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『ストロベリークライシス』 作者: 飯
岡崎夢美は教授である。
若干18歳にして、比較物理学の教授である。
「ピリ辛チキン&鶏そぼろ弁当490円」
しかし、目の前にあるのは、パックに山盛りになったイチゴだった。助手の北白河ちゆりが、差し入れにと持ってきたのである。
指に付着したイチゴの果汁を舐めとる。唾液が空気に触れて、ひんやりとする。まだ果汁が残っているのか、べとついた感触が残っている。それを気にもせず、夢美は次のイチゴを手に取った。
研究室には、イチゴの甘い匂いが充満していた。床一面がイチゴで敷き詰められ、その一角に小さな山ができていた。それはちゆりだった。イチゴの隙間から覗く目が、黒く淀んでいる。
「ちゆり」
「ちゆ」
「ち、ゆ」
「痴百合」
天井からは、紫色をしたイチゴが、ヒモを伝ってするすると降りてくる。それを気にもせず、夢美はパックから次のイチゴを手に取った。またしても指にイチゴの果汁がべっとりと付着する。そして口の周りにも、果汁と一緒に小さなタネがくっ付いている。
夢美は口元を右手でぐいと拭って、その手をスカートへなすりつけた。彼女のスカートは、元々は純白であった。度重なるイチゴ果汁の侵食によって、それは今では真っ赤なスカートへと変貌していた。それを防ぐために、白いエプロンをつけていた時期もあった。それも今では、真っ赤なマントへと変身していたのであった。
紫色のイチゴが部屋を飛び回り始める。あるものは蛍光灯を破壊し、あるものは壁へと激突して、十字架状に飛び散った。
「苺クロス」
ちゆりの振動が、さらに激しくなる。あまりに激しい高速振動によって、彼女の周囲のイチゴは沸騰し、マグマのように果汁を噴き上げている。それを気にもせず、夢美はパックから次のイチゴを手に取った。一口でクシャリと果肉をほおばり、それによってまたしても指にイチゴの果汁がべっとりと付着した。
壁を伝い降りてきたちゆりが、その指を口に含む。ぬめりと温かい舌が、外気に冷やされた指先を包む。ちゆりの口腔内には、幻想が満ちていた。人差し指を根元まで飲み込み、上顎と舌で指を挟みこんで扱くようにして吸い上げ、指の腹をねっとりと堪能したちゆりの舌は指の根元、人差し指と中指の間にまで及び、執拗になぞりながら中指の脇に唇を押し付ける。
夢美の指は、いちごの味がした。
それはストロベリークライシスであった。
七人に増えたちゆりが激しく回転し、飛び散ったイチゴのエネルギーによって、研究室の壁はついに爆散した。それを気にもせず、夢美はパックから次のイチゴを手に取った。紫色のイチゴを追いかけて飛び回っていたちゆりが、イチョウ並木を吹き飛ばした。それを気にもせず、夢美は次のイチゴを手に取った。指を舐めていたちゆりは、口から逃れていった指を、潤んだ瞳で物欲しげに見つめている。
「Maple Dream...」
「日が照ってるぜだぜ」
夢美はイチゴを手に取った。パックの中のイチゴは、それが最後の一つであった。そのことに気が付いた夢美は、寂しさと愛おしさの入り混じった眼差しで、最後のイチゴを見つめている。その夢美の指を熱い目で眺めていたちゆりは、欲求不満のあまり、自分がそのイチゴと入れ替わってしまいたいとさえ思った。しかし、そのイチゴはちゆりではなかった。ちゆりはイチゴではなかった。しかし、よく考えてみてほしい。視点を変えれば、ちゆりはイチゴたりえるのではないだろうか。ちゆりとイチゴの間に、一体どれだけの違いがあるというのだろうか。血ゆ
そう、イチゴはちゆりであった。
夢美は大量のちゆりを撒き散らしながら、ちゆりの果汁をスカートになすりつけ、次のちゆりを手に取った。紫色のちゆりが部屋を飛び交い、床一面を埋め尽くすちゆりは、微小震動を繰り返していた。
「ストロベリークライシス:
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- 作品情報
- 作品集:
- 13
- 投稿日時:
- 2010/03/17 07:14:56
- 更新日時:
- 2010/03/17 16:14:56
- 分類
- 東方夢時空
- 岡崎夢美
- 北白河ちゆり
夢美さんといえばちゆりを殴ったときのあの顔
いちごすげえ
って思ったらちゆりだったというこのトキメキ