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『東方新政治 第2章』 作者: ゴルジ体
<敷令法>施行から9時間30分後、つまり午前9時30分、守矢神社。
「よし。準備もできたし、行こうか諏訪子」
神社の玄関で靴を履いた八坂神奈子が言う。
「うん。じゃ、早苗。留守は任せたよ」
後ろから洩矢諏訪子が答える。
「ええ、お2人とも、頑張ってきてくださいね。『政府』の席を得られれば、信仰も付随して鰻上りですよ」
その後ろから、白いエプロンを着た東風谷早苗が2神に呼び掛ける。
「ああ、そうだな。きっと選ばれるさ、8席もあるんだからな」
神奈子は戸を開ける。
「そうだよ、早苗。心配しなくても大丈夫さ」
そう言って2神は神社を出て行った。
「・・・」
早苗は台所に向かう。
白エプロンを脱ぎ、ハンガーに掛けると、どさりと椅子に腰を下ろした。
両手で顔を覆う。
「・・・、・・・っ」
早苗は身体を小刻みに震わせ、片手でばん、とテーブルを叩いた。
「っあは、あはっははっはっははは、うひっ、いひひ、えへっあはははっっははああははあははあっはあはは!!!」
笑い声が誰も居ない神社に反響して異様な静寂を生み出す。
「っくくく、うふっ。本当に、ああ、もうこんな素晴らしいことってあるかしら」
早苗は両手を一瞬広げ、それから指を絡めて祈りの体勢を作った。
頭を45度上方へ傾け、色の剥げた天井を見つめた。
「うふふ。あはは、もう、やった。やったのよ。私は。これで邪魔な博麗の巫女は消えたも同然!うざったい白黒魔法使いもよ」
早苗は満面の笑みを浮かべて天井を仰ぐ。
「所詮は下等な人間風情。私があんな扱いを受けていたのはやっぱり何かの間違いだった!何が2Pカラー?フルーツ(笑)?」
どん!と両手をテーブルに叩き付けた。
「クソ以下の人間どもが!この現人神である私に!楯突こうだなんてそんなことはさせない、させてたまるか!私は神。高尚にして神聖な存在。人間如きが干渉していい存在じゃないのよ!」
血走った眼球に、頬が裂けそうなほどの笑みを浮かべて、早苗は高らかに笑っていた。
いつまでも、いつまでも・・・。
東方新政治――第2章――
――リンリン。
湖畔の古城、紅魔館。
静寂が支配する大広間に、ベルの音が響く。
部屋の真ん中には大きな晩餐会用の長テーブルが据え付けられていた。
座るのは、幻想郷各地に君臨する諸勢力のトップ。
『政府』創設メンバー決定の会合。
後に、「幻想省評議会」と呼称される初の会合である。
さて、案件は勿論、『政府』創設メンバーの決定。<敷令要項>の記述通り、8席が用意されていた。つまり、ここで選ばれた8名が、これからの幻想郷の頂点に立つことになる。
出席者のリストを下に付記する。
・八雲紫
・八雲藍
・レミリア・スカーレット
・パチュリー・ノーレッジ
・西行寺幽々子
・伊吹萃香
・八意永琳
・蓬莱山輝夜
・風見幽香
・小野塚小町
・四季映姫・ヤマザナドゥ
・八坂神奈子
・洩矢諏訪子
・永江衣玖
・比那名居天子
・星熊勇儀
・古明地さとり
・寅丸星
・聖白蓮
――リンリン。
二度目のベルの音。
縦長テーブルの一番奥の座席に座る八雲紫が鳴らしたものだ。右隣には藍が座っている。
「えー、ゴホン。静粛に、静粛に」
元から物音一つしなかった大広間に、紫の穏やかな声が流れる。
「うん、では。これより、第一回政府会議を行います」
紫は手元の書類をちらちら覗きながら言う。
「まず、『政府』の名前を決めたいと思います。『政府』なんて呼び方は外界から拾ってきたものだし、格好悪いと思うでしょう」
同意を求める紫だが、誰も応答しない。隣の藍だけが、小さく拍手をしていた。
「ゴホン、ンン。ものは形からと言うでしょう。それでは早速決めてしまいたいと思います。なにか提案のある人は挙手でどうぞ」
再び静寂に包まれる大広間。
しばしの時間、全くの無音状態。
すると不意に、レミリアが手を挙げた。
さっと全員の注目を浴びるレミリア。
「どうぞ、レミリア・スカーレットさん」
紫が事務的に言う。
レミリアは静かに立ち上がる。
「えっと、ナイトメア・フルムーン元老院がいいと思います」
「は?頭大丈夫?」
多分全員が思っただろうが、声に出したのは唯ひとり、比那名居天子だった。
この後の騒動は詳細を語らずとも比較的容易に認識できることと思うが、結果として、レミリア・スカーレット、比那名居天子、巻き込まれた古明地さとりが脱落した。厳密に言えば重症だったため永遠亭に緊急搬送された。
「ちょっといいですか」
仕切り直された会議。初めに挙手をしたのは、四季映姫・ヤマザナドゥだった。
「ど、どうぞ」
紫が少したじろいで言う。
「すみません、政府名の提案では無いのですが、この場を借りて少しお話させて頂きたいと思います」
そこで映姫は一度言葉を切った。
この会議の出席者の中で最も不自然な存在であった彼女の突然の語りに、一同に緊張が走った。
そう、確かに、是非曲直庁幻想郷担当最高裁判官である彼女が、いや、それ以前に彼女の性格からして、このような会議に出席する筈は無いと、その他の全ての出席者が思っていた。彼女の最も身近な存在である小野塚小町でさえ。
いや、さらに言うならば、<敷令法>の施行を許すはずが無い最たる存在である彼女がこの会議に出席したこと――それ自体に、出席者名簿の管理をしていた八雲藍は疑いを抱くべきであった。
「皆さん、私は正直に言わせてもらいますと、今この場で、<敷令法>施行の知らせに嬉々として会議に参加したあなた方、私はあなた方を今ここでひとり残らず――ブチのめしたい心境であります」
出席者たちがざわめく。静かだが間違いなく、これまでに見せた四季映姫・ヤマザナドゥの怒りの中で、間違いなく頂点、つまり、ぶち切れているということだ。
殺気を隠そうともせず、閻魔は話を続ける。
「私個人としては、博麗霊夢のスペルカードルールに賛成していましたし、これ以上に人間と妖怪の溝を埋められるような代替制度など無いだろうと確信しておりました。そのことは八雲紫、あなたが一番実感した筈でしょうに。紫、あなたは幻想郷に何を望んでいたのですか。――忘れられた妖怪たち、人間たちが笑って暮らせる楽園を造りたかったのでは無いのですか」
閻魔はゆっくりと、静かに語りかける。これは紫への言及というよりむしろ、思いのたけを乗せた、楽園の最高裁判長の独白であった。
「私が望んだのもそれでした。ああ、これでようやく人間、妖怪、妖精すべての幻想郷に生きるものが、不安と焦燥に怯えながら暮らさなくてもよくなるのだと、妖怪が自らの空腹を満たすために人の血で手を染めなくてもよい世界になるのだと、スペルカードルール創立当時は思いました。安定した妖怪への食料供給システムも、素晴らしいものだと感心しました」
閻魔は顔を伏せた。
「紫。私は理解できません。何がしたいのですか、あなたは。あなたが一番幻想郷の平和を望んでいた筈。本気でこんな制度を敷設するというならば、私はあなたを罰します」
閻魔は悔悟の棒を取り出し、紫の方へ向けた。
「最後です、紫。さっさとこの馬鹿らしい法律の撤回、及び人間、妖精たちへの謝罪をしてもらいましょうか」
紫は、変わらず座って、少し微笑んだ。
「そうですわね、確かにそう。・・・謝ってもらわなければ、人間どもには」
「――本当は皆殺しにしたかったのだけれど」
ドガッァン!!
紫の言葉の端を聞き取った閻魔は、テーブルを蹴り飛ばして紫に近付く。
出席者たちはとばっちりを受けたくないのか、部屋の隅に集まっていた。
「ええ、うん。私が間違っていた。もう妖怪には、期待しないわ・・・」
悔悟の棒を振り上げる。
「じゃあ、白黒つけましょう?――《審判「ラストジャッジメント」》!」
・・・。
しかし、それは発動しなかった。
「えっ?」
映姫は目を見開いた。
幸いなことに彼女は頭の回転が速いほうだった。
現状、事実として起こったことが何を意味しているか、それに気付いて、自分はここにいてはいけないことを知った。
ドス、ン。
遅い、しかし残念ながら遅かった。
大鎌が、五臓六腑と筋肉繊維を断ち切る音が身体に響いた。鳩尾辺りから飛び出した鋭い刃先を見つめて、
その映像が大脳に伝達される前に、閻魔――四季映姫・ヤマザナドゥは絶命した。
俺だって殺したくは無かったさ・・・
でもえーき様って扱いにくいからやむなし><
ゴルジ体
- 作品情報
- 作品集:
- 17
- 投稿日時:
- 2010/06/07 10:43:17
- 更新日時:
- 2010/07/11 18:27:58
- 分類
- 新政治
- いろいろでる
映姫は死んじゃったけど
ていうかもっとネタで圧死させてくれ
面白いので期待。
この世界観になったら大妖怪が人間を保護(という名の飼育)して領地争いになりそうだなぁ。
白蓮さんは寺で保護しまくる予感。
そして重要な会議で巻き添え脱落するさとりんwww
ともあれ一番真っ当な政治が出来そうな映姫様死ぬとは困ったのう。
潰し合いもしくは暗殺かなんかで
早苗は…あの子つまるところ人間でしょ?
そこまで風呂敷広げないだと。うーん
秘密結社なんかはどう動くんだろ
あるいはポーランドの如く消え去るか
はたまたスウェーデンかタイか、イタリアかルーマニアか・・・
今後の展開に期待です