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『嗜虐神 諏訪子〜天人の章〜』 作者: 紅のカリスマ
―――二日目。
「うーん・・・ふぅ。今日も実に良い目覚めね」
軽く伸びをしながら、布団から起き上がる。
時計を見れば、朝の8時。
意外と早く起きてしまったと諏訪子は感じた。
「―――さぁて、と。今日も誰かを虐めに行こうかしら・・・」
―――グゥ〜。
「・・・むぅ」
起きて早々だというのにお腹が空腹を訴えてきた。
「まぁ、腹が減っては戦は出来ない、っても言うしね。まずは朝ご飯食べようか・・・さーなえー、朝ご飯出来てる〜?」
一先ず、今日の予定は、朝食を食べてから考えることにした。
早苗を呼び、朝食が出来ているかどうかの確認をする。
「出来てますよ、諏訪子様。居間に運んでありますので」
「分かった、今行くよ」
そうして、居間に向かう。
ほんのりと味噌の香りが漂ってくるのを感じ、食欲が刺激される。
居間に繋がる戸を開けると、早苗がご飯を椀に盛っている姿が見えた。
しかし、何時もならいるはずのもう一つの姿が見当たらない。
「あれ、神奈子は?」
神奈子がこんな早朝からいないことを疑問に思い、諏訪子は早苗に尋ねた。
「神奈子様ですか?急用があるだとかで1時間程前に出て行きましたが・・・まず、にとりさんの所に寄ってから行くとか何とか」
「こんな朝早くから急用か。神奈子もホント大変だねぇ」
―――多分、河童が絡んでいるなら核融合炉関係の用事だろうかね。
そんな程度に思いながら、諏訪子は席に着いて、早苗と適当に雑談しながら朝食を食べ始める。
「さてと、朝ご飯も食べ終わったし・・・今日の狙いは、あの不良天人かしらね。天人は身体の頑丈さが取り柄だし、他のより度を越えても良いかもしれないし・・・早速、行ってみようかね」
そうして、昨日の様に地面に潜った───が
「・・・って、ちょっと待てぃッ!!」
諏訪子は、自分の今からしようとしていることを一度、脳内にて高速で整理する。
───私は、天界に行こうとしている。
───だが今、自分のいる場所は何処だ?
───地面の中だ、うん。
───・・・って、何で地面に潜った、私ッッ!!?
心の中でノリツッコミをしつつ、地中から飛び出る。
「何で、天界行こうとして、地面に潜ったのかしら・・・天界は空の上じゃない。何か・・・そろそろ、私もボケてきたのかねぇ───何て言ってみたり」
等と彼女は、舌を出しておどけて見せる。
一人だから、正直空しかった様だが。
「・・・流石に空しいね。とっとと行っちゃおうか」
───あの不良天人に何をするかは、向こうについてからのお楽しみとして・・・ね。
そして、天人達の住まう幻想郷の空の上の大地───天界へと、諏訪子は飛翔していった。
───天界。
天人達の住まう天上の大地。
そこは、地上の者からしてみればまさしく、羨望に値する楽園の一つであろう。
だが、しかし。
今、天界の端にて、退屈な様子で地上を見下ろす少女がいた。
名を比那名居 天子。
地上人上がりの天人である。
彼女は他の天人達から“不良天人”と呼ばれている。
別段、彼女と同じ経緯で天人になった者達全てが不良天人と呼ばれている訳では無い。
彼女の行動に天人としては、あまりに問題があり過ぎる行動が目立つ故に、そう呼ばれている。
天子は、天界に住む者の一人でありながらも地上の者と積極的に関わっているのだ。
それが、最大の要因と言える。
しかし、彼女がその様なことをする理由は、至極単純。
天界が退屈だから、である。
普通の天人達は現状に満足し切り、流れるままにただ日々を過ごしている節がある。
そんな中で彼女は、彼女が元地上人故なのか、それとも、彼女自身の性格なのかは判らないが、何処か刺激を求める気質があった。
そして、地上に住む様々な人妖達の話を耳にした。
それは聞いた話だけでも、天子にとって全てが楽しそうに聞こえた。
特に、異変に関連する話は彼女の興味を引き、緋想の剣を勝手に拝借し、緋想天異変を引き起こすまでに至った。
異変を起こせば、その過程で様々な人妖達に会えて、刺激的な日々になるはず───そう踏んだが故に。
ただ、起こした異変の規模が規模なだけに、「幻想郷壊す気かこの大馬鹿不良天人が」といった感じで妖怪の大賢者にフルボッコにされたり、「神社が崩壊した、どうしてくれるこん畜生」等と紅白巫女にもボコられたりはした。
・・・無念無想の境地にある天子に、あまり効果は無かった様だが。
一先ず、それに関してはどうでも良い。
とにかく、彼女は今
「あぁ・・・実に退屈だわ」
何時も通りに暇だった。
「ふぁあ〜・・・依玖もいないし、地上で何か面白いことがある訳でも無し───ホント、どうしたもんかしらね〜・・・ん?」
地面に寝転がりながら、欠伸をする。
そのままの姿勢で、地上を見下ろしていたら、何かがこちらに向かって近付いて来ているのが見えた。
「・・・?」
身を乗り出す様にし、天子はその近付いて来ている何かを、目を凝らしながら見る。
───何、あれ?
真っ先に天子はそう感じた。
その向かって来ている何かは、天子より少しばかり背の低い少女。
頭には異様に目立つ、蛙の頭を模した様な奇妙な帽子を被っている。
その姿には、一応心当たりがあった。
「あれは確か、山の神社の神で───洩矢 諏訪子だったかしら・・・っとぉ!」
咄嗟に乗り出していた上半身を引っ込め、即座に背後に身を退く。
直後、天子が先程までいた場所に、諏訪子が着地。
そして、天子の方を笑みを浮かべながら見据えていた。
「どうも、お邪魔しますわ」
「一応、お邪魔されます。何しに来たかは解りませんが」
共に何処か含みのある挨拶を交わし合う。
「何しに、っていうのは・・・」
「───ちょっと待った」
「・・・ん?」
天子は諏訪子の言を一度止める。
そうしてから、ジーッと諏訪子の目を見つめる。
一応言っておくが、本体の方ではない。
天子は、諏訪子の目を見つめつつ、何かを考えている様子だった。
───まさか、私がやりに来たことが何なのかバレたのかしら・・・?
相手は不良且つ地上人上がりとはいえ、天人の端くれには違いない。
地上人よりも、肉体は勿論、精神や頭脳の面も優れているはず。
なら、その優れた頭脳からの洞察力。
それで、自分の行動を見透かされてしまうのでは?
諏訪子は、出来るだけ表情に出さず、天子と目を合わせたまま、そんなことを考える。
「フフ〜ン・・・成る程ね」
何故か、得意気な顔で
笑む天子。
───ゴクリ。
その様子を見て、何故か思わず生唾を呑み込んででしまった。
───有無を言わせずに仕掛けるべきかしらね。
諏訪子はそのまま、天子に最初の一撃を仕掛けようと、後ろに回した手に鉄の輪を顕現させた───
───が、しかし。
「良いわ、神様・・・思いッ切り私を虐めてちょうだい!!」
その予測を遥かに斜め上に行った一言に、諏訪子はガクンッ、と前のめりに体勢を崩してしまった。
「な、何言ってんだ、この不良天人ッ───あ!」
体勢を立て直すと、すぐに大声でツッコミを入れる。
しまった、と思い口を押さえる。
当然ながら遅いのだが。
「前に会った時は良く分からなかったけど、貴女・・・他人を虐めるのとか大好きなんじゃない?そうでしょ?私には分かるわ。霊夢や紫に悪魔の犬とか・・・みーんな、同じ目をしていた───今の貴女の様な、まるで獲物を狙う肉食獣の様な目をね・・・フフ、フフフッ・・・思い出すだけでも身体が熱くなってきた・・・あぁん・・・ヤッバい、ヤッバいわぁぁあ・・・ウフフ・・・」
しかし、そのツッコミを天子は華麗にスルー・・・というか完全に無視し諏訪子にそう言い放つ。
顔も何だかやけに紅潮してきており、何処か自分の世界へトリップしてる様にも思われる。
というか目が諏訪子を見ず虚空を見ながら、身体をくねらせ、アヘ顔気味になっている時点でトリップしてるはずだ、間違いなく。
「───へぇ」
───成る程、そういうことね。
考えてみれば、すぐに理解出来ることだった。
諏訪子が今まで封印していた性癖は、極端なまでの虐待的行為に快感を見出だす所謂、サディストという奴だ。
それも超が三つ程付く様な。
対して、彼女の目の前でくねっている不良改め変態天人はおそらく、虐待的行為を受けることに快感を覚えるという、サディストの対極の存在にして、唯一無二のパートナー(?)───マゾヒスト。
多分、こちらも超が三つ程付くだろう。
一応、何故に天子がマゾになったのかをまずは説明させて頂く。
彼女が天人になってから、おおよそ三百年経った頃・・・天人としての生活が退屈になってきた時期のことだ。
彼女は、自分の身体がどの位まで頑丈になったのかを確かめたくなった。
初めは、自分の大地を操る程度の能力で造った小さい岩を、自分の身体にぶつける。
あまり痛くない。
岩を更に大きくしてぶつける。
少し痛かった。
今度は、高い崖の上から落ちてみる。
それなりに痛かった。
・・・等と、自分の身体の頑丈さの限界を知ろうと試している内に、徐々に徐々に天子の中に妙な快感が芽生えてきた。
その時は、快感を感じる自分に対し何処か嫌悪感を抱いていた為に、心の奥底に封印し、逃げる様にまた退屈な日々に戻った。
自分のその快感を否定して。
だが、ある日。
彼女は、新たな刺激とスリルを求める為に緋想天異変を起こし、異変解決に来た連中にボコボコにされたのだ。
そこで、再び封印していた“あの時の快感”が蘇ってきた。
特に、霊夢と紫にフルボッコにされた時に。
その快感は前回のものを遥かに超え、そして、前回の様に嫌悪感も全く無い。
言ってしまえば、天子の枷が外れた・・・ということなのだろう。
それからは、まるで貪るかの如く、その快感を感じる為に様々なことをした。
花の妖怪に喧嘩を売って、フルボッコにされて喘ぎ叫び。
衣玖に修行と言って、雷を自分に落として貰い絶頂に至り(そして、衣玖にはドン引きされ)・・・等と色々やって───
───で現在に至る。
「大分昔っから今までずっと生きてきたけど、正直こういった手合いは初めてね・・・だけど、新鮮で面白そうだわ」
黒い笑みを浮かべたままに言いつつ、諏訪子は天子の方に右手を向ける。
その右手をゆっくりと閉じる。
まるで何かを締め付ける様に。
「・・・ん?きゃあッ!!?」
直後、天子の四肢に蔦が絡み付き、無理矢理四つん這いの姿勢に固定。
そんな彼女の周囲から更に数本の蔦が生え、その蔦全てが天子の服の中へ侵入していく。
「まずは、産まれたままの姿になってもらおうかな・・・そーれっと」
諏訪子が右腕を軽く振るうと、服の中へ侵入していた蔦の群れが一斉に、服を内側から引き裂いた。
「・・・!」
天子は声一つ上げずに驚愕し、それと同じだけ興奮に息を荒くしている。
―――トンだ変態天人ねぇ。
等と拘束されている彼女を見つつ思いながら、鼻で笑い飛ばす。
そのまま、諏訪子はそんな天子の元へゆっくり近付いていった。
「さぁ───私にどうして欲しいのかしら、変態な天子ちゃん?」
諏訪子は、幼い姿に見合わぬ妖艶な笑みを浮かべつつ、天子のほんのりと朱に染まった頬を手で撫でる。
そうされて天子は心なしか、喜んでいる様に見えた―――いや、喜んでいる。
そして、息を荒げながら、震える口を開き
「───じめて・・・」
「んー?何だって?もっと大きい声で言ってくれないかしら?」
急かす様子で諏訪子は言い立てる。
「い・・・いじめて・・・虐めてぇ・・・」
「ほぉら!もっと大きい声でさぁ!!」
少しずつ少しずつ、諏訪子の笑みに、彼女の内なる狂気が宿り始める。
妖艶な笑みから、嗜虐的な笑みへの転換。
その表情を見た瞬間に
「いじめて・・・イジめてちょうだいッ、虐めて下さい・・・お願いしますッ!!わたしを・・・へんたいなわたしを、ぐっちゃぐちゃにしてくださぁいッ、かみさまぁあああああッ!!!!」
───天子の枷が完璧に外れた。
拘束された身体を右に左に揺らしながら、懇願の叫び声を上げている。
「よく言えました。それじゃ、ご褒美に飛びっきり痛くしてあげるから、覚悟しなさい───」
嗜虐的な笑みのまま、拘束されている天子の後ろ側に回る。
服ごと下着も破り捨てた為、そこには整った曲線美を持った、桃の如く瑞々しい天子の尻が丸見えとなっている。
その美尻に諏訪子は右の手の平を沿わせ、軽く握ることで、その柔らかさ、その弾力を感じる。
「良い尻してるじゃない・・・とてもとても、叩きがいがあるわ」
───こんな感じかしら?言葉攻めって。
正直、諏訪子にとって天子の様なタイプを相手にするのは、先程言った通り初めてだ。
実際、目の前の天人をどうすれば良いのか即興で考えながら、手探りでやっている状態である。
諏訪子としては、出来れば有無を言わせぬ一方的な虐待の方がそそられるものはある。
だが、天子のペースに乗せれてしまった以上、付き合ってやるしかない。
そう考えながら、右の平手をお尻に叩きつけた。
「ひゃいんっ!!」
切なそうな顔で嬌声をあげる。
───あら、可愛い。
「そぉれ!!」
二発目。
「あひゅん!!」
「ほら、まだまだ、まだまだぁ!!」
三発、四発、五発、六発、七発───。
激しいリズムで諏訪子の平手が天子の桃尻に炸裂。
段々と紅葉の様に真っ赤な手の痕が、天子の尻に刻まれていく。
そんな間にも受けの天子、攻めの諏訪子、双方のテンションは上がっていく。
「ほらほらほらぁ・・・もっと鳴きなさいよ」
天子の四肢を縛る蔦を更に強く締め上げ、外側へ、外側へと無理矢理引っ張らせる。
ギリギリと骨が軋む音が聞こえてくるが、彼女は苦痛を感じている様子は一切無い。
むしろ、涎を垂らしながら喜んでいる。
「い、あ、あ・・・ひゃぁぁぁああぁぁぁああんっっっ!!!!」
諏訪子自身、手加減等は一切していない。
むしろ、天子の四肢を引き千切らんばかりに蔦に力を込めている。
最早、天子には痛みと快楽の間に境界が存在していないのか、と彼女は思ってすらいた。
しかし、諏訪子はそれと共に思う。
―――なら、この天人に限界はあるのかしら?
・・・と。
クスリ、と笑みながら、天子を蔦による拘束から解放する。
「あ、ぅ・・・」
ドサリと音を立てて、解放された彼女は、地面に産まれたままの姿で突っ伏した。
大分荒い息使いは聞こえる為、生きてはいる様だが。
「どうだった?凄い気持ち良さそうな顔してたけど?」
天子の傍にしゃがみ込み、優しく語りかける。
問いに対し、軽く頭が縦に振れる。
今の彼女に出来た唯一の肯定の意思表示だ。
それを見て、諏訪子の顔に再び笑みが浮かんだ。
「それじゃあ・・・もっと気持ち良くしてあげようか?」
「ほぇ・・・?」
紅潮した顔で諏訪子を見上げながら、呆けた声を上げる。
表情こそ疲労によりトロンとしているが、その瞳には期待の色が浮かんでいる。
「どんな苦痛でも、あなたにとっては快楽になり得る―――なら」
ゆっくりと諏訪子の手が、天子の首に伸びる。
優しく優しく、割れ物を扱うかの様に優しく、天子の首筋を撫でる。
「・・・こんな苦痛も、快楽に変わるのかしらね?」
―――ギュウッ。
「う゛、が・・・ッ!!?」
途端に優しく撫でていた首を両手で強く握った。
その時の諏訪子は、普通の人間なら間違いなく首が千切れる程度の強さで、天子の首を絞め上げていた。
肉体が頑強な天人故に、千切れることこそ無かったが、当然の様に苦しい。
「く・・・い・・・く・・・う、ひ・・・!!」
あまりの苦しさに、身体をジタバタと動かし抵抗しようとするが
「おっと、暴れちゃいけないよ」
諏訪子が再び蔦を生み出し、四肢に加え今度は地面に直接固定する。
呼吸が出来ない苦しさに腰だけをくねらせ悶え続けている。
「い、ぎ・・・いぃぎぃぃい・・・」
「どう?苦しいかしら?それとも、まだ気持ち良い?」
徐々に徐々に握る力を強めていく。
力を強める毎に、快感の波が押し寄せる。
青褪めていく天子の顔が
焦点が合わなくなってきている天子の眼が
いや、今の天子の状態全てが
―――快感を与えてくれていた。
「ぅ・・・うぅ・・・ひ、ぅ・・・」
「ハハッ!ほら、もっともっと苦しくなりなよ!!もう、このまま死んじゃうくらいに―――」
―――あんたはこれ以上、民を殺すことも虐げることもしなくて良いんだよ?
―――・・・本当に?本当に私は・・・だけど・・・。
―――何時までも過去に縛られる必要なんて無いんじゃない?
―――それでも、私がやってきたことは許されることじゃない・・・何時か償わなきゃいけない。
―――だから、これはあんたと私の“約束”。
―――“約束”・・・か。
―――私は、これから虐げることも殺すこともしない。
―――だけど、私がまた道を誤った時は・・・
―――・・・ああ。
―――・・・止めないでね、神奈子。
―――・・・諏訪子。
―――その時は、私の“罪”が裁かれる時だから。
―――そんな日が、来なければ良いんだけどね・・・。
「―――ッ!!!」
唐突に過去の自分と親友の姿が諏訪子の脳裏に蘇る。
その過去を思い出し、今の自分が取り返しの付かないことをしようとしていることに気が付いた。
咄嗟に、天子の首に掛けていた手を放し、拘束していた蔦を消滅させる。
解放された天子は、白目を剥き、口から涎を垂らし、更に失禁もしている様だ。
それでも辛うじて息はあるらしく、微かな息遣いが聞こえる。
だが、諏訪子に安堵の気持ちは無かった。
「・・・何で、私・・・こんなこと・・・約束・・・あいつと約束・・・してたのに」
彼女は、今の自分を支配する感情に身を任せて涙していた。
愚かな自分の行為に対する後悔。
大切な親友に対する裏切りへの懺悔。
その二つの感情が、眼を伝い涙となって流れ落ちる。
「何で・・・何で私はッ・・・!!」
彼女自身にも分からなかった。
何故、自分が親友との最大の“約束”をこうも簡単に破ってしまったのか。
チルノを虐げたのは、許されるかは別にしても相応の理由があった。
だが、これは・・・これは、ただの虐待。
昔の自分が行っていた、ひたすらに愚かしい行為。
やってはいけない。
だが、止めることは出来ない。
そう自分の中で葛藤し続けていた行為。
「ハ・・・ハハッ・・・」
涙の後には、乾いた笑みしか浮かばなかった。
そして、逃げる様に天界を後にした・・・。
「うぅ〜ん・・・」
諏訪子がいなくなってからしばらくして、天子は意識を取り戻した。
きょろきょろと辺りを見回し、諏訪子がいないことを確認する。
「あの神様ったら・・・何処行ったのかしら?もう少し虐めてくれても良かったのに。でも、まぁ・・・」
「気持ち良かったし、まぁ良っか。また来てくれないかしら?」
少し嬉しそうな笑みを浮かべ立ち上がる。
「・・・総領娘様」
「ん、衣玖?」
自分のお目付け役である竜宮の遣い、永江 衣玖の声に振り返る。
すると、何故か衣玖は何時も通りの笑顔だが、少し天子から目線を逸らしている様に見える。
そこで、天子が衣服を一切身に着けていないことに気が付き少しばかり慌て、空気を読んだ衣玖が比那名居家の屋敷まで服を取りに戻ったのは言うまでも無い。
「・・・ただいま〜、っと」
守矢神社に着いたのは、丁度夕飯時だった。
後ろめたさを隠すかの様に、出来る限り諏訪子は明るく振る舞った。
「あ、諏訪子様。おかえりなさい」
「ただいま、早苗―――って、あれ?神奈子、まだ帰ってないの?」
「はい・・・色々と立て込んでいて長引きそうだ、といった内容の手紙を射命丸さんから受け取りまして・・・明日まで帰れないそうです」
「そっか・・・」
「だから、夕食は二人だけで取っていて欲しいとも書かれてました」
「まぁ、そりゃあそうだよねぇ」
「もう作ってありますので、食べてしまいましょう。後、お風呂も既に沸いておりますので、食べたら入っちゃって下さい」
「さっすがだね、早苗。気が利いてるわ」
そうして、二人だけの簡素な夕食が終わった。
「そういえば、昨日の“妖怪退治”。どうだったの?」
神奈子が帰ってくるまでの間、特に時間を潰す当ても無かったので諏訪子は、早苗が昨日したという“妖怪退治”について聞きたくなった。
それ故の質問。
「え?それは・・・」
夕食の後片付けをしていた早苗は、その言葉を聞いて、少しバツが悪そうな表情で口籠る。
「御先祖様は子孫の成長が見たいのよね〜。どうせ今は二人きりなんだし、早苗の感じたことはっきり言って良いよ?」
その早苗の先祖は、何かに期待している様な笑みを浮かべ、テーブルに頬杖を突きながら彼女を見ている。
「は、はぁ・・・えーと・・・割と、楽しかった・・・です・・・言って良いのかどうか分かりませんが・・・」
「へぇ・・・?」
少し変わったことを言われた様な気もしたが、気にせずに諏訪子は話を聞き続ける。
「何と言いますか・・・興奮、しちゃったんです、妖怪を痛め付けるのに・・・でも、本当はそんなこと考えちゃ駄目だって、頭では分かってるのに止められない・・・」
「・・・」
早苗の表情が段々と曇ってくる。
最初は嬉しそうに話を聞いていた諏訪子の顔からも笑みが消え始める。
「人間じゃなくても生き物なのに・・・痛め付けて楽しいって思うなんて・・・私、おかしいですよね」
「・・・早苗?」
「それに、聖輦船を追いかけていた時もそうでした・・・あの時は、空飛ぶ船を追うというのもあって何時にも増して気分も更に高揚していたから・・・痛め付けたうえ、酷いことも言ってしまいましたし・・・」
「早苗」
「最近じゃ、他人と弾幕ごっこをする時だって、こうすれば相手が痛がって気分が良いんじゃないか・・・なんて考えてしまったり・・・私、私・・・」
「―――早苗ッ!!」
「―――!?」
突然の大声にビクリとし、思わず声の主である諏訪子の方を見る。
何故かその表情は、一瞬、早苗には哀しく見えた。
だが、それは本当に一瞬であり、後はただ後悔している様な表情で
「・・・ごめん、早苗。何だか嫌なこと思い出させてしまって・・・」
謝罪した。
「いえ、諏訪子様が謝らずとも・・・」
それから二人は会話を交わさず、ただただ時間だけが過ぎ去っていった。
気まずい空気が流れ続けた。
しばらくして
「・・・湯に浸かってくるよ。沸いてるんだよね?」
「・・・はい」
居間を後にして、風呂場へ向かう。
その時の早苗から目を背ける様に―――。
「・・・」
湯に浸かりながら、諏訪子は先程の早苗の言っていたことを思い返していた。
「・・・」
湯の中に一度潜り、数秒して顔を上げる。
その時に、思い出していた。
昔の自分の姿を。
今の自分の姿を。
そして、今の早苗の姿を・・・。
「―――今の早苗、まるで昔の自分を見てるみたいだわ・・・」
他者を痛め付けて楽しい。
だが、それはいけないことだ。
しかし、やらねば自分がおかしくなってしまいそう。
いや、そもそも自分は既に―――
―――おかしいのかもしれない。
そんな葛藤を自分の子孫が抱えているのは見て取れた。
何故なら、自分もそうだったから・・・。
それを考えてから、諏訪子はまた後悔していた。
氷精を虐げたことを。
天人を虐げたことを。
誰かをまた傷付けてしまったことを―――。
「ホント・・・馬鹿だね、私。自分の子孫が抱えてる悩みも気付けず、それに親友のことも裏切った・・・」
「・・・ごめん、神奈子、早苗」
坤神は、誰にも悟られぬ様に涙を流した。
自分の“罪”の数だけ涙を流した・・・。
そして・・・彼女は、床に就く前にある決意をした。
―――償いの為に。
―――その頃。
「全く・・・急に呼び出して何なんだい。二人にバレない様にするのは大変だったんだよ?後、時間潰しと天狗や河童達への根回しもね」
守矢の乾神―――八坂 神奈子はある者に呼び出されていた。
早苗達には、核融合炉関連の用事だと思わせる様に妖怪の山で、特に守矢神社と付き合いのある者達に色々と根回しをしていた。
それに今は既に真夜中。
この様な時間に急に出掛けるのは、怪しまれると踏んだ。
それ故に、朝に神社を出て、この時間まで人目に付かない様な場所で時間を潰していたらしい。
「それは、私の知ったことでは無いですわ。私はただ、重要なお話があるからこの時間までここに来て貰いたかっただけ。そこに至るまでの過程は、私が関与するものでは無いわ」
「それはそれは、まぁ・・・で、その重要なお話というのは何なんだい?なぁ―――」
「―――八雲 紫」
〜蛙の観察日記〜
二日目
今日はお空の上に蛙は行った。
そこには、裸になって叫んでる人がいた。
俗に言う変態さん?
蛙にお尻を叩かれていた。
何か悪いことしたのかな?
首も絞められてた。
でも、駄目だよ蛙さん?
死んじゃうよ?
死んじゃうよ死んじゃうよ?
そんなことしたら死んじゃうよ?
叱られちゃうよ?
あぁ、とっても悪い蛙だね。
そんな蛙は
オ シ オ キ しなくちゃ。
「―――あら?あの子ったら、こんな所に日記なんか開きっ放しにして何処行ったのかしら?」
「・・・何時も通り変な日記ね。蛙が首を絞めるなんて・・・まぁ、あの子らしいと言えばあの子らしいけれど」
「それにしても、本当に何処へ行ったのかしら?今日は、一緒にご飯を食べるって帰ってきていたのに―――」
「―――こいしったら」
初めての方は初めまして。
久々の方はお久しぶりです。
紅のカリスマです。
ようやく、天子編出来ました。
皆様のご期待通りの出来に仕上がっているかは分かりませんが・・・天子を虐める辺りが特に。
後、話の流れが少し変わった為、前回投稿した序章とチルノ編も若干修正致しましたので、読んでいた方はもう一度目を通して頂けると幸いです。
次はレミリア編になりますが・・・自分は執筆速度もあまり早くは無いうえ、PCを使える時間もあまり無い為、次の投稿は未定になります。
気長にお待ち頂けると嬉しいです。
・・・ゆめにっき、雰囲気が良いなぁ。
追記:途中、衣玖さんの名前が依玖さんになっていたのを修正しました。
以下、コメント返信。
>>アルマァ様
レミリア編は虐めものとは完全に別方向になりますが、期待してお待ち下さい。
>>穀潰し様
諏訪大社・・・何時の日か一度は行ってみたいです。
しかし、行ったら自分は更に昂ぶりが増しそうです・・・(笑)
>>johnnytirst様
カエルの子はカエル・・・まさしく、その通りですね。
大分、血が薄くなっても早苗さんはアレですから、きっと諏訪子様の子や孫辺りは諏訪子様並みに天然ドSだったのかもしれません。
>>4様
レミリア編の次に終章も予定していますので、期待してお待ち下さい。
>>5様
鋭意執筆中ですので期待してお待ち下さい。
>>6様
サドい諏訪子様、実に良いですよね。
紅のカリスマ
作品情報
作品集:
13
投稿日時:
2010/03/08 14:41:07
更新日時:
2010/04/02 23:20:24
分類
諏訪子
天子
さでずむ
祟り神
嗜虐神
やはりこれは良い物だ。そしてこいしちゃん参戦でドキがムネムネして参りました
そしてケロちゃんの行為を知った(かもしれない)神奈子様に早苗さんの行動。気になりすぎてテンションがマッハです。
この昂ぶりを収める為には諏訪大社に行くしかないですね。
次はこいしか…