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『最後のイヴ』 作者: ND

最後のイヴ

作品集: 16 投稿日時: 2010/06/04 08:38:20 更新日時: 2010/06/04 17:43:47
西暦2579年、霖之助さんが死んだ。

誰かに殺されていた。

私は、その霖之助を殺した妖怪を捕まえた。

殺した理由は、腹が減ったかららしい。

私はその妖怪を容赦なく殺した。

そして妖怪の餌にしたのだ。

だが、私の気持ちが晴れる事はなかった。

私はそれ以来、部屋に閉じこもりがちだった。

だが、幻想卿をまとめている私が鬱状態になっている事で、結界にも影響が及んだ

私の負の成分を含んだ結界は、幻想郷の生物に害を与えていた。

気づけば幻想郷の生物は全て絶えていた

霊夢も魔理沙もかなり昔に亡くなっているため、この異変を食い止められる妖怪も人間も居なかったのだろう。

私は独りぼっちになっていた

この幻想郷で一人、



気づけば、周りの建物には苔が生えていた。

今は西暦何年だろうか。

もう200年くらい経っているのではないだろうか。

私はその長い時間、ただただ座っているだけだった。

皆は塵一つ残らず消えている事が分かった。

今生きているのは、私だけでなく植物も生えている事がわかった。

だが、植物は何も語らない。

私はさびしかった。

霖之助さんをからかっていた時期が懐かしかった。

思い出せば思い出すほど、涙が流れ続けていた。

どうしてこんな目に会うのだろうか。

だが、たとえ妖怪でも半妖でも寿命は来る。

どんなに生きても寿命の端が見えない自分を恨んだ

私は変わり果てた幻想郷の中をただ歩き回る生活が続いた。

43代で絶えてしまった巫女の神社も、もうすでに緑色になっていた

さらに歩いて行くと、香霖堂が見えてきた。

私は、無意識のうちにその香霖堂の中に入っていった。

だが、それは毎日の事だった。

私は、霖之助さんが座っていただろう椅子に腰をかけながら本を読んだ。

7世紀も昔の本だが、私はこの本をずっと読み続けている。

正しくは霖之助さんの日記を読んでいた。

読むごとに、美しい記憶が私の中に入っていく気がしたからだ。

だがその日記も、もう読みつくしてしまった。

それで私はまた憂鬱になってしまった。

私は、霖之助さんが良く行く無縁塚に向かった。

この荒れたゴミだらけの塚は、いつのまにか不思議な物で溢れかえっていた。

その中に謎の物体がうごめいていた

『ギ………ギギ……ガ………』

やがてその物体は動かなくなった。

私は、その物体に少し興味を持ち、その物体を家に持ち帰った。




その物体は電気を通せば動きまわると言うロボットという物だと分かった。

霖之助さんの店にあった本を読んだのだが。

その本を読むには、人間にかなり近い動きが可能だそうだ。

声を出す事も、人工頭脳という物で考えたりすることもできるらしい。

これは最も人間に近い物体なのだと感じた。

死んだ人間には魂を植え付ける事はもう不可能であるが、

人形や石など無機物に魂を植え付ける事は可能だった。

そのロボットに魂を植え付ければ、霖之助さんの魂を植え付ければ

また霖之助さんと話ができるかもしれない。

私の中に一つ光がさした。

だが、そのロボットはもう動かない。

叩いても揺さぶっても動いてくれなかった。

1から作り直すしかないのだろうか。

私は、そのロボットを解体した。

外すのは簡単であった為、中を見るのは簡単なのだが、

その中はかなり複雑であった。

人間の筋肉のように一本一本細く、第一関節から第2関節までの電線が1423本あった。

人間よりなめらかにうごきまわるであろうそのロボット。

そのロボットを作り上げた人間は少し引くくらい努力していた事が分かる。

だが、私はあきらめなかった。

人間にもできるなら私にもできるはずだ。

私は、まずさびている電線の銅を取り出し、新しい銅を探すべく

いろんな所を回った。

だが、どれもこれも錆びていた。

私は絶望したが、あきらめなかった。

銅の錆を削り、さらに細くした。

それをゴムの中に入れ、それぞれつないでいた。

一つの腕を修復するのに4週間もかかった。

さらにもう一つの腕を治すのにも3週間はかかった。

全てをつなぎ通すには、6ヶ月もかかった。

これで完全に修復した。

私の忠実な執事ロボットができあがった。

だが、これで満足ができるはずがなかった。

そのロボットの顔、体系を帰る必要があった。

まずは顔、

顔を外すと、さまざまな表情が現われるように工夫した電線、スライムがあった。

いや、スライムにしては堅すぎるかもしれないけど。

私は、そのスライムを様々な形に変え、霖之助さんの顔に近づけさせた。

髪の毛も、脱色して似たような髪の色にさせた。

あとは服だ。

形見として取っておいた服も、200年近く経った今では埃だらけで破れていて原型がなくなっていた

私は、霖之助さんの服を作るべく町に向かった。

だが、どこに行っても苔だらけの店しか無く、糸も弱々しくなっており、触ると千切れてしまう。

私は、いろんな所に行った。

幻想郷の端っこ

森の中

神社の中など、

だが、それらしきものはどこにもなかった。

見つかったのは綿だった。

家の中にあった布団の綿などは、まだ白い所を抜き取り、結構な量ができた。

着色などは、そこらの花から取ったりなど

そんな事を繰り返し、服を作っていった。





その服は、7ヶ月もかかった。

だが、やっと完成した。

私は涙が出た。

霖之助の臭いはついていないが、まさしく霖之助さんの服だ。

私は、その服を霖之助のロボットに着せた。

それはまさしく霖之助だった。

私の目の前に霖之助が立っていた

私は無意識に涙が出ていた。

今すぐにでも動かしたかったが、スイッチは抜き取ったのだ。

魂を定着させるには、電源スイッチなど邪魔だったからだ。

自分の意志で動かせる電気や電線等、体があればいいのだから。

だが、動かせないようにした過去の自分を私はどこか恨んでいた。

しかし、本物の霖之助に会いたい。これは変わっていなかった。

私は、すぐに霖之助の魂を定着させようと儀式を始めた。

円陣を描き、その真中に霖之助を立たせた。

そして円陣が光を放ち、霖之助ロボットが痙攣しはじめた。

その状態がしばらく続き、しだいにその光は弱まっていいた。

霖之助ロボットに動きは無かった。だが、そう思った矢先に

『あ………………』

霖之助ロボットは動き出した。

成功した!!

私は喜びを隠しきれず、霖之助の元に駆け寄った。

だが、霖之助ロボットは倒れた。

何事か、そう思って霖之助ロボットに触ってみると

何もかもが動いていなかった。モーターも

つまり、死んでいるのだ。

何がおかしかったの!?

私はそう疑問に思ったが、それ以上にまた霖之助を殺してしまった悲しみに包まれ、

その場で泣き崩れてしまった。







しばらく時間が経ち、

何が間違っていたのか調べてみると、

ロボットの方は完ぺきだった。

ならば、魂を定着の仕方が間違っているのだ。

私は、その仕方を調べてみると、

≪妖力が弱ければすぐに亡くなってしまいます。ただし、ずっと定着し続けることも不可能です。
最高でも15日しか定着させることしかできません。≫

と、本に書かれていた。

私は絶望した。

15日………………

たったそれだけの期間しか霖之助さんと一緒にいられないのだ。

あれだけの妖力を送っても1秒も生きられなかったのだ。

15日分となると、それだけの妖力を使ったら、もうそれ以上妖力を使えないだろう。

つまり、それだけ使うと霖之助さんの魂をまた定着させるのは不可能になる。

それだけは嫌だった。

深く悩んでいるとき、私は一つ思いついた。

『そうだ、私も死ねばいいんだ。』

その考えを思いついた時、どうやって死ぬか考えた。

霖之助さんの目の前で死んだら、霖之助さんは悲しい死に方をするだろう。

それだけは嫌だった。

また深く悩んでいるうちに、また一つ提案をした。

『時間が経てば心臓に傷を付けるようにする機械を作ろう。』

そう思いついた時は、さっそくその機械を作り始めた。

霖之助ロボットを作る事があまりにも難しかった為、今回の機械は簡単に出来た。

自分を殺す道具

考えると恐ろしいが、私はこれが救いの機械に見えた。

私は、その機械をセットするために胸の谷の間にナイフを突き刺した。

痛くて叫んでしまった。

だが、私はえぐり続けた。

もうこれ以上愛する人が死ぬのを見るのが嫌だから

私は斬り続けた

だが、あまりやりすぎても心臓に傷が付き、死んでしまう為

今度は手で傷を広げることに決めた。

傷口に触れたら物すごく痛い事は分かっていた。

だが、私は傷口をえぐり続けた。

辺り一面が血だらけになった。

私の手から肘までは、真っ赤な血に包まれていた。

やっと肋骨が見えてきた。

私は、その肋骨をどうしても折る事が出来ず、

肋骨の上からその機械を突き刺すしかなかった。

心臓がその機械を突き刺したのが分かった。

早く治療しないと、心臓から漏れている血で失血死するだろう。

血の流れが悪くなっているのを感じた。

私は、その傷口を治す為、治療術を使った。

みるみる傷口はふさがっていくが、

機械は回復している肉に包まれていった。

まだ心臓に突き刺さったままだった。

だが、心臓の細胞も再生していき、その機械を包み込んでいた

これで時間が経てば私も死ぬ。

機嫌は15日だった。











私は、また儀式を始めた。

治療したばかりなので血が足りない気がするが、

贅沢は言ってられなかった。

私はあと15日で死ぬ。

霖之助さんも15日しか生きられない。

私は、霖之助さんを生き返らせるべく霖之助さんをまた円陣の真ん中に置いた。

今度はフルパワーで霖之助さんに妖術を送り続けた。

だが、体に血が回らない為なかなかうまくいかなかった。

一瞬頭がふらっとした。

だが気を抜いてはいられなかった。

絶対に成功させたい。

私は妖術のほとんどを霖之助さんに送った。

霖之助さんの体がものすごい揺れていた。

だが、私はおかまいなしに妖術を送り続けていた。

私に吐き気が襲ってきた。

だが、耐えた。

こんな事で中断するわけにはいかなかった

傷口から血が流れていた。

激痛が胸に襲った。

だが、私は負けずに儀式に集中した。









儀式開始から1分

円陣の光が弱々しくなった。

そして円陣の光は無くなった。

私は霖之助さんの元にかけよった。

だが、霖之助さんは急に倒れた

また失敗したのだろうか、

私は、機械に挟まれた心臓が激しく動いているのを感じ、霖之助さんの顔に近づいた。

そしたら霖之助さんは、寝息を立てていた。

とてもかわいらしく、静かな寝息を立てていた。

成功だ

私は霖之助さんを抱き上げた

『霖之助さん………私がんばったよ…………』

私は霖之助さんを全力で抱きついた。

ずっと…………ずっと………………














儀式終了から30分が経過

霖之助さんをソファーで寝かした。

ベッドで寝かすよりも、こっちの方がかっこいいと感じたからだ

もうすぐで霖之助さんと話ができる。

もうすぐで霖之助さんと二人きりになれる

もうすぐで もう 一人じゃ無くなるんだ

私は、ニヤニヤしながら霖之助さんの顔を見た。

今なら霖之助さんの顔にキスしても大丈夫だろうか?

私は、霖之助さんの顔に顔を近づけた。

そして、唇と唇が重ねあった時、私の中が熱くなった。

顔が赤くなっているのを感じ、私は壁まで走っていった。

心臓がドキドキしている。

ドキドキするごとに機械が食いこんで痛い

でも私は、今とても幸せだった。

霖之助さんが起きたらどんな事をしようか

霖之助さんが起きたらどんなお話をしようか

記憶はどのくらいまで覚えているだろうか。

そんな事を考えながら、私はコーヒーを入れ

窓の方に佇んだ
『最後のアダム』の第0話的な話です。
紫が霖之助を作るまでの過程を作っています。
また、これは最後のアダムのネタバレであるため、まずは最後のアダムを見る事をお勧めします。
ちなみに、なぜ【最後のアダム 第0話】とかにしなかったのかと言うと、
なんだか かっこ悪いからです。
ND
作品情報
作品集:
16
投稿日時:
2010/06/04 08:38:20
更新日時:
2010/06/04 17:43:47
分類
霖之助
最後のアダム
過去
1. 名無し ■2010/06/04 18:13:33
異常なまでに少女臭のするゆかりんですな
2. 名無し ■2010/06/05 16:53:38
あなたはまさかじゅn…まさかね…
3. ND ■2010/06/06 09:20:14
じゅ?
あの………じゅってなんでしょうか?
潤さんでしょうか?
あの人のssは面白いですよね。少し影響されているものがありますよ。
似てると言われるとアレなので少しですけど。
4. 名無し ■2010/06/07 16:10:21
紫まちな
5. 名無し ■2010/06/15 02:41:00
なんだかこのゆかりんぷにぷにしてるな
少女ゆかり(笑)
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