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『マーダード・バイ・ザ・ミュージック』 作者: どっかのメンヘラ

マーダード・バイ・ザ・ミュージック

作品集: 13 投稿日時: 2010/03/22 11:05:41 更新日時: 2010/03/23 05:26:02
「そういえばルナサお姉ちゃん、今日香霖堂で面白いCD見つけたから買ってきちゃった!」
リリカの肩越しに彼女の持っているCDのジャケットを見て、ルナサはけだるそうな顔をした。
「何これ・・・リリカったらまた変な外界のCD買って来て・・・。」
ここはプリズムリバー三姉妹のライブハウスだ。
今日も彼女達はライブを終えて、今三人で一杯たしなんでほろ酔い気分でいるところだ。




「何々〜、わー!!面白そうなCD!」
リリカの横に寄ってきたメルランは能天気な様子でそのCDのジャケットを見た。
しかしルナサはそのCDをみながら、げんなりとした表情をした。
CDのジャケットには女性のそれと思われる横顔が写っていた。
しかし彼女には頭髪がまったく無い。
その代わりに全体をてらてらと虹色に光る金属質の塗料で塗ったくられていた。いや、もしかしたらそういう金属で出来ているのかもしれない。
そして彼女の頭には同じ素材で出来ていると思われる二本の棒が突き刺さり、反対側へと貫通していた。
人によっては不気味に感じるこのジャケット。しかしルナサに不安感を覚えさせたのはその横顔の目だ。
その目は穴のようだった。そしてその穴から涙より粘度の高い液体、たとえば血のような液体を流したような形の穴が開いて目の穴と一体化していた。横顔に大きな穴でも開いたようだ。そしてその穴の向こうからぼんやりとした光が見えた。
その様子がルナサに不気味な嫌悪感を抱かせたのだ。




「何これ・・・不気味だからあまり聞きたくない・・・。」
「もうお姉ちゃんたら!またジャケットで音楽の好き嫌いして!ねーねー!聞いてみようよ!」
メルランは二人の前で飛び跳ね始めた。
「私も聞いてみたいな。」
ルナサは二人に押されて自前のCDプレーヤーにそのCDを挿入して、ライブで使った少し大きめのスピーカーにつないで再生ボタンを押した。



てけてけどん!てーんてーんてーんとことことこ・・・。
CDがプレーヤーに読み取られて少しして、軽快なドラムの音が聞こえた。
しばらくして今度はまた軽快なギター音が流れはじめた。軽快ながらもしっかりとした音のギターだ。
そして前奏が終わると同時に待ってましたとばかりにヴォーカルが飛び込んだ。
このヴォーカルもまた、そのジャケットと同等に妙なものだった。
このヴォーカルはおそらく男性だろう。しかしその声は異様に高く響いた。男にしては妙に高いのである。それがギターの音とせめぎあうように響いた。


「けっこうノリノリな曲だね!」
「聞いてるだけで気持ちが高ぶっちゃいそう!」



妹達がほくほく喜んでいる隣でルナサはふと考えた。
この曲のジャンルはいったいなんだろうか?ブルース?ロックンロール?いや、もっと激しい。パンクロックか?いや、それにしては音やメロディが硬い。ごつごつして、とんがってて、パンク特有の流動的な感じはまったく感じられない。
ルナサはしばらくして結論を導き出した。
そうだ、これはヘヴィメタルだ。それもかなり初期の。
そういえばこの前もリリカがヘヴィメタルのCDを興味本位で買ってきた。確かあのジャケットにはピラミッドから人造人間のような人間が飛び出てくる絵が描いてあったっけ。



そんなことを考えているうちにCDプレーヤーは早くもそのCDの二番目の曲の再生を終わらせようとしていた。



三曲目の曲が流れ出し、ギターのリフが流れ始めた。その時だ。
「うっ!!・・・あぁ!!・・・。」
ルナサがいきなり頭を抱えてうずくまった。
「うぅ・・・うぅぅぅう・・・・ううぅうぅ・・・。」
「どうしたの!?」
「お姉ちゃん大丈夫!?お姉ちゃん!!」
妹二人が慌ててルナサを囲んだ。
ルナサは息を荒げ肩をがたがた震わせていた。
「うぅぅぅうぅぅ・・・・あぁぁあぁぁ・・・・。」
「お姉ちゃん落ち着いて・・・!」
メルランが声をかけたその時だ。




「ぅあああああああ!!!!」
大声を張り上げてルナサがメルランを突き飛ばした。
そのまま床に倒れたメルラン。
「ちょっとお姉ちゃん何してごふっ!」
メルランの言葉は途切れさせられた。
メルランは腹を押さえ床に丸まりながらえずいていた。床に酒のにおいがする吐しゃ物が撒き散らされる。
その前でルナサは肩で息をし、口角から涎をたらしていた。手には彼女のバイオリン、そしてメルランの言葉を中断させた凶器を握り締めていた。
「る・・・ルナサおねえ・・ちゃん・・・?」
リリカはルナサの後ろで床にへたり込んだままだ。
そして彼女はルナサの激しい息遣いに混じって確かに聞いたのだ。
「はぁ・・・はぁ・・・殺す・・・・殺してやる・・・殺してやる・・・。」
そして彼女は一気にバイオリンを振り上げるとメルランのこめかみめがけてバイオリンを振り下ろした。




ぼくっ!!
鈍い音が響いた。そして間髪を入れずに次の音が響く。
ぼくっ!!ぼくっ!ぼくっ!!
リリカの目の前で、ルナサはメルランに向かってバイオリンを振り下ろし続けた。メルランの足がじたばたと動いた。
リリカが目の前の光景に硬直してる間にも、バイオリンは紅く染まり、メルランの服もまた紅く染まり、ルナサの服だけが黒いままだった。
しかしメルランの顔はルナサの体で見えない。そのうちメルランの体は痙攣し始めた。そしてとうとうメルランのスカートとその中から覗くパンツが黄色く染まった。まだ痙攣を起こしているメルランに、ルナサは最後の一撃を食らわした。バイオリンの竿が折れ、メルランの痙攣が一瞬激しくなり、また戻った。バイオリンの竿と胴はいまや弦のみでつながっている状態だ。




「はぁ・・・はぁ・・・殺す・・・殺す・・・。」
ルナサが真後ろを、リリカの方を向いた。リリカにじりじりと近寄る。バイオリンの胴が弦に引かれて床を引きずられた。
「やだ・・・ルナサお姉ちゃん・・・やだ・・・・。」
涙ぐんで腰を抜かしながら後ずさりするリリカを、ルナサは追い詰めた。
「やだ!!やだ!!やめてやめて!!」
しかしその哀れな逃走もライブ用の大型アンプに阻まれてしまった。
「いやだ!!いやだ!!お姉ちゃん!!正気に戻って!!助けて!!助けて!!」
姉の前でがたがた震えながら首を横に振るリリカ。彼女は恐怖のあまりちょうどメルランのように股間を黄色くぬらした。
「殺す・・・殺す・・・殺してやる!!」
ルナサがひときわ大きく声を上げて腕を振り上げた。それから少し遅れてバイオリンの胴がリリカの頬にめり込んだ。
声も出せず、その代わりリリカは血と折れた歯を口から吐き出した。帽子も吹き飛ばされた。しかし次の瞬間、反対側からまたバイオリンの胴体が飛んできた。バイオリンは弦に引っ張られて右へ左へと飛び回り、リリカを激しく痛めつけてゆく。
リリカの顔は段々と腫れ上がり顔の穴という穴から血が流れた。
そしてバイオリンはリリカの首に最後の一撃を加えると、弦の束縛から解放されて弾丸のように飛び出し。バスドラムに大きな穴を開けた。
リリカの体が倒れた。首がだけが体と別方向を向いていた。




ルナサは「それ」には目もくれず次の殺戮に入った。
「殺してやる!!殺してやる!!」
折れたバイオリンの竿に呪詛のように叫びながら、自らの首にそれを突き立てた。
折れて無数の刃物のようになったバイオリンの竿はルナサの首を容赦なく削った。
ごぶぶ!!ごぶぶ!!!
ルナサの口から血が溢れる。ルナサの喉は潰れて排気音しか出ない。しかしその手は止まらなかった。
ルナサの首が、顔が、手が、周りが紅く染まる。しかしルナサの服だけが黒いままだ。
さくっ!!ぶしゃあああああ!!!
傷口から驚くほど多量の血を噴出し、ルナサは倒れた。
ルナサは体を反り返らせて痙攣した後大小便を漏らした。ルナサの血走った目がぐるりと上を向いて、そのままルナサは動かなくなった。




朝日が差し込むライブハウスに、三人の死体が転がっている。
一人は頭が血だらけになりへこんで破れた頭皮から灰色の脳がもれていた。
一人は顔中血だらけになりむくれ首があらぬ方向へと向いていた。
一人は体中が血だらけになっていた。いや、血の海の中に横たわって居た。
そしてただCDプレーヤーだけが同じCDを、最後の曲を再生し終えてはまた一曲目に戻り、繰り返し再生し続けていた。




今、CDプレーヤーは早くもそのCDの二番目の曲の再生を終わらせようとしていた。
サブリミナル効果はほとんどの研究者は否定してるみたいですが推理小説のネタでは本当によく使われますよね。

因みに幻想入りしたのは「サブリミナル効果」です。ロブ・ハルフォードではありません。

http://www.youtube.com/watch?v=PqAPVB4u9Zs

最後に排気ガス氏、勝手にパロってごめんなさい。
どっかのメンヘラ
作品情報
作品集:
13
投稿日時:
2010/03/22 11:05:41
更新日時:
2010/03/23 05:26:02
分類
虹川三姉妹
排気ガス氏ごめんなさい
オマージュ
内輪?
サブリミナル
1. 名無し ■2010/03/22 21:16:56
キル・エム・オール!
2. 排気ガス ■2010/03/23 06:25:38
私の作品が新しいものを生み出す素になったことが嬉しいです。
やっぱりルナサはバイオリンで何がしかを撲殺する姿がとてもよく似合うと思います。
それにしてもなんで隠れて混じっているものの方に影響されるんでしょうかね。Do it!!
3. 名無し ■2010/03/24 17:34:18
よくもあんなキチガイレ…CDを!
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