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『空白の時間 協力の果てにあるもの……』 作者: 殲滅戦型殺戮人形S
「宜しかったのでしょうか?」
「なにが?」
「あの様な事を承諾してしまって。」
「咲夜は私の決断に不満でも?」
「いえ……お嬢様が良いと仰られるのであれば、私は反対しません。」
「宜しい。では直ちに行動に移せ。」
「わかりました。」
廊下を歩くレミリアは不敵にも笑みを浮かべていた。
レミリアは内心楽しくて仕方が無かったのだ。
なぜなら、風見の言い分が正しければ、紫の世にも珍しい謝罪風景を拝められるからだ。
つい先程、風見との共闘を誓い、今後の対策を踏まえて会議が開かれた。
内容としては、情報収集や陣地などの件は全て紅魔館が担当し、風見を館内の最深部付近に配置し、
紫に気配を探られるまでの時間稼ぎをして貰う。
風見は引き篭もるのには反対したが、橙の死体は紫と最近仲の良い永琳に死因の調査を依頼されており、
疑惑をかけられている風見が行けば、いらぬ誤解を受けるうえ、場合によっては紫が殺しに来るだろう。
そこで、死体の調査には咲夜を向かわせパチュリーも行かせる事にした。
パチュリーは最初断固拒否してきたが、目の前で大事にしていた本に火を付けようとしたら、あっさり承諾してくれた。
こうして、紅魔館と風見幽香という変な組み合わせによる長い闘いが始まった。
「あら、あなたは紅魔館のメイドさん、それに……誰だったかしら?」
「パチュリーよ。」
「あなたとは初めてお会いしますね。永遠亭にようこそ。ここで医者をしている永琳と言います。」
「ご丁寧にどうも。早速だけど、先刻連絡した通り死体の解剖を見学させて貰うわよ。」
「随分急いでいるのね。まぁ紫からも早急にお願いと言われているから、今すぐにでも始める所だったわ。」
永琳は鈴仙を呼び、二人を案内するよう命令した。
「では、こちらへ。」
「永琳は一緒に来ないのかしら? すぐに始めるんじゃなかったの?」
「少し待っていてください。準備やらで時間が掛かりますので。」
そう言いつつ、永琳は何処かへ行ってしまった。
「準備ぐらい済ませておけば良いのに……。」
待つのが苦手なパチュリーが誰にとも無く愚痴を零す。
「師匠がなぜ手元に手術用や解剖用の道具を置いておかないかご存知無いですか?」
突然、鈴仙が話しかけてきた。
「分かるわけ無いじゃない。」
咲夜も私の返答に続いて頷く。
「何年か前に重症の状態で担ぎ込まれた人間がいました。
師匠は怪我人、病人であれば人間だろうと妖怪だろうと関係ない人で、その時もその人間を快く受け入れ、
早速手術に入りました。
手術が始まって少し経った頃、薬品が少し足りないのに気づき、いつもなら私に持ってこさせるのに、
すぐ戻ると言い残し薬品を取りに行ってしまいました。私も手術開始から集中しっぱなしだったので、
しばし患者から目を離し師匠が戻るのを待っていました。しかし、それがあんな事になろうとは……。」
「鈴仙、準備が整ったわ。早速始めるわよ。」
いつの間にか永琳が様々な道具を持ってやって来ていた。
話が途中で終わってしまったが、鈴仙は今まで話していた事が無かったかのように永琳の手伝いに回った。
「ねぇ、咲夜……。」
パチュリーが二人に聞こえない程度の声で咲夜に話しかけてきた。
「パチュリー様。先程の話が事実だとしても、今の私たちには何も関係の無いことです。」
咲夜はそう言い放ち、パチュリーが言おうとした事を遮ってしまった。
「では、解剖を始めます。」
そこにあるのは、一つの机に二つの椅子。
既に片方の椅子には先客がいた。
「遅かったのね。」
目の前で椅子に座っている人が言った
「遅くなんかないわよ。あなたが早すぎるのよ、何でもかんでもね。」
私は多少苛立っていた。 思い通りにいかないとか、そんな事で怒っているのではない。
自分がいつ裏切られ、殺されるか分からない状況に恐怖を抱いているのに苛立っているのだ。
「そう警戒しないでよ。別に取って食いやしないわよ。」
嘘だ。コイツは最大限まで使用して使えなくなったら切り捨てる気だ。
度重なる苦痛の中で私は人を信じられなくなっている。今まで信じこられた仲間も信じられない。
いわば疑心暗鬼に陥っている。
だが、私は目の前の人物に従わなければいけない。
「これが、今回の調査の資料よ。」
私は、束になった紙を机の上に投げ捨てた。
「そう……で?」
「……。」
「ここで、だんまりは無いでしょ。」
私は正直迷っている。
これが正しい事なのか?
自分が生きたいから他の人間を裏切ることが?
それで良いのか?
自分の名誉、尊厳、信頼それ等を全て捨ててでも、生きたいと思う自分。
それが駄目だと理解し、止めようとする自分。
数多の考えが交差し……
「紅魔館の主、レミリア・スカーレットが風見 幽香と同盟を組んだそうよ……紫。」
私は、大事な友人をたった一言の言葉で捨てた。
その時の紫は不気味に微笑んでいた。
「フラン? いるかしら?」
レミリアは紅魔館の地下にいた。
薄暗い景色の中に、ただ一点のみ明るく光る部屋が一つ……フランドールの部屋だ。
「お姉さま。何か御用?」
フランは敬語を使ってはいるが、レミリアに敵意剥き出しである。
無理も無い。自分をこんな薄暗くて詰まらない場所に放り込んだ張本人が目の前にいるのだから。
「手を貸してくれないかしら? 今の私にはあなたが必要なの。」
「ふ〜ん……で? 私には何か報酬とかは出るの?」
「私が、やれと言った事をやってくれれば、何でもしてあげるわ。」
「前払いはないの?」
その質問は、持ってきたクッキーで黙らせ、早速本題に入ることにした。
「まず、あなたには外に出てもらうわ。勿論この紅魔館の敷地外ね。」
「え? 外に出ても良いの!?」
フランは喜んでいた。 直射日光こそ私たち吸血鬼の天敵だが、やはり地下に居た時間が長かったせいか、
外に出れるという事が、自分の誕生日が来るのと同じくらい嬉しい事だったりする。
「ええ。けれど、一つ条件があるわ。」
フランはクッキーを齧りつつ、耳を傾けてくる。
「フラン。あなたには、外である場所を破壊してきて貰うわ。 相手が抵抗するなら皆殺しにしても良いわ。
あなた、最近地下に篭りっ放しで体が鈍ってるでしょ? それに溜まった鬱憤もそこで晴らしてきなさい。」
フランは最初驚いていた。 いつもなら、何も壊すな、殺すな、
と口うるさかったレミリアが今までとはまったく逆のことを言ってきたからだ。
しかし、正直イラついていたのもあったし、久しぶりの外出だ。四の五の言わずに承諾した。
紅魔館地下深くにある一つの部屋で笑う二人の姿が、そこにあった。
二作目です。
前回の一回ごとの量が少ないとのご指摘、ありがとうございました。
長くしたいんですが、時間が余りなく。
これくらい……もしくは、これの更に二倍程度の量しか進められないんです。
今回で話のプロローグ的な物が終了し、次から本編的な物が始まります。
その時までには、もっと多い量で投稿できるようにしておきます。
殲滅戦型殺戮人形S
作品情報
作品集:
16
投稿日時:
2010/06/05 23:31:29
更新日時:
2010/06/06 08:31:29
分類
レミリア
咲夜
幽香
紅魔館
永遠亭
バックアップにもなりますし
面白そうな雰囲気なので期待