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『東方落語【近日むすこ】』 作者: ぐう
「ばか」にもいろいろございまして、四十八ばか、百ばかなどと申しますが
これで「ばか」は、落語のほうではなかなかの大立物でございます。
玄関のドアを開けて、チルノは家へと駆け込んだ。
「ただいま大ちゃん、行ってきたよ」
「チルノちゃんどうだった?アリスさんの人形劇は次はいつ開催するって?」
「人形劇は明日やるみたいだよ」
「本当に?だって昨日やってたばかりだよ。アリスさんも他にすることがあるから毎日はできないって言ってたし」
大妖精の突っ込みも気にせず、チルノは自信満々に答えた。
「でも、アリスは近日にするって言ってたよ」
「チルノちゃん、近日っていうのは近いうちのことを言って、明日のことじゃないよ」
「えっ、そうだったの?」
「はぁ・・・」
チルノの早とちりに頭を抱えてため息をつく大妖精。
「あれ、大ちゃんどうしたの?頭でも痛いの?」
「うん、ちょっとね・・・」
その原因はほとんどチルノのバカっぷりに振り回されているからである。
しかし、優しい彼女はあえてそれを口にしなかった。
「あたいちょっと行ってくるね!」
「えっ?チルノちゃんどこに・・・」
大妖精が問うのも聞かず、チルノは一目散に家を飛び出した。
コンッコンッ!
「はーい」
それからしばらくすると、玄関のドアをノックする音がした。大妖精がドアを開けると、永琳が診察用の道具一式を持って立っていた。
「先生、どうしたんですか?」
「今永遠亭にチルノがきて、すぐにきてあなたを診てほしいって言ってきたの。どこか具合でも悪いの?」
「いえ、そんなことはないですけど」
「でも一応診察しておきましょう、もしかしたら何かあるかもしれないわ」
永琳に言われるがままに診察してもらう大妖精。しかしこれといって具合の悪いところはなく、永琳は異常がないことを告げた。
「何ともなくてよかったわね。じゃ、お大事に」
「お忙しいところ、ありがとうございます」
笑顔で去る永琳を、大妖精は頭を下げて見送った。
「もうチルノちゃんったら、確かに頭がちょっと痛いって言ったけど」
コンコンコン!
「だーいちゃーん!」
「わっ!こ、今度は誰!?」
少しすると再びドアをノックする音が聞こえ、外から彼女を呼ぶ声がした。
大妖精がドアを開けると、果物の詰め合わせが入った籠を持ったリグル、ミスティア、ルーミアの三人が立っていた。
「みんな、どうしたの?それにこの果物は?」
「今チルノから聞いて大ちゃんが具合が悪いって」
「それで私たち、みんなでお見舞いに来たの」
「具合は大丈夫なのかー?」
どうやら永琳に続き、チルノの早とちりを喰らったようだ。
「う、うん、大丈夫だよ。さっき先生にも診てもらって何ともないって言われたから」
「それならよかった」
「でも折角だから、これを受け取って」
「そ、そんな、それだとなんか悪い気がするよ」
「いいからいいから」
「あ、ありがとう、みんな」
三人に勧められ、大妖精はお見舞いの品を断ることができなかった。
三人はお大事にと声をかけ、家を後にした。
「ただいまー大ちゃん」
少しして、チルノが家に戻ってきた。
「ただいまじゃないよチルノちゃん!ちょっと頭が痛いだけなのに大げさだよ」
コンコンッ!
その次の日、再び玄関のドアをノックする音が聞こえた。
玄関のドアを開けると、チルノ以外のバカルテットとアリスが立っていた。
「アリスさん、それにみんな、一体どうしたんですか?」
「どうしたもこうしたもあなたが具合悪いってチルノが言ってたから、人形劇をここですることにしたのよ」
「そんな、お忙しいのに」
「いいのよ、私の人形劇で元気になってくれるのなら。それじゃあ準備に上がっていいかしら?」
「え?あ、ど、どうぞ・・・。みんなも上がって・・・」
『お邪魔します』
とりあえず四人を家の中に迎えると、大妖精はチルノを別の部屋に呼んだ。
「だからチルノちゃん!そこまでみんなに気をつかわせなくてもいいのに!」
「ごめんごめん。でもみんなもばかだよ」
「みんなもばかって?」
「だってあたいは昨日みんなに言ったもん。近日にやろうって」
おわり
スカネタが切れたので、久々の落語「近日むすこ」です。
落語を上手いこと絡めるのが難しいんですが、できるとなかなか面白いです。
江戸時代には落語の初日寸前になって金主が手を引いたり、俳優が役不足や給金への不満をとなえたりして、開演延期や中止になることがよくありました。
そこで、何月何日が初日となかなか決定できないために「近日開演」というビラを出すようになったそうです。
ぐう
- 作品情報
- 作品集:
- 16
- 投稿日時:
- 2010/05/17 03:07:16
- 更新日時:
- 2010/05/17 12:07:16
- 分類
- 落語
- 大妖精
- バカルテット
- アリス
- 永琳
- 台詞率高い
馬鹿だけど馬鹿すぎない、チルノはそんな感じだと思います。
>名無し(2)さん
だからこそチルノはみんなに愛されているんでしょうね。
このチルノは知識が乏しくても頭はそこまで悪くないのではないかと思いました。
そういった意味ではある意味サイキョーかもしれません。