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『二択ジジ抜き 前編』 作者: 灰々
ここはどこだろう。
霧雨魔理沙が目を覚ました時まわりは真っ暗闇だった。
ゆっくりと記憶をたどってみる。
今日は、たしか神社で宴会をしたはずだ。随分と酔ったが意識はあった。帰り道に香霖堂に寄ったのも覚えている。家についたらそのまま寝てしまった。間違いない。
では、ここはどこなのか。家ではない。床の感触からして違う。あたりを探っても見知った感触の物は出会えなかった。
どうしたことか、そう思った時。扉の開く音が聞こえ光が差し込む。次いでだれかが入ってきた。パチンと照明がつけられる。
「目が覚めましたか?」
明順応で目を開けない。しかし、声には聞き覚えがある。
「おまえは……」
なんとか目を堅くしぼりつつ見遣ると古明地さとりが立っていた。
「言いたいことはわかります。順を追って説明しますので少々お待ち下さい」
魔理沙の開口を制止し、さとりははなしはじめる。
「魔理沙さん。あなたは、死刑になったのです」
「はぁ!?なんで、私が!!」
まあ、おちついてとさとりは手を前にやり魔理沙を諭すように動かす。
「決定したのは、四季さまです」
「四季って、四季映姫か」
四季映姫といえば幻想卿を管轄する閻魔の名である。
「なんだって私が!」
「それは、あなたが酷く嘘吐きだからです」
「はあ、なんだそりゃ?」
理由をきいて拍子抜けした。嘘吐きで死刑になるのなら、人間皆死刑である。
「たしかにそうですね」
魔理沙の心を読んでさとりがいった。
「しかし、あなたは嘘で多くの人を悲しませた。アリスさんやパチュリーさんにとりさんに霊夢さん。あなたはその口から嘘八百のあまいセリフを吐いて女たちをたぶらかした」
「そ、そんな」
たしかに、彼女らに酷いことをしたとは思ったが、死刑になるほどだろうか。いくらなんでもやりすぎだ。
「やりすぎ、そうですね。しかし、四季様にも慈悲がないわけでもありません。そこで、あなたにチャンスをあたえます」
「チャンス?」
なんだか納得いかないが、そのチャンスとやらを伺ってみることにする。
「これから、あなたにゲームをしてもらいます」
「ゲーム?」
「はい、カードを使ったちょっとしたゲームです」
「いったい何をするんだ?」
「それをこれから説明します」
さとりは回れ右していった。
「じゃあ、ゲームの説明をしますので移動しましょう」
「移動すんのか?」
「ええ、それとこれからは許可がない限りしゃべらないようにしてください。もし、約束を破ったら粛清しなくてはいけないので」
「粛清って……」
「反撃なんか考えないで下さいね。あなたは魔力を封印されてますので勝負にすらなりませんから」
「まじかよ……」
魔理沙はさとりについて長い廊下を進んで行く。途中分かれ道などもあったがさとりは迷わず歩きつづけた。やがて鉄扉に行き着いた。
さとりがドアを開け、限界まで開いて、横に立つ。
「先に入って下さい」
中は結構な広さがあった。天井は高く、蛍光灯が室内を満遍なくてらしている。壁は真っ白で窓はない。左右にドア、正面に液晶モニターとおぼしきものがある。部屋の中央には長方形のテーブルが置かれ、周りを四つの革張りのソファーが囲んでいる。
ソファーには、またしても見知った者たちが座っていた。
四つのソファーの手前のほう、後頭部を向けているのは、その頭から生えてる角から判断すると星熊勇儀と伊吹萃香であろう。そして、その真正面に座っているのは因幡てゐと射命丸文だ。
「そこへ」
さとりに促され、魔理沙は文の横に座らされる。鬼二人が目の前でにらみをきかせており、息をするのですら神経を使うほど圧迫感がある。
よほど鬼がこわいのであろう、隣の射命丸文などは小刻みに震えていた。
「皆そろいましたね」
鬼たちの後ろの――魔理沙たちが入ってきた――扉から四季映姫ヤマザナドゥが姿を現した。
鬼たちが立ち上がったので魔理沙たちもそれにならい起立する。
「では、ゲームの説明をしましょう」
あいさつもないまま、映姫は説明にとりかかる。
「ゲームをするのは、そこの因幡てゐ、射命丸文、霧雨魔理沙。あなたたち三人です」
どうやら、ゲームは三人だけでやるらしい。
「あなたたちにやっていただくゲーム、それは……『二択ジジ抜き』」
『二択ジジ抜き』……ジジ抜きならやったこともあるし解りやすかったが。今言われたゲーム名にはジジの前に余計なものがくっついている。
「ジジ抜きといっても普通のジジ抜きとはルールが大きく異なります。まずカードを引かれる方がカードを二枚選びます。引く方はこの二枚からしか引けません。」
なんだ、二択ってそういうことかと魔理沙は納得した。
「細かいルールもあり、複雑かもわかりませんので実際にやってみせます。質問はあとで聞くので今はしゃべらないで下さい」
しゃべると粛清されると脅されたのでそんなこと指摘しなくてもしゃべらないさ、と魔理沙は思った。
「みなさんが今いるこの部屋、ここは『待合室』です。カードのやり取りはここでは行いません。まずは、あちらの扉へ」
映姫は左――液晶モニターを背にしている魔理沙たちから見れば右だが――の扉を指さした。
映姫を先頭にてゐ、文、魔理沙が、そしてその後ろに鬼二人とさとりが続く。
「この廊下は『待合室』からカードをセットする『セッティングルーム』に向かう『通路A』です」
十メートルほど進み、右に曲がる。今度は三十メートルほど進んでまた右に十メートル。目の前に扉が表れた。
「この中が先ほど言った『セッティングルーム』です。ここと各通路は複数人で入ることはできません。ゲーム中は必ず一人で入ります。では入りましょう。」
『セッテイングルーム』は『待合室』と同じ位の広さだった。入ってきた所から見て真ん前に入口と同じ形の扉が、左の壁に変わった機械が設置してあった。その機械を正面に調度この部屋を左右線対称に分けている。機械の向いの壁には、鍵付きの小さな戸棚のようなものが縦に三つ設けられいた。
「この部屋に来てはじめにやることは自分のロッカーからカードを取り出すことです」
映姫は一番上の戸棚をポケットから出したキーで開けてみせる。
「自分の手札ですが、このロッカーの中に入れておきカードを『セッティングルーム』から外へ持ち出すのを禁止します。あとで、自分のロッカーと鍵に名前を書いていただきます」
映姫はカードを全員に見えるように掲げて、いった
「それぞれの基本の手札は1〜9までの数字の内のいずれか7枚です。欠番はありません。皆、平等な手札です。三人の内だれかが有利ということはありません。この中に“自分のジジ”が入っています。“自分のジジ”はゲームがはじまる前に教えます」
映姫はカードをもって、反対側の機械の方に移動する。
「カードを取り出したら、この機械にカードを二枚セットします」
機械はの腰ほどの高さにの台の上に、左右二か所、カードが調度入る凹みがあった。その凹みの上には縦開く透明な蓋がとりつけられている。さらに台の上には液晶画面がついており、ゲームセンターのゲーム機みたいな形をしていた。
「この、凹みにカードをセットします」
映姫は透明な板を開けると一旦こちらに向き直り
「カードは必ず左右に一枚ずつセットすること。片方しかセットしなかったり、二枚かさねたりすると画面にエラーとでます。ただし、例外があります。手持ちのカードが1枚しかない場合には片方のみでも大丈夫です」
映姫が実際に二枚重ねて蓋を閉めてみせると、液晶画面にエラーの文字が写し出された。
「カードは表でも裏でもかまいません。表・表 裏・裏 裏・表どれどもすきな形でセットして下さい」
映姫は1と2を表向きにして蓋をしめる
「画面にOKの文字が出たらセット完了です」
画面には青でOKと出ている。
「カードセットの時間は10分です。これより早く済んでも、10分たつまで部屋からは出れません。もし、途中でトイレに行きたくなったりしたら、こちらの受話器でそう言っていただければ、我々が連れていきます。」
機械の右側を見てみると受話器が取り付けられている。
「受話器は『待合室』や各通路にもありますので、何か困ったこと解らないことがあればそちらで受け答えいたします。教えれる範囲のことは教えます」
映姫はロッカーの方にもどってカードをしまう。
「セットが終わったら自分の手札を戻し鍵をかけます。セットしていないカードを自分のロッカー以外に保管するのは禁止です」
映姫はポケットに鍵をしまう。
「10分経過すると、あちらの、来たところとは反対の扉のロックが解除されるので出て下さい。そうしますと、『待合室』から『通路A』に入る扉のロックが解除されますので、次の番の人は『通路A』に入ってもらいます。次の番の人が『セッティングルーム』に入ると、あちらの通路……『通路B』から『待合室』への扉が開きます」
ふう、と一息ついてまたしゃべりはじめた。
「続いてカードを引くほうですが……」
そういうと、さとりが黙って歩み出る。
「選ぶ方は簡単です。好きな方の蓋を開ければいいのです」
映姫が説明した通りさとりは片方の――カードの数字は1――蓋を開けた。
すると、もう片方のカードをセットしていた凹みの底が抜け2のカードは機械の中に落ちてしまった。
「今、さとりさんが取りましたね。そこではじめてあのカードはさとりさんの手札となります。それまでは私の手札として扱います。消えたほうのカードは私の手札に戻ってきます。ここが重要です。この戻ってきたカードの数字は、次の番に自分がカードを並べる時、選べません。今戻ってきたのは“1”ですから、私は次のカードセットの時“1”以外の数字を選ばなければいけません。これも例外があって、手持ちが二枚以下なら前回と同じ数字でも選べます」
さとりは映姫の説明が止まると鍵を出し、自分のロッカーから手札を知り出した。
「さとりさんの手札に“1”があります。ジジ抜きなので、かぶったら捨てなければいけません。二枚になったカードは機械のしたのゴミ箱と書いてある所に入れて下さい」
台の下にカードと同じ位の幅の細長い長方形の穴があいていた。
「被ったカード以外のカードをいれると、自分のロッカーに返ってきます。また、破棄を拒むと我々で無理やり捨てさせることになり、少し痛い目を見てもらうことになりかねません。」
つまり、鬼たちが殴ってでも捨てさせるみたいだ。
「被ったカードを捨てると、カードがセットできるようになります。あとは、さっき言ったのと同じようにやるだけです」
さとりは手札から二枚選び今度は裏にしてセットする
「手札ははじめの方に言ったとり全員平等です。しかし、この中のどなたかの手札に“ジョーカー”が入れられます」
鬼がいなければ平等じゃないじゃないかと突っ込んでいたとこだ、魔理沙はそう思った。
「“ジョーカー”もセットして選ばれずに手元に返ってきたら次のセットに使えません。ここは同じです。特殊なのは引いた時です。“ジョーカー”をそのまま手札にしてもよいし、どれか好きなカードと一緒に破棄してもよいです。ただし、“ジョーカー”のみを単体で捨ててはいけません」
それと、と映姫はポケットからカードを取り出した。
「三人にはこの三種類の“特殊カード”のどれかをさしあげます。」
特殊カードは
・選ばれずに戻ってきたカードの数字も次の番セットできるようになるカード
・プレーヤー一人の手札をランダムで一枚見れるカード
・裏返しのカードの数字が見れるカード
の三つだった。
「振り分けは運です。互いにカードの種類が被ることはありません。機械の台の真ん中に差し込み口ありますのでそこに入れれば使用できます。当然ですが、“特殊カード”は一度使えばなくなります。“特殊カード”はゲームが始まったら、ロッカーの中に入れておきます」
映姫はクルッと右の出口を向き言った
「ここでやることは、説明し終わりました。『待合室』の説明をしますので『待合室』にもどりましょう」
また、来た時と似た『通路B』を通り一同は『待合室』に戻ってきた。
「この『待合室』の液晶モニターには現在の全員の手札の合計が表示されます。まだ、何も破棄されてない状態では一人七枚、それとジョーカーを足して合計22枚ですね」
モニターの電源が入り22とでかでかと表示された。
「それが、『セッティングルーム』でカードを引き、被ったカードを捨てると……」
モニターの数字が22から20に変わった。
「こうなるわけです」
わかったか、と三人を見まわす。
「一人目にセットした人が三人目のセットしたカードを引いた時点、これを一周とします。これを五回、つまり五周するか、全員の手札の合計が四枚以下になった時点でゲームを終了します。あと、一周が済むごとに破棄されたカードが発表されます。ちなみに五周目は少し特殊でカードをすべて裏にしてセットしなければいけません。あと五周目は三人目の人がカードを引いた時点で終わりですので、注意して下さい。」
やっと終わったかと思ったが、最後にまだあるようだ。
「ゲーム終了後、もってる手札によってポイントが決まります。自分のジジが300点、他の人のジジが100点、それ以外の数字は−50点です。ジョーカーは0点ですがポイントが同じものが二人いる場合にのみ効果を発揮しますジョーカーを持っている方が順位が低くなります。ポイント1位の人にはさらに200点加算されます。」
この点数は何の意味があるんだろう?そんなことを魔理沙が考えていると
「ここからぬけ出すには250点必要です。それに満たない者には即刻地獄に堕ちてもらいます。250点しか払えない場合は地獄行きを回避しただけで死刑は免れません。250点を払ってもポイントが余っている場合……このポイントで寿命が買えます。つまり、生き返るチャンスがあるのです。1点で人間に換算すると一年の寿命を差し上げます。妖怪の方にもきちんとその種族にあった寿命を与えますのでご心配なく」
魔理沙は理解した。これは、ジジを相手に引かせるのではなく、ジジを守るゲームなのだと。
「一応ルールを書いた紙を三人ともに配ります。よく目を通しといて下さい。言ってないことも書いてあります」
さとりが三人に紙を配って回った。
紙には今まで説明されたルールが箇条書きにされていた。
・三人の基本の手札は1〜9のいずれか七枚である(欠番はない)
・三人の基本の手札は対等な条件で有利不利はない
・三人の内の一人の手札にジョーカーが入れられる
・特殊カードは一人一枚、互いに種類が被ることはない(機械に入れると使用できる)
・『セッティングルーム』と『通路A』、『通路B』には一人しか入れない
・カードは『セッティングルーム』のロッカーに保管し外へ持ち出すことを禁止する(特殊カードも含む)
・セットしてないカードをロッカー以外の所に保管することを禁止する
・カードは基本二枚セットすること(手札が1枚しかないときを除く)
・カードは裏表自由にセットできる(五周目はすべて裏にしなければならない)
・カードは相手に取られるまでその人の手札として扱う
・被ったカードは捨てなければいけない
・ジョーカーは好きなカードと一緒に捨てても、手札に加えてもよい(ジョーカー単体では捨てることはできない)(引いた時のみ有効)
・前回セットして選ばれなかった数字のカードは次の回セットできない(手札が二枚以下の時を除く。その場合セットできないカードがあってもセットしなければならない)
・セットが終わったらカードをロッカーに戻し鍵をかけること
・『セッティングルーム』には10分いなければならない
・10分たってもセットできてない場合には手札からランダムで表向きにセットされる
・『待合室』のモニターには全員の手札の合計と『セッティングルーム』に入ってから何分たったかが表示される。
・一人目にセットした者が、三人目の者がセットしたカードを取った時までを一周とする
・一周終了ごとに破棄されたカードが公開される(放送で読み上げる)(特殊カードは含まれない)
・五周目はカードを裏向きでセットしなければならない(五周目は三人目の者がカードを引いた時点で終了とする)
・五周終えるか、全員の手札の合計が四枚以下になった時点でゲームを終了とする
・ゲーム終了後、手札に応じてポイントが与えられる 自分のジジ300 他人のジジ100 それ以外の数字−50 ジョーカー0
・ポイントが同じ二人の片方が、ジョーカーを持ってる場合その人間のほうが順位が低い(ジョーカーはポイントで並んでいるものが二人の時のみ効果を発揮する)
・ここから抜け出すには一人辺り250点いる
・抜け出したあと寿命をポイントでかえる(1点で人間に換算して1年)
◎大変でしょうが頑張って、皆生還を目指し下さいね♪
四季映姫ヤマザナドゥ
最後の一文で魔理沙は苛立ちを覚えたが、グッと堪える。
「これからみなさんには一人ずつ『セッティングルーム』に行ってロッカーにカードを入れてもらいます鍵とロッカーにも名前を書いてもらいます。鍵はなくさなぬように」
一人ずつロッカーに手札を入れるために文は萃香が、てゐは勇儀が、魔理沙はさとりが引き連れ、『セッティングルーム』に移動した。ロッカーにカードを入れるため、手札が渡された。そこではじめて自分の手札と“自分のジジ”が教えられた。魔理沙はじっくりと自分の手札を確認するとそれをロッカーにしまった。
全員が鍵とロッカーに名前を書きカードをロッカーにいれ終わり、再び全員が『待合室』に集合した。
「恐らく三人が顔を合わせるのはゲーム中にはないでしょうね。これから、順番を決めてもらいます。時間は10分。これはこのゲームの鍵を握ると言っても過言ではありません。しっかり、皆で話し合って決めて下さい。私たちは出ていきますが、暴力できめるのは禁止ですよ。10分後またきます。その時までに決まってなかったら私たちで勝手に決めます」
映姫はそう言い残し部屋から出て行った。それについてさとりと鬼二人も出ていった。
エイプリルフールに何か投稿しようと思い。せっかくだから心理戦でもやってみようかと頑張ったんですが、プロット作るのに2日かかってしまいました。前編は終始ルール説明しかしてないですね……
一応続きは考えています。どうしようもないほど大きなミスがみつからなければ無事後編を投稿できるかとおもいます。(あったら、なかったことに……)
ルールが少々解りにくいかもしれませんがお許しを
※すいません。ミスがありました。うまいこと終わらすために、少し、ルールのほう、を変えさせてもらいます。。箇条書きにしてあるところを読み返していただけると、わかるとおもいます。本当に申し訳ないです
※度々すいません。今度は記述し忘れがありました。また、箇条書きのところを読んでもらえればわかるかと思います。
灰々
作品情報
作品集:
14
投稿日時:
2010/04/03 21:41:12
更新日時:
2010/04/06 18:32:39
分類
魔理沙
映姫
ライアーゲーム的な何か
前編はほぼルール説明
※ミスがみつかり少しルール変更させていただきました。申し訳ございません
産廃で映姫の出番少ない気がするからそっちも期待せざるを得ない
後編が待ち遠しいです。