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『鈴仙・モルヒネ・因幡』 作者: sako
窓際。揺れるロッキングチェアに身体を遊ばせている妖夢の手をとる。
白い肌。常人よりも少し低めの体温。触り心地は半死人の其れだが、脈打つ血潮の強さが感じられる。
鍛えているからだろう、柔らかさの奥に固い筋肉の凝りを感じる。毛布に包まれた鉄の棒の力強さ。得物と同じ強さを感じさせる。私は妖夢の細くて固いこの腕が好きだ。
愛おしげに妖夢の白い腕を撫でる。雪原を走る橇のよう。指先は白粉でも塗っているかのように、なめらかに滑る。ひっかかることもつまずくこともなく。
白い肌に小さな赤い痕をみつけた。
滑らかで真っ白な妖夢の肌の上で其処だけは赤く腫れ、丘を形成している。
まるで雪景色に生える南天の様。
その周囲を、中心の赤に触れないように、なぞる。
肘の関節の上。骨と筋肉できた渓谷。橇遊びにおあつらえ向きな地形。ルールは単純、赤い腫れに触れないようにするだけだ。
そりそり、そりそり。
二周、三周と私は上手に回ってみせる。
そりそり、そりそり。
何度も同じ処を回っていると肌が少し熱を帯びてきた。まるで雪解けのように。妖夢の白い肌に赤みが差し、触れた指先に脈動を感じる。
「妖夢…」
堪えきれなくなって、私は妖夢に顔を寄せ、その小さな唇に自分の其れを重ね合わせた。
他愛のないフレンチなキス。
それだけで自分の心臓がとくんと跳ね上がるのがわかる。そうして、とても残念なのだけれど、妖夢がそうじゃないことも。
最後に少しだけ舌先を妖夢の唇に差し込んでから顔を離した。涎が名残惜しそうに糸を引いている。
「あの…鈴仙」
と、ややあってから躊躇いがちに妖夢が私の名前を呼んできた。
なに、と応える。
「その…気にしているんだったら、私は大丈夫だから…」
視線を私に合わせないよう、うつむき、言葉を紡ぐ妖夢。その瞳は自分の腕、先ほど、私が触れないようにしていた赤い痕に注がれている。
「昨日みたいに、」
上目遣いに、潤んだ瞳を向けてくる。そうして、
…してください
はたして、その言葉は妖夢の口から紡がれたかどうか。私は確認するより先に妖夢の唇を奪っていた。
「妖夢…」
ひとしきり、妖夢の唇の感触を楽しんだ後、私は顔を離した。視界一杯に妖夢の顔が写る。申し訳なさそうな、焦っているような、そんな困った顔が見える。
ああ、確かにこのままだとこれは私の独りよがりに過ぎない。
私は微笑み、ウインクしてみせると一旦、妖夢から離れた。
テーブルの上、昨日からそのままに、散らばっている道具の中から四つを選び出し手に取った。
消毒液。脱脂綿。アンプル。インジェクター。
脱脂綿に消毒液をとり、妖夢の腕をなぞる。
冷たい、という妖夢の声。揮発するアルコールに熱が奪われたのだ。
今度はインジェクター…注射器の針を消毒し、アンプルの口を折って中身を吸い上げる。
「じゃあ、妖夢、射れるから…」
「はい…」
不安げに頷いて、目を背ける妖夢。
訓練や実践で散々痛い目を見てきているくせに注射の針で刺されるのが怖いと妖夢は言う。
不意打ちや自分が未熟故の失態からくる痛みなら耐えられるが、あえて受けなければならない痛みという物はある種の未知の領域にあるもので、だからこそ痛いのだと。
その様子は予防接種を怖がっている子供のようで少し可愛らしい。
少しでも痛みが和らいでくれればと私は妖夢の頭を抱きかかえた。唇を奪ったり、胸に触れたりするよりかは今の妖夢ならこちらの方がいいだろう。
その体勢のまま、私は器用に妖夢の脈に注射針を差し込んだ。
妖夢の身体を巡る神経系に化学物質が広がっていく。
思えば、痛みに耐えるような人生を送ってきてからこそなのかもしれない。
妖夢の不感症というものは。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
私と妖夢は昨日からあわせてそれぞれの主人からお暇を貰い、休日をとっている。
その計画が持ち上がった当初は湖に行こう、温泉宿に行こう、なんて話も出てきたが、話し合いの結果、選んだのは永遠亭の別荘である、この竹林の外れに建てられた小さな瓦葺き屋根の家で二人っきりで過ごすという物だった。
竹林の外れ、崖の上に建っているこの別荘は見晴らしがよく、内装も永遠を保つよう創られているので築何百年と建っているはずなのに埃一つ黴一つ生えておらず、削りたての檜や藺草の清々しい香りに満ちていた。
いいところですね、と妖夢が言ったのは一通り部屋を見回り、私が淹れたお茶を飲みながら外の風景を眺めていたときだ。
それからその間、二人してお茶を飲んだり景色を眺めたり話をしたりして過ごした。日が暮れかかってから料理を作り、食べて、暗くなったところでお酒を呑み始めた。
そんな他愛のない休暇。
でも、私はそれでも楽しかった。
そんな何でもないことを妖夢とすることが、妖夢と過ごすことが嬉しかったのだ。
あとはそう、えっちな…こととかもできれば。
先に身体を寄せたのは私の方だった。
妖夢が奥手なのは知っていたから。
酒の勢いもあって私はそのまま妖夢を畳の上に押し倒した。
「いい…?」
押し倒しておいて了解を求める。
我ながら我が儘な態度。妖夢も絶対に了解してくれると思っての行動。
だけれど、妖夢は少し困ったような表情を浮かべていた。
まだ早かった、失敗した、と今度は私が困惑の表情を浮かべると妖夢は真摯な瞳で違うの、と頭を振るった。
「大丈夫…と、思う。だから…」
その続きを言うことなく、意を決したように妖夢は私の身体に腕を回して唇を合わせてきた。
乱暴に舌先が押し込まれ、釣り上げた魚のように私の口内で妖夢の舌が暴れる。
なんだ、やっぱり妖夢もその気だったんだ、と私も納得し、妖夢の胸に手を触れた。
サラシの上から妖夢の薄い胸板をなで回す。遅れて私に倣うように妖夢も私の胸に触れてきた。乱暴な手つき、少し痛い。けれど、妖夢の必死さが伝わってくる。
唇を離し妖夢の首筋へ。冷たい体温を味わう。白い肌に私の口づけの痕が残るのが楽しくて、何度もしてしまう。
その間も妖夢の身体をなで回す。胸から腰へ、お腹へ、太腿へ。
冷たい妖夢の肌はとても滑らかで、その下にある鍛えられた筋肉の存在がすぐにでも分かった。鎧兜に薄い絹地の布をかけたような、そんな感覚。
妖夢も私の後を追うように同じ部分を触ってくれる。ぎこちない手つき。剣を振るう腕は繊細そうに見えたけれど、こういった相手を労る動作は苦手なのだろうか。普段はむしろ逆のこと…相手を傷つける動作ばかり練習しているからだろうか。けれど、その乱雑さも気にはならない。
「妖夢…脱がすよ…」
一度、頭を離し、妖夢の下腹部に跨る感じで身体を起こす。そんな体勢を取ったのは妖夢の身体と顔をよく見るため。離れてみた妖夢の顔はバツが悪そうな、そんな顔をしていた。
初めての行為に戸惑っているのだろうか。それとも…、心中に不安が宿る。
それを押し殺すために妖夢のブラウスに指をかけた。
もどかしさを覚えながら上から一つ一つボタンを外していく。サラシに包まれた胸が露わになる。
これはどうやって外せばいいのかしら、と逡巡していると妖夢が「ここで止めているんです」とわきの下辺りの布地を引き抜いた。そこが端だった。
妖夢の身体を起こして、ぐるぐると妖夢の胸に巻かれたサラシを紐解いていく。三周、四周としたところでもどかしくなって緩くなったサラシをそのまま下へずらした。僅かに盛り上がった丘の上の桜色のぽっちが現れる。
「ちいさくてかわいいね」
「っ…恥ずかしいです」
そっぽを向く妖夢。その動作が愛らしい。
今度は直に妖夢の胸に触れる。柔らかな肌。手のひらに収めて余りある小さな丘。流石に直接はくすぐったいのか妖夢は少しだけ身をよじった。私は意地悪げに逃がさないと、人差し指と中指の間に妖夢のぽっちを挟み込み、両方の指の力で圧迫する。そのまま手のひらで円を描くように動かし刺激を与える。
開いている腕は妖夢の腰へ、背骨や腰骨、その境目を撫でる。
やああって、床に手をついてされるがままだった妖夢も思い出したように私の身体に触れてきた。
「あの…鈴仙も脱いでください。私だけじゃ不公平です」
「…そうね」
肩を竦めて、胸を張るようなポーズを取る。どうぞ、といたずらっぽく笑ってみせる。私が妖夢の服を脱がせたんだから妖夢が私を脱がせるのは当然、そういう態度。公平。
躊躇ってから妖夢は私の服に手をかけた。ブレザーの二つのボタンの内、止めてある上だけを外す。私は肩の角度を調節して、ブレザーを滑り落ちるままに任せる。次に妖夢は私の首に巻いてあるネクタイをほどき、シャツのボタンを下から順に外し始めた。
「変わった外し方」
「そう…でしょうか」
自分はいつも服のボタンは下から止めていると妖夢は語った。
私の妖夢と比べなくても大きめの胸が露わになる。覆っているのはレース地の黒のブラ。この日のために用意した特別な下着だ。
「似合ってる?」
「えっと…はい。似合ってます」
躊躇いがちに恥ずかしそうに応える妖夢。
ややあって、妖夢はおずおずと私の胸に触れてきた。扱い方が分からないのか乱暴な手つき。それでも愛おしい人に触れられている喜びがあって私の身体は悦び始める。
「妖夢、直接触って…」
「えっ、でも、これどうやって外せば…」
「フロントホックだから、間にある金具を外してくれれば…」
私の胸に顔を近づけ胸の間の留め金を探す妖夢。金属の輪に鈎を引っかけているだけのホックは左右のカップを寄せれば簡単に外れる。拘束を解かれ、私の胸が左右に広がる。
「大きいですね…羨ましい」
「…身近にもっと大きな人がいるから余り実感が湧かないなぁ」
「う…ゆゆさまの方が確かに大きかったような…」
そんな会話を交わす間に私はブラをシャツごと脱ぎ捨てた。上半身裸になる。
固く尖った乳首。妖夢のようにあまり綺麗な色はしていない。少し恥ずかしさを覚えて顔が赤くなる。
「さ、続きをして妖夢」
「は、はい」
ぎこちない手つきで私の胸をもむ妖夢。手順は同じ事の繰り返しだけれど必死にやっているのが分かる。食い入るように自分の手の中で形を変える乳房に視線を注ぎ一心不乱に作業を続ける。
愛おしい、けれど、もどかしい。
私は作業中の妖夢の頭を無理矢理抱き寄せると、それを双峰の間に埋めた。腕で後頭部を囲い、顔を妖夢の髪に埋め、鳥籠のようにする。
「妖夢、吸って…」
妖夢は身をよじって一瞬、逃れようとするが私の声を聞いて躊躇いがちに、私の乳首を口に含んだ。そのまま幼子が母親のそれにするように私の乳首に吸い付く。少し痛い。けれど、その動作が妖夢の小柄な身体と相まって私の中に母性愛じみたものが生まれた。優しげに頭を撫でてあげると妖夢は瞳をあげた。
「ありがとう。じゃあ、そろそろ…」
妖夢をそっと自分の胸から離し、先ほどまで私の乳首に吸い付いていた唇にそっと口づけをする。口はそのまま下へ。また首筋に接吻し、舌を這わせる。その動作をしながら妖夢の身体を横たえ、自分もその上に覆い被さる。
妖夢の腰の横辺りに膝を下ろして、腕をこれまで触れてこなかった場所…妖夢の秘所へとのばす。
スカートを持ち上げて妖夢の下着に触れる。
木綿の布を捩って作った飾り気のないパンティ。ふんどし、というのかしら。ほどき方が分からず苦労しながらもそれを外し、下半身を露わにさせる。その間も、妖夢が恥ずかしい思いを忘れるように舌先を首筋から鎖骨、胸板、乳首へと這わせ、唾液で妖夢の身体をよごしていく。
舌先で乳首を転がし、時折吸い付き、丹念にその突起をなぶる。
そうして、念入りに準備を重ねたところで妖夢の秘裂に丈高指を差し入れた。
「あれ…?」
幼く固く閉ざされている其処は―――乾いたままだった。
私の茂みは十分に蒸れているというのに。
「ごめんね、妖夢、少し痛くするから…」
刺激が足らなかったのだろうか。
師匠の医学書には極度の緊張下だと身体が性的な反応…興奮や血圧の上昇、俗に愛液と呼ばれる液体が分泌されないことがあると載っていた。
お酒も入っているし妖夢自身、相当、リラックスしている様子だったから大丈夫だとは思っていたのだけれど。
しかし、私の考えとは裏腹に妖夢の秘裂はどれだけ刺激を加えても反応することはなかった。
「………鈴仙…痛いです」
「ッ、ご、ごめん、。ごめんなさい妖夢!」
慌てて身体を離す。
ああけれど、私の心は何処かでやはりと、落胆の色を醸し出していた。
ある種、予想していたことだったコレは。
妖夢と付き合うようになってから、二人っきりでいるとき性的な雰囲気は何度か訪れた。
軽く口づけを交わして、服の上から胸やお尻に触れ合い、軽い愛撫を交わしあっていた。
大抵は時間がなかったり、てゐの邪魔が入ったりして今日のように最後まで至らなかったのだが…殆どの場合、終わった後、妖夢は困ったような申し訳ないような表情をしていた。
キモチよくなかった、とそういう問いかけの後には決まって妖夢はそんなことなかったです、とよく騙される私にもすぐ分かるような嘘をついてくれた。
不感症。性的な刺激を受けても身体が性行為のための反応を起こさないことをそういう。
妖夢はそういう感度の持ち主だった。
この休暇は妖夢には黙っていたけれどそれを確かめるためのものでもあった。いや、妖夢だって黙っていたけれどそのつもりだったのだろう。だから、私の誘いに乗ってこうして痴態を演じて見せたのだ。気持ちよくもないのに。
その健気さに自分の愚かさに、腹が立つ。
「ごめんなさい鈴仙。先に言っておけばよかった。試しに…その、自分でしてみた時も全然、気持ちよくならなくって…で、でも…鈴仙がしてくれるならもしかしてって思って…それで…」
ごめんなさい、と彼女は泣いていた。彼女をそんな悲しい目にあわせている自分が酷く憎らしく思えた。そして、未だに妖夢を求めてひくつく自分の身体も。けれど、情欲は止められず、そして、妖夢を愛してあげたいという願いもとまらなかった。
手は一つだけあった。
「妖夢、ちょっと待ってて」
言って私は一度、部屋から出て行った。
別室にまとめてあった旅行鞄の中から携帯用の医療機器一式を詰めた用具箱を取り出し、それを持って部屋に戻ってくる。
「お待たせ。これなら…多分」
「鈴仙、それは…?」
恥ずかしそうに胸を隠しながら問いかけてくる妖夢。私は焦燥と決意に駆られて恥じらいもなく、そのままの格好で机の上に用具箱の中身を広げた。
ガーゼ、絆創膏、胃薬、傷薬、痛み止め。一応を考えて持ってきた医薬品の中から目当てのものを取り出す。
インジェクターとアンプル。本格的な医療機器に少し妖夢は脅えた表情を見せる。
「その…ごめんだけれど、師匠に妖夢の身体がそうなんじゃないかなって相談したの。そうしたら、コレを使ってみなさいって、渡されたの」
「それって…?」
「催淫剤。媚薬…って言えば分かるかな」
「媚薬」
呟きは知っているという答だった。
そして、そんな物を使うのかという恐れも感じさせる言葉。
私は不安になった。こんな事をしなくてもよかったんじゃないかと。私の中に咲いた欲望の花が急に枯れ始めた。下手をすれば妖夢と私の関係も終わってしまうのでは…そんな不安が心中を吹き荒れる。
「…ご、ごめん、妖夢。やっぱり、こう言うのは違うよね。もう、しまっちゃうから、お酒でも」
呑もう、という言葉は妖夢が付きだした腕にかき消された。かるく握り拳を作り、裏側を上に向けて付きだした妖夢の左腕で。
「して、鈴仙。注射は嫌だけど、それで…その鈴仙とできるなら大丈夫、ですから。その…」
してください、と妖夢は力強く頷いた。
ああ、そうだ。身体が反応しなくても心は反応しているのだ。私に真摯に瞳を向けてくる妖夢は私と同じ欲望の花を心に咲かせている。むしろそれは肉体の悦びを知らない分、私のそれより大輪なのかも知れない。
分かった、と私は頷くと注射の用意をし始めた。
妖夢の腕を消毒用アルコールで清め、注射の針も同じように清潔にする。
アンプルの括れた首を折って、薬液を注射器で吸い上げる。空気を押し出して準備は完了だ。
妖夢の腕を持って、脈の位置を確かめ、針をあてがう。
「少し痛いけれど、我慢してね…」
「はい。鈴仙のなら…大丈夫です」
それはこう言うときに言う台詞ではないよね、と笑って私は注射の針を妖夢の柔肌に刺した。
「っ…」
顔をしかめる妖夢。針は太めで私の技術の未熟さも相まって痛いのだろう。早く済ませてあげたい。けれど、急く事はできず私はゆっくりとシリンジを押し込んだ。薬液が妖夢の血流に乗り、全身に広がっていく。
「これで…大丈夫なんですか?」
「多分ね。効き目が出るまで暫くかかるみたいだから…」
私の身体で暇を潰して、と掴んでいた妖夢の腕を私の胸に押しつける。妖夢は恥ずかしそうにはい、と頷いた。
私の身体に触れる妖夢。ついでにどうすれば気持ちいいのかをレクチャーしてあげる。つたない動きながらも私の言うとおりに指先を動かす妖夢。剣術を学んでいるだけあって教えれば手先の器用さは私の比ではなかった。
そうして、
「鈴仙…っあ、あ♥」
悪戯心から膝先で妖夢の股を刺激してみた。刹那、甘い声をあげる妖夢。
「…これって」
慣れぬ感覚に戸惑いの表情を隠せない妖夢。私は断りもなく妖夢のスカートの裾をつまみ上げると下半身を露わにさせた。はたしてそこは…潤いを帯び、ほんのりと桜色に染まっていた。
「っ…恥ずかしいです鈴仙」
「でも」
そっと濡れた秘裂に触れる。
「キモチいいでしょ」
ハイと、頷いた妖夢に口づけしてあげた。
妖夢に裸になるよう促し、自分も生まれたままの姿になる。気恥ずかしさなんてお互い、もう感じていない。今はただ、一つになりたいと相手を求め続けている。
自分の茂った秘所を妖夢の無毛のそれにあわせる。どちらもよりつよい刺激を求めてひくついている。
「これで、一つに…」
「鈴仙…」
合図もなく、私はゆっくりと腰を動かし始めた。粘液が絡み合う水音。やがて、刺激を受けた膣壁から更に大量の愛液があふれ出す。妖夢の其処も同じ悦びを覚え、濡れそぼっていく。
「ああっ、キモチいい♥ キモチいいです、鈴仙♥」
「私も…♥ 私もよ妖夢っ♥」
興が乗ってきたのか腰の動きが自然と激しくなる。妖夢も身体を浮かせ更なる刺激を求める。ちょこんと顔を覗かせた妖夢の小豆を陰口で食べるように刺激する。ああっ、と高い悲鳴をあげる妖夢。まだ、陰核は刺激が強すぎるみたいだ。
「妖夢、身体横にして、足あげて…」
そう促し、妖夢の身体を横向きにして片脚をあげさせる。その間に自分の腰を割り込ませ、妖夢の細い筋肉質の足を抱いて、強く腰を打ち付ける。
「ああっ♥ ああっ♥ ああっ…!」
「キモチいい、キモチいい、キモチいいよぉ♥」
嬌声が室内に響き渡る。はたして、どちらがどちらの声なのか。もう、それしか聞こえず判断が付かない。熱に浮かされた頭では何も分からない。感じられるのは肉のうずきと愛おしさだけ。これまでの鬱憤を晴らすように私たちは激しくまぐわいあう。
唇を重ね、肌を合わせ、胸をもみし抱き、秘裂に指を差し込み、貝逢わせし、一つに、より相手に近づこうと尽力する。
そうして、
「妖夢っ♥妖夢っ♥妖夢っ♥」
「鈴仙♥ なにか、なにか、くる…ああっ♥」
同時に絶頂に達する。
お互いの秘裂から潮が吹き上がり、畳をよごす。
けれど、其れもお構いなしに脱力に襲われた私は妖夢の上へと倒れかかった。
「やっと一つになれたね…」
「鈴仙…す、好きですよ。愛してます」
口づけを交わしあって、愛を確認しあって、その夜は飽きるまで二人で身体を重ね合った。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「はぁ♥ はぁ♥ 鈴仙…もっと、強く…」
「うん…分かった…」
指で立て続けに三度、イカされても妖夢はなお私に求めてきた。
私が指を入れている妖夢の秘裂はもはやコップの水を溢したように濡れている。指は粘つく粘液に覆われ、私がプレゼントした下着姿の妖夢は熱っぽい表情で潤いを帯びた瞳を私に向けている。薄いランジェリー越しでも分かるほど妖夢は胸の頂を尖らせ、激しくそこを上下させている。昨日まで性的な刺激を知らない身体だったとは思えない反応だ。
普段は少し固い態度を取っている妖夢のそんな呆けたような態度が見られるのが今は自分だけだという独占感を覚える。
けれど、同時にある種の申し訳なさも。
「鈴仙…?」
妖夢のこの反応は薬による結果だ。詰まるところ、彼女は私に合わせるためにあえて妖夢の身体にとって尋常ではないものを受け入れている。
それは非道く不公平な話に聞こえてくる。
私は妖夢が好きだし、きっと妖夢も私が好きなだろう。そこに優劣はまるでない。
けれど、身体に関してはそうはいかない。
私の方が背丈も胸も大きい。私の秘所は陰毛に覆われているのに対し妖夢の其処は産毛すら生えていない。
この違いは仕方のない物だろう。同一でありたいという願いは心の奥底にはあるが、それを埋める手立てはない。いや、永琳師匠なら或いはそれさえも可能にするかも知れないが、その結果は恐らく今はまだ求めるところではない。私は…そう、私は少なくとも、妖夢と同じステージに立ちたいのだと願っているだけだ。
「鈴仙、どうしたんですか…あの、私、何か…?」
「ううん、違うの妖夢」
私の手が止まっていることに気がつき、不安そうな瞳を投げかけてくる妖夢。その不安を払拭する為に微笑み、私は一旦、妖夢から離れた。
「妖夢、私たちの間に不公平ってあっちゃいけないと思うのよね」
「鈴仙、それってどういう意味ですか?」
「深い意味はないわよ。でも、私は、それがイヤ」
だから、私は妖夢に使った催淫剤の残りをまた注射器に取った。今度は妖夢の為じゃない。
「鈴仙、それは…」
「間違えないで。自分の為よ」
「え、でも鈴仙は別に普通の身体じゃない」
「その人の常時の状態が普通っていうなら、今の妖夢は普通じゃないと私は思うの。そして、今の私は興奮しているけれど、普通の状態。それってとても不公平だと思うの。だから…」
私は自らの腕に注射針をあてがった。
「そんなことしなくていいのに」
「いいの。私が好きでやっているんだから」
妖夢の制止も聞かず私は注射器の中身を自分の体内へと入れた。
普通の人の感度を100とするならば妖夢の通常時のそれは0に近い数字だろう。それを薬でもって他人と同じレベルまで引き上げているとするならばこの催淫剤の効果は感度+100と言ったところか。
それを恐らく普通の感度の持ち主である私が使用したとすれば薬の効果が発揮し始めた私の感度は200、通常の倍になる計算だ。もちろん、人体はそんな単純な四則演算で成り立つものではないから一概には言えないだろうけれど、ある意味結果ははっきりしている。
感度の暴走。
師匠からは普通の人が使った場合の結果は聞いていないけれど、それぐらいは私の浅い薬学の知識でも十分理解できる。
ほどなくして効果が現れ始めた。
「はぁ♥ はぁ♥ はぁ♥ これ…何…すごい…っ♥」
視界がくらくらする。きついアルコールを呑んだような。ごうごうと耳の奥で自分の血液が流れる音が聞こえる。窓から吹き込んでくるそよ風ですら愛撫に感じられる。全身の力の制御ができなくなっている。あっ、と思う間もなく私はかしずき、倒れそうになった。
「鈴仙っ!?」
慌てて、駆け寄り私の身体を支えてくれる妖夢。
触れられた肩や腕がビリビリと震える感じがする。
「大丈夫、鈴仙、やっぱり、止めた方がよかっ…っ!?」
言葉を邪魔するように妖夢の唇を塞ぐ。
「ひょうむ…わたひは…だいじょうふ、たから…」
呂律が回らなくなっている。視線も合わせられない。ぐるぐると巡る視界の向こうで心配そうな顔をしている妖夢だけが見える。
「わたひを…おかひてください…」
なんとか、自分の願望だけを告げる。ああ、あとは動くのももどかしい。私は一個の快楽を求める肉塊と成りはてる。
「分かった、鈴仙」
おでこにキスをして、妖夢は腕の中の私の肉を横たえてくれた。
「いくよ…」
扇情的にすら見える動作で妖夢はローライズのショーツを脱ぎ捨てる。ワンピースタイプのランジェリー越しに日の光に照らされた丸裸の妖夢の姿が影となって映る。ああ、視覚でさえも性感帯になっているよう。
つづいて妖夢はかがみ込み、私の黒のレースのパンティを脱がせ始めた。ランジェリーに隙間ができて妖夢の可愛らしいぽっちが覗ける。
激しく濡れた私のパンティは脱がしにくいらしく妖夢は四苦八苦しながら私の下着を引っ張っていた。昨日、妖夢の胸のサラシを外そうとしていた私みたい。ある種これはリフレイン。昨日の再構築。
「準備、できました」
私の汚れたパンティを綺麗にたたんで、机の上に置く妖夢。もはや洗濯するしかないそれをそうも丁寧に扱っていることが面白くて少し笑ってしまった。興奮している今の状態だと箸が転げ落ちても笑ってしまいそう。
「じゃあ、します。します、から」
確認を取って妖夢は私の上に跨った。私がまるで動けないというのもあるけれど、やはりこれは昨日の再構築なのだろう。不公平だという私の話を聞いて妖夢も昨日の私たちの逆をすることでバランスを取ろうとしているのだろう。そこまでしなくていいのに、と何処かで聞いたような台詞が心に浮かんだ。
「鈴仙…♥」
重ね合わされる秘裂。そこは油をひいたように滑りがいい。
じゅるりじゅるりと艶めかしい水音を立てて、二つの肉塊が前後する。
「はっ♥ あっ♥ ああっ♥」
まるで背骨に電撃でも受けたような快感が走り抜けていく。脳という集積回路を焼き切る強烈な電気。あっという間に私の思考回路はショート寸前になり火花を散らす。脊髄反射がてんで出鱈目に働き、私の四肢は意に反して腱を限界まで引き延ばさせる。呼吸ができない。苦しい。それを察してくれたのか、私の大きく開かれた口を妖夢が自分のそれで覆ってくれた。人工呼吸。妖夢が吐き出した吐息が私の肺に満ちる。もっと等しくなるための行為。
妖夢の舌が私の口の中で暴れる。
歯茎を歯の隙間を、舌の裏側を、余すことなく踏破していく。唾液が止めどなく溢れ、カクテルになる。ゴクリと飲干す。甘い味、幸せな味が脳内に広がる。
妖夢の手が私の身体の何処かに触れる度にそこは刺激性のある薬品でも濡れられたように強く反応した。首筋、二の腕、脇、胸。あらゆる所が発火したように熱くなる。それに伴い全身の温度が上がっていく。心拍数も鰻上り。猛烈に送られてくる血液に視界がブラックアウトしかける。
「まだ…イかないでください、鈴仙。私と一緒に…」
妖夢の言葉に残った理性を総動員して正気を保つ。
長くは続けれそうにないけれど、ああ、確かに…
「鈴仙…♥」
この妖夢の可愛らしい顔が果てる瞬間を見ないで気を失うのは何とももったいない気がする。
「妖夢…もっと強くして…」
リフレイン。
努力して正確に言葉を紡ぐ。
言われるまでもなかったのか、妖夢は腰を前後させる動きを激しくした。
「鈴仙♥ 鈴仙♥ 鈴仙っ♥」
―――妖夢♥ 妖夢♥ 妖夢っ♥
ぐちゅりぐちゅり。二つの肉が溶けて交わる。私が妖夢の一部になって、妖夢が私の一部になる。互いの境界線上が曖昧になる。ミルクを入れたコーヒーのよう。乱雑にかき回されて二つの液体は混じり合い、一つの液体へ変わる。平均化。不公平を正す行為。
そうして、意識が白濁しかけたとき…
「っ、イキますっ♥ 鈴仙っ♥」
「妖夢♥ ああっ…!!」
同時に、昨日の夜と同じように私たちは絶頂に達した。
荒い息をついて妖夢が私の上に倒れかかってくる。
だらしなく投げ出された私の指を自分のそれに絡ませあい、猫のように私の耳元で鳴く。
「やっと、一緒になれましたね」
「好きよ…愛しているわよ、妖夢」
リフレイン。
休暇はまだあと一日ある。
終わるまで私たちはあと何度、交わり一つになることだろう。
その想像にきゅんと性器を濡らした。
END
柚胡椒マヨネーズは微妙。
チンザノライム呑みながら書きました。
sako
作品情報
作品集:
15
投稿日時:
2010/05/03 17:03:55
更新日時:
2010/05/04 02:03:55
分類
鈴仙
妖夢
催淫剤
ラヴラヴ
とりあえずお大事に
しかし鈴仙お前は匙加減間違っちゃいかんだろw