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『忘れたのか、嘘なのか。』 作者: qwerty

忘れたのか、嘘なのか。

作品集: 15 投稿日時: 2010/04/30 16:17:08 更新日時: 2010/05/01 01:56:03
別に大したことじゃないのよ。お姉ちゃんはあのときで死んでたけれど。


別に大したことじゃ、…………ないのよ。だってお姉ちゃんは忘れてるもの。
































 屋敷へ帰る途中。ふと気が付くと、こいし様が傍にいる、そうなったのは最近のことだろうか。
 人気のない旧都から地霊殿までの道を歩いていると、いつの間にか隣にこいし様が歩いていたりする。稀にいきなり飛びついてきたりもする。
 なぜなのかは分からない。
 あの魔法使いと巫女が来てからかもしれないし、そうではないのかもしれない。
 こいし様が何を思ってるかはさとり様ですら分からないのだから、ただの猫でしかない(ちなみにネコでもある。)あたいに分かるはずがないことだけは確かだ。本当のことが分かるのはこいし様だけなんだろう。

 ねぇ、こいし様。あなたは何を考えているんでしょうか?。


「ねぇ、お燐。昔の話を聞いてくれないかしら。」唐突こいし様が歩を緩めながら言う。

「ん、どんなお話ですかこいし様?」こいし様の足が止まった。私も釣られて足を止める。

 地霊殿までは四半刻程だろう。少し遠くに地霊殿が見える。いつもならこいし様が現れるのはもう少し前なのに。こいし様が現れる地点は大体同じ気がする。これも無意識なのだろうか。

「あなたたちが家に来るずっと前の話。あれは確か・・・・・・そうお姉ちゃんが、」
「ずっと昔に、さとり様がどうかしたのですか?。」地霊殿を見つめているようで、そこではないどこか遠くを見ているような目だった。あの目はどこに向けられているのだろう。きっとあの目は過去に向けられているのだ。

「……やっぱりなんでもないわ。忘れて頂戴。」
「ええー、さとり様のことなら、何だって話してくださいよ、こいし様。このあたいに話したら最後まで話してもらいますよ。何せさとり様のことなんですから。」
「んー………。それじゃあ話すけれども……お姉ちゃんには言っちゃダメよ?」







 昔のことなんだけどね、正確には覚えてないんだけれども。いつだったかしらねぇ。
 春の事だった気がするわ。段々思い出してきたわ、鬼が上じゃあ春告精が騒いでるかなって呟いていたもの。
 あれは春だわ。え、いつの春だったかって?。
 あれは私が瞳を閉じた頃。お姉ちゃんは瞳を閉じた私に絶望して毎日毎日私を見るたび泣き出してたわ。
 私?。私は動く屍だったわね。丁度お燐の妖精みたいなね。
 目を閉じたばかりの頃って、無表情でいつでもふらふらしてたわ。あの頃は無意識すら曖昧だったの。
 ……妖精さんに失礼ね。私はもっと死んでたわ。

 ん、今も半分死んでるよ?。何せ目を閉じてるんだから。妖怪が自己否定なんて自殺以外の何者でもないわ。
 お燐だって猫であることを止めたならきっと死んでしまうでしょうね。運がよければ私みたいに半分死ぬくらいで助かるかもしれないけれども。

 話が逸れてるわね。えっと、ああ、ありがとう。お姉ちゃんが絶望してて私が死んでたって所ね。まだ言いたいことの初めじゃないの。

 あのころのお姉ちゃんは変だったわね。変だなんて思えなかったけれども今思い返すと変だわね。
 私を見るとすぐ泣いちゃうくせに私の事ばかり見てたわ。変だなんていっちゃいけないわね。お姉ちゃんには私しかいなかったんだもの。誰だってそうなっちゃうんじゃないかしら。
 そんなある日なんだけどね。お姉ちゃんが笑ったのよ。にんまりと。人形みたいな私に向かって。
 テラスの隅っこの床に並んで座りながらね、抱き合って。こう言うと恋人みたいね。でもあの光景を見たらそんな風には思えないと思うわね。
 私は乾いた血飛沫塗れだったし、お姉ちゃんはちょっとアレな笑顔。気狂いが二人いるとしか思わなかったんじゃないかしら。
 お姉ちゃんはいつも泣いてたわけじゃない?ああ、これは気でも狂ってしまったんじゃないだろうかって心に浮かんだわ。だって気が狂うと大概笑顔になるものなのよ。お姉ちゃんが狂ったっておかしくない状況なんだしそう思わない?思うでしょう?。


 ねぇ、こいし。きこえてるかしら?。
 ………………。  
 きこえてるのかしらねきこえてるなら少しうれしかったりするわ。
 ………………。
 わたしね、きづいたのよ。もっと早くにこうするべきだったわ。
 ………………。
 あなたが目を閉じてしまったのなら、私も閉じたっていいんじゃないかって。だってもうこの世界にはこいしはいないもの。
 ……………。
 目を閉じて、あなたと二人で手でもつないでさまようの。ずっとずっと。きっと私たちが幸せになれる方法ってこれしかないと思うの。あなたはふらふらふらふらちしぶきかぶりながらそこらじゅうを歩き回って、私はずっと一人きり。もういやなのよ。一人はいや、二人になりましょう。おやすみなさい。
 
そう言ってお姉ちゃんの瞳は閉じたの。覚えてる。すうってお姉ちゃんの目から光が消えたように見えたわ。手からも力がなくなって。
ああ、お姉ちゃんは、死んでしまった。私が殺してしまったんだ。私が瞳を閉じたから、私が世界から視線を逸らしたから。




 
「………さとり様も瞳を閉じたことが」「ええ、あったのよ。………ねぇ、お燐?お姉ちゃんこのこと忘れてるのよ。だから、話さないでいてあげて。思い出したらまた昔に逆戻りしちゃうかもしれないわ。今は忘れてるからああやって微笑んでいられる。きっと思い出したら絶望しちゃうわ。私が瞳を閉じてもお姉ちゃんは閉じなかったって思ってることが心の支えになってる部分ってあると思うの。私はいつだって視線を逸らさなかったって思ってるから前をまっすぐ見つめられるんだと思うの。だから………話さないであげて。」話せるはずがない。もしこいし様の言うとおりだったとしたら、思い出してしまったらさとり様は………もう立ち直れないかもしれない。さとり様の優しさは心の強さでもある、でも儚さの象徴でもあるのだ。いつだってさとり様は優しくて、どこか儚げだ。



「もう門なのね。ここでこの話は終わり。忘れるか、忘れないかはあなた次第だけれども出来れば、心の奥底にでも沈めておいて頂戴。それじゃあまた今度。やっぱり今日は家に帰らないわ」こいし様の気配が消えた。辺りを見回してもやっぱり居なくて、ああ言ったのだから本当に今日は帰らないつもりなんだろう。
 何処かへ去ってしまったのだろう。何を思ってあたいにこの話をしてくれたんだろう。こいし様は何故この話を。
 ああ、疑問が頭を離れない。きっと今さとり様にあったらあたいは思い出してしまう。


「ああ、なんだ、あたいも今日は帰れないんじゃないですか。」
ええ、そうよ、お空。今日こいしに何か言われても信じちゃダメよ?あの子毎年毎年ペット相手に嘘をつくの。
うにゅ?なんで今日なんですか?
だってお空、今日は四月一日なのよ。


東方嘘々話に投稿したものです。
もうやっても大丈夫だと思いたい。
本当に頭の悪い話で投稿するか迷いました。
qwerty
作品情報
作品集:
15
投稿日時:
2010/04/30 16:17:08
更新日時:
2010/05/01 01:56:03
分類
偽型・東方嘘々話
こいし
さとり
一ヶ月たったし大丈夫だよね
グロなし
1. 名無し ■2010/05/01 03:51:22
果たしてこいしちゃんは嘘を言ってるのかな
2. 機玉 ■2010/05/04 01:16:17
こいしが話したのが空ではなく燐で良かった(ぉ
考えてみれば身内が壊れちゃったんだから正気を失ってもおかしくないですね
3. 名無し ■2010/05/04 20:15:27
これはどうとでも取れる深い話でいいなー
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