い大人の顔へと変わっていった。
殺されるよりももっと酷い目に遭う。そんな予感が大ちゃんの体を強張らせる。
部屋の外がざわざわと騒がしくなり、障子が勢い良く開かれた。
「け、慧音……お前、またっ!」
「なんだ妹紅か。今、生徒と大事な話を――」
一瞬にして事は済んだ。
妹紅の手の平から紅蓮の炎が飛び出たかと思うと、けーね先生の姿はどこかへ消えてしまった。
大ちゃんは驚きで何もできなかったが、やがて安心と涙が自然と溢れてきた。
「怖かったな。もう大丈夫だ」
「えぐえぐっ……もこー先生ぇ……うわぁぁん」
堰を切ったかのように大ちゃんは泣いた。
泣いて泣いて、妹紅の服を涙でビチョビチョに濡らした。
妹紅は優しく大ちゃんの頭を撫でてそっと抱き寄せたのだった。
次の日、寺子屋には元気に仲間と笑いあう大ちゃんの姿があった。
Fin.
小傘って普段何食べてるんだろう。
雨の日とか口あけて空見上げてそう。
蓋の鍋
- 作品情報
- 作品集:
- 13
- 投稿日時:
- 2010/03/07 05:37:08
- 更新日時:
- 2010/03/07 14:37:08
- 分類
- 妖夢
- 幽々子
- 小傘
- 美鈴
- パチュリー
- 早苗ちゃん
- 大ちゃん
- けーね
けーね先生はもう駄目だ・・・
特に寺子屋物をもっと読んでみたい。