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『霖之助と霧雨の話 第0話』 作者: ND
僕は、ある本を読んでいた。
それは、一昔前の本だった。
その本には、ある手紙が挟まれていた。
僕の大切な友達の残した手紙
話をしよう。
少し前の、大昔の
結界が張られる前のこの世界のお話を
森近
その男は、皆からそう言われていた。
その男は、音楽を弾いては
酒を飲んでいた。
僕は、まだ100歳前半の年
人間で言う12歳だった。
森近は、今日も酒を飲んでいた。
『白、あなたも飲んだらどうですか?』
白とは、この時の僕のあだ名のようなものだった。
理由は、白いからだそうだ。
『いえ、私はまだ妖怪では12もいってませんから。』
森近は、いつも笑顔で話をしている。
『そうか。つれないな。』
そして、神主はまた酒を飲み始めた。
『そういえばこの間、あなたの母君にお会いしたのだが、相変わらず変わらないな。』
森近は、冗談まじりでそう言った。
当然だ、母上は妖怪。
種族は分からないが、ぬらりひょんみたいな妖怪だ。と結構あいまいな答えを言われた覚えがある。
父上は、もう居ない。
父上は人間であり、もう60年も前にこの世を去ってしまった。
その時は、母上はとても悲しんでいた。
ちなみに、母上と父上がどうやって結ばれたのかと言うと、
まず、母上の一目ぼれだそうだ。
ちなみに、その時の母上は209歳。
外見は7歳にも満たなかった。
父上は、いつも
『もう少し大きくなったらな。』
と返していたらしいが、
それを言うたびに母上は泣きだしていた。
母上は泣きだしてしまうと手がつけられないのだと言った。
母上は、いつも子供で無邪気で我がままだったらしい。
妖怪だと知ったのは、知りあって3年くらいだったらしい。
父上がある時森の中で母上と散歩を無理やりされていた所を、
妖怪が現れたらしい。
その時に母上が、手足を暗黒化させ、妖怪を暗黒に飲み込ませ消した所から、
初めて妖怪だと知ったらしい。
その時、母上はもうこれで会えなくなるのだろうか、と思っていたときに、
父上は、
そんな母上に恐れず、感謝をしたことから、
もう完全に離れられなくなったという。
父上が言うには、
『ぶっちゃけ妖怪倒したこの後が怖かった…………。』
と言っていた。
はっきり言えば、僕は父親似らしい。
父上は母上とは対照的で読書を好み、幕府を守る侍だった。
長髪で、まげをしなかった事から変人扱いされていたらしいが、
銀髪は母上から受け継いだものらしい。
ちなみに、今の母の見た目は10歳だ。
ついに追い越してしまった。
『おい白。』
森近は、また僕の方を睨んだ。
『最近、私の酒の倉庫から酒を盗む泥棒が居るのだが、何か知らぬか?』
え?
やばい、全く聞いていなかった。
『おい、白。』
『ええ、それは許せない話ですよねえ。』
とりあえず、僕はその場をしのいだ。
その瞬間、何かひび割れる音が聞こえた
『ん?何の音?』
僕は、あたりを見渡し、外の方を見た瞬間
ちょうど横から霧雨が壁を突っ込んできた
『おい白!!居るなら居るってちゃんと言えよな!!』
この壁を突っ込んできたのは霧雨、という女性だ。
人間だが、かなり元気の少女で今年で13歳だと。
ちなみに、一番最初にこいつが僕のあだ名『白』を名付けた人物だ。
森近が霧雨の顔をわしづかみにしながら、睨み、喋った。
『霧雨さん、あなたはいつも障子やら窓やらをぶち破ってきますが、さすがに壁はないでしょう?壁は。
殴りますよ?ぶん殴りますよ?いえ、ぶん殴らせてもらってもよろしいでしょうか?』
すると、霧雨は少し泣きっ面で神主に反抗した
『うるせーやい!!てめーなんかに用はないんだい!!私に用があるのは白だ!!』
正直にいえば、僕は『白』というあだ名を全く気に行っていない。
不愉快だ。
僕は、霧雨が大の苦手だ。
それなのにこいつはいつも僕に会いに来ていた。
一度、土下座して 勘弁してくれ と言ったら、
≪断る!!!!!!!!≫
と断言された。
その後僕は泣いた。
泣きながら霧雨を殴った。
しかし、それ以来と言う物の、また僕にしつこくまとってきた気がした
『そうですか。また暴れたら困りますので、私が許す範囲で動いてください。』
森近はそう言うと、霧雨のポニーテールを掴みながら微笑んだ。黒く微笑んでいた。
霧雨は、痛そうな顔をしながら僕の方を見た。
『おい白!とっとと遊びに行くぞ!!』
やっぱりそれだった。
正直、霧雨と遊ぶ時はほとんど命がけだった。
一度、ごぼう&納豆地獄遊びで本当に死にかけた事があった。
もう思い出したくないので、思い出さない事にした。
『駄目です。今日は、白は私の手伝いをしてもらうのですから。』
森近グッジョブ。僕は心の中でそう思った。
『はぁ!?嫌に決まってんだろ!!てめえの仕事はてめえ一人でやりやがれ!!』
大体、返し言葉は決まっていた。
しばらく続いて、いつまでたっても承諾が出なかったら霧雨は泣き始めるのだ。
そして結局、僕は霧雨のおもちゃにされてしまうのだ。
しかしその日、今日は何かが違った。
今日は、特に危なくない橋の下と言う事で、僕は喜んだ。
やったーやったー!死ななくてすむぞー!!わーいわーい!!
そして虚しくなり、喜ぶのを止めた。
今日の霧雨は何かが変だった。
いつもより顔が赤いし、深呼吸もしていた。
『霧雨、風邪なら帰ったら?いや帰ってくれないかな?』
思わず本心が出てしまった。
その時、霧雨が僕の方を睨んだ、
僕は、少し後退してしまった。
しかし、霧雨は近づいて来た。
そういえば、霧雨に一度こういう遊びをやらされた事があった事を思い出した。
その遊びは、脱衣鬼ごっこ、
鬼は、逃げる人の服を脱がさなくてはいけなくなる。
大体は霧雨が鬼になるのだが、僕が鬼になっても困るものがあった。
だが、一度も僕が鬼になった事は一度も無かった。
僕は、地面を蹴りその場を去っていった。
『あっ!!おいコラ待て白――――!!!』
待てと言って待つ奴は見た事はない。
捕まったら犯られる。
マジで犯られる
僕は、恐怖心いっぱいで霧雨から逃げていった。
『待てっていってんだろこの野郎―――――!!!!』
僕は、人通りの村を抜けていった。
必死に必死に抜けていった。
僕は、いつの間にか森の中にいた。
ここで危険な事をやらされていたのを忘れて、いつの間にかここに居た。
僕は、そろそろ体力が限界になっていた。
もう撒いただろう。そう思って後ろを見たら、
目の前に霧雨が居た
『ぎゃあああああああああああああああああああああああ!!』
僕は、思わず叫んでしまった。
霧雨は、息を荒くしながら僕の両肩をつかんだ
『し………白………しろ………』
僕は、涙目になりながら顔が真っ赤な霧雨の顔を見た。
霧雨は、何も言わなかった。
というよりも、息切れから回復しようと待っていたが正しいかもしれない。
『霧雨…………?』
僕は涙声で、霧雨の名前を呼んだ
泣きながら。
霧雨は、真っ赤な顔をさらに真っ赤にさせて僕の肩から離れた。
僕が立ちあがると、
『ばっ……・…ばーかばーか!!!ばーか!!ばーかばーか!!』
霧雨はなぜか怒っていた。
その後、霧雨はポケットに手を突っ込んだ。
しかし、何かを取り出そうとしているが、なかなか手を外に出さなかった。
僕は、また何かやらされると思い、その場から逃げだそうとした。
しかし!回り込まれた。
そして服を掴まれた。
『白………………!!』
霧雨も少し泣き顔だった。
僕が一体何をしたと言うのだ。
僕は、必死に昨日の事を考えた。
確か昨日、霧雨から解放されたのは真っ赤な夕日が沈みかけた頃だった
≪明日も遊ぶからなー!!来いよなー!!≫
僕は、憂鬱になりながら、赤い空を見上げた。
ちなみに、現在はまだ朝方である。
『霧雨………!?』
なのに空は、
真っ赤に染まっていた。
『………!?おい白!!なんだこれ?!』
分かんないよ。そんなの僕に言われても微塵も分かんないよ
だが、間違いなく不吉な事が起こっている事は確かだった。
僕は夢中で霧雨の手を握り、赤い空から逃げるように
まだ赤くない空の方に向かって走った。
そういえば、どうして僕は霧雨の手を握っているんだろう。
まだ赤くない方の空に向かった。
そして転んだ。
転んだはずみで霧雨をぶん投げていた
『いっ………痛えなぁ!!コノヤロー!!!』
霧雨が怒っていた。当然だが
足音が後ろから聞こえた。
こっちに来る事が分かった。
足音がどんどん近付いて来たからだ
『ねぇ、そこのお坊ちゃん。』
女の人の声だった。
『え?』
僕は振り向くと、女の人は剣を振りまわして僕の手のひらを斬った。
手のひらに熱い、痛いものが走った
『あああああああああああああああああああ!!』
僕は叫んだ、痛い、痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
『ごめんなさい、あなた、なんだかとんでもない妖怪の血が入ってるみたいなの。』
とんでもない妖怪の血!?
『良く分かんないけど、なんだかとってもすごい妖怪みたいねぇ。』
霧雨は、怒って大声を出した。
『白に近づくなぁ!!もう近づいたら…………ブッ飛ばすぞぉ!!』
霧雨がそう言うと、女の人は剣を投げ、霧雨の顔の5センチ横の所に刺さった、
運が良かったらしく、霧雨には怪我が無かった。
『あ……………あああ………』
だが、霧雨は怯えていた、とても怯えきっていた
『あらごめんなさい。でもあなたも分かるでしょう?あの空が赤いのを、私、夕方が大嫌いなの。朝方にこんなに空が赤かったら、
きっと一日中夕方になってしまうわ。』
女の人がそう言うと、女の人はさらにこう言った。
『きっと、この子がやったのかもしれないわぁ。だから殺さなきゃぁ。』
霧雨は、大きな声で怒鳴った
『ばーか!!違う!!白はそんな事をする奴じゃない!!』
『だったら間違えたで済むじゃない?黙ってなさい?あなた。殺すわよ?』
その女は、妙な威圧感を出していた。
『ひぃ………!!!』
霧雨は、ほとんど泣き顔になっていた。
霧雨は、なぜか股間を抑えていた
『あらら、いい年してお漏らししちゃったわけぇ?やだわぁ。気持ち悪い。』
僕は、もう何がなんだか分けが分からなくなってきた。
『ひぃ…………白…………見ないでぇ…………』
霧雨は、今までの霧雨とは思えないくらい弱よわしくなっていた。
『あら、武器がもう無くなっちゃったわ。やだわぁ、私ドジっ子だから。』
女は、今の所武器が無いらしい、ならば今から逃げ
『しょうがないわぁ。なら食べちゃいましょう。』
女の口から、何か大きな蛇みたいな物が出てきた。
その蛇は、目が無く、口しかなかった。
その口は、僕の身長より出かかった。
霧雨は、その蛇を見て絶叫していた。
『いただきます』
女の人がそう言うと、
女の人は黒いものに包まれた、
そして出てきた。
『死ね』
聞き覚えのある声が響いた。
その声は、
『りんちゃん、怪我してるね。今からお母さんがぶっ殺してあげるからね。』
母上の声だった。
『何?』
女の人が母上に語りかけた。
しかし、母上は何の返事もせず女の人の首筋を蹴っ飛ばした。
女の人はぶっ飛んだ。
『痛いわね。何をするのよ?』
『りんちゃんに怪我させたね。皮膚をひっぺはがしてやる』
母上は、いつになくキレていた
『ああ、なるほどあんたがこの空を赤くしたんだね。』
『違うよ、私は赤くするんじゃないよ。黒くするんだよ。』
母上は、女の人をさらに黒いもので包んだ。
女の人は、その黒い物を食べた、
『ふぅん。』
母上は、今度は黒いもので物質、金づちを作り、女の人にぶつけた。
その黒い金づちは、女の人をどんどん食っていき、ついには無くなってしまった。
首だけしかなくなってしまった。
そして、母上は僕の方を見た
『りんちゃ〜〜〜〜ん。』
母上は子供のような無邪気の声で僕の方に走り寄ってきた。
とてもこの人が母上とは思えないほど子供じみていた。
なので、周りからみると僕たちは兄妹にしか見えないだろう。
外見はほとんど10歳くらいの少女だからか、
この人が僕を産んでくれたとはとても思えなかった。
だが、走り寄って来る事を拒むように、
それはやってきた。
謎の壁が僕の前を通り過ぎた。
その壁は、触れると反発し、指が折れてしまった。
『りんちゃん!!!』
母上は、僕をかなり心配そうに走り寄ってきた。
だが、この壁を通り抜ける事はできなかった。
『白ぉ!!!』
霧雨が、僕の方を見て叫んだ
霧雨も壁の向こう側に居たのだ。
母上は、この壁を破ろうと無理やり手を突っ込んだ、
だが、壁をそれを拒むように母の手を蝕み始めた、
肉が削げ、僕の元に来たのは母上の腕の骨だった。
その骨も、すぐに砕けて消えてしまった。
『嫌ぁ………りんちゃん……………嫌ぁ…………。』
母上は、子供が泣きじゃくるように泣いて、僕の所まで必死に壁の力に抵抗した。
しかし壁はそれを拒み、母上の体をどんどん蝕んでいった。
腕が取れ、皮膚が削げ、骨が皮を突き破った。
しかし、壁の力は弱まらなかった。
一定の力で母上を蝕んでいるようだ。
『あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!』
母上は、壁を突き破った。
だが、壁はすぐに埋まってしまった。
壁を通り抜けた母上の姿は、
人の形も、妖怪の形もしていなかった。
『りん…………ちゃん……………りん………………ちゃん………………』
母上は、そんな形をしてでも僕の事を呼んだ。
僕は、泣かなかった。
いや、泣けなかった。
いきなりの事で、なんのことか全くわからなかったからだ。
霧雨は、僕の方を見て泣いていた。
結界が霧雨をはじいて、僕との距離を離れさせていた。
霧雨が何かを喋っていたが、何も聞こえなかった。
そして、その壁はしだいに濃くなって
何も聞こえなくなった。
そういえば、霧雨がポケットから出そうとしていた物、
僕はとっさに自分の命を守るかのようにそれを一瞬で奪っていた。
それはただの紙だった。
いや、僕はまだ詳しくは見ていないので分からなかった。
森近もこの結界の奥に居る。
僕は、この結界の境の
友達が居ない方に来てしまったのだ。
母上は、バラバラの姿で、でもまだ生きていて。
僕に必死に近づこうと、少しずつでも動いていた。
『リン…………ちゃ…………・………リ…………ン…………』
僕は、母上の所に歩み寄った。
母上は、嬉しそうな顔をした。
そして、悲しそうな顔をした
『ごめ…………ん……………ね…………ご…………め…………』
母上は泣いていた。
バラバラになって、顔だけが動いていた。
僕は、信じたくなかった。
母上は 死ぬ
僕は、いつの間にか泣いていた。
母上も泣いていた。
『り………ん……ちゃ………ん…………』
母上は、僕をなだめようと必死に僕に近づこうとしていた。
だが、頭しか無くなった姿では、どうしようもできなかった。
このままでは、本当に母上は死んでしまう。
僕は、ある所に向かった。
幸い、この結界はあの所も囲んでいた。
父上の墓
僕は、母上の頭を父上の墓の上に置いた。
母上は、墓の上に置く前にもう死んでいた。
走っている途中で、僕はずっと泣いていた。
ずっとずっと泣いていた。
しかし、
母上の頭が、父上の墓を見て
少し、笑っていた。
笑顔になっていた。
しかし、笑顔になっただけだ。
そのまま、母上は完全に動かなくなっていた。
僕は、完全に一人になってしまったのだ。
霧雨からもらった一枚の手紙
読む気にならなかった。
破り捨てようとしたが、
それが唯一の友達の遺品だったため、
どうしてもできなかった。
霧雨が伝えたかった事
それはなんだろうか。
森近が手伝ってほしかった事、
それもなんだろうか。
僕は、後悔と無念で一杯で
何も考えられなくなった。
街に向かうと、
霧雨の実家は囲まれていた。
その家を見ると、
僕の胸は痛んだ。
霧雨の姉が旦那と子供と一緒にそこに居るが、
僕はどうしてもそこに近づけなかった。
霧雨の姉は、妹の方とは違ってとても優しいのに
旦那さんも、優しくてとても大好きなのに
今は、会いづらかった。
目を合わせられなかった。
そして時間が経ち、妹は結界の外に居ると知った霧雨の姉は、
嘆き、悲しんだ。
僕は、もう霧雨の姉に合わせる顔は無かった。
僕は、心の中で彼女の別れを告げた。
もう二度と合わない と
あれから、かなりの時間が経った。
霧雨の姉も死に、その子供も死に、
霧雨家は、一人息子だけが残った
その日から手紙の存在など一切忘れていた。
いや、前に一度見たが忘れたと言った感じだった。
その手紙を改めて見て見ると、
その手紙には、こう書かれていた。
≪友達から友達以上にしてやる!!≫
よく意味は分からないが、
僕は、この手紙を見るたびに結界が貼られる前の思い出を思い出す。
母も父も居ないこの世界では
『おい白妖怪!!本ばかり読んでねえでちょっとこっち来いよ!!』
友達と呼べるものができた。
霖之助と霧雨の親父さんのお話の第0話です。
この話は、コレ以降はほとんどの女性キャラは出てこないと思ってください。
いや、少しは出ますけどね。
あと、1話1話、話が違うギャグ漫画のような方針で行きますので、
よろしくお願いします。
ND
作品情報
作品集:
16
投稿日時:
2010/05/26 12:37:42
更新日時:
2010/05/26 21:37:42
分類
霖之助
霧雨
母
これからも期待してます