「佃煮帝國が攻めてくるそうです。
皆さん、徴兵に備えて体を鍛えておいてください」
全国版ニュースでアナウンサーが淡々と臨時ニュースを読み上げた。
まだ冬の寒さが続く桜の咲く季節のことであった。
廃棄物投棄場で作業員のおっさんが佃煮帝國の軍勢を見た。
「お、おい!佃煮が歩いてるぞ!」
「ひぃぃ」
「おい、何か投げるもんねぇか!」
「自転車のサドルなら腐る程あるぞ」
「よしきたそれ」
おっさん共の投げたサドルは見事佃煮の軍勢の大将にぶち当たる。
驚いて去っていく佃煮帝國陸軍。
後日、おっさん共は国家の危機を救ったとして、勲章をたくさん貰ったのだった。めでたしめでたし。
―――舞台は幻想郷に移る
アリス・マーガトロイドは朝起きて歯ァ磨いて人形に話しかけて(独り言)、いつも通りの悠々自適な生活を送っていたところ、
机の上に見慣れない封筒が置かれているのを見つけた。
「何よこれ?」
中を見ると赤い紙が入っていた。
そこには筆で仰々しく縦書きでこう書かれていた。
『臨時召集令状』
アリス・マーガトロイド
右ノ者佃煮帝國ニ対抗センガ為ノ補充戦力トシテ、此ノ令状ヲ持チテ左記ノ招集場所ヘ直チニ届出ヅベシ
招集場所:博麗神社
招集部隊:歩兵キ七部隊
備考:菓子代五百円以内
「なんなのよ・・・一体何よこれは・・・」
アリスは錯乱し、赤い紙を持ったまま外に出た。
するとそこには、至る所に天狗の物と思われる新聞紙が散乱しており、
上空には大量の佃煮が・・・
「何この光景・・・」
アリスは既に発狂しそうになっていたが、
ギリギリ冷静さを保ちつつ、目の前に散乱している新聞の一つを拾い上げる。
その一面の記事にアリスは己の眼を疑った。
――幻想郷陥落セリ――
〜佃煮帝國ノ奇襲ヲ受ク〜
外ノ世界ニ於ケル交戦ニテ大敗ヲ喫セル佃煮帝國デアツタガ、
先日未明、突如トシテ幻想入リシ、人里ヲ味噌汁デ埋尽クストイフ奇襲作戦ヲ敢行セリ。
人里ヲ捕虜ニ取ラレ事実上交戦不可能ト判断セル八雲紫ハ和平交渉ヲ推進セムトス。
相手ノ対応ニ応ジテハ幻想郷ノ明渡シモ辞サヌ状況ナレドモ強行派ガ召集令状ヲ出ス等シテ、
現況ハ至ツテ改善サレヌ模様。尚、今回ノ敗因ハモールス信号ニ依ル暗号文ヲ解読スベカラザルガ原因ト見ユ・・・
「幻想郷が負けた・・・佃煮に・・・」
既にアリスは、記事を最後まで読み切る気力を失っていた。
自分が割と信じていたものが夢幻の如く散った瞬間であったからだ。
「とりあえず、神社で招集しているのよね・・・他の連中が無事か確かめないと」
アリスは最後の気力を振り絞って神社に向かった。
神社では霊夢がいつも通り縁側で茶を啜っていた。
上空を闊歩している佃煮が黒い流星群のように輝いている光景さえなければ、いつも通りの風景であったのだが。
「あらアリスが来るなんて珍しい」
「招集が来たんだけど・・・」
「あぁ・・・誰かが勝手にいろんな所へ送りつけたのよ」
「ふーん・・・で、他の連中は?」
アリスの疑問に対し、霊夢は一呼吸置いてから言い切った。
「別に佃煮とか害もないし大丈夫なんじゃない?」
淡白な霊夢の返答にアリスは激昂した。
「何よそれ!他の連中はどうしたのよ!?」
「佃煮」
「え?」
「佃煮」
アリスは幻想郷が佃煮であると悟ったのだった。<おしまい>
――――――――――
寒春に
咲ける桜の
見事さは
人の御代をば
映す佃煮
佃煮帝國陸軍大将 勝利記念トシテ此ノ一首奉ル
実に佃煮でした。
佃煮の産廃襲撃まだ〜マダァ?(・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン