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『灯台デモクラシー(笑』 作者: HJ
「もう春だっていうのにあんまり暖かくならないわねえ」
「春を迎える儀式をしないと春はやってこないのよ」
「儀式ねえ。春踊りでもするの? それならもっとふさわしい妖精がいると思うけど」
「まさか。私たちに出来るのはせいぜい春の味覚を楽しむことよ」
「春の味覚ならもう食べてるじゃない。ツクシとか」
「そんな庶民的なものじゃくてもっと大物を狙いに行くわよ」
「ということで迷いの竹林にタケノコ狩りに来たわ」
「ちょっと時期が早くないかしら?」
「タケノコは小さい方が甘みが詰まって美味しいっていうじゃない。それに今年の幻想郷初タケノコを食べることが出来るかもしれないわよ」
「それは自慢できるわね」
「煮物は基本よねえ。タケノコご飯に天ぷらに、それに新鮮なら生で食べても美味しいわ」
「それじゃあ決まりね。手分けして探しましょう」
「全然見つからないわ」
「こっちもよ」
「というかタケノコってまだ地面に埋まってるから、地面を掘らなきゃダメなんじゃない?」
「面倒だわ」
「美味しい初タケノコのためよ。頑張って探しましょう」
「これなら家で寝てたほうがよかったかもしれないわ」
「はあ。やっぱり見つからないわ」
「そろそろ帰りましょうよ。暗くなるとまた出られなくなるかもしれないわよ」
「そうねえ、残念だけど……、待って、誰か来たわ、隠れましょう」
「写真は撮れたけどあんまりネタにはなりそうにはなかったなあ。前にも撮ったことがあるし。まあいいわ、お土産も貰ったことだし、今夜はタケノコご飯にしようかしら」
「あれって……、射命丸文さんよね」
「タケノコたくさん持ってるし。うらやましいなあ。一個ぐらい分けてもらえないかしら」
「妖怪が私たちにそんなことしてくれると思う? それよりはいっそ盗みに行くのよ」
「ちょっと、そんなこと無理に決まってるじゃない! 相手は妖怪、しかも天狗よ」
「私に考えがあるわ。一人じゃ無理だけど三人の力をあわせればきっと大丈夫よ」
「……ほんとにうまくいくかなあ」
「また私がこういう役目か……」
「大丈夫よ。なんとかなるわ」
「あ、射命丸さん。こんにちは」
「あや、いつぞやの妖精。珍しいですね、こんなところで今日は一人でピクニックですか?」
「いえ、その、他の二人とはぐれちゃって。それで、えっと、射命丸さんのような強力な妖怪なら、二人を簡単に見つけてもらえると思うんですけど、一緒に探してもらえませんか?」
「おだてても何もでませんけどねえ。まあそこまで言われると、別に暇ですし少しくらいなら手伝っても良いですよ」
「やったあ。ありがとうございます。二人とはあっちの方ではぐれたんですけれど……」
「どれどれ……」
スパーン!!
静かな竹林にいい音が響き渡った。文が自分に平手打ちをかました音だと理解したとき、彼女はまだ空中にいた。彼女が倒れこみ、一瞬の静寂を置いてバラバラとタケノコが辺りに散らばった。残る二人の顔が青ざめる。やらかした――
「嘘っ、ほんとにバレた!?」
「そりゃあ鞄がいきなり軽くなれば馬鹿でも気付きますよ」
「みんな! 逃げるわよ!」
「イタタ、ちょっ、待ってって!」
脱兎。それを見て射命丸はにやりと笑う。
「逃がしませんよ。世の中にはけじめってものが必要なんです」
風神一扇。
走り出した三人が突然独楽のごとく回転を始める。
三人それぞれを中心に風を巻き起こしたと誰が理解し得たか。悲鳴は風の轟音にかき消された。ますます風は強さを増し、周囲の竹林が身をよじらせる。
竹に湿っぽい音を立ててへばりついた物体があった。赤黒い肉塊だった。空に、地面に、皮と肉と臓物が舞い踊った。無形の刃に切り刻まれた肺が空高く飛んでいく。胃はほぼそのままの形で地面に叩きつけられ、消化しきれなかった内容物を曝け出す。色の良い肝臓は空中で他の肉塊とぶつかり合って粉々になった。竹に叩きつけられた肉片が、風圧に耐え切れず再び彼方へと飛ばされる。風は紅い台風となり、錆びた鉄の臭いを彼方へと届ける。
霧は数十秒で晴れた。回転を続ける三体の精巧無比な妖精の骨格が、そこには残された。脳といくらかの神経と、ああそして悲劇か喜劇か、その体の中心で心臓はまだ鼓動を続けているのだ。そして神経があるのだから、当然痛覚もあるだろう。生きたまま文字通り剥き身にされる感覚は、出来れば味わいたくない。
先程まで訪ねていた永遠亭の医師がこの光景を見たら、一体何と言っただろうか。奇跡か、悪魔か、あるいは想定の範囲内か。風の力を以ってして相手の体を高速回転させ、遠心力でその肉だけを剥ぎ落とす。射命丸文の、誰も知らぬ匠の技であった。
誰のものとも知れぬ、頬に一片だけこびりついた肉塊を中指で掬い取り、ぺろりと舌で舐めて一言。
「今夜はタケノコ祭ですね」
風によって地面から掘り出されたタケノコが、次から次へと文の周囲に落下していった。
万引きは犯罪です。
でも大丈夫、次のクローンはきっとうまくやってくれるでしょう。いや死んでないけど。
妖精にはあっさりとした死が似合う。誰が誰だかわからないくらいの。いや死んでないけど。
あと初投稿なんだよ。
以下チラシの裏
細々と下手の横好きで渋もやってるんだが、何気なくあなたを登録しているユーザー(2名)が(3名)になってておやと思い見てみたらそこには漬け物会長の文字が!
ちょっとだけ背筋がひゅんってなった。いや身内くらいしか登録してくれてないですしグロ描いてる訳でもないすし放置気味ですし最近
ありがとうございました。そろそろ死んだか。
HJ
- 作品情報
- 作品集:
- 13
- 投稿日時:
- 2010/03/14 22:12:38
- 更新日時:
- 2010/03/15 07:12:38
- 分類
- 三月精
- 文
- グロ
地面を掘ったら文が出るのかと思ったら
おいしかったです