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『手繰り寄せるべき運命3』 作者: 急降下ペンギン
3日目の寝起きは第六感―危険感知によるものだった。金属の光沢が額の上を通り、髪と皮膚を浅く切り裂く。
「早苗…今回は見逃せないわ。魔理沙との一件から段々と邪魔に思えてきたけど、やっぱり邪魔だからここで殺しておくわ。そうね、一応咲夜の家出っていう異変の根源を退治するという名目にしといてあげる」
「話はそれだけですか?じゃあ大人しく捕まって下さいね?」
ここで、霊夢は一旦考える為に動きを止めてしまった。
――何故、殺しに来た私を「殺す」のではなく「捕まえる」のか?弾幕ごっこですら私の足元にも及ばない早苗がどうしてこうも殺しに来た私を「捕まえられる」のか?それにいつも以上のあの自信はどこから湧いているのか?どうして、何故、どうして、なぜ、どうして、なぜ、どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして――――
結局、自問自答しても答えは浮かんでこない。明白なのは、満月の夜に私が早苗を、紅魔館まで殺しに来たこと。それだけだ。
でも、今の霊夢はそれだけでも十分だった。取りあえず、殺すつもりで針を投げる。次の瞬間、霊夢は驚くべき光ことを体験した。早苗が凄まじいスピードで地を駆ける。それこそ魔理沙よりもずっと速いスピードだった。そして霊夢の腕を凄まじい力…鬼、までとは言わないがそこら辺の下級妖怪よりもはるかに強い力で押さえつける。
「うぐっ……さ、なえ?」
霊夢には起きたことが理解できずに受け入れられなかった。霊夢の目に映ったのは早苗の首筋にある二つの跡。
早苗は霊夢の視線と、思ったことに気付いた。
「あ…気付かれちゃいましたか。レミリアさんに力を貰ったんですよ」
霊夢は希望を見出したのか、苦しく笑う。
「早苗、そのレミリアは今どうなっていると思う?咲夜があいつを倒しに行っているのよ…レミリアさえ、たおっ、せば私達の勝ちよ」
霊夢が言い終わったその時、レミリアの笑い声が部屋に響いた。
「博麗の巫女も、咲夜も所詮は人間だったってことね。一撃で抵抗できないようにしてあげたわ。あははは、私の霊夢。今から貴女も誇り高き吸血鬼として生きることになるのよ。幸せでしょう?」
レミリアが霊夢の血を吸うために首筋に歯を立てる。ゆっくりと血を吸い上げる度に霊夢の息が荒くなっていくのが分かる。
「幸せなん、かじゃ…うぅっ…ん、止めなさいよ。はくれ、いの…ちは安く、ないわよ」
みるみる内に顔色が悪くなる霊夢。やがてピクリとも動かなくなると目を閉じて横になった。一日もしないうちに霊夢は吸血鬼になっているに違いない。
レミリアさん、と早苗が呼びかけると半笑いで返事を返す。
「早苗、今日は思いもよらぬ面白い日ね。こうも早く私の願いが叶うなんて思ってもみなかったわ。咲夜にはお仕置きしなきゃならないけど…それも考えてあるわ。永遠亭に行って蓬莱の薬を貰ってきてくれるかしら?」
早苗はレミリアの考えを理解できた。リザレクションの能力で不死になった咲夜を、姉妹揃って玩具にするつもりなのだ。恐らく、パチュリーや早苗もそれに加わるだろう。
とにかく、今の状態の状態ではレミリアを敵には回せないし回す気もないということで、早苗は頼みを聞きいれた。
今の早苗は単純に力を貰い受けただけなので吸血鬼特有の弱点はない。その代り、回復能力や身体能力も吸血鬼に劣る。しかし、それゆえに日差しを浴びても大丈夫なのだ。
夜明けと共に魔法の森へ急ぐ。目的地は魔理沙の家ではなく、人形遣いの屋敷だった。
「アリスさん、いませんか?」
ドンドン、とドアを叩く音が朝の森に響く。
「何?こんなあs」
アリスが言い切る前に、みぞおちに鋭い一撃。手加減はしたつもりだが、アリスは気絶してしまう。早苗は屋敷の戸締りをして永遠亭に飛んで行った。邪魔が入らなかったのですぐに永遠亭に着いた。
「永琳さん。お話があります、蓬莱の薬を譲って下さい」
診療所に着くと、神妙な顔で早苗がそう言った。
「無理よ。あれは門外不出ですもの、簡単には渡せないわね」
「じゃあ、これと交換してください。いい感じの被験体ですよ?この機会を逃したら名の知れた魔法使いの被験体は手に入りませんよ?」
永琳が早苗の強いセールスに折れて、蓬莱の薬を「早苗が服用しない事」を条件に渡した。
紅魔館に帰った早苗を出迎えたのはレミリアの妹、フランドールだった。
「早かったね。お姉さまはもう寝ているわ。お姉さまから聞いたけど、蓬莱の薬は?」
「フランドールさん、ただいま。これですよ」
早苗が蓬莱の薬を見せるや否や、それを取り上げるフラン。ニコッと笑いながら
「これってお薬だよね?やっぱり苦いのかな?それともイチゴ味っぽい薬の味かな?」
「咲夜さんに聞いてみたらどうですか?」
「でも、お姉さまの許可がないと咲夜には会えないの。どうしたらいいのかな?咲夜と遊べないから面白くないなぁ…」
「フラン?その薬は咲夜が私たちと遊べるようになる薬だから、返してくれる?」
どこからともなくレミリアが現れ、フランに説明と説得をする。結局、蓬莱の薬の味を飲ませたら聞くということで落ち着いた。
そして3日目はレミリアと一緒の布団で眠りに就く早苗だった。
たまたま電話ボックスでこの展開は…っ!と閃いたので、元のを修正して急遽投稿させて戴きました。
アリスは誰でもよかった訳ではなくて、アリスだからこの役です。
異変モードじゃない霊夢は、プライドが高くて頭の回転が遅いイメージが強かったのでこんな感じになりました。
早苗の計算高さはトップクラスだと思うんだ、うん。
霊夢の吸血鬼化は、一度やってみたかった。早苗に負ける霊夢が見たかったからです。自己満足と言われればそれまでですが…
それにしても子供の頃に飲んだあの不味い薬の味が忘れられない…オレンジとか特に悲惨だった記憶しかありません……あれはもとの薬より不味い気がします。
急降下ペンギン
作品情報
作品集:
14
投稿日時:
2010/04/12 17:37:08
更新日時:
2010/04/13 19:03:52
分類
早苗
霊夢
紅魔館
アリス
シリーズもの