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『アマヤドリ』 作者: sako

アマヤドリ

作品集: 14 投稿日時: 2010/04/09 16:34:44 更新日時: 2010/04/10 01:34:44
 男が雨の中、夜道を走っていた。
 ばしゃりばしゃりと泥水を跳ね、手にした笊を頭の上にかかげ、目をふさごうと流れ落ちてくる雫を時折ぬぐいながら、焦燥の表情を浮かべて雨の中を走っていた。
 身なりからすると里を回る行商だろう。腰に結わえ付けられた売り上げがたっぷりと入った小袋が男の足に合わせてじゃりじゃりと音を立てている。
 と、雫に乗濡れそぼった男の瞳が僅かに見開かれた。地獄で仏の光りを垣間見たような、そんな期待のこもった表情。道なりに走っていた男は向きを変えると、速度をあげて脇目もふらずにそこ―――道の脇に生える大きな杉の木の下へと避難した。
 上がった息を整えながら身体をぬぐい、背を大木に預ける。ぽたぽたともんぺの裾から雨水が流れ落ちる。えらい目に遭うた、と男は大木を拝むように見上げため息をつく。
 ぼんやりと降りしきる雨をながめ、早く止まないかと男はぼやいた。しかし、雨足はとても強く、一里先も見渡せないほど。当分止みそうにはない。
 これはやはり傘を持ってくるべきだったか、と男は己のうかつさを呪い、
「傘、貸してあげましょうか?」
 唐突にかけられた声にびくりと身をこわばらせた。
 しかし、すぐに気を取り戻すと渡りに舟とばかり声への方へと振り返り、行商で培ったそう見えない作り笑いを浮かべて、また、ひしりと身体をこわばらせた、恐怖で。
「ばぁ!」
 はたして振り向いた先にいたのは妖怪だった。
 戯けた調子ながら長く赤い舌を伸ばす少女の姿をした妖怪。隻眼消脚。ボロを身に纏い、大きな紫色の悪趣味な傘をもった、唐傘お化け。
 ひぃ、と男は短い悲鳴をあげて脇目もふらず、手にしていた笊を投げ捨てて雨の中へと走り出した。
「まて、まて、まて、まて、まて、まて、まて、まてまて、まて、まて、まてまて、まて、まて、まてまて、まて、まて、まてまて、まて、まて、まてまて、まて、まて、まてまて、まて、まて、まてまて、まて、まて、まてまて、まて、まて、まてまて、まて、まて、まてまて、まて、まて、まてまて、まて、まて、まてまて、まて、まて、まてまて、てま、まて、まてまて、まて、まて、まてまて、まて、まて、まてまて、まて、まて、まてまて、まて、まて、まてまて、まて、まて、まてまて、まて、まて、まてまて、まて、まて、まて」
 後ろから唐傘お化けは追いかけてくる。片足だというのにその早さは必死に走る男と同じか、それ以上。ばしゃりばしゃりと泥水をはね飛ばしながら、手にした紫色の傘を頭にかかげ、目をふさごうと流れ落ちてくる雫を気にすることなく、狂喜の笑みを浮かべて男を追いかける。
 荒い息が邪魔をしてうまく悲鳴があげられない。男は時折振り返っては雨の向こうから自分を追いかけてくる唐傘お化けの姿を視認する。その度に恐怖で速度が倍加するが離れる気配はまるでない。更に恐怖が募り、身体の悲鳴を無視して踏み出す足を速くする。
 その足が、攫われた。強烈な一陣の風に、足払いをかけられたように。
 無様に、水たまりへと顔から倒れ込む男。口の中に砂利と泥が入り込むが気にもせず、気にする余裕もなく男ははってでも逃げようと腕を伸ばした。その腕を黒い鼻緒の高足下駄が強かに踏みつける。二指があらぬ方向にねじ曲がり、人差し指が中程で断ち切れる。男は恐怖ではなく苦痛による悲鳴をあげた。
「アハハハハハハハハハハハハハ、こわい? こわい? こわい?こわい?こわい?こわい?こわいでしょ!?」
 男の手の上で笑う唐傘お化け。男は渾身の力を振り絞って踏まれた腕を引き抜くが、その前に唐傘お化けは跳躍し男から一歩分、離れた位置へ離れた。
「ふふふふふふふふふふふふふふふ、もっと、ねぇ、もっと、もっともっと、もっともっとっととともとおとっとこわがってよ、ねぇ!」
 霧がかった悪臭漂う沼の水面に映った三日月のような笑みを浮かべる唐傘お化け。男は踏みつけられた腕をかばいながら少しでも唐傘お化けから逃れようと身をよじらせるがもはや、腰が抜けてしまって立つことが出来ない。
 そこへ打ち付けるように横殴りの雨が青臭い匂いを伴って吹き付けてきた。
「きゃはははははははははははははは、こわがれこわがれもっとこわがれ、おいしいから、恐怖が、私が求めるモノ、もっとよこしなさい、もっとこわがりなさい、モア、モアフィアー」
 颶風には礫や腐葉土の他に生きた蛙や蛞蝓、蛇の子が含まれていた。べちゃり、べちゃりと音を立て男の身体に叩きつけられる穢らわしい生き物たち。粘液と血糊が男の身体を汚し、時折、生き延びたそれら生き物が隠れ家を求めるように男の服の隙間や鼻の穴、口の中へと入り込んでいく。
 もはや、男は指の先一本ですら動かすことは出来ないようになっていた。
 張り裂けるほど開かれた口からは声にならぬ悲鳴が漏れ続け、恐怖に見開かれた瞳が最後に捉えたモノは、
「ははっ、これだけあればお腹いっぱいね」
 自らに傘の石突きを降りおろさんとする少女の狂喜の笑みであった。






 最近、幻想郷は一匹の妖怪の噂で持ちきりだった。
 曰く、雨の日や雪の日に人を襲う。
 曰く、そいつは恐ろしく恐ろしい。
 曰く、唐傘お化けである、と。





 次の日、行商人の男の死体が林道でみつかった。
 脱色したような白い髪。自らの顔を引き裂いた指。顎の外れた口。そうして、見開かれぐるりと白目を剥いた瞳は男が恐怖の果てに悶死したことを示していた。
 りっぱな、妖怪による異変だった。
 けれど、その道の専門家は誰も動こうとはしなかった。




 博霊神社の巫女は話を聞いても重い腰を上げようとはせず、
                最近、幻想郷にやってきた白蓮教の連中は何処吹く風、
   森の黒い魔も霊夢が動かないなら私も動かないと言い張り、
       山の上の神社だけが恐怖に脅えた人々の話を聞き、心を癒す祭事を執り行ったがそれだけ。




 誰一人としてこの異変を解決しようとはしなかったのである。









―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――










「ふぅ、酷い雨ですね」
 うぇ、と雨に濡れた巫女服の裾を絞りため息。
 諏訪子様に頼まれて布教活動ついでに麓の集落で評判の焼き饅頭を買った帰り、私こと東風谷早苗は運悪くこうして雨に出会ってしまったのでした。
「止みませんね。いっそ、止めさせてみましょうか」
 雨宿りのために入ったバスの停留所みたいな小屋から少しだけ頭を出して豆乳黒ごまプリンみたいな色をしたソラを見上げる。
 幻想郷に来る前、信仰の力がまるでなかった頃は私が起こせる奇跡と言えば精々『明日の天気を当てる』ぐらいでしたが、こちらに来て人妖怪を問わず多くの信者を獲得することが出来た結果。私の奇蹟レベルはぐぅんとあがり今では『天気を当てる』どころか『天気を変えられる』ぐらいまでなりました。とはいっても神奈子様みたいに夏の暑い日に雪を降らせたり諏訪子様みたいにポロロッカ現象を起こしたりといった荒唐無稽なことは出来ないけれど、雨を止めて曇りにするぐらいなら私の力だけでも儀式なしで出来る。
「あー、でも、神奈子様からは無闇矢鱈に奇蹟はおこすものじゃない、って言われてるし」
 諏訪子様からはMPは温存、と『じゅもんつかうな』のめいれいされてる。奇蹟の安売りは信仰の力を低下させると守矢式帝王学では学ぶものだ。
「仕方ありませんね。止むまで待つとしますか」
 もしかするとお饅頭が来ないことにしびれをきらした諏訪子様が蕗の大葉を傘にここまでやってくるかも知れないし、と淡い期待も抱く。
 と、私は小屋の隅に小汚い上に悪趣味な紫色の唐傘が置かれているのを見つけた。
「………………」
 しばし、熟考。
「ははぁ、小学生の時は学校指定の黄色い傘が雨の日でもないのに大量に傘立てに置かれてましたね。大掃除の時に、クラスの男子の名前が書かれた傘が五本も出てきたりして」
 昔の思い出に浸ること十数秒。さて、と私は周囲を見渡して私の他に誰もいないことを確認した。
「これは普段から信仰のために頑張っている私への神さまからの救いの手ですね。有難く頂戴いたします」
 合掌して三十度に頭を下げる。まぁ、私が信仰する神は今頃神社で寝っ転がりながらお煎餅でも食べつつ文々。新聞でも読んでいる頃でしょうけれど。
 兎に角、コレ幸いと私は趣味の悪い紫色の傘を手に取り、それを雨の中へかかげ傘布を広げようとする。瞬間、
「ばぁ!!」
 閉じた傘の中に隠れていた妖怪に思いっきり脅かされてしまいました。
 閉じた傘の中に隠れれるなんてソレはさぞかし小さくて薄っぺらい妖怪なのだな、などと言ってはいけません。重さで気がつくだろうとも言ってはいけません。相手は妖怪。人類が知り得ている科学の外側に生きる者たちです。既知外です。生きているのかもわかりません。そんな輩に物理だとか化学だとかの話をしてもまったく無意味です。いえ、あいにく私も物理とか化学は苦手でお話なんて出来ませんけれど、歴史と古文は得意なんですけれど、あと、家庭科。閑話休題。兎に角、その妖怪は私が開いた傘の中に隠れていて、細い傘の軸に足を絡ませて、逆さまの格好で私めがけて顔を付きだしてきたのです。驚いた私は思わず傘から手を離して、更にその勢いでバランスを崩して尻餅をついて、オマケに、
「あ」
 諏訪子様に頼まれていたお饅頭をその手で押しつぶしてしまったりしたのです。
 ぐちゃりと泥と混じって何が何だか分からなくなるアンコ。私のお尻も雨水に濡れて冷たいです。
 傘から現れた妖怪はと言うと、私の手から離れた後、見事に着地して自分だけ雨に濡れないよう傘を差しながら私の姿を見て笑っています。
「ごちそうさまー。うん、やっぱり女の子の恐怖は美味しいなー」
 なんてこの雨の日に脳天気な台詞を吐いています。
「………小傘、さん」
 あ、もう、ダメです。わりかし温厚な私でもこの状況はキレます。キレる十代、と言う奴です。この言葉を知ってるのは大抵二十代以降ですけれど、キレます。
「なんてことをしてくれるんですかぁ!!!!」
「うひゃっ! 怒った!」
 立ち上がり叫ぶ私。わわっ、と顔をひくつかせて驚きの表情を見せる小傘さん。一目散に雨の中を逃げ出していきます。
「コラッ! 待ちなさい!」
 追いかけて私も走り出します。もう、ここまで汚れれば雨の中を走るなんて巫女にあるまじきはしたない行為も関係ありません。今の私は一個の復讐姫(誤字に非ず)ダカダカダカダカ…と歩き走って追いかけます。
「待・ち・な・さ・い・!」
「い、いやっ! ま、待ったら私の事退治するんでしょ…」
「もちろん! 待たなくても…」
 退治しますけどね、と奇蹟の力で星形の弾幕を放ちます。緑色の五芒星は軌跡を雨の中に引きながら真っ直ぐ飛ぶ。それを間髪、方向転換することで躱す小傘さん。弾幕ごっこの始まりです。ただし、大抵は人間“プレイヤー”が避けに重きを置いているのに対し、今回は妖怪“エネミー”の方が逃げ回って避ける役割になっていますが。
「ちょこまかと…被弾りなさい!」
「痛いのもごめん!」
 礫状の弾幕をばらまく。けれど、小傘さんは傘を差しながらも俊敏な動きで弾幕を躱していきます。こしゃくな。最近は攻略する側ばかりだったので腕が鈍ってきているのかも。
 取り敢ず距離を詰めないと、と走る速度を上げる。ついでに少しだけ軌跡の力を使って自分だけに当たるように追い風を巻き起こす。
「ひゃぁ、早いよ!」
 それに気づいたのか、小傘さんは短い悲鳴をあげて方向転換。森の方へと走っていきます。木々が立ち並ぶ森の中なら風祝の力も使えないと踏んだのでしょうけれど、甘いです。逃がさない、と私も速度をあげて森の中に消えた小傘さんに続いて森の中へと入っていきます。
「このっ! このっ!」
 射撃。射撃。木々に阻まれながらも絶えず攻撃を続けます。それを小傘さんは時に木の幹を盾にし、茂みで身を隠し、枝を伝って遠くへ跳躍して逃げます。こざかしい真似を。
 その後ろ姿が茂みを分け入って立ち止まったところで好機、と一気に間合いを詰めます。
「覚悟は…よろしいですか!」
 大跳躍からスペルカード『モーゼの奇蹟』発動! かつて埃及から十万の奴隷達を救い出したという奇蹟を再現。大海を両断する勢いで御幣を大上段から振り下ろします。
「わぁ、だ、ダメ!」
「へ!?」
 着弾の寸前。そんな小傘さんの慌てふためく声がかろうじて耳に届きました。同時に茂みの向こうがどうなっていたのかも。ああ、なんと言うことでしょう。茂みの向こうは斜面になっていたのです。
 \ピチューン/
 私の必殺のスペカは見事小傘さんにヒット。残機マイナス一です。けれど、それは私も同じようだったようで。着地の瞬間、衝撃に撃ち負けたのは小傘さんだけではなく、小傘さんが立っていた地面もだったようです。雨で地盤がぬかるんでいたのも原因でしょう。結果―――私たちは抱き合うような形で斜面を転がり落ちていったのでした。









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 鉄の棒を腹に押し込まれたような灼熱感。
 それで東風谷早苗は目を覚ました。
「っ、あいたたた…」
 ともすれば冗談のように聞こえる早苗の言葉。けれど、状況は悲惨で早苗の姿格好はとても正視できたモノではなかった。
 泥にまみれた巫女服。汚れた身体。脇腹からは出血しているのか、赤い染みが雨水に混じって流れ出してきている。そうして、片足。それは無残にも一抱えほどある岩によって押しつぶされていた。
「え…あれれ…なん、で?」
 現状をやっと把握して、それでも納得できずに驚嘆をもらす早苗。顔が青ざめているのは血の気を失ったからだけではないだろう。
「いやっ、イヤァァァァァァァァ!!」
 咆吼。山々に木霊するソレではあったが強い雨音が深い霧がそれらをかき消す。
「あぁぁぁぁ、なんで、ううっ、どうしてですか…」
 混乱し、涙を流す早苗。幸いしているのは余りの身体の損傷に脳が心の平静を保つために痛覚を鈍らせていたことだろう。もし、まともに痛みが脳髄を焼いていればそれだけで発狂死しかねないからだ。
「ふぅぅぅ、あああ…畜生、っうう」
 一頻り泣いて落ち着いたのか、早苗は涙をぬぐうと岩に手をかけた。何をするにしてもこの岩をどかさなければどうにもならないと分かったからだ。けれど、岩は余りに重く大きく、とても十代の少女の力では動かせるような代物ではなかった。加え、脇腹の傷。それが早苗に力を出させることを拒んでいた。傷は内臓までは達していないものの腹筋の多くを裂いていたからだ。
「ううっ、うあぁぁぁぁ」
 岩がぴくりとも動かず、自分一人の力ではどうならないことを知ってまた早苗は涙した。
 現人神なる奇蹟の力もこう身体が傷つき汚れてしまった今では神聖さが失われ行使することが出来ない。人ならざる者だからこそ成せる奇蹟の技だ。汚れ傷つき地べたに縫い付けられている今の早苗はか弱い十代の少女でしかなかった。
「あ、あの…」
 そこへたどたどしくかけられる声。早苗が振り返ってみてみるとそこに立っていたのは、早苗と同じぐらい汚れ、早苗よりかは格段にマシな身体をした多々良小傘だった。
 土だらけで爪が一枚はがれ落ちた手をおずおずと早苗に向けている。
「ああああ、た、助けて、助けてください…」
 涙で視界を覆いながら懇願する早苗。けれど、伸ばした手は、
「………」
 後ろに一歩下がった小傘の足で裏切られる。
 ああ、と早苗の頭の妙に冷静な部分は納得した。




 目の前にいるこの子は妖怪なんだ。人間じゃないんだ。だから、人間の私を助ける義理も道徳というものも持ち合わせていない。人間なんて老若男女片っ端から食料か遊び道具で、どんなに苦しんでいようが関係ない。それに…それに私はさっきまであの子を退治しようと追いかけ回していたじゃない。原因はあの子にあれど、あそこまで執拗に追いかけることはなかった。そうすれば私がここでこんな目に遭うことにもならなかったのに。ああ、追いかけた理由は分かっている。楽しかったからだ。妖怪退治が。妖怪を退治して退治して里の人々に一目置かれるようになればうちの神社にも参拝客が多く訪れる。そうすればもっともっと私や神奈子様、諏訪子様の力もつくことになって。そういう打算的な感情プラス下衆な加虐心。その結果、因果応報。これは当然の報いなのかもしれない。




「っう…」
 冷静さの所為で脳みその痛みを忘れている部分がまた動き始めた。足を押しつぶす岩の重みはまだ感じてはいないものの、全身の打ち身裂傷や脇腹の切り傷が悲鳴をあげ始める。早苗は顔を曇らせて傷口を押さえると、小さく震えながら痛みを堪えるよう身体を丸めた。
「あの…」
「なんでしょう。風邪をひくから、早く帰った方が…いいですよ」
 小傘に声をかけられてもぞんざいに扱う早苗。構ってる余裕がない。目障りだから早く何処かに行ってほしい。それとも、早苗が死ぬまでここで待って、死んだらその肉を喰う気でいるのだろうか。小傘は人間の恐怖を食べるタイプの妖怪だったと聞き及んでいたが。
「大丈夫…?」
 だっていうのに、ささくれだった早苗の心に相反して小傘はおずおずとそんな風に声をかけてきた。え、と早苗は面をあげる。
「血がいっぱい出てて、痛そう。あ、あの、岩、どかした方がいいよね」
 小傘は手にしていた傘を適当な木に立てかけると小走りで早苗の元に近づいてきて岩に手をかけた。ふん、と気合いを入れて転がそうとする。けれど、岩は存外重く、また、半ばで地面にめり込んでいる所為もあってまったく動かなかった。
「無理っぽい…なぁ」
「なん…で、ですか?」
「え、なんでって」
 そんな小傘の行動が心底、信じられず忘我しながらも早苗は問いかけた。
「だって、さなえさん、痛そうだし、困ってる人は助けてあげないと」
 こう見えて元は人助けのための道具でしたから、と腕まくりしてみせる小傘。もう一度、岩に手をかけふん、と力を込める。
「………すいません」
 視界が滲む。身体の痛み、ではなく心の痛みで。早苗は頭を下げた後、小傘を手伝うよう、自分も岩に手をかけた。
「ダメ…動かない」
 けれど、岩は地面に接着でもされているようにぴくりとも動かなかった。これをどかすにはショベルカーがいるだろう。建設機械はまだ幻想郷入りしていないが。
「もう、いいですよ。ありがとう」
「うーん、ごめん。ちょとと、力が足りないなぁ。あ、そうだ」
 泥まみれになった手を払う小傘と、なすがまま項垂れる早苗。と、小傘は早苗のそんな格好を見て何か思い当たったのか、声を上げて小走りで離れた。
「はい。雨に当たってると風邪ひきますから」
 そう言って小傘はあの趣味の悪い紫色の傘を早苗の上に差した。いや、早苗はもう趣味が悪いなんて言わない。傘の裏地を背に見えた小傘の顔に、ありがとう、と涙を流しながらお礼を言った。
「あ、そうだ。地面に座りっぱなしじゃ身体、冷えちゃうから」
 もう一つ思い至ったようで小傘は傘を差したまましゃがみ込むと身体を起こしている早苗に後ろから抱きついた。
「えっと…え、何を…?」
「こうしてひっついていれば暖かいかなぁ、って」
 ダメデスカ、と聞いてくる小傘。この子、もしかして、分かっていて聞いているのでは、と早苗は訝しげに眉を潜めたものの、
「いいえ、ご自由に」
 そうしていれば、貴女も暖かいでしょうし、とそっぽを向きながら応えた。えへへ、と雨の日に似つかわしくない笑みを浮かべる小傘。








 それから暫くは雨の音だけがBGMだった。
「………」
「………」
 二人で身体を寄せ合いながら静かに時が流れるのを待つ。雨が振る音。雫が若葉を打つ音。大河の源流になる潺が流れる音。それだけがBGMだった。
「ねぇ、小傘さん」
 それを破ったのは早苗だった。静寂に耐えられなかったからではない。息をするように自然に思ったことを問おうとしただけ。
「貴女、付喪神だったわよね。その前…この唐傘だった頃はどうしていたの…?」
 唐傘の不気味さが災いして棄てられたと聞く。それがトラウマになっているとも。けれど、付喪神には棄てられる前に人に大切に扱われてきた過去がある、と早苗は諏訪子から講釈を受けたことがある。使ってきた人の想いをエネルギーにして喪われたその道具に神が付くのだと。だとすれば、この子にも棄てられる前に大切にしてもらっていた過去があって、何らかかの経緯があって妖怪になったのだと。そういう歴史、過去が。
「んー、忘れました」
 が、その美談ぽい話はいきなり腰どころか頸椎あたりでぽっきりと折れてしまった。あっけらかんと言い放つ小傘。
「気がついたらゴミ捨て場でして。ソレより前の記憶がほとんど残ってないんですよね〜」
 けらけら笑う小傘。あきれてものも言えず、早苗はため息をついた。
「ああ、でも、私が付喪神になれたってことはきっと私の持ち主だった人はとってもいい人だったと思いますよ。





 早苗さんみたいに






「―――っ」
 ぼっ、と顔に火を灯らせる早苗。この不意打ちはずるい、と振り返って抱きついている小傘の顔を睨み付ける。清々しい顔があるだけだった。
「はぁ、何をどう思えば私が妖怪である貴女に優しいなんて思われるのでしょう。恨みと勘違いしてないですか」
 霊夢がいつぞやか、妖怪に好かれすぎて困る、などと宣っていたことを思い出した早苗であった。
「そんなことないよ。だって、早苗さん。さっき、私にごちそうしてくれたから」
「ごちそう…? ああ」
 少しだけ思い出したくない記憶が甦る。妖怪は特定の食物を摂ることで食事としている者が多い。小傘はその中でも割にポピュラーな、それでいて人間には今一、イメージしにくいものを食事にしている。つまり、恐怖だ。夜道なんかで小傘が人をどかして遊んでいるのは趣味ではなく、驚いた人間が発する恐怖を糧として彼女が生きているからなのである。あれはつまり遊びというよりは食事、狩りや収穫と言った生存のための行動なのだ。そこに遊び心が入っていないかと問われれば否なのだが。
「できれば、これからも仲良くしてほしいなー。人間大好きだから、私」
「大好物の間違いでは。ああ、でも、それ以前にこの状況から生きて帰れればですけれど…」
 言葉は冗談のつもりだった。誰かが助けに来るだろう、例えば、神奈子様や諏訪子様が、なんて淡い期待を抱いていたわけではない。けれど、早苗は安心していたのだ。小傘と一緒にいることで。こうして、傷だらけなのに一つの傘に入っていることに。





 その冗談が冗談にならないとは露にも思わず。





「………」
 ソレに先に気がついたのは早苗の方だった。重苦しい空気。重圧を錯覚するほどの。加え匂い。酷いケモノの匂い。そうして、うなり声。臓腑を振るわせる恐怖のうなり声。
 え、と沢の下の方へ目をやった時、がさりと荒々しく茂みが震えたのが見えた。
「早苗さん…アレ」
「静か、に」
 凝視。もう、小傘も気がついている。何かが近づいてきていることを。あまり、近づいてきてほしくない何かが。けれど、願いは空しく荒々しい吐息、鼻を突く匂い、猛烈な気配はドンドン近づいてきている。
 そうして、
「―――っう」
 息を呑んだ視線の先、ソイツが姿を現した。
 立ち上がれば早苗の倍の背丈にはなるであろう大きな猿“ましら”
 蒸気をあげる吐息。ソコから覗く乱杭歯。焼き色をつけた針金のような剛毛。憤怒を表す真っ赤な面。山に住まう獰猛な妖怪、狒々だった。
 恐らくは流れ出た早苗の血に誘われて近づいてきたのだろう。狒々は荒々しい息を吐いて、黒目だけの瞳を早苗に向けた。睨め付けるように。
「こ、来ないでください。私は風祝、山の上の巫女です。貴方のように人に仇成す妖怪を退治することを生業としている者です。命が、命が惜しくば早々に立ち去ることをオススメします」
 泥と血で汚れた術符をかまえ啖呵をきる早苗。けれど、声は弱々しく、それは獣の並みの知力しかない狒々にも容易くはったりだと分かる程度の効果しかなかった。嘶きは早苗を嘲笑うものだったのだろうか。狒々はゆっくりと茶色い水が流れる沢を横切りながら早苗の処へ近づいてくる。
「く、来るな!」
と、その足がぴたりと止まる。早苗と狒々、その丁度中間に小傘が両手を広げ立ちふさがったからだ。
「お、お山のサルめ。この人は私の大切な人だ! そ、そんな汚い手で触るなんて絶対に許さないから!」
 がーっ、と震える身体を必死に押さえつけ狒々を睨み付ける小傘。けれど、それも早苗の啖呵同様、どれほどの効果があったものか。また狒々は小さく低く嘶くと僅かに身を引き絞り、爆ぜる勢いで小傘に飛びかかった。
 あ、なんて嘆息を漏らせたかどうか。小柄な小傘の身体は300kgはあろうかという狒々の体当たりに容易くはじき飛ばされてしまった。その光景を見ていた早苗はぼんやりと小さい子がトラックにはね飛ばされたみたいだ、と思った。
 はね飛ばした小傘の身体に素早く近づくと狒々は馬乗りになる形で小傘の身体を押さえつけソコへ前足を振り下ろし始めた。
ザシュ、バシュ、ドン。
猫がじゃれるような動作。それがこの巨獣の動きでなければ。瞬く間に小傘の身体はボロ雑巾のように成りはてる。
「やめ…止めろォ!!」
 叫び、手を伸ばし、怒りを滾らせる早苗。けれど、身体は真っ直ぐに狒々に体当たりでもしたいというのに地面に縫い付けられて動けない。足が、足が岩に挟まっている所為だ。
「くっ、うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 脳裏にえげつない閃きが生まれる。それを否定する暇はない。余裕がない。早苗は手頃な尖った石を拾い上げるとソレを石に押しつぶされている自らの太ももへ振り下ろした。
ザシュ、バシュ、ドン。
 十代の少女とは思えない乱打。けれど、その甲斐あって早苗は自らの足を、邪魔な足を棄てることが出来た。
「こ、小傘さんから離れなさい」
 片足で地面を蹴って狒々に近づく早苗。半ばで断ち切られた太ももからはおびただし量の血が流れ出ているが気にもしない。けれど、早苗の身体は早苗の心ほど強靱に出来てはおらず、怒りによる強化も受け付けていなかった。
 血の臭いと叫びに反応して狒々が振り返った瞬間、早苗の意識はブラックアウトした。
 最後に早苗が見たのはより赤くなった狒々の顔とその口に生えている牙に引っかかった、








 ぐるるるるる、と低いうなり声を上げて狒々はさんざん嬲った小傘の身体の上から離れ、早苗への方へと興味を移し替えた。
 同族、ではないが妖怪という同一カテゴリにある者は喰えない。共食いになってしまうからだ、だから、狒々は小傘のパーツを口に入れこそすれ飲み込むようなことはしなかった。赤子がおしゃぶりやその他、口にできるサイズの物をしゃぶって遊んでいるのと同じだ。けれど、今、狒々が視線を向けている肉塊は違う。正真正銘、喰える肉の塊だ。しかも、上等な女の子供。加えて巫女と来ればこの肉は人が食べる物に喩えれば霜降りの和牛に近い、滅多に口にはできない高級食材のようなものだった。
 食欲に喉を鳴らし、刃の隙間から汚らしい涎を垂れ流しにしたまま脇目もふらず早苗に近づく狒々。気を失って無防備なままの早苗の頭蓋をかみ砕かんと大口を開けた刹那、
「神の娘に手を出すんじゃないよ、イヤらしい下等妖怪」
「まったく。これは天罰ものだね。罪状は婦女暴行、具体的に言うとレイプ。判決は死刑。死刑執行0.5秒前」
 そんな二つの声、どちらとも怒りに満ちあふれているものを聞き、驚いて振り返ろうとした。しただけだった。5フレームもない瞬き程度の時間の後、狒々は体中を射貫かれた。唐突に剣山状に隆起した岩肌によってだ。けれど、狒々は苦悶を感じる事はなかった。隆起した剣山は狒々の身体を縫い付けたまま、ぐんぐんと成長を続け天高く伸び、ついで、天空より隕石のように落ちてきた黒曜石でできた六角柱によって押しつぶされ、文字通り爆散してしまったからだ。その余りの衝撃に爆散した破片は原子の塵に至ったほど。こうして山からは一匹の狒々が言葉通り消え去ってしまった。

「執行完了」
「たまには山狩りとか行わないと駄目だね」
 狒々が消え失せた空をつまらなそうに眺めて、二柱の神、守矢諏訪子と八坂神奈子は一言漏らした。
「っと、山のことは取り敢ずいいや。早苗〜早苗〜」
 思い出したように諏訪子は早苗の元へ駆け寄る。坤を創造できる程度の能力を用いてすぐ側にありったけの止血剤になる薬草や傷口をふさぐのに使える大きな葉、出血を抑える為の蔓などを創り出す。神奈子もソレを手伝い、早苗の足に応急処置を施す。
「あれ…諏訪子様、神奈子様…どうして…?」
 ややあって早苗は意識を取り戻した。瞳は虚ろで血を流しすぎたせいで顔面蒼白だが大事には至ってないらしい。意識ははっきりとしている。
「帰りが遅いから迎えに来たのさ」
「早苗〜お饅頭は?」
「すいません、神奈子様、諏訪子様。お饅頭は…ごめんなさい。その小傘さんに脅かされて、その時に…」
抱きかかえられていた神奈子の腕から身を起こすと早苗は周囲に視線を走らせた。けれど、見つかったのは彼女の持ち物のあの紫色の傘だけだ。彼女が、小傘が見あたらない。
「神奈子様、諏訪子様、あの…小傘さんは…」
 恐る恐る訪ねる。もはや、結末なんて分かっているのに。
「あ? ああ、あの付喪神の。あの子なら…その…」
 神奈子の肩越しに、さっきまで小傘がいた場所を見る早苗。そこには誰もいない。ああ、だって、小傘さんは何処かに行かれたに決まっている。そうでなきゃおかしいです。だから、あそこに広がっている手足のパーツとか臓物とか、血溜りとかはみんなわたしの錯覚で…
「死んじゃったんだよ」
「嘘だッッッッッッッ!!!!!!!!!」
 叫ぶ、否定の言葉。けれど、事実は神さまにだって変えられない。
 小傘の今の姿はあの肉片で、もう少し神奈子や諏訪子が来るのが遅ければ早苗もそうなっていたであろう、それで当の狒々は二柱の力によってもうこの夜には存在しないレベルで殺されていて、早苗の片脚は喪われていて、そのどれもが取り返しが付かなくて、ああ、何もかももう終わっていて。
「違う、違う違う違う…! だって、あの子、もっと仲良くしようって言ってくれてたのに。それなのにこんないきなり、ありえません。冗談? 笑えないですよ。ひとつっきりも、ああ、クソ、つまらない。面白くない。やり直しを要求します。無理? 冗談はいいって言ってるでしょ! 畜生!」
 嗚咽と叶わぬ願望と混乱と呪詛と、あらゆる言葉を吐き捨ててぎりぎりと早苗は唇を噛む。ぶつり、と皮が裂けて血が流れ出てきた。
「早苗…仕方なかったんだ」
「五月蠅いです。神奈子様は…黙っていてください」
 心配そうに声をかける神奈子の手を振り払い早苗は片脚で立ち上がると、けんけんと跳ねてすすみ、小傘の物だった…付喪神になる前の小傘だったあの紫色の傘を拾い上げた。
「ああ、そうだ…付喪神が大切にした物に付く神さまなら…ううん、駄目だ。それは新しくこの傘に付いた神さまであって小傘さんじゃぁない。そんな偽物じゃ駄目だ。代替品なんて絶対に許さないから」
 ああ、ああ、などと呪詛のように呟きながら奥歯の爪をしきりに噛む早苗。爪の白い部分を大方かみ切ってもソレは止まらず、指先の肉さえも噛み始めた。
「やめようよ、早苗。痛いだけじゃん」
「あ、ああ、そうだな。取り敢ずは帰ろう、早苗。その…この子も弔ってやらないと」
「五月蠅い黙れ。弔う? 巫山戯たことを言ってるんじゃないですよ神奈子様。諏訪子様も、こんな痛み、小傘さんが受けた痛みに比べれば屁のかっぱですよ。神さまのくせに、そんなことも、ああ、いや、違う、そうだ、それなら…ああ、そうだ。小傘ちゃんも神さまなんだ。神奈子様や諏訪子様ほどじゃないにしても八百万の列席に加わっている程度には。ああ、だったら、今の状態は人で言うところの仮死状態なのかも。もっと生きるためのエネルギーがあれば…ああ、そうか、ご飯を、ご飯を沢山食べさえてあげれば…」
 ぎらり、と目的意識をもった早苗の目が光った。
「行かなきゃ。人の里へ。あそこなら食料が…驚かせる人が、」
 片脚でぴょんぴょんと山を下り始める早苗。鬼気迫る顔を見て二柱はかける言葉は見つけられなかった。





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「なぁ、霊夢。噂の唐傘お化け、退治しに行かないのか?」
 博霊神社の縁側に座り茶をすすっている霊夢に庭の方からそう魔理沙が質問を投げかけてきた。
 けれど、霊夢は興味なさげに魔理沙を一瞥しただけで行かないわよ、と一言だけ返した。
「何でだよ。いつもなら異変が起こったら真っ先に行ってたじゃないか」
「異変だったらね。妖怪が起こす異変ならそれは私の仕事よ。まぁ、たまにはアンタに手伝ってもらう事もあるけど」
「?」
 疑問符を浮かべる魔理沙を見て霊夢は独りごちた。
「人が起こしているからアレは事件よ。異変じゃない。あいにくと人を裁くのは巫女の仕事じゃないわ。それは天の仕事よ。ああ、でも、けれど、あの二人にそれはできるのかしら」
 ずずっ、と茶をすする巫女。

 この後、霊夢の元に山の神から唐傘お化けを退治してくれるようお願いが来るまではまだ暫くの時間があった。
















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「小傘さん、まだ、お腹空いてる? そう。私、頑張るから、早く良くなってね」
 あの雨宿りに使った小屋で片脚の少女は大事そうに紫色の趣味の悪い傘を抱いていた。雨は止みそうになかった。


END
みずほへ小切手を持って行く途中で思いつき、
更に神主リスペクトで空きっ腹に酒でもカッ呑もうかと思ってたけど、ちと体調が悪かったんでコーヒーで我慢しながら書き上げました。

あ、早苗さんの思い出話は私の体験談です。
sako
作品情報
作品集:
14
投稿日時:
2010/04/09 16:34:44
更新日時:
2010/04/10 01:34:44
分類
早苗
小傘
人体切断
付喪神
1. 名無し ■2010/04/10 14:02:47
うおお・・・なんかこの早苗は応援したくなるような

というかいい加減胃袋大丈夫なのかあなたはw
2. johnnytirst ■2010/04/11 04:24:01
こう言う雰囲気いいですね^^

ここまで誰かを愛せる早苗さんは幸せ者ですね
いや、嫌味とかじゃなく
3. 名無し ■2010/04/12 10:40:48
なんという救いのない奇跡
4. 名無し ■2010/04/13 23:16:51
ある日何の気無しに産廃を覗いたら、一輪の花が咲いていました…
5. ウナル ■2010/04/15 16:42:16
なるほど、みんなが動かなかったのはそういう訳だったのか。
救いの無いお話、とても良かったです。
6. 名無し ■2010/08/13 22:25:03
最初のは早苗さんだったのか……。何かジンときたわ。
うん、これは良作だ。
7. ハッピー横町 ■2011/02/02 16:16:58
とても良いさなこがです。
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