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『魔理沙の西洋風丸焼き 特製和風ソース漬け』 作者: おにく
※キャラ・設定改変
湖は霧につつまれ、地平の先が隠れてしまった。
数日前から続く異変であり、魔理沙が出会った久々の異変である。
あいつが動きだしそうな事案だと、魔理沙は思った。
好奇心半分をもって、少し覗いてみようとした。
それが人生で一番致命的で、取り返しのつかない間違いの始まりとなるとも知らずに。
☆
赤き霧が広がり始め、日光を遮り、夏の気温がわずかに和らいでいる。
紅魔館の主、レミリア・スカーレットは赤き霧を撒くことでわずらわしい日光の害を追い払ってしまった。
うっかりものの妖精メイドがカーテンを閉め忘れるだけで苦しむはめになる、吸血鬼とは難儀な種族だ。
レミリアはその自室の大きな、身長の三倍はあろうかという大きさの窓から朝の庭園を眺めていた。
昼間にこんなことができるのも、この霧のおかげ。
血液と赤ワインのカクレル「不夜城レッド」、チェリーの浮かんだグラスをそっと傾ける。
窓の外では花火のようなものが広がり、四方八方にきらめいていた。
変則的に輝くそれば花火のようで花火ではない、弾幕勝負の様子である。
霧の異変にさそわれて、今日もまた一人、客人が訪れたようだ。
「異変って面白いわ」
霧を撒いてから、血の気の多い客人がよく訪れるようになった。
おとといの戦いは特にスリリングだった。咲夜を下し、レミリア本人の部屋まで乗り込んできたのである。
世にも恐ろしい吸血鬼の館、いつもなら泉の妖精すらあまり近寄らないような所だ。
霧が客人を呼び寄せてくれるというのは、退屈を持て余すレミリアにとって面白い副産物となった。
レミリアは頬杖をつき、スペルカードのきらびやかな光へ頬笑みをたたえていた。
☆
「うわあっ」
とんがり帽子に火がかする。
氷の妖精を撃ち落とした霧雨魔理沙は館の門番の弾幕から逃げ回っていた。
「弾、出過ぎなんじゃないか……、おかしいだろ……」
中盤ステージの肉厚な弾幕は、既に魔理沙の手におえる物ではなかった。
弾が多いのは恐ろしいといって、避けすぎればかえって余裕をなくす。
あつあつに熱い虹色の弾が体をグレイズしてゆくことは、魔理沙の恐怖心をますます煽っていた。
魔理沙の目の前を赤白い弾が通り抜ける。
くるくる回転しながら直進する、乗用車のように速く火花を飛ばした弾だった。
高温の火の粉が鼻の先をしゅっと焼く。
「つっ、マスタースパークっ!」
腕の中の八卦炉から光線が飛び出し、弾を大きく巻き込んでいった。
しかし門番の姿は捉えられていない、弾消しだけのマスタースパークだった。
恐怖する魔理沙の目は弾ばかりを追いかけて、既に敵の姿を見失っている有様。
魔理沙のボムは勝利に対して何の成果もあげられないまま無くなってしまうこととなった。
(冗談じゃないぜ、冗談じゃないぜ……)
魔理沙の下方から弾が飛び込んでくる。腿の肉が焼ける感覚に魔理沙はうめき声を漏らした
魔理沙の体には傷ばかりが付いて、形勢逆転の見込みは無い。
そもそも臆病な所があるのか、弾幕の避け方が大味でへたれだった。
まだまだ経験不足なのである。
(逃げよう)
魔理沙は汗ばんだ掌で箒を握りなおす。
汗ばみ熱くなったふとももでしっかりと箒をしめる。
勝ち目のない戦いなんてまっぴらごめんだし、妖怪なんかに捕まったら何をされるか分からない。
一目散に逃げて、お家にこもって、こんな恐ろしい弾幕のことは忘れよう。
しかし魔理沙は意識していなかった。
戦いで一番死人が出るのは敗軍が撤退するその時であるということを。
「喰らえっ!」
紅魔館に尻を向けた魔理沙に弾幕が降り注いだ。
後ろからの弾幕などなかなか避けられるものではない。
真っ赤に煮えたぎる弾幕が、魔理沙の背中に火をつけた。
「う、うわああぁあぁっっ!! 熱いっ! あついぃ!」
火は服から下着を経由して背中を焦がせ、肉の脂は余計に火を強くした。
たまらず魔理沙は箒から両腕を離し、服を脱ぎ払おうとする。
「熱い、熱い熱い!!」
魔理沙は必死だった。とにかく服を脱がないと大やけどである。
しかしその必死さで箒乗りに必要なバランス感覚を失っていた。
「えっ、あっ、うわっ!」
両腕を離した魔理沙が落ちてしまうのは早かった。
背中から煙をあげた魔法使いは庭の草むらへと墜落していった。
草がふかふかのクッションになってくれたので魔理沙はなんとか死なずに済んだが、魔理沙は地面にまっすぐ落ちる恐怖で気絶、
そのどろわの中から黄色くツンと張った臭いの液体がじょろじょろと漏れ出てきてしまった。
幸い落ちる際の風圧で火は消えたが、服の背中に大きな穴があき半脱ぎ状態で腹が丸出し、
よっぽど怖かったのか顔は涙とはなみずでべちょべちょ、とっくに卒業したはずのおもらしで
スカートもエプロンもどろわを汚してしまっているという、なんだか情けない格好になってしまっていた。
「ああー、ちょっとやりすぎたかな」
墜落点に近づいた美鈴の感想がそれだ。
風に煽られ換気扇の回ってないトイレのような尿臭さが漂ってくる。
草をかき分けて近づくと、撃ち落とした獲物を持ち上げてみる。汚いので腕の部分を掴みながら。
(そういえば咲夜さんが肉が足りないって言ってたっけ)
紅魔館に害を与える不届き物はみんな肉である。
あらためて魔法使いの体を見直す。
哀れな姿だが、一応息はしているらしい。
外傷はそれほど深くなさそうだ、唇に手をかざしてみると生温かい息の感触がした。
(まずは下着を脱がさないと……、ってスカートも汚れてる、服もぼろぼろだし全部取っちゃうか)
こんな汚い格好のまま持って行く気にはなれない。
どろわを剥くと、さわりごこちの良さそうな白い桃尻がぷるりと現れる。
服は美鈴の腕力でびりびり破かれ、帽子も脱がされ、魔理沙はほとんど丸裸になってしまった。
比較的清潔であった帽子をタオルがわりに股の部分をぬぐってやる。
抱えてみれば意外と小さく、軽い人間だった。
☆
メイド長が両手いっぱいの野菜を買い込んだのは、お嬢様が日光で苦しめられなくなることを祝うためであった。
彼女の主人レミリアが紅い霧で太陽光を遮った、夏まっただ中のその日のことだった。
「ああ、霧があんなに濃い」
折角レミリア様が日の光に煩わされないようになったのだから、昼間から立食パーティーを始めよう。
そう提案したのは他ならぬメイド長で、朝早くから買い出しに出かけるほどに、とても張り切っていた。
「新鮮な人肉がもっとあれば良かったのだけれど……」
妖怪、もちろん吸血鬼も大好きな人間の肉、外からの迷い人間もなかなかないから新鮮なものは意外に確保しにくい。
肉の在庫は多少あったが、レミリア様のカリスマのためにも沢山用意して豪華な祝宴にしたかった。
肉片があわせて人三頭分ぐらいしかなかったから、あまり沢山ふるまうと在庫が無くなってしまう。
吸血鬼の生命線である血は対象を殺さずに得られ、生産ルートが確立していて何リットルでも用意できるし、
いざという時になれば、咲夜が手首を切ってでも奉仕するだろうが。
「けほ、けほ」
メイド長は咳きこんだ。人の身には赤霧は辛い。
この霧の中に30分と居られないというのがまともな人間ということらしい。
ただし忠誠心あふれる彼女にとって、そのぐらいのことは大した問題ではない。
メイド長の奉仕心はこの苦痛すら何か快楽のようなものに変えてしまうようだ。
林を抜け、橋を渡って更に先、湖の中島に紅く建っているのがスカーレットデビルの居城・紅魔館。
見上げただけで喜ばしい気持ちになり足取りも自然と軽やかになる、メイド長の心のふるさと。
庭の木々草花は手入れが行き届いており管理者の几帳面さがうかがえる、
この庭には吸血鬼の屋敷とは思えぬほど少女趣味でかわいらしい花たちが沢山咲いていた。
庭をかき分ける一本道を進み、紅魔館の玄関に着けば、館の門番である紅美鈴がいる。
いつものメイド長なら橋の入り口に足を入れた瞬間に門の前の土を踏めるが、
今日は赤く霧の湖を見ながら優雅に足を進めていた。
「あら美鈴、その人間、どうしたの?」
近づいてみれば美鈴は何か人間か、あるいは二足歩行の何かを脇に抱えながら立っていたのが分かった。
どうやらそれは裸のようで、薄い胸が印象的なやせ形のシルエットをもっていた。
「魔法使いが飛んで来て……、いきなり弾幕を張ってきたんですよ」
脇に抱えられているのは白黒きいろの普通の魔法使い、門番につかまれるままぐったり力を抜かせている。
激しい弾幕戦があったのか、魔法使いの背中は痛々しい火傷跡がまだ赤い。
「おそらく盗人の類でしょう」
風が一吹きあった。傷が痛むのか、盗人魔法使いはううと唸る。
しかし意識は朦朧として、妖怪とメイドの会話は聞こえているのかいないのか。
「若くて美味しそうな人間だったので、縄で縛っておこうと思っていたところです」
「脂肪が少なくて良い肉じゃない。パーティーにもう一品お料理が出せるわ。」
脂っこいものを好かないお嬢様でも、好んでお食べになりそうな肉であった。
「人間の丸焼きを作ろうかしら」
協定もあって狩れる人肉は限られている、その希少性からいつしか人肉はごちそうになっていた。
人肉は豚肉に近いと言われているが、実際はどうであろうか。
人肉は生でかぶりつくだけのものではない。多くの料理が発明され、そのおかげで幅広い楽しみ方が出来る。
その中でも特に人気が高いものはといえば、やはり人間の丸焼きであろう。
人間の丸焼きはパリパリになる皮がおいしいし、苦悶の表情で加虐心もくすぐられる。
ただし人肉を贅沢に丸ごと使うこの料理であるから、もちろんなかなか口には入らない。
「美鈴、よだれ」
「あ」
どんな妖怪にも受けがいい、パーティーのメインディッシュとしてふさわしい一品である。
☆
ぬるぬると肌を撫でまわされる感触がある。
「うぁ……」
魔理沙の意識がようやくはっきりしてきたのは人間を捌く調理台の上だった。
両手両足は縄で絞められ、大の字になるように固定されている。
天井は黒く、地下室であったから、室内は多少薄暗かった。
部屋のあちこちにランプと電灯があり、それが人間の目に一応の部屋の様子を教えてくれる。
そして魔理沙は裸だった。帽子はおろか下着一つ付けていなかった。
メイド長咲夜はすべすべのその手に石鹸を付け、魔理沙をなでまわす。
土や尿で汚れた肉である、ちゃんと洗わないと食用にはできない。
そんなものを出してはお嬢様の恥だ。
咲夜のナイフは肌の上を滑り、魔理沙に生えた産毛のようなわずかな体毛をそりおとしていた。
腋にもすねにも、膣まわりにも毛が生えてしまうお年頃である魔理沙だったが、
森で一人暮らしをしているせいか、あまりそういうお手入れに関心がある方ではなかった。
(私は……、何をされているんだ?)
魔理沙の意識はようやくはっきりしてきた。
妖怪の門番に撃ち落とされ墜落する瞬間には、八つ裂きにでもされもう目を開けることもないと思ったのだが、
今の自分はメイドにせっせと体を洗ってもらっているらしい。
他人に奉仕されるような身分ではない魔理沙は、気持ちよさとともにこそばゆさをも感じていた。
魔理沙にもこの状況が何を意味するのか、分からないではなかった。
妖怪が人間を殺しも逃がしもしない理由。
(もしかして、妖怪に食べられるのか?)
肉は殺したてがうまいとは、妖怪の諺にもよく現れる話だ。
人間を食べる直前まで生かしておく、というのは知性のある多くの妖怪で一般的な行動である。
ヒトを食べる妖怪は数多くいると言われている。
魔理沙も森ではしょっちゅう低級妖怪に絡まれ、食われかけたことだってあった。
ついさっきも手を広げた変な奴に絡まれたところである。
あの目は肉を見る目だった、力の弱い妖怪だったが、一歩間違えばと思って寒気がしたのを覚えている。
テリトリーを犯さず平穏に暮らす人間にいきなり襲いかかるような妖怪はまともなやつではあまりいないと言うが、
見知らぬ館に入ろうとした魔理沙が"見逃してもらえる人間"に該当するかというと、やっぱり怪しい。
この奉仕も野菜についた土を落とすようなものなのだろう。
妖怪が侵入者を生かしておく理由なんてそれぐらいしかないと、魔理沙には思えた。
それでなければ夜伽でもさせられるか、奴隷として働かされるか、碌な理由でないはずだ。
魔理沙は状況を把握し、頭の整理もようやく出来てきた。
しかしそういう結論に至っても、魔理沙の心は意外に落ち着いていた。
(門番ならともかくメイドだろ? 私が後れを取るはずないぜ!)
体を洗っているのはメイド一人、他にはだれも居ない。
武術家のような筋肉を備えていた門番に比べ、この細身のメイドはいかにも弱そうだ。
何だかんだいって魔理沙は威力ある魔法を一杯使える魔法砲台なのである。
魔理沙の予想は<本気でやれば絶対に負けるはずがない>であった。
相手にすらならないんじゃないか?
要するにこのときの魔理沙はこのまま自分が殺されるなんて、露ほども思っていなかったのである。
「私は食われるのか?」
魔理沙はメイドの目を見ながら尋ねてみた。
魔理沙にはまだ余裕があったから、こんな質問もできたのである。
「……そうね、暴れないでくれるとお料理がはかどるんだけれど」
一方咲夜は目を合わせようともせず、食材の洗浄に集中している。
(なにがお料理がはかどるんだけど、だよ)
魔理沙は壁際に目を滑らせた。
そうはいっても魔理沙の魔力は残り少ないものである。
今たくわえている魔力は、火の玉を出すか、物を飛ばすか程度のことで尽きてしまうに違いない。
全力で戦って負けたら後がないから、全力では戦わないとはだれの言葉だったか。
状況を見極め最良の行動を取らなくては。
おたま、しゃもじと調理器具が整然と並べて置いてある場所を魔理沙は観察しようとした。
へら、泡だて器、ボールになべに……出刃包丁。
ちょうどメイドの真後ろに包丁がおいてあった。
魔理沙の目はそこにとまった。
(恨むなよ、正当防衛だぜ。)
魔理沙の魔力で包丁がふわりと浮く。
メイドは魔理沙洗いに一生懸命でまったく気付いていないように魔理沙には見えた。
魔理沙の口元には薄い笑みが浮かんだ。
包丁を魔法で飛ばして喉笛を切ってやればメイドは一瞬で殺せるはずだ。
妖怪の手先になってるような人間なんて、殺したって誰も咎めないに違いない。
そもそも今の自分は命が危ない身なのである。なりふりなんてかまっていられない。
いまいましい拘束も魔法を使い、体力を取り戻した後にゆっくり解けばいいだろう、メイドが死んで暫くは時間的な余裕があるはずだ。
拘束を外せたら身を隠しながら脱出。窓からでもこっそり抜け出し、さっさと逃げてしまおう。
包丁に少しづつ加速度を与えてやる。
20km/h、40km/h、70km/h……速さは上がり、包丁は一撃で殺せるほど速くなる。
(よし!)
しかし包丁が咲夜の首にわずかに触れたその瞬間、時は止まった。
「危ないわまったく、何をするつもりなのかと思えば……」
メイドの首を狙った包丁は何の前触れもなく一瞬で彼女の手の中に移動した。
魔理沙の目にはそう見えた。
「あ……」
魔理沙の口から思わず声がこぼれた。
今にも首を飛ばそうという勢いでまっすぐ飛んでいたはずなのに。
魔理沙は致命的な読み違えをした。
このメイド長は魔理沙を負かせた門番よりも更に凶悪な、時の操り手だったのだ。
もしかして普通のメイドではないのでは、魔理沙の頭にもそういう考えが現れてきた。
首の後ろに嫌な汗がつたう。
妙な事をして、怒らせてしまったのではないか。
言い訳をしようと口が金魚のようにぱくぱくしてしまう。
動揺する魔理沙のほほに鋭いビンタが飛んだ。
「かはっ……!」
「食材の分際で、妙な真似をしないで頂戴」
メイドにやられたビンタは思っていたよりずっと痛い、魔理沙はそう感じるほかなかった。
逆の頬も、更に強い力で殴られた。
ビンタを浴びるたびに魔理沙のいたるところから脂汗がにじんでくる。
ビンタのたびに脳が揺れる、頭がぐらぐらする。
下腹部になにかふと重いものが乗りかかる感触があり、魔理沙が天井の方へ向きなおると、
洗い仕事をしていたはずのメイドが魔理沙に馬乗りになっていた。
「逆らう事なんて考えられないように、体に教えてあげないといけないみたいね」
いつのまにか拘束をはずされていた右手が、メイドにしっかりと握られている。
咲夜はそのほっそりとした手をまじまじと見ている。
「なにする気だよ……」
何度も何度も殴られて、魔理沙の気はすっかり小さくなってしまった。
そして魔理沙は既に魔力を失くしていた。
激しい弾幕戦でマスタースパークを乱発した魔理沙であり、いまやワンショット撃つことすら厳しい。
包丁を飛ばす程度の能力を発揮するのがさっきまでの魔理沙の精一杯であった。
魔理沙はもういたいけな少女でしかなかった。
かぷり。
自分の指がメイドに咥えられるのを見た。
咲夜は白くて長い魔法使いの人指し指を奥歯で挟んだ。
最初は甘噛みのようなものだったが、だんだん顎の筋肉全体を使った力の強いものになっていった。
「いた、痛い、やめろ!」
どんどん圧力がかかってゆく、咲夜が腕をしっかり捕えていて岩のように動かせない。
指の先から血があふれ、咲夜の舌はしょっぱさを感じた。
歯は皮膚に食い込んで、肉を貫き始めている。
「痛い、痛い! いたい! やめてくれ、逆らわないからぁ!」
指の先が鬱血してくると、しびれとともに別の痛みが現れた。指の骨が砕かれてゆく痛みだ。
だんだんシャレにならない傷みになってくる、咲夜の犬歯が骨をぐりぐり削る。
吐き気を催すような嫌な傷みが連続的にやってくる。
指先は人間の機関の中でも神経が集中している部分の一つだ。
肉食獣ではない、人間の歯によって指をじわじわ引きちぎって、大きな痛みを与える。
魔理沙の目から自然と涙があふれてくる、痛くて泣くなんて幼い時に階段で派手に転んだ時以来だ。
最も恐ろしい拷問はじわじわと痛みが増し、死ねない拷問である。
このやり方は猛獣に一撃でやられるより、よっぽど痛く恐ろしいやり方なのだ。
「ぅ……ゲエえええぇ! ゲホッ、ゲホッ!」
べちゃべちゃべちゃべちゃ。
朝食のごはんとみそ汁がぐじゃぐじゃになってあふれ出る。
吐しゃ物は仰向けの魔理沙の口から容易には出て行かず、横を向きさんざん咳をしてやっと追い出すことが出来た。
強い歯の圧力で爪も割れ始め、それが痛みをますますエスカレートさせた。
「やめて、ゲホっ、エエっ!! やめでくださいぃっ!!」
「だめよ、じっくり後悔ひてもらわなひと」
咲夜の口がにやりと歪んだ。
胃酸のすっぱい臭いも全然気にならない、この痛みから逃れられるなら、死んだっていい。
そう思わせるほど酷い痛みだった。
大人でもない少女には辛すぎる痛みだった。
「ああっ……あ、あああアアああぁぁ……」
そこが痛みの頂点だった。
だんだん感覚が無くなり、しびれが強くなってくる。
千切れ始めている神経は、魔理沙の痛みをやわらげる意味も持った。
控えめで鈍い痛みが続いた、しかし体力の少ない魔理沙に叫ぶような気力はもうなかった。
メイドの口だけを、物欲しそうな眼で見る。もうやめてと。
ふと、その口と魔理沙の手がばすんと離れた。
<ぶちり>
……少女の指が千切れるのは、本当に生々しい音だった。
肉が千切れてしまう音、指というより骨が千切れ飛ぶ音だったか。
「え……」
痛みで焦点の合わない魔理沙の目に、千切れた人差し指が、第二関節から先が無くなった人差し指が映った。
「きゃああああああああああ!!!!」
痛みで意識がもうろうとしていた魔理沙は、自分の指がどうなっていたのか全く知らなかった。
指が千切れてしまったという現実は、いきなりつきつけられたものであった。
「うん、美味しい。 お客様に出しても恥ずかしくない味ね」
魔理沙の大事な人指し指は咲夜の口の中でぐちゃぐちゃと咀嚼されている。
「あああぁ……!! か、かえしてぇ……。」
魔理沙にも咲夜の口にあるのが何か分かってしまったらしい。
魔法使いとして、結構細かい作業もすることがある魔理沙である。
指が一本でも無いというのは、かなり致命的なことであった。
それに魔理沙だって乙女なのだ、自分の体はやっぱり大事さ。
千切れた指でも適切な治療をすればくっつくことはありえないことではない。
「返してほしいの?」
魔理沙は必死にうなずく。
しかし咲夜の口から吐きかけられたのは肉がぐちゃぐちゃになって骨が露出している魔理沙の指だった。
あまりに原形をとどめていなかったので、魔理沙はそれがなにか暫く理解することができなかった。
「ああ……私の指がぁ……、ぐす、酷過ぎるぜ……!」
実験失敗が続いても五体満足であった魔理沙、体の一部を失ったのはこれが初めてだった。
何があってももう二度と回復しない。魔理沙は泣かずにはいられなかった。
「ううぇ……ひっく、ぐす。 ゆ、許さない…っぅう、ぐっす、ぜったいゆるさない……」
止めてようとしても次々溢れてくる涙、液体で視界がにじむ。
「ふふ、何言ってるのかしら。指なんかあってもなくても、肉にとっては同じでしょう?」
咲夜は心底おかしそうに、くすくすと笑うだけであった。
怒る魔理沙は、とはいえもうなにもすることができなかった。
逆らっても無駄だ、もっと傷めつけられるのみだと、心に刻まれてしまった。
魔理沙の手足は痛みと怖さでまだ震えている。
右手が再び拘束されると、今度は両足の拘束が解き放たれた。
「大事なところを洗うから足をあげて、蛙みたいにして。逆らうつもりならもう一回だから」
もう一回指を千切られる、その恐ろしさを突き付けられると怒りは恐ろしさで塗りつぶされた。
魔理沙はメイドの機嫌を損ねないように出来る限りの速い速度で、忠犬の様に指示に従おうとした。
横になったまま腰を折り曲げ下半身を持ち上げる、尻の穴から性器まで晒される格好だ。
性器から尻穴にかけて、うっすらと陰毛が生えそろっている。
まだ少女であるからそれほど太くもないし伸びてもいない草原のような趣だが、
広くまんべんなく尻穴の方までずっと毛が生えているのを見られるのは女の子としては恥ずかしい。
お尻がナイフで撫でられ、それに毛が一杯ついているところを見てしまうと魔理沙の乙女心はちくちく痛んだ。
先ほどの痛みとは別の意味で赤くなり、また涙が出てきそうだった。
つるつるになった下半身は、加えて咲夜の手による洗浄が行われた。
肉をぐにゅぐにゅと揉みしだきながら、ふとももから臀部、臀部から性器へと手は移っていった。
いつも自分で慰めている魔理沙であったが、他人にこう触られるのは初めてだった。
洗浄の手は容赦なく敏感な部分へも向けられる。
魔理沙の割れ目の中は、日々の自慰のおかげで意外に清潔であった。
しかし広げてやるとそれは分かったが、一つだけ洗い忘れられている部分があるらしい。
皮に包まれた陰核は、まだ一度も外気にさらされたことがなかった。
包皮の上からでも、こりこりに赤く勃起しているのがわかる。
「はぁ、はぁっ、はぁはっ……」
魔理沙の心と体は、咲夜の手によって乖離しはじめていた。
つたない自分のオナニーとちがって、体の底から快楽がこみ上げてくる感じだ。
何か打開策を考えるべきなのに、頭が性器のことしか考えてくれない。
死の危機にある生物は、特別性欲が強くなってしまうらしい。
咲夜にとって、調理中に食肉が発情してしまうのは日常茶飯事のこと。
こうして肉を性的に、あるいは肉体的に追い詰めることは咲夜のメイド仕事における楽しみの一つだった。。
皮入りの枝豆にやるように、咲夜は陰核の皮をギュッと摘まみ、圧力によって豆を露出させた。
「ふぅ、はあぁっ! はぁ、ぁああああ!」
豆には白い垢がくっついて、少々ねっとりとしていた。
しっかりこすって洗わないとこの汚れは落ちないに違いない。
「ああ、あああっ、やあああああああぁぁぁっーーー!!!!」
咲夜が魔理沙を洗い終えるまでのしばらくのあいだ、魔理沙は性欲に翻弄されつづけた。
死んでしまいたいぐらい恥ずかしかったが、体が言うことを聞かなかった。
……
☆
「冷たいっ!」
魔理沙についた泡を流したのはあたりの湖に由来する冷ややかな冷水であった。
その冷たさが発情して火照った魔理沙を現実に引き戻してくれた。
綺麗な体になった魔理沙は、醤油・みりん・にんにく・その他様々な隠し味をなど入れた特製ソースとともに木製の細長い箱に漬けられた。
箱のふたには穴が開いており、首から上だけ外に出ている形だ。
ソースの塩気で指の傷がじくじく痛む、魔理沙は顔をしかめた。
咲夜は魔理沙にこれからどうなるかなってしまうのか、洗いついでに教えてあげていた。
まず魔理沙はソースにつけられたまま明日の昼まで放置される。一日かけて肉に味を染みこませるのだ。
昼には取りだしパーティーに間に合わせる、会場で焼いてはいおしまい。魔理沙の人生はこれにて閉幕。
丸焼きにされる人間は恐怖でさんざん騒ぐ、内臓はひっぱり出され連続的な痛みで簡単には気絶出来ない。
脚色をしながら語ってやると、魔理沙は眉を八の字にして涙を流し、カチカチと歯を鳴らして震えるのだった。
こうやって脅かしたり、傷めつけたりするのは、何も咲夜さんの趣味だからというだけではない。
そうすることで分泌される脂汗が、食材のうまみを引き立たせるのだという。
「ここに置いておきましょう」
魔理沙の入った箱は台所隣の真っ暗な食肉保管庫に置かれることになった。
人肉はごちそうだから、こうでもしないと食い意地の張った妖精に食べられてしまうかもしれない。
「明日までに美味しくなっておきなさい」
そう言って笑うと、咲夜は倉庫に鍵をかけ、掃除をこなしに地上階へ去っていった。
音一つしない暗い倉庫。
そこには動物の……もしかしたら人間の、血肉の臭いが充満していた。
人間以外のもの食べ物も置いてあったが、人間である魔理沙の鼻にとってこの血生臭さは特別で、
嗅ぐたびに不安になり、嗅ぐたびに鼓動が速まっていった。
「うあぁ……なんだよこれぇ……」
暗闇に慣れてくるとすぐ、見てはいけないものが見えてきてしまった。
骨、骨、骨、骨……、妖怪たちの腹に収まった被害者たちの、生々しく血肉のこびりついた骨がそこらじゅうに落ちていたのだ。
魔理沙はその骨たちと自分を重ね合わせてしまった。
自分の未来の姿のように思えた。(その通りなのだが)
吐いて、吐いて、胃酸しかでなくなっても暫く嘔吐が止まらなかった。
(霊夢……、助けて……)
魔理沙の頭の中には一人の巫女がうかんでいた。
お祓い棒片手に幻想郷をいったりきたり、腋を露出させながら異変の元凶を殲滅する。
彼女は魔理沙にとって軽口をたたける友人であり、それと同時に自分よりずっと凄い、尊敬の対象でもあった。
努力を隠したがるようなプライドの高い魔理沙は、そのことを口に出すことはなかったが。
本気になった霊夢なら、あの門番だって、あのメイドだって、奴らの親玉らしい"お嬢様"だって倒せるに違いない。
魔法で防護しなければあの霧の中で長く持つ人間は少ないと、実際の体験から確認していた。
最初にも思ったことだが、この事案なら霊夢は出て来ないはずがない。
解決しなければいけない異変に違いなかった。
霊夢ならこんなとき真っ先に現れ、さくっと異変を解決してくれる。
運よく霊夢に見つけてもらうことが出来たら、そのまま助けてもらえばいい。
そうでなくても、妖怪たちが魔理沙どころでなくなれば時間が出来る、逃げの選択肢も豊富に出てくる。
魔理沙はもう自分の弱さを嫌というほど感じていた。
助かるにはもう誰か、少なくともあのメイドより強い誰かに頼むしかないのだ。
(こんな強い異変なんだ、霊夢は絶対来る、来ないはずないじゃないか)
そうだ、問題ない、大丈夫だ、大丈夫なんだ……。
魔理沙は眼を閉じた。
眠ろう。
いざという時に備えて、しっかり体力を取り戻しておこう。
頭の中で霊夢のことを反芻するとだんだんと気持ちが落ち着いてきた。
暗闇の中で意識は薄れ、筋肉が弛緩してゆく、だんだんと眠りの世界へ落ちていく……。
魔理沙は眼を開けた。
空が黒い、雲が赤い。
いつのまに外に出てしまったのだろう。
魔理沙は裸だった。
「あれ……」
気付けばただ裸なのではない、手足が平に押しつぶされ、あたりは血まみれになっていた。
鉄板の上に放り込まれ、肉が焼かれてゆく。
途端、脂に熱が入り、白い煙とジュージューと肉の焼ける音が耳に広がった。
「うわあああぁああ!! 助けてぇ! 助けてえぇ!」
周りにいるのは妖怪たちばかり。
どれもにたにた笑っている。
「肉を腹を切り分けてしまいましょう」
包丁が腹を縦に割ってゆく。
内臓がこぼれ、赤い血が噴水のように飛び出してゆく。
「嫌っ! 嫌ぁあ! 死んじゃうよおお!!」
魔理沙は痛みのあまり転げ回った。
「あらあら、本当に痛いのはこれからなのに」
転がった先には穴があった。
穴の底には油と火の海があって……
どっと笑いが広がった。
熱により魔理沙にどんどん火が通ってゆく。
「そろそろ食べごろかしら」
「じゃあ私は心臓を」
「尻の肉を」
「目を」
「耳を」
刃物が魔理沙を切り分けてゆく。
とっくに死んでもいいはずなのに、意識はなぜかあった。
もう喉が潰れて、声が出ない。
目も耳も取られてしまった。
ただただ痛みだけがそこにあった。
延々と続く痛みが……。
「……うわああぁぁああぁ!!!」
魔理沙の本当の気持ちは、夢の中に現れていた。
やはり食べられてしまうかもしれないというのは、恐ろしいことだった。
魔理沙はあたりを見回す。額に汗が伝う感触がある。
「なんだ、夢か……、脅かさないでくれよ」
魔理沙の喉から乾いた笑いがあふれてきた。
「ははは、なんだ夢かよ、ははははははは……なんだよ吃驚させやがって、ちゃんと生きてるじゃないか、手も足もあるじゃないか。ははははは……」
笑って恐怖をふきとばしてしまおうとした。
(怖い)
「ははははは……」
(死ぬのは嫌だ)
「ははは……」
(霊夢、助けて。霊夢じゃなくてもだれでもいい、なんだってする、助けて、死にたくない、死にたくない)
笑っても笑っても、いやに速まる心臓の鼓動は抑えられなかった。
魔理沙の心はますます恐怖に囚われている。
結局魔理沙はその後一睡もできなかった。
目をつむっても、怖くなって開けてしまった。
部屋の暗さも魔理沙の精神をじわじわと蝕んだ。
命の危機にある魔理沙は周りの状況が分からないこの暗さに、本能に訴えかけるような不気味さを感じていた。
昼も夜も分からない、いつ殺されるのかも分からない。
どうしてこんな目にあってしまったのか。
異変なんかに首を突っ込んでしまったことを後悔した
自分の能力を過信してしまったころを後悔した。
冷静さを失わずに適切な判断を下していればと後悔した。
いずれか一つについてでもマシな判断をしていれば、こんなことにならなかったはずなのに。
魔理沙はもう何度泣いたのか見当もつかなかった。
吐瀉物と血の臭いにまみれこうしている。
魔法を学びながら気ままに暮らしていた、今までの生活が酷く懐かしかった。
妄想と現実の間をゆらゆらと揺れ、ただただ時間が過ぎてゆく。
魔理沙は時間の感覚を既に失っていた。
(食べられて終わりなんて、そんな酷い人生ないだろ……)
期待を込めて何度も扉を見た。
何か胸躍るような音は聞こえないか、耳を澄ませてみた。
しかし紅魔館は全く平穏であった。
魔理沙の期待するようなトラブルは全く起こっていなかった。
病的にそわそわと落ち着かず、なんどもなんども周りを確認した。
何か自分の助けになる者はないのか、くまなく見まわした。
(このままじゃ本当に終わりかもしれないぜ……)
長い時間が経っているというのは、何となく分かっていた。
ただ朝なのか昼なのか、まだ夜なのか全く見当がつかなかった。
もう時間が無い気もするし、まだある気もする。
魔理沙の精神が限界に届きかけたその時、倉庫の扉ががちゃりと鳴った。
「人生へのお別れ、もう済みましたか?」
通路の光が漏れ、恐ろしいメイド型の影が床に描かれた。
☆
紅魔館の赤い霧により、普段の昼間より多少薄暗くなっているようだった。
中庭を広く使ったパーティー会場には、宴会好きの妖怪たちが沢山集まっていた。
咲夜が徹夜で配った沢山の招待状に誘われて、その数は本当に多いものであった。
もしかして誰も来ないのではないかという、魔理沙とは逆の呑気な理由で眠れなかったレミリアお嬢さまは
その人出を見て笑みが止まらず、その嬉しそうな表情はメイド長は涎を垂らしてしまうほどのものだったと伝えられている。
「嬉しそうね、レミィ、にこにこしちゃって」
レミリアの隣でポテトをかじっていたのは、紅魔館の頭脳(?)パチュリー・ノーレッジである。
「そんなことないわ、私はいつも通りの普段通りよ」
レミリアはといえばあまり食事はせず、たまに血の入ったグラスを傾ける程度だ。
吸血鬼たるものそうがつがつ食い気を出したりせず、はしたない姿を決して晒さないということらしい。
単純に小食だったというのもあるが。
「ところで咲夜はどこへいったのかしら」
先ほど席をはずした後帰ってこないことを、レミリアは気にかけていたのであった。
「咲夜なら、肉を取ってくるって、すぐ戻ってくるでしょ」
レミリアの質問に答えたのは、神社の赤白巫女・博麗霊夢であった。
ボトル入りのワイン片手にほろ酔い気分、グラスに注がずボトルからそのまま飲んでいる。
「そう」
霧が人里まで降りていってしまうことを異変と見た霊夢は魔理沙よりずっと早くに紅魔館へ向かっていた。
弾幕勝負でレミリアを下した霊夢であったが、あの霧がどんなに問題ある物か語ってやると
週三日にするからと言うので、まあそれならいいかと目こぼししてやったのだ。
それですっかりわだかまりが無くなったので、宴会のお呼ばれも快く受けたのである。
(それにこんなもの貰っちゃあね……)
霊夢があおるボトル入りのワインは紅魔館の酒蔵で長年保存されていたお高い品だ。
ワインの生産に向かない気候の幻想郷であるから、こんなものはなかなか口には入らない。
博麗の巫女は贈り物に弱かったようである、
「あら、何かしら」
咲夜の帰還は妖怪たちの歓声によって伝えられた。
メイド長が台車で運んできたのはもちろん、ソースでしっかり味付けのされた霧雨魔理沙である。
全裸のうえ首から下の体毛はすべて剃られている。両手両足をしばられて、身動き一つ取れない。
縄によって足が開かれ、つるつるの性器が丸見えである。
妖怪たちはそれを見て、興味深そうにまじまじ見たり、恥ずかしがって顔を隠したりした。
普段人間に縁がないという妖怪も多いから、いくらかの妖怪は初々しく反応する。
魔理沙はそんな辱めをうけ泣きながらうつむいていたが、何の抵抗も出来ない。
これから私はこいつらに食べられて死んでしまうのだ。
魔理沙はやはり涙を流して、目はすでに真っ赤に充血してしまっている。
ぐずぐずと嗚咽を漏らし、息はまるで発作かなにかのように不規則で激しくなっていた。
魔理沙は殆ど希望を失くし、心臓はばくばくと踊り、死への恐怖で今にもおかしくなってしまいそうだった。
「あれ、魔理沙じゃない」
そこに聞こえてきたのは、あの博麗の、間違いなく霊夢の声であった。
「れい……む? 何で……?」
涙まみれの顔で声の方を見れば、酒で頬を染めた霊夢がいた。
突然現れた光明に、魔理沙の目の光はみるみる戻っていた。
何故妖怪の宴の席で酒を飲んでるのか、異変解消の話し合いをしに来たのか、それは分からない。
ともかく霊夢がいる。
「あ、あ……」
呼吸が上手く出来ない。
叫び過ぎて、引っ張り出される間に喉が傷んだのか、声がうまく出せない。
霊夢はどんな妖怪よりも強い、霊夢ならきっと私を助けてくれる。
魔理沙にはなぜか、そういう確信が、脳みその奥にあった。
「霊夢、た、助けてくれ! そんな所で見てないで助けてくれよ!」
妖怪たちのの視線が霊夢に移った。
「メインディッシュの肉って、あんたのことだったの」
「そ、そうだよ、焼かれて食べられそうなんだ、なぁ、なんとかしれくれよ!」
魔理沙は必死だった、台車から乗り出す勢いで霊夢にすがろうとしている。
もう駄目かと思ったところに下ろされてきた、一本の蜘蛛の糸であった。
「この魔法使いは、霊夢さんの知り合いなのですか?」
咲夜は悩んでいた。もし霊夢の友人であれば、食肉には出来ない。
怒った巫女に約束を反故にされ、異変の元凶であるお嬢様が滅茶苦茶にされてしまうかもしれない。
とはいえ巫女一人の言葉で紅魔館が左右されるというのでは、お嬢様の沽券にかかわる。
霊夢はなんでもないような顔をして魔理沙を見下ろしていた。
「そうね、たまに茶を飲む位の仲を友達と呼ぶなら、友達かもしれないわね」
魔理沙の目が輝く。
なんだか、これは助けてもらえる雰囲気じゃないか?
あのメイドが、霊夢に敬語で接している、霊夢の様子を窺っている。
霊夢はこいつらに対して優位な立場にあるに違いないと、魔理沙はそう思った。
「魔理沙」
霊夢はそう呼びかけると魔理沙にそっと近づき、手にあったワインのボトルを傾けた。
すると魔理沙の黄色の髪が、白い肌が赤い酒でびしょびしょと汚された。
「は……?」
魔理沙は訳が分からないという表情で霊夢を見上げている。
「友達としての贈り物よ。 お酒は良く燃えるから、これで楽に死ねるわね」
魔理沙の口からはなかなか次の言葉が出て来ない。
霊夢はこんな性質の悪い冗談を言う奴だったか?
「それではこの魔法使いは、殺してしまってもかまわないのですか?」
「ええ、馴れ馴れしくて手癖が悪いし、殺してくれるなら有難いわ」
魔理沙は、……霊夢がなんでそんなことを言うのか、理解できなかった。
魔理沙は歯を食いしばって涙をおさえる。
「なんだよ、何言ってるんだよ、友達じゃないか……、本当に殺されそうなんだ、なんとかしてくれよ……なあ」
子犬のような目でまっすぐ見つめる魔理沙に返されたのは、軽蔑を込めた冷たい視線だった。
魔理沙はその目に耐えられず、怯んで目を逸らせてしまう。
「いい加減にして、鬱陶しいわ。あんたが死のうが死ぬまいがどうでもいいの」
「ぐす、何でだよぉ……、私何か、霊夢が気に障ることしたか……?」
魔理沙は、何も考えられず脱力している。
冗談だと信じたかった魔理沙だが、どうもそういう風ではない。
その嗚咽は先ほどと比べてもますます酷いものになった。
霊夢に見捨てられた魔理沙に、もう生き延びる手段は残されていないのだから。
「あの霊夢、一つ言っておきたいのだけれど」
レミリアが二人の間に割り込む。
「この魔法使いは、美鈴が止めたのに無理やり紅魔館に入ろうとしたのよ」
「そうねぇ、魔理沙って手癖悪いし、どうせ金目の物目当てだったんでしょ。 ……自業自得ね」
霊夢の冷ややかな視線が魔理沙に刺さる。
「そんなぁ……、ぐす、霊夢からとったものなんて、もちと饅頭ぐらい……、ぐっす、とった物ならちゃんと、ちゃんと返すからぁ……」
「うるさいわね、盗られた方は銅銭一枚でも頭に来るのよ。これ以上は聞かないわ。あまり酷い地獄に落とされないよう、言い訳は閻魔の前まで取っておくことね」
最期の希望が断たれ、魔理沙の調理が始まった。
☆
「いだいぃっ!! 痛いいぃ!!」
魔理沙の調理はそのなめらかな腹を割かれることから始まった。
殺戮ショウとしても、肉料理としても、対象には出来るだけ長く生きていてもらった方がよい。
真っ先に首を落とせば調理は楽なのだが、そうであっては面白くない。
魔理沙は料理が完成する寸前まで生かされることになる。
庭の真ん中に敷かれたごさに、魔理沙が寝かせられていた。
肉が酷い暴れ方をするので、紅魔館一の腕力の持ち主である紅美鈴は、この料理をする咲夜をいつもサポートしていた。
魔理沙の両手首・両足首をきつく縄で縛り、縄の反対側を庭の樹木にくくりつける。
本気で暴れる人間の力は結構な物だし、逃げられてしまっては大変だ。
余計な内臓を切ってしまわないよう、美鈴が更に力任せに抑え、咲夜が一直線に切り込みを入れる。
「いだぁああ! 痛っ……んンンンン!!!!」
うるさいので丸めた布を口に詰め、声の出口を遮る。
口から酸素を得ることが出来ず、鼻からますます沢山の空気が出入りしはじめた。
今の魔理沙の息の荒さはまともではなく、ぜひゅーぜひゅーと大きな息を頻繁にくりかえすものだ。
その息の通り道を布で遮られたせいで、半ば窒息しているような、異常な苦しさの中にあった。
「――ン゛グうううう!!!!!!」
「あら、ナイフが深すぎたかしら」
魔理沙の皮膚は脂肪が乏しかったので、ナイフはすいすい進んでいく。
そのおかげで勢い余り、ちょっと内臓を切りつけてしまったらしい。
下腹部から始まった切れ込みはナイフの赴くまま、心臓の上の部分まで達した。
人間の丸焼きを作るにあたっての第一手は、腸や胱など、そのままでは食べられない汚い部分を取り除くことだ。
咲夜は腹の切り込みから手を入れ、まずは腹に詰まった小腸を引っ張り出した。
「ンん゛あああああああ!!!! あああぁぁあぁあああ!!!!」
魔理沙は絶叫した。
いよいよ自分の中身が掻き出されようとしている。
腸は長く、始点から終点までで数メートルある。
ずるずると引きずり出されてゆく腸、引っ張っても引っ張っても出てくる、どこまで続くのかという長さであった。
あらかた引きずり出すとナイフを取り出し、腸とつながった十二指腸と肛門の境目、おしっこ袋である膀胱を切り離した。
「あ゛あ゛あああぁぁぁっ!!! 嫌ああああぁぁぁあっっ!!!」
魔理沙が首を振り回すせいで、口内の布が取れてしまった。
魔理沙の体はビクリビクリと痙攣するように、陸に上げられた魚のように跳ね回ろうとする。
内臓が取り外される痛みとはそれほど激しい物なのか。
体の内部というのは敏感に出来ている物である。
少し筋肉を触られるだけで、もの凄く痛く反応するよう作られている。
麻酔なしで内臓が千切れる、その痛みは……。
咲夜は無暗に失禁されないよう、時止めの力を使って三つ同時に切り離したのだった。
この光景を見て眉をひそめる妖怪は殆どいなかった。
哀れな獲物の暴れる姿は、むしろ酒の肴として歓迎された。
霊夢は、魔理沙が内臓を引っ張り出され叫び声をあげるたびに腹を抱えて笑っていた。
「あーはっはっはは! 聞いた? 魔理沙が『嫌ああ』って! あっははははは!!」
魔理沙は虚ろな目で切り取られた自分の内臓を眺めている。
魔理沙はもう、自分が生き続けることはできないのだと、そこで悟ってしまった。
既に霊夢の声を聞きとる余裕すらなく、その声に反応を示すことも勿論なかった。
内臓を切り取ったら、腹はいったん縫い合わせられることになる。
お腹の中に鈍い痛みが走り続けているが、切り取られる瞬間からすればずいぶん穏やかな痛みであった。
しかし生きるために必要な臓器が二つも取られてしまった魔理沙は、どうあってもすぐに死んでしまうだろう。
もう誰も魔理沙を助けることはできないのだ。
先ほどまでの暴れようが嘘のように、魔理沙はすっかりおとなしくなった。
ただ針と糸が皮膚を通るたびに小さく喘ぐ、それだけだった。
腹が閉じられればいよいよ串刺し、そして魔理沙の丸焼きである。
☆
魔理沙はもうこれ以上生きていたいなんて、これっぽちも思っていなかった。
ただもう早く楽にしてくれと、それだけを考えていた。
目の色は濁って、死んだ魚の様になっていた。
「ふーん、これが丸焼きに使う串なの?」
「ええ、外の技術を取り入れた、最近の串刺し棒よ!」
レミリアは胸を張る。
河童と交渉して作らせた、幻想郷で一本しかない品である。
棒自体を発熱させることが出来、皮膚から内臓までまんべんなく焼けるスグレモノらしい。
全長250センチ・直径11センチ程度の鉄製で、なかなか重く、刺してやるのは意外と大変だ。
ましてや内臓の大部分を温存したままやる今回の丸焼きでは、怪力といってもいい力が必要だ。
「美鈴」
「はいはい、……もう人使い荒いんですから」
こういう力仕事は必然的にに美鈴の役目になる。
美鈴は魔理沙をうつ伏せにすると、性器のあたりをまさぐりはじめた。
女の子を串刺しにするときは、膣から入れて口から出すというのが最低限のマナーだ。
「いたいのはもう嫌だぁ……、痛いの嫌だぁ……」
魔理沙は身をよじる、生きるとか死ぬとかはもういいから、痛いのだけはやめてほしかった
だがここでの魔理沙は肉と同じ扱いであり、その声に耳を貸す物はいなかった。
「咲夜さん、それ押さえてください」
咲夜が魔理沙の背中に馬乗りになり、腰の部分を押さえつける。
棒の鋭くとがった部分が膣口にあてがわれる。
「……ひっ!」
冷たいものに反応して、膣がわずかに湿り気を帯びる。
死に際の生物は性欲が強くなるとは先ほどにもあったが、今挿れられるモノは期待に値するようなものではない。
こんなに太い棒を男性経験のない魔理沙の固い膣に押し込むのは少々大変である。
しかし力を込めながらじっくり進めていけば意外と入る物だと、彼女たちは知っていた。
魔理沙の膣はその経験則通り、じっとり濡れながら、とがった先端から太い部分に至るまで咥えこむことが出来た。
「ふう、やっと子宮口のあたりまで入りました」
「分かったわ、しっかり押さえておくから、一気にやってしまいなさい」
魔理沙はうつ伏せにされていたので、自分の膣に何が入れられているのか、これから何をされるのか全く分からなかった。
ただ内臓の痛みを相殺する膣からの甘い感触を、怯えながらも感じ取ることしか出来ない。
「やべてぇ……、もう殺せよぉ……」
魔理沙はただ子犬のように怯えることしかできない。
子宮がつつかれて収縮を繰り返す膣、それが最も広がった時、美鈴は両腕の腕力を全て使って子宮の奥へ、棒を更に押した。
<ブチブチブチブチっ!!>
「あああああぁぁーーっっ!! あ゛あ゛ああああぁぁぁーーッ!!」
魔理沙の子宮口は腕力のよって無理やり突き破られ、串刺し棒は卵巣に穴を開けつつさらに奥の胃や内臓にまで牙をむいた。
ズタズタにされた魔理沙の内臓は口へと血をあふれてさせ、叫び声には液体混じりのごぽごぽという音が混ざりはじめた。
魔理沙の最期の痙攣が始まる。
上で押さえる咲夜を跳ね飛ばしかねない勢いで、魔理沙は暴れている。
その度に内臓がひっかきまわされ、恐ろしい痛みが襲うというのに、反射と本能に操られた魔理沙は暴れることをやめられなかった。
美鈴は魔理沙が暴れるのも気にならない様子で、更に串を進めている。
パチュリーは本を読みふけり、レミリアはカクテルに浮かぶチェリーを舐めている。
普段人間にありつけないような妖怪たちと、人間の博麗霊夢だけが、その様子を物珍しそうに見ていた。
「すごいのね、人間が殺されるって……」
周りの雰囲気のせいか、供されたこのワインによってか、元々の性癖によってか、
霊夢は興奮を隠しえない様子で魔理沙が死にゆく様を舐めるように味わっている。
棒が喉まで至ると、魔理沙はついに息さえも出来なくなってしまった。
声帯を破壊しながら、口の外へ抜けようとする。
「咲夜さん、それの首を上に向けてください」
すでに体力は尽き意識の薄れる中、魔理沙の体はすっかりおとなしくなっていた。
気管も塞がれてしまっているし、もう死んでいるのかもしれない。
「いいわ、押し込んで」
咲夜の合図とともに棒の先が口元から飛び出した。
ようやく魔理沙の串刺しの完成だ。
☆
内臓を貫く過程で殆ど漏れてしまったのだろう、四肢を切断しても血はあまり出て来なかった。
すでに事切れていたというのもあった。死ねば血液の循環も止まってくる。
魔理沙の肉は内部からの発熱と、周囲からの火のいきおいでこんがり焼けていた。
切断した四肢はそれぞれ串刺しにして、別個に焼くことになった。
人間は手足が結構長いから、四肢を切断してやらないと焼き加減にムラが出てしまうのだ。
顎のあたりから膣と臀部のあたりまでこんがり焼けるとあたりに食欲を誘う肉の臭いがあふれてきた。
腹を割くとこれまた良く焼けた内臓が、丁度蒸し焼きの様になってふかふか美味しそうに湯気をたてている。
従来の丸焼きでは内臓から表皮までまんべんなく焼くことが難しく、内臓は全て取り払ってから調理されていた。
最新型串焼き棒は、人肉料理の新境地を開拓したのだ。
咲夜は魔理沙から特に美味しそうな部位を選んで、紅魔館の人々と博麗霊夢にふるまった。
やわらかな尻、とろけるような外陰部、コリコリとした陰核。
セックスアピールの象徴たちは特に脂肪がのって柔らかいものだから、
食肉としてもかなりお勧めの部位である。
「なかなかの味じゃない」
「そう言ってくださると用意した甲斐があります」
咲夜の目元には涙が光っていた。
「むきゅ、焼酎にあいそうね」
「私はもうちょっと脂肪がある肉が、好きですけどねー」
「まあ他人の物を食ってつけた肉なんだから、ちょっとぐらい美味しくないとね」
肉は妖怪たちによってとり分けられ、それぞれ三者三様の感想をもらしたが、
いずれの妖怪もそのさっぱりとした味を楽しみ、その肉質はみなに賞賛されたという。
「咲夜、もう一皿だけいただこうかしら」
小食のレミリアがおかわりをしてくれるとは、メイド冥利に尽きるに尽きる話だ。
しかし……。
「申し訳ありません」
魔理沙の死体があったはずの場所には、肉が一かけらも無くなった骨と、その生首だけしか残っていなかった。
「あの魔法使い人間としても少々小柄でしで、この大人数ではすぐに無くなってしまったようです……」
調子に乗って招待客を集め過ぎてしまったのが仇となったようだ。
「あ、そう……なの……」
「そんなに落ち込まないで、人間なんてまた焼けばいいじゃない」
レミリアは柄にもなく少々落ち込んでいたようであったが、
夕食にプリンが出るとその憂鬱も吹き飛んで、次の日にはいつものカリスマを取り戻していたという。
☆
霊夢は魔理沙の家にいた。
主のいなくなったこの家に、盗品を取り返しに来たのだ。
「この本……。 やっぱり魔理沙の仕業だったのね……」
やはりというか、失くしたと思っていた物の多くが魔理沙の家から掘り出された。
神社に保管されていた大事な古書、魔理沙の家で見つかったそれはかなりの数で、
十往復じゃ持ち帰れないほどあるかもしれない。
魔理沙の家はごちゃごちゃと雑多でちらかり放題だったから、捜索は難航した。
「ああっ、この亀! もしかして玄爺? 懐かしい!」
部屋の隅の水槽では、大型の亀が干からびで死にかけていた。
枯れていた顔がますます枯れてしまっている。
「ご、ご、ごしゅじん……」
「ま、もう飛べるから、要らないけどね」
そっぽを向くと霊夢は戸棚をあさりはじめた。
「この中にどれだけ盗品があるのかしら、やっぱり殺して正解だったわね」
これだけの本、魔理沙の財力で集められるはずがない。
「でも、魔理沙のお尻は美味しかったかな」
霊夢は魔理沙のあの柔らかな肉のことを反芻していた。
「また食べたいわね、今度はお腹いっぱいになるぐらい……」
おわり
【おまけのフランちゃん】
あいつがニンゲンのクビを持ってきた。
遊び道具になるかもとか、そんなおねえさんぶったこと言ってたけど。
名前は霧雨魔理沙って言うんだって。
私と同じふわふわした金色の髪。
目の色は違うけど。
「きめた、あんた私の妹にしてあげる、うれしい?」
魔理沙は何も答えない。
ニンゲンって喋れないのかな、かわいそ。
でも暴れないし、嫌がってないんだと思う……たぶん。
「わたしはあいつと違ってやさしいから、怖がらなくていいよ?」
魔理沙は目をつぶったまま。
「じゃ、おままごとしようか、それとも弾幕ごっこがいい?」
魔理沙は何もハンノウしない。
どうしたのかな。
うーん……。
「どかーん!!」
わたしがそう言うと魔理沙はバクハツした。
中身がそこらじゅうに飛び散った。
「にんげんって、つまんない」
おわり
作品情報
作品集:
16
投稿日時:
2010/06/06 12:22:39
更新日時:
2010/06/06 21:22:39
分類
魔理沙
カニバリズム
食人
串刺し
紅魔館
霊夢
描写力がパネぇっす。
鳥肌が立った
告白を前にした中学生のように胸のドキドキが止まらなかった
濡れた
最上級の賛辞を
ご馳走様です。
しかし霊夢えげつないw
パンツん中ぐしゃぐしゃだぁ……
なんて格好良い美鈴なんだ
いけめーりんマンセ-!
この霊夢は退治された方がいい