東方宣戦霊〜Phantom Of Ghost♯２

「あの」演説から数十分後

白玉楼・西行妖

そこには、先程演説を終えた幽々子と、その演説を聞いていた
兵士達が、全員居た。
「さて、計画通りこれで霊夢とかは妖怪の山に行ってて他の場所が
　手薄になるわね」
そう、先程の演説の最後の一言の
「目標幻想郷妖怪の山上空及び地上」は嘘だったのだ。
霊夢などの異変解決のエキスパートをそこに向かわせ、その隙に
他の、主な場所を攻めやすくする為のものだった。
「では諸君、じゃなくて皆、これより作戦室兼司令室へと移動」

少女祈祷中・・・？

白玉楼・「作戦室兼司令室」

巨大なモニターが置いてあるそこは、急遽建設された部屋だ。
だが、この演説をする時には既に完成していた。
そのモニターの前に、幽々子と小町、妖夢などが立ち、
幽々子の前に兵士達が整列していた。
上下左右に動いたり浮遊する台に乗せられた椅子に幽々子が座り、
命じてもいないのに「計画」の状況を報告する兵士の言葉を聞いていた。

「「ロスプラ２」隊全て準備が整っています。傭族、ネクストワン、暗人etcetc...
　とにかく雪賊からVS、銃火器まで全てです」
「ローカスト＆「量産型」カーマイン、同じく準備万端。
　その気になればすぐにでも出撃可能です」
「陽動作戦は成功しました。博麗神社より博麗霊夢、守矢神社より
　東風谷早苗、霧雨魔法店より霧雨魔理沙、以下の三人が妖怪の山で
　異変解決の為集結しています」
「「CoD」大隊準備万端、後は出撃命令が下るのを待つのみです」
「ヘルガスト隊も同じく準備万端です」
次から次へと舞い込んで来る「準備万端」という報告。
幽々子は心底嬉しかった。何故なら気まぐれな幽霊の筈なのに、
ここまで自分の命令通りに動いてくれたからだ。
そして、彼らが幽霊とは思えないほど生気に満ち溢れているからだ。
ついでに、殺気も。
「そう、準備が終わったのね？ならば、何処を最初の前菜にしたいのかしら？
　何処を異変の始まりにしたいのかしら？」

すると、CoD大隊の代行指揮官を任されているポール・ジャクソンが
一歩前に出て答えた。
「では、吸血鬼の館などいかがでしょう？」
「紅魔館？一体どうして？理由を聞いても？」
幽々子に聞かれたジャクソンは口だけ笑いながら答えた。
「紅魔館には、時間を操るメイド長がいるとか。
　異変解決に乗り出す前に、そこごと潰す為です。後ーーー」
「後？」
「例の春告精姉妹の増強された力を計測したい為です」
「あら、もう使えるようになったの？」
「勿論です、二人はもう我々の忠実な妖精になったのですよ。
　実験も成功しました、後は、能力を計測するだけです」
「うふふ、ジャクソンは良い子ね。いいわ、行きなさい」
ジャクソンは嬉しそうに歯を鳴らすとニヤリと笑い
「かしこまりました、西行寺様。では早速」
そう言って、兵士を連れて準備をするために格納庫へ向かった。
それを見た隣に立っていた妖夢が幽々子の耳元で囁く。
「良いのですか？行かせても」
「あら妖夢、人を疑うのは良くないわよ」
「人じゃないでしょう。奴らも、私達も」
小町も口を開く。
「ま、いいじゃないか妖夢。あいつから言ったんだから」
「しかし、これでもう貴方は後戻りできませんよ」
その声に幽々子が反応し、妖夢に絡み付くように妖夢を抱きしめて言った。
「何を言っているの。既に幕は上がっていたのよ？
　私は観客を集めただけ。それに、私は一度踊り出すと止まらないの」
「はっ・・・はいっ。分かりました」
「楽しみよ。だって彼は核で焼かれても暫くは私の誘いに耐えたのよ。
　しかも彼の世界の主役であり客観結界の外にいる者達の代理人でもあるの。
　だから彼は核以外では死ぬ事なんて殆ど無かったですわ」

白玉楼・格納庫（裏門）

「さて、ようやく「東方紅魔郷」をプレイできる。
　楽しみだなぁ、吸血鬼はどのくらい強いのか、吸血鬼の手下達はどのくらい
　おぞましく、恐ろしく、強いのか、分かるのだから」
ジャクソンが飛行船を前に呟く。
「・・・楽しそうですね代行」
一人のマルチプレイのキャラが言う。
「あぁ楽しい、とても楽しい」
「考えてもみろ、吸血鬼との戦争だぞ？きっと血で血を洗う
　恐ろしくも愛おしい闘争となるだろう。あぁ楽しみだ」
「そうですか、所でミラーとディミトリ、後リリーホワイトとブラックは
　既に乗船していますよ」
「早いな」
「アンタが遅いだけです」
二人はすぐに乗り込んだ。

飛行船戦艦「アンビエント」・ブリッジ

ブリッジには既に仲間達が集結していた。といっても、
その場に居るのは戦艦の舵を取る者達とジャクソン、それと
ミラーとディミトリ達だけで、他の仲間は別の区画で活動中だったり
休んでたり出撃準備を整えていたりする。
ジャクソンともう一人がブリッジに到着すると、二人の頭上から声が聞こえた。
声の主はリリーホワイトだった。
「遅いですよー八つ裂きにしちゃいますよー」
リリーがいつもの口調でとんでもない発言をする。
その手には銃剣が握られていて、今にもジャクソンに飛んできそうな
ぐらいの殺気を漏らしていた。
しかし、ジャクソンは怯む事なく口を開いた。
「その殺気と闘志をぶつけてやる相手が決まった。喜べ、"春"を告げれるぞ」
その言葉にリリーは狂喜した。
「春！春ですよー！春春春春春春春春春春春春春！！！！！！！！
　告げられ喜ぶ奴には花束送れ！そうでなかったら斬り裂きくびり殺せ！」
「春ですよー！春ですよー！春ですよー！春ですよー！春ですよー！春ですよー！
　春春春春春春春春春春春春あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ！！」
大笑いしながら飛び回るホワイトを見ずにジャクソンはある事を聞いた。
「所でホワイト、ブラックの奴はどうした？」
するとリリーはいつもに戻って答えた。
「え、ブラックならいつも通り寝てるけどどうして聞くですかー？」
「喧しい、だた聞いただけだ。それといい加減道を開けろ」
その声の後、リリーはすぐにジャクソンの席から離れた。
そしてジャクソンがそこに座る。
「さてお前ら。さっきの演説でようやく俺達も大手を振って暴れ回る事が
　出来るようになった。もう動かない的を射抜くのは飽きただろう、
　動かない的を何度も刺突するのにも飽きただろう。安心しろお前ら、
　今から潰す所はとても楽しい場所だ」
それを聞いているミラーやホワイトが笑う。しかし、何故かディミトリだけは
顔色一つ変えずに話を聞いている。
「相手は吸血鬼率いる恐怖の軍団。だが、実体を持たないと言える
　俺達幽霊に勝てる奴などそうそう居ない。そして、俺達のような
　狂気に彩られた悪霊クラスなら更に少ないだろう。
　さぁ、食事会を始めに行こうか。食材は待っててくれないぞ！
　艦長！目標、紅魔館近くの湖付近の森上空！急げよ！」
艦長と呼ばれた雪賊は大きな声で答える。
「了解！全魔導エンジン始動、出力最大！」
「飛行船戦艦・アンビエント、出撃！」

アンビエントは魔導エンジンによってすぐさま浮かび上がると、
紅魔館目指して飛んでいった。
９５０人の兵士を乗せて。

To be continued...