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『史上最大の侵略』 作者: ナレン・フライハイト

史上最大の侵略

作品集: 15 投稿日時: 2010/05/05 15:48:19 更新日時: 2011/08/14 11:29:35
『現れたな、太歳星君!』
『はっはっは、来たな紅美鈴!』

 あらゆる災いをもたらす大きなナマズの姿をした凶神、太歳星君。私の目の前に現れたそいつを、私は幻想郷の平和のためにそいつを倒さなければならないのだ。
 私は腕にありったけの気を溜め込む。

『いくぞ! くらえ正義の拳!』
『ふはは! くるがいい!!』

 私は大ナマズに攻撃を与えるために勢いよく突撃していく。私の拳は太歳星君に届く前に奴が地面を吹き飛ばして散乱させた岩によって防がれる。私はそれをはねのけながら前進する。すると大ナマズがヒゲを使い私に襲いかかってきた。私はそれを弾き返すも、電流が流れていて腕に鋭い痛みが走る。

『くっ!!』
『ほらほらどうした? その程度か?』
『なんのこれしき!! いくぞっ!!』

 私は太歳星君のヒゲをかいくぐりながら奴に気の篭った一撃を与えようと――

「何寝てるのよ」

 急に冷たい水が浴びせかけられたことにより、私は急に現実に引き戻される。目の前には夕陽を背にしバケツを持って仁王立ちしている紅魔館のメイド長である咲夜さんの姿が。

「しゃ、しゃくやさ〜ん……」
「しゃくやさ〜ん、じゃないわよ。真昼間から寝てるんじゃないの。まったく門番の仕事を何だと思っているのかしら」
「あ、あはは……すいません……」

 私はポリポリと鼻を書きながら謝る。そんな私に呆れてしまったのか、咲夜さんは軽くため息をついていた。

「……ま、せいぜいクビにならないように頑張ってね。それよりも、もうそろそろ夕食の時間よ」
「おお!! もうそんな時間ですか! それは急がないと!」

 私は食堂に一秒でも早くたどり着くために勢いよく走り始める。

「まったく、こんなときだけ張り切るんだから……」

 背後のほうでそんな咲夜さんのぼやきが聞こえたような気もしたが気のせいだと言うことにした。
 食堂には既に紅魔館の主であるレミリアお嬢様、その友人であるパチュリー様が椅子に座り夕食が来るのを待っていた。

「あら美鈴、さすが早いわね」

 お嬢様が気品漂う笑みを浮かべながら私に言った。

「ええまあ、それだけが取り柄ですから。えへへ」
「あら、本職の方が取り柄じゃないなんて、いよいよ門番もクビかしら」
「そ、そんなー! これでも結構頑張ってるんですよー!」

 冷たく言い放つパチュリー様に私はオロオロと慌てふためきながら答える。それが面白かったのか、お嬢様はくすくすと私を見て笑っていた。

「ふふ、頑張っていても結果が出せないモノは切られるのよ。怖いわね、不景気って」
「お嬢様が言うと冗談に聞こえませんー!」

 そんな風に騒いでいると、背後の観音開きの扉が開かれ、お嬢様の妹様であるフランドール様と食事が乗った配膳車を運んでいる咲夜さんが入っていた。恐らく途中でであったのだろう。
 そして咲夜さんが食事を丁寧に配り、全員が揃ったところで食事が始まった。楽し気に交わされる会話、団欒とした雰囲気、私は確かな幸せを感じていた。



◇◆◇◆◇



『でやっ!』
『ふん、まだまだだわ!』

 私の懇親の蹴りも太歳星君の大ナマズの体にはまったく損傷を与えられなかったようだ。

『ほらほら、世界が震えるぞ?』
『ちっ!!』

 大ナマズの起こす地震によってまともに立つことが出来ず、さらに足場が奪われていき私は飛ぶことを余儀なくされた。そこに大ナマズの息をつかせぬ攻撃が迫ってくる。

『私は負けない! 華符「芳華絢爛」!!』

 反撃に転じる足がかりとするため、私はスペルカードを発動する。大ナマズの攻撃は私のスペルカードに押され鈍る。

『ふん、やりおるな!』
『まだまだっ!!』

 私は新たなスペルカードを発動するために懐からカードを取り出し――

「……んん」

 唐突に戦いの映像が切れ、空に輝く太陽の光が私の瞼の裏の瞳に届く。どうやらまた居眠りをしてしまったらしい。それ自体はいつものことなのだが、最近大ナマズと闘う夢をよく見る気がする。一体どうしてだろうか。
 まぁあまり深い意味はないのだろう、たたが夢だし。そう私は割り切り気持ちを門の警備へと切り替えた矢先だった。

「おや? あそこにいるのは……」

 前方からものすごい速さで突撃してくる白黒の物体。霧雨魔理沙だった。おそらくまたパチュリー様の本を借りると称して盗みにいくのだろう。そうはさせまいと私は迎撃体勢をとった。

「おっと、ここから先は通さないわよ!」
「へっ!! 穀潰し門番に凄まれても怖くないな!」

 魔理沙のマジックミサイルが私に雨のように振りかかる。私はそれに反撃する暇もなく圧倒される。

「トドメだ! マスタースパーク!!」
「おわっ!?」

 目の前が一瞬で魔理沙のマスタースパークで埋め尽くされる。そして、気づいたときに私は地面に仰向けで倒れこみ空を仰いでいた。

「……はぁ……また負けた……」

 魔理沙は既に紅魔館に侵入したのだろう。そして、すぐさま本を盗んで出ていくのだろう。もはや決まりきった日常であった。
 現実の私は、夢と違って否応なしに弱い。夢の中のように禍々しい邪神なんかとわたり合うほどの力もない木っ端妖怪であった。
 そもそも私は、自分が何の妖怪なのか知らなかった。どこかで豆腐の角に頭でもぶつけて記憶喪失にでもなってしまったのか、それともあまりにも長く生き過ぎて忘れてしまったのか、真実は定かではないが私は気がついたらそこにいたのだ。何代も前の当主の頃に祖国で拾われてからずっとこの紅魔館で働いている。一体、私はなんなのだろうか。それがわかれば、少しは強くなれるだろうか。せめて、門を守れるぐらいには。
 駄目だ、こんなくよくよしちゃいけない。私は考えが後ろ向きになってきたのを感じ、勢いよく飛び起きた。そして再び門の警備につく。空には魔理沙が本を持って飛んでいく姿が見られた。



◇◆◇◆◇



 日は傾き始め、空は暗雲がゆっくりと立ち込め始めた。今夜は雨となるだろう。私がそのように天気を心配していると、咲夜さんがどこか神妙な面持ちでこちらにやってきた。

「美鈴、お嬢様がお呼びよ」
「お嬢様が?」

 一体どいうしたというのだろうか。もしや、昼の魔理沙の侵入を許してしまったことに対してのお叱りだろうか。
 私はどこかいつもとは違う雰囲気の紅魔館の中を、咲夜さんの後にただ黙々とついていく。気のせいか、すれ違うメイド妖精達の態度もおかしかった。憐れむような目でみるものや、ヒソヒソと話すもの、くすくすと笑うものもいた気がした。
 お嬢様の部屋の前につくと、咲夜さんがゆっくりと扉を開き、私を先に中へと入らせる。お嬢様は、いつもと変わらず椅子に堂々と座りワインを飲みながら私をその鋭い双眸で見据える。

「よく来たわね、美鈴」
「は、はい……えーと、一体どんな御用でー……」
「あなた、クビ」
「へ……?」

 今、何て言った? クビ……? それって、解雇するとか……そういう意味の……? え……?

「は、ははは……そんな……お嬢様、冗談きついですよ……」
「あら、私がこんなに真面目に話しているのに冗談とは心外ね」
「そんな……どうしてですか!! 私は、今まで命を掛けてこの紅魔館の門を守ってきたんですよ!?」
「それでも役に立たないじゃないの。貴方みたいのがいると紅魔館の質が落ちるの、分かる?」

 お嬢様は淡々と、事務的に私に言い放った。しかし私がそんなことで納得できるはずがない。私は反論し続けた。

「それじゃあ、紅魔館の門は誰が守ると言うんですか!? 確かに魔理沙は通してしまいますが、それでもそこら辺の妖怪達は防いでいますよ!? 私がいなくなったら妖精達に門を任せる気ですか!? そんなの彼女たちには荷が重すぎます!!」
「パチェがね、召喚魔法でそれは従順で強い悪魔を召喚してくれるらしいの。それをあなたの変わりに門番にすれば問題無し」

 お嬢様は私を解雇するという決定を変える気はないらしい。私はそれでもお嬢様に懇願するために、這いつくばりながらお嬢様の足にしがみついた。

「お願いします、やめさせないでください。私には紅魔館しかないんです。此処以外で住むなんて考えられません。もう何百年もこの紅魔館に仕えてきたんです。必死に修行して強くなってみせます。もう居眠りもしません。だからお嬢様、どうか、どうか御慈悲を!!」
「ええい、しつこい!」
「ふぐっ!!」

 私は怒りを浮かべたお嬢様に蹴り飛ばされる。私は蹴り飛ばされた先には、普段と変わらず瀟洒な態度を保った咲夜さんがいた。
 咲夜さんがお嬢様に口添えしてくれればなんとかなるかもしれない……!
 私は今度は咲夜さんにしがみつくかのように懇願する。

「お願いします咲夜さん、お嬢様に私をやめさせないように頼んでください。私は紅魔館が好きなんです。紅魔館の皆が好きなんです。ずっとここにいたいんです。お願いします、お願いします咲夜さん!!」
「……ごめんなさい美鈴。それは出来ないわ。お嬢様の決定は絶対。諦めなさい」

 咲夜さんは、こっちを一瞥もせずに言った。咲夜さんにとって、私より遙かにお嬢様が大切なのは分かる。でも、でもこんなときぐらいは私の味方をしてくれたっていいじゃないか……!

「見苦しいわね。さっさと出ていきなさい」

 お嬢様は私の首根っこを掴むと、無理やり玄関まで引きずっていった。私は必死に抵抗したが、どうあがいても吸血鬼の力にかなうはずも無かった。
 いつの間にか玄関に先回りしていた咲夜さんが扉を開け、雨がざんざんと降りしきっている外へと放り投げる。すぐさま扉が勢いよく締められた。私はすぐさま扉に飛びつき、何回も扉を叩く。

「開けてください! お願いします! 咲夜さん! お嬢様! パチュリー様! 妹様!」

 喉が張り裂けんばかりの大声で叫ぶも、誰も答えてくれない。

「うっ……! ううううううっ……うああああああああああっ……!!!」

 もう耐えることが出来ず、私は泣き出してしまった。雨が降っていてよかった。涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔が、この酷い土砂降りが隠してくれた。窓の外から誰かに見られても大丈夫だ。なぜか、こんな状況なのに私の頭にはこんな考えがよぎっていた。
 しばらく泣いて、もう涙もでなくなると、私はとぼとぼと紅魔館の門を後にした。

 それからどれほど歩いたのか、私は覚えていない。私はただただ、ふらふらと歩くことしかできなかった。
 これからどうすればいいのだろうか。どこかで働く? 駄目だ、紅魔館は悪魔の住む館、そんなところで働いていたなんて知れたら、どこも雇ってくれない。人間を相手に商売どっている永遠亭もそういった理由で顧客が減るため無理であろう。
 博麗神社はどうだろうか。あの巫女ならばなんだかんだで泊めてくれそうな気もする。いや、無理か。彼女はあくまで中立だ。私のような妖怪を置くなんてその立場が許さないだろう。守矢神社とはあまりつながりが無い。泊めてくれる道理も義理もない。
 こうなったら命蓮寺に行って出家でもしようか。もう、今の私には何もないのだから……。

「……ん?」
 
 傾斜の厳しい坂道に差し掛かったところ、まるで地面が震えているかのような感じがした。ドドドドと、地鳴りのような音が聞こえる。
 私が力なくその音のする方向を向いた瞬間、荒れ狂うような土砂雪崩が私を飲み込んだ。



◇◆◇◆◇



『ここは……?』

 私はいつのまにか、霧に包まれた妙な場所にいた。いつの間にこんなところに来たのだろう。私は必死に記憶を探るが、思い出せない。思い出すのは、お嬢様の、私を投げ飛ばす時の、あの無機質な目――

『っ……! どうして、どうしてよ……! 私が……私が弱いから……? 先代様はそれでも私を雇ってくれていたのに、どうして今更……? どうして……昨日まではあんなに楽しく過ごしていたのに……どうして……!!』
『それは仕方ないことなのじゃよ、美鈴』

 後ろから、重厚な、しかしとても聞き慣れた声が聞こえる。私が振り返ると、そこにはとてつもなく大きなナマズ、太歳星君の姿があった。

『あんた……そう、これは夢の中なのね……で、仕方ないってどういうことなのよ……?』

 夢の中の存在でもいい、今の私の辛さを吐き出せるなら、誰でも良かった。

『お主は思い出さなければならない、自分が何者なのか。自分がどんな存在なのかを』
『はっ……思い出したところで、私が強くなれるとでも……?』
『ああ』

 私が投げやりに言った事に対し、大ナマズは確信持った口調で答えた。どうして、これほどの自信を持って答えられるのだろうか、一体、私の何を知っていると言うのだろうか……。

『あんた、一体なんなのよ……私の夢の産物にしちゃあ……ずいぶんとしっかりしてるじゃないの……』
『わしは、お主じゃ。そしてお主は、わしじゃ。お主が絶望の縁に立たされた今こそ、我とお主が一体となるとき』

 私は吸い寄せられるかのように、大ナマズに近づいていき、大ナマズの額に手を当てた。

『あっ……あっ……あああああああああああああっ!!!』

その途端、私の中に稲妻が走ったかのような衝撃が流れ、大ナマズが私の体へと吸い込まれていく。

『うわああああああああああああああああああああああああっ!!』

 暗転。

 私の意識が現実へと戻される。とても暗い。どうやら今の私は土砂の下敷きになっているらしい。しかし、今の私にそんなものは意味をなさない。私は軽く気を放ち周りの土砂を吹き飛ばした。
 体にあふれんばかりの気が満ちるのが分かる。今までになく、しかしながら懐かしい感覚だ。雨はすっかり止み、太陽がさんさんと輝いている。私は近くに出来た水たまりで自分の姿を確認した。
 着ていたチャイナ服は色が真っ黒に染まっていおり、首には数珠のように髑髏が連なって掛けられていた。目の色は血のように紅く、狼のように鋭い。爪と髪の毛はより長く、紅々しく、そして艶やかになっていた。肉体の至る所が生命力に溢れ、官能的な魅力が漂っている。

 思い出した。私の正体。私が一体、どんな存在であるかを。

「私の名は、紅美鈴……そして、またの名を……太歳……星君……!」

 全て思い出した。私は遥か昔、大陸にて猛威を振るった。愚かで矮小な人間どもを、足元にも及ばない妖怪どもに私の偉大さを知らしめてやった。しかし、あの忌々しい太公望が私は封じたのだ。ああ、太公望め、なんと忌々しい。
 そして何百年とした後、私は記憶も力もなくただ抜け殻のように蘇った。私を雇ったときの当主は私の正体を見抜いていたのだろう。だからこそ私を雇った。それを子孫たちに口伝していったのだろう。しかし、言い伝えとは次第に湾曲し、かすれていくものである。
 だからこそレミリアは、私の正体を知らなかった。そのため私を解雇できたのだ。愚かな小娘め。私の封印が弱まっているときに私を解き放つとは、彼女の運命を操る程度の能力などたかが知れている。

「うふ、うふうふうふ! なんて気持がいいのかしら! ああ、今までなんと惨めな生き方をしてきたのかしら。私ともあろうものが、たかだか西洋妖怪の門番など! 忌々しき太公望……! 忌々しきスカーレット家……!」

 しかし、私は太歳星君としての記憶と力を取り戻した。まだ少し慣れが必要だが、まあ大丈夫だろう。私は周りの植物を枯れさせながら、ゆっくりと、鼻歌を歌いながら紅魔館へと歩を進めた。



◇◆◇◆◇
 


 私が紅魔館の門にたどり着く頃には真夜中になってしまっていた。少しゆっくり歩きすぎたか。まぁ、力を取り戻したばかりだし仕方ないだろう。私の姿が見えると、門番隊の妖精たちは震えながら無言で地面に頭を擦りつけた。弱いものは命を脅かす危険な存在を感知しやすいのだ。
 門の前にはパチュリーの召喚した悪魔とやらが居座っていたが、すぐさま首を吹き飛ばして排除する。こんな中途半端な奴に、私の変わりをさせようなど我が名への冒涜も程があるというものだ。
 私は悠然と紅魔館に侵入する。メイド妖精たちが迎撃に来るも、門番隊の妖精たちと同じくすぐさま力の差を理解しひれ伏す。

「いいわよあなた達。私は従順なモノには寛容よ」

 私が紅魔館の廊下をつき進んでいくと、廊下の向こうから銀色のナイフと火球とコウモリを模した魔弾が飛んでくる。私にはそれが蝿が止まるほど遅く見えた。だが避けるまでもない。私はあえてそれを受けるが、はっきり言って蚊に刺されるほうがマシなほどであった。

「あなた……美鈴!?」

 レミリアが私を見て驚愕する。

「そうですよお嬢様、あなたのしもべだった紅美鈴です。またの名を、太歳星君」
「太歳星君、ですって……!?」
「ええそうです。ありがとうございますお嬢様、あなたが私を解雇してくれたおかげで私は自分自身の記憶を取り戻すことができましたー」

 私はあえてお嬢様とよび、わざとらしくおどけてレミリアに反応してやった。

「日符『ロイヤルフレア』!!」
 
 すると突然、パチュリーが私に向かって、ロイヤルフレアを放ってきた。

「なんであろうと、この紅魔館で勝手をしようなんて許さないわ」
「あらあら、これは熱いですねぇ」
「なっ……!」

 パチュリーはモノともしていない私に驚愕しているようだった。別に聞かなかったわけではない。あれほどの魔法だ、少しは食らう。しかし、パチュリーにとって、そんなほんの僅かしか与えられなかったことが驚愕らしい。

「誇っていいんですよパチュリー様、凶神である私に少しでも傷を与えるなんて勲章モノです。ま、すぐに回復するんですけどね。くすくす」
「……お嬢様、パチュリー様、いますぐ妹様を連れて紅魔館から逃げ出してください」

 咲夜が神妙な面持ちでレミリアとパチュリーに言った。

「はぁ!?  何言ってるのよ咲夜! 頭でもおかしくなったの!?」

 レミリアが焦燥と怒りが混ざったような顔と声で言った。

「そうじゃありません。今の美鈴は、明らかに私達じゃ勝てない。巫女の、幻想郷の賢者達の力を借りるべきです……! 私なら、時間稼ぎ程度になるはず……!」
「だからって、あなたを見捨てろだなんて……!」
「レミィ、ここは咲夜の言う通りにしましょう」

 パチュリーが、額にうっすらと汗を浮かばせながらも、冷静な口調で言った。

「ちょっとパチェ! 咲夜を置いていけっていうの!」
「あなたこそ、咲夜の決意が分からないの!?」
「ぐっ……! 咲夜、必ず生きて帰りなさい……!」

 レミリアは苦悩が見て分かるほどの顔をしながら、パチュリーと共にあっという間に目の前から姿を消した。私の目に捉えられなかった以上、パチュリーの転移魔法か何かだろう。

「いやー、感動的な光景ありがとう咲夜。ピューリッツァー賞ものねー」

 私は口調をもとに戻し、挑発的に吹きかけてやった。

「……それは、マスコミに送られる賞でしょ」
「あれ? そうだっけ? ま、いいけどね」
「幻葬『夜霧の幻影殺人鬼』!!」

 咲夜がスペルカードを唱えると共に、無数のナイフが私を囲む。しかし、私はそんなものを意にも介せす咲夜に急接近し首根っこをつかみ壁に押し付ける。

「ぐえぇ……!!」
「あら、女の子らしくない声ねぇ、くすくす……」

 私は咲夜の体に気を流し込み、動きを封じると、咲夜の秘所に手を入れる。

「ちょ……! 何を……! ああっ……!」
「ふふ、かわいい……そんな可愛かったら、発電だって頑張っちゃうわよ?」
「うがあああああああああああああっ!!」

 私は咲夜の秘所から体内に電流を流しこむ。女性らしくない悲鳴を上げる咲夜の服は、ビリビリに破れていき、あられもない姿を表した。私はそんな荒い息になり目も虚ろとなった咲夜を地面へと投げ飛ばした。

「うぐっ……!」
「さて、ここからが本番ね」
「な、何を……!」
「貴方には、私の従者になってもらうわ」
「ふん、何を馬鹿馬鹿しいことを! 私の主はお嬢様一人! 誰が……!!」
「そう言ってられるのも今のうちよ」

 私は自らの鳩尾に手を当てる。

「おぇ……!! おおおっえ……!!」

 そして私は、自らの口から小さなナマズを吐き出した。

「えっ……何……!?」
「ふふ、行きなさい」

 小ナマズは私に言われると、動けない咲夜の秘所目がけて動き出す。

「え? まさか!? 止めなさっ――ぐえええええええっ!!」

 先程の私の手ほどきによって咲夜の秘所は十分に濡れている。小ナマズはなんの問題もなくするりと咲夜の体内へと潜っていった。

「はぁ……はぁ……一体、何をする気なの……!」
「あのナマズはあなたの体の中で霊体となってあなたと一体化する。そしてあなたと一体化した小ナマズはあなたの肉体と精神を支配し、従順な従者へと作り替えるのよ。ほら、からだが疼いてきたでしょう?」
「えっ……嘘……!? 嘘よ、嘘よ!!」

 そう言いながらも咲夜は体を擦り合わせる度に悶えたような表情を浮かべた。

「ふふ、試しにあなたの体の感度を少しあげさせてもらったわ。どうらや成功のようね。さて、はっきりと思い知らすために服を脱いでくれるかしら?」

 すると咲夜は私に言われた通り、ボロボロのメイド服を脱ぎ捨てて生まれたときの姿を私の前にかざした。咲夜の顔はたちまち羞恥によって赤く苦い表情を浮かべている。

「嫌ぁぁぁぁっ……! 見ないでぇ……! ううっ……うわあああああっ……!」

 咲夜は普段の瀟洒な姿は何処へやら、わんわんと泣き始めた。たまらない。実にたまらない。ずっと堪能していたい気分だが、そろそろ咲夜の心をも支配する作業にとりかからなければならない。

「さて、次はあなたの心を頂きましょう」
「お願い……許して……!」

 咲夜は大粒の涙を流して懇願した。その姿はすでに年頃の女の子である。しかし私はそんな願い、さらさら聞く気などない。

「いい咲夜、あなたは、私、紅美鈴だけに仕える従順で瀟洒な従者よ」

 私は咲夜の心に響くように語りかける。

「……わ、わたしは……レミリアお嬢様だけの従者だっ……!!」

 しかし咲夜は鬼気迫る表情で私を睨みつけて言い放つ。

「ふふ、さあてそれがいつまで持つことやら……」

 私はナマズの力を強める。すると、咲夜は苦しそうにうめき声をあげながら必死に抵抗していた。

「ぐう……私……私は……! ほ、紅……いや! レミリアお嬢様……だけのっ……!!」
「ふぅん、まださからうんだ。だったら、ほら、これでどう?」

 私はより心を支配するためにナマズの力を十倍にまで上げた。

「うぐああああああっ……!!!」

 咲夜は白目をむかんばかりに目を上方へと釣り上げて苦しみの声を上げる。

「私は……紅美鈴の……従順で……瀟洒な……いや……ちがう……ちが……う……!!」

 咲夜はすんでの所で耐えているようであった。もうひと押しである。

「さぁ、これで終り。楽になりなさい」

 私がパチンと指を鳴らすと、咲夜さんの体内にいるナマズは荒れ狂ったように暴れる。それが、トドメだった。

「あっ……あああああああああああああああああああっ!!」

 咲夜はさっきまでの抵抗が嘘のように脱力し、目から涙、鼻からは鼻水、秘所からは尿を垂れ流す。そして、機械のように、無機質な声でその敗北の言葉を口にした。

「私……十六夜咲夜は……紅美鈴様にだけに仕える従順で瀟洒な従者です……」
「よくできました」

 私は咲夜の周りに黒い渦を発生させる。その渦が消えると、中から真っ黒なメイド服を来て、死人のように白い肌に紅く目を輝かせた咲夜の姿があった。
 もちろん汚れた部分は綺麗に拭き取り、怪我をした部分は回復させてある。

「気分はどう、咲夜?」
「はい、これまでに感じたことのないほどの力と喜びと快感に包まれた至高の気分です。ありがとございます、美鈴様」
「いいのよ咲夜、私だけの瀟洒な従者」
「このうけなき幸せにございます」

 咲夜はそう言いながら、銀髪をなびかせ瀟洒にお辞儀をする。

「あなたには私の力を与えた。あなたは人間でありながら、人間を超える存在となったのよ」
「はい、体の内から無限に湧き出る力を感じます。この力を否定した私が愚かしく思えます」
「ふふ、最初は皆そんなものよ」

 笑いながら話す咲夜に、私も同じように笑いながら返す。咲夜は完全に私のものとなった。もうレミリアのものじゃない。私のものなんだ!
 私はレミリアが傲慢にも玉座の間と呼んでいた部屋に入ると、部屋の奥にある豪華絢爛な椅子に腰をかけ、足を組む。
 いつの間にか、部屋には平伏した妖精たちが集まり、一様に頭を下げていた。

「くすくす、従順なこと。さあ始めるわよ咲夜。この幻想郷を、この太歳星君、紅美鈴のものとする異変をね」
「はい、美鈴様」


 我が名は紅美鈴、またの名を凶神、太歳星君。


 今、幻想郷史上最大の侵略の火蓋が、切って落とされた。
悪堕ちっていいよね、悪堕ちって
洗脳されて悪堕ちもいいけど、自分から悪堕ちするとか最高

次は映姫様を悪堕ちさせたい、主にエロい方向に。ラバースーツとか着せたい。
そして大ナマズ×美鈴が最近ジャスティスになってきた


どうでもいいけどセブン兄さんは無茶ばっかりしすぎだから少し自分を労ればいいと思うんだ
ナレン・フライハイト
作品情報
作品集:
15
投稿日時:
2010/05/05 15:48:19
更新日時:
2011/08/14 11:29:35
分類
紅美鈴
大ナマズ
十六夜咲夜
レミリア・スカーレット
悪堕ち
ゴース星人とパンドンは出てこない
今更ながらに誤字修正
1. 名無し ■2010/05/06 01:03:16
美鈴がダークサイドに目覚めた
咲夜さんを殺さないところが凄く素敵です

でもお嬢様は、殺されるのでしょうか?
2. 名無し ■2010/05/06 02:17:45
タグを見ていながら心のどこかで
パンドン登場を信じていた自分に腹が立つ

普通に楽しかったです。
次回作、もといラバースーツ期待してます。
3. 名無し ■2010/05/06 06:50:00
熱が90度位あるんですね。わかります
4. ぶーん帝王 ■2010/05/06 07:49:02
続編があるんですね
わかります
5. 名無し ■2010/05/07 22:08:02
勢いに乗ってパチュリーもスカ姉妹も従えるところまで妄想した
次回作期待してます
6. 機玉 ■2010/05/09 00:20:46
洗脳シチュも復讐モノも大好物です
次回作に期待させて頂きます
7. 名無し ■2010/05/10 05:57:30
良かったです
次回を期待してます!
8. 名無し ■2011/05/15 00:29:48
今更ながらすばらしい 是非シリーズ化していただきたい
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