森の中を3人の少女が歩いている。
・・・いや、正確には、1人の幼女と、2人の少女と言うべきなのかもしれない。
薄ピンクのフリルのついた洋装に身を包んだ幼女が一番偉そうに歩いている。その幼女に日傘をさして、一歩後ろを歩いているのはメイド姿の瀟洒な女性だった。
二人から少し遅れて、肩で息をしながら何とかついていっている不健康そうな少女は、紫を基調としたゆったりとした服を着ていた。
3人が3人とも、森の中を歩くのには不似合いな格好ではある。
「まだなの?咲夜?」
「もう少しでございます、お嬢様」
咲夜、と呼ばれたメイド姿の女性は、うやうやしくそう答えた。問いかけた方である幼女・・・レミリア・スカーレットは、つまらなそうに頬を膨らませる。
「飽きた」
「飽きたと言われましても・・・」
「咲夜、つまんないっ」
歩みをとめて、その場に立ち止まる。そして顔をあげる。ちょうど、咲夜がレミリアを見下ろす格好となった。
「どうして私が守矢の神社になんて行かなければならないのよ?そんなめんどくさいこと、誰か他の人にさせればいいじゃないの」
「ですが」
「白蓮、といったかしら?今回の話を持ってきたのは?そもそも、その白蓮というやつ自体がうさんくさいのよね。仲良くしましょう、だなんて。そんなこと、できるわけないじゃない」
そう言うと、レミリアは口元をゆがませた。口内から、吸血鬼の象徴ともいえる牙が顔をのぞかせる。
「できることなら、今すぐにでも、守矢のやつらの生き血をすすりとってやりたいぐらいなのに」
「ぜはぁっ、ぜはぁっ・・・レミィ、わがままいわないの」
声がする。
振り向いてみると、息も絶え絶えな姿で、紫の魔女、パチュリー・ノーレッジが立っていた。顔中を汗まみれにして、肩が上下に動いている。
「なんで・・・私が・・・こんな山道を・・・」
「無理しなくてもよかったのに」
「ぜはぁっ・・・めんどくさい話は嫌だから、パチェお願いって泣きついてきたのはレミィでしょう?」
「咲夜、あの鳥は何?」
「遠くてよく分かりませんね」
パチュリーの問いを体よく無視すると、レミリアは空遠くを飛んでいる鳥を指差した。咲夜も目を凝らしてみたが、あまりにも遠くてよく分からない。
「ふふん。この森には変な鳥が飛んでいるものね」
「・・・レミィ、ごまかさないで」
「あ、そうだ、パチェ」
ごまかした。
「足元ぬるぬるするのが嫌だから晴れにして、といっていたけど、曇りにすればいいんじゃない?」
「まぁ・・・ね・・・」
どうせこの親友は話を聞くはずがない。分かっていたのに、分かってはいたけど、一言いってやらなくては気が済まなかったのだ。
レミリア・咲夜・パチュリーの3人は、守矢の神社に向かっていた。目的は、「不戦の約定」の再確認をかねて、両神社の親睦をはかるための宴であった。
提唱したのは守矢側の聖白蓮という魔法使いだった。博麗・守矢といがみあっている両陣営の中でも、この白蓮だけが不戦の約定を重視し、また両社の関係を改善しようと努力をしていた。
(どうせ、無駄な努力なのに)
と、パチュリーは思う。
所詮、白蓮は新参者だ。この両神社の間にある深く暗い確執の本質部分までは見えていないのだろう。
パチュリー自身は守矢も博麗もどうでもよかった。
ただ、湿度の調整されたすごしやすい図書館の中で、朝から晩まで読書できていればそれで満足だった。
ただ、親友のレミリアが博麗に力を貸しているので、しぶしぶながら付き合っているだけだ。レミリアにおいても、心の底から守矢を憎んでいるわけではないと思う。レミリアの本質は、ただ「面白いことが好き」というだけなのだ。レミリアが執着している博麗の巫女と、守矢の巫女とが対立しているから、博麗の役に立ちたい、それで楽しめればなお結構、というくらいの気持ちだろうと、パチュリーは見ている。
そしてそれは、おおむね当たっていた。
「はぁ」
パチュリーはため息をつくと、何やら呪文を唱える。
そのための触媒も用意している。パチュリーのゆったりとした服装は、ただ単に自分の好みというだけでなく、服の内側に様々な呪文の為の触媒を隠し入れるのにも適していた。
晴れ渡っていた空が、だんだんと薄暗くなっていく。
どこからか現れた雲が、空を覆っていく。
「日傘はいいわ」
周囲が薄暗くなってきたのを見て、レミリアはいった。
「かしこまりました」
咲夜はそうこたえると、日傘をたたむ。
「もう、先ほどの鳥も見えなくなりましたね」
「そうね」
どうでもいいというように、レミリアは答えた。
「あと少し、歩きましょうか」
「・・・歩くのね」
「館の中で引きこもっているだけじゃなく、たまには外の空気を吸うのも体にいいわよ」
「私は体に悪くてもいいから引きこもりたいの」
「長生きできないわよ」
「こんなにたくさん歩いたら早死にするわ」
「あなたが死んだら、私の眷属にしてあげる」
「遠慮するわ」
パチュリーは笑った。
「私はパチェの親友にはなりたいけど、パチェの操り人形にはなりたくないもの・・・パチェだって、そうでしょう?」
「・・・そうね」
レミリアも、笑う。
「お互い、せいぜい長生きしましょう」
そんな二人の姿を、咲夜は微笑ましそうに見ていた。この3人の中で、一番年下なのは咲夜である。しかも、圧倒的に。
見た目だけでは一番若そうなレミリアが、実は一番長寿であり、すでに500歳は超えている。パチュリーですら、100を超えているのだ。
「咲夜」
「はい」
再び3人が歩き始めて少したった後、レミリアが振り向きもせずに訪ねてきた。
「咲夜も長生きしましょうね」
「出来るだけの努力はさせて頂きますわ」
「・・・咲夜がいなくなるとつまんない」
「光栄ですわ」
「咲夜」
「はい」
「咲夜も、不老不死になってみない?」
咲夜はそっとかぶりをふった。
「私はいつか死ぬ人間ですよ」
「そう?」
「大丈夫、生きている間は一緒にいますから」
「そうね」
3人は歩く。
足取り軽く歩く。
森の中を歩く。
ちょうどその頃。
先ほどみかけた鳥・・・射命丸文が、守矢の神社へとたどり着いた。
■■■■■
「申し訳ありません」
射命丸はそういうと、うなだれる。
急いできた。幻想郷最速の名の通り、誰よりも早く急いできた。
魔理沙よりも早く帰ってきたはずだ。私の勝ちだ。そのはずだ。
しかし。
「申し訳ありません・・・人別貼を盗まれてしまいました」
あの人間め。
いつの間に盗まれていたのだろう?そして、どうして私は気付かなかったのだろう?最後まで気づかずに神社に戻ってくるだなんて。せめて途中で気がついていたら・・・そうしたらあの黒白の魔女を襲い、逆に人別貼を奪い返してやったのに。
「まぁいいわ」
悠然とした態度で、頭の上から声がした。
文は頭をさげたまま、前に座っている女性の足元を見つめていた。
赤。
青。
二つの色で塗り分けられたその特徴的な衣装。
守矢神社の重鎮、八意永琳であった。
「不戦の約定が解かれたのね」
「はい・・・それは確かに」
静かな声。
だが、その声の奥底に秘められたどす黒い情念を隠し通すことはできない。いったいどれほどの年月を生きてくれば、このような境地にたどり着けるのだろうか?10年?100年?1000年?万年?
普段は不敵な射命丸も、この永琳の前でだけは恐縮してしまい体が動かなくなる。
「人別貼を奪われたのは確かに失点ですが、博麗の者よりも早く帰ってきたことで帳消しにしてあげましょう」
そういうと、永琳は立ちあがった。
場所は、守矢の神社の奥深く。
この場には、6人の女性がいた。
すなわち、
月の頭脳・・・八意永琳
狂気の赤眼・・・鈴仙・優曇華院・イナバ
小さな百鬼夜行・・・伊吹萃香
伝統の幻想ブン屋・・・射命丸文
超妖怪弾頭・・・河城にとり
忍び寄る恐怖の気・・・黒谷ヤマメ
卑近なダウザー・・・ナズーリン
この7人である。
「白蓮とさとりは、博麗の者の歓待の為に、今はいない」
そう言いながら、永琳はくっくと笑った。
「博麗の者と共存なんて、なんという夢物語をいうのだろうと、歓迎の宴を設けるだなんて、なんと無駄なことをするのだろうと思っていたけど・・・」
嬉しくてたまらない。
「事態がこうなれば、逆に千載一遇の機会になるわね」
守矢の神社も、一枚岩ではなかった。
主戦派と、穏便派の二つに分かれていたのだ。主戦派の代表がこの八意永琳であり、穏便派の代表が今、博麗の者の歓待の準備の為に席をはずしている聖白蓮であった。
「まずは、先に手を打つのが肝要ね」
永琳はしばらく考えた後に、3人の名前を呼んだ。
「萃香、にとり、ナズーリン」
「「「はい」」」
「あなたたち3人で、霧雨魔理沙を殺しなさい」
普通の口調でいう。まるで当たり前のように、殺せという。
「八意さま・・・その役は私が・・・」
「黙りなさい」
射命丸の申し出をその場で却下する。永琳は冷たい目で文を見つめた。
「あなたは一度、魔理沙に出し抜かれています。もはや二度目はないとは思いますが、今回は駄目です」
「しかし」
「私の言うことが聞けないの?」
「・・・分かりました」
言いたいことは山ほどあるが、永琳を前にしてそれをいう勇気は文にはなかった。
「ナズーリン」
「なんだい」
永琳の問いかけにナズーリンが答える。大きな耳を持つこの小さな賢将は、相手がだれでその口調を変えることはなかった。
永琳も別に気にとめることはない。永琳の頭の中では様々な作戦がひっきりなしに浮かんでいた。ナズーリンを使うのは、その策の中の一つにすぎない。
「あなたなら、魔理沙がどこにいるか分かるでしょう?」
「そうだね・・・無理な話じゃない」
「これは重要な役目よ」
永琳は笑った。
博麗と守矢、何の策もなしに正面から戦ったとして、負けるはずはない。「殺し合いをして、最後に残った方の勝ち」ならなおさらだ・・・なぜなら、私がいるのだから。
しかし、正面からぶつかれば双方に甚大な被害が出るのは当然だ。
永琳には確信はあるが満心はなかった。
冷静に、双方の戦力を分析する。
今、守矢が有利な点は2つ。
1つ目は、射命丸により、今回の事態を博麗の陣営よりも早く知った事。
2つ目は、偶然にも、今、博麗の戦力が分散しており・・・しかも一組はこちらの敷地内にいる事。
「この利点を、最大限に生かしましょう」
永琳が出した指示は2つ。
まずはナズーリンが魔理沙を探し、萃香とにとりの3人で魔理沙を殺すこと。そのことにより、人別貼を手に入れ、また博麗側に情報を渡すことなく戦局を優位にすすめることができる。
そして、今この神社に来ている博麗のもの・・・レミリア・咲夜・パチュリーの3人を殺すこと。
真面目に正面から襲えば、手ごわいだろう。こちらにも被害が出るかもしれない。
しかし、今は、違う。
まさか自分たちが襲われるとは思っていないだろう。
油断しているはずだ。
そして博麗のものを歓待している白蓮たちですら、今の事態を知らない。なればこそ、博麗のものたちも警戒をすることはあるまい。
「楽しくなりそうね」
永琳は笑った。
楽しい。本当に楽しい。
こんなに楽しいのはいつ以来だろう?あの、月からの使者を全員虐殺した時以来だろうか?
「ふふふふふ」
その笑いを合図にして、守矢の陣営は動き始めた。
■■■■■
「畜生。あの鴉、もう見えないぜ」
空を飛びながら、魔理沙はそう毒づいた。
まんまと人別貼を奪ってやった時は気持ちがよかったのだが、それから先がよくない。人別貼を紫に渡すのでまず出遅れ、先の戦いでおられた箒の調子が悪いので更に出遅れてしまっていたのだ。
(どうせ、箒なんてイメージにすぎないのだけど)
魔理沙は箒がなくても飛ぶことができる。しかし、彼女の頭の中で「魔女は箒にのって飛ぶもの」というイメージがあるので、いつも箒を使用しているのだ。実際は箒に何の力もまい。しかし、魔法とは所詮、想像の力でもある。
魔理沙の心の片隅に、「壊れた箒では早く飛べない」というイメージが残っている以上、そのイメージ通りのことが起こってしまうのだった。
(箒が悪いからだぜ。私は決してあの鴉に負けているわけじゃない)
そう思っていた。
本当の私はもっと早い。今の私は本当の私じゃない。
・・・実際には、箒があろうがなかろうが速度だけでいえば魔理沙よりも文の方が早いのだが、魔理沙は決してそれを認めようとはしていなかった。
(まぁ、とにかく)
今は早く、神社のみんなに不戦の約定が解かれたことを伝えるのが先だ。
みんなに会いたい。
会った時に、「まぁ、守矢の鴉・・・射命丸とかいったかな?あいつはコテンパンにのしてやったぜ」と伝えてやろうと、魔理沙は心に決めていた。
風が吹く。
急いで飛んでいるので、魔理沙の周囲にちょうど風が流れてきている。
その時。
弾幕が、飛んできた。
魔理沙は壊れた箒を使って体をひねる。あやうく直撃をする所だった。
背筋に冷たいものが流れる。
(だぜ)
弾幕が怖いわけではない。
弾幕ごっこなら、いつもしている。魔理沙は弾幕ごっこが得意な方だった。神社の誰と遊んでも、ほとんど負けたことがない・・・よしんば負けたとしても、それを素直に認める魔理沙ではなかったが。
怖いのは。
(本気できた、という所だな)
先ほどの弾幕は、一直線に魔理沙を狙ってきていた。
いつものように、「美しさ」を競う弾幕ではなかった。まっすぐに魔理沙を狙い、遊びの威力ではなく、当たれば確実に・・・命を削ることができる威力の、弾幕。
(と、いうことはだ)
魔理沙は考える。
不戦の約定がある限り、誰が見ていない所でも、博麗のものと守矢のものの間で本気の命のやり取りが行われるはずがない。とすれば、先ほどの弾幕をどう考えればいい?まっすぐに命を狙ってくる弾幕。ごっこ遊びではない弾幕。
(あの鴉が先に神社についたということだ)
仕方ない。
それは想定の範囲内だ。
魔理沙は軽口を叩きながらも、冷静に今の自分の立場を考えていた。
(今、私が一番しなければならないことは)
勝つことじゃないい。
神社のみんなに、知らせることだ。
(逃げるんじゃないぜ)
魔理沙は思った。
(勝利のための、一歩前進だぜ。戦略的撤退、というやつだ)
そう考える間もなく、再び弾幕が襲いかかってくる。正確に自分を狙っている。正確だからこそ。
(逆に、よけやすいぜ)
魔理沙は壊れた箒を自在につかい、全ての弾幕をよけていた。
「やれやれ」
あきれたような声がした。
ふと眼を凝らしてみると、耳の大きな女性が、しっぽをにょろりんと振りながら、ふよふよと魔理沙の眼前に浮かんでいた。
「はじめまして」
「ネズミに知り合いはいないぜ」
「だから、はじめましてと言っている」
魔理沙はへらず口を叩いていたが、汗が一筋、頬を伝って落ちて行っているのが分かった。
「ちょっと探し物があるんだけど、知らないかい?」
「ネズミの探し物といえば、チーズかな?チーズならちょうど、この先の人里にたくさんあるぜ」
「残念ながらそうじゃない」
そのネズミ、ナズーリンは笑みを浮かべる。
「私はね、チーズなんて臭いものよりも、人間の味の方が好みなんだ」
「私を食べると食あたりするぜ」
「それは食べてみなければ分からない」
同時に。
巨大な拳が魔理沙を襲ってきた。
「ひゃぅっ」
間一髪でよける。
本当に偶然だった。もう少しこのネズミとの会話に気を取られていたら、首から上が無くなっていた所だ。
「こんにちは」
「・・・あぁ、こんにちは」
巨大な鬼が、そこに立っていた。
「小さなネズミに、大きな鬼か。私も突然、人気者になったものだな」
「人気なのは君だけじゃないよ」
ふよふよと浮かびながら腕を組んだナズーリンが、口元をゆがめながらいった。
「君の持っているお宝、人別貼に用があるのさ」
「人別貼・・・知らないなぁ。それは食えるのか?」
「君が」
ナズーリンはあきれたような表情を浮かべる。
「食えない人間だということは分かった」
巨大な拳が、何度も振り下ろされる。
その全てが、正確に魔理沙を狙ってきている。
質量・速度ともに尋常ではなかった。鬼は、萃香は、嬉しそうに楽しそうに、魔理沙を執拗に狙ってきていた。
「こんなに人気者になるなら」
サインの練習でもしてくればよかった。
と軽口を叩きながら、魔理沙は焦っていた。やばい。やばい。
この目の前のネズミだけならともかく、この鬼はやばい。
箒が折れているからとか今日はずっと飛んでいて疲れたからとか言い訳は置いておいて、自分が最高の状態で最高の気持ちでバイオリズムも最高で朝の占いが全て大吉だったとしても、やばい。
ものが違う。
(これが、鬼)
普段の弾幕ごっこなら関係はない。身体能力の差を埋めるために考え出されたのがスペルカードルールであり、弾幕ごっこであったからだ。
しかし、正真正銘の命のやりとりになると。
(人間は、鬼にはかなわない)
疲れた。
飛びつかれた。
もう、動けない。
魔理沙の動きが鈍った時、まさにその瞬間に、魔理沙のいた場所を巨大な拳が通り過ぎて行った。
ぶぅん。
魔理沙は血の塊となって砕け散り・・・はしなかった。
「おかえり」
「アリス!」
すんでの所で、魔理沙は救い出されていた。
数体の人形が、空に浮かんでいる。
その人形たちは、かわいらしい外見にふさわしくない巨大な槍を手に持っている。
人形たちに囲まれて、魔理沙を抱きしめているのは、黄金色をした髪に紅いカチューシャをとじた、まるで人形のような女性、七色の人形遣い、アリス・マーガトロイドだった。
「これは弾幕ごっこ?」
「見たらわかるだろ?」
「違うみたいね」
「だぜ」
アリスに抱きかかえられたまま、魔理沙は答えた。
軽口を叩いているが、心臓はばくばくと動いていた。危なかった。アリスが来てくれなければ危なかった。
「あんまり遅いから」
アリスが頬を赤く染めながら言った。
「心配だから、迎えにきたの」
「・・・正直、助かった」
「今日は素直ね」
「私はいつも素直だぜ」
魔理沙は答えた。
どくん・・・どくん・・・とくん。
心臓の鼓動が収まっていく。
「アリス、愛しているぜ」
「もうっ」
突然の告白に、アリスは耳まで真っ赤にして答えた。
「こんな時に冗談言わないでっ」
「冗談だと思っているのか?」
「それは・・・そのぅ・・・」
もじもじとしながら答えるアリスが可愛い。
「私も、愛してる」
「今のは冗談だぜ」
「馬鹿!」
アリスから頭を小突かれる。痛い。けれど、気持ちいい。
「これで2対2だぜ」
よくも好き勝手してくれたな。
魔理沙は不敵に笑った。
「2対2?」
ナズーリンが首をかしげる。
「私がいつ、2人って言った?」
血。
アリスの顔が、血で染まった。
金色の髪の毛が、紅く染まる。
「え・・・」
それは、アリスの血ではなかった。
目の前に、臓器が差し出された。
どくん・・・どくん・・・
心臓。
魔理沙の、心臓。
「私たちは、最初から、3人だよ」
魔理沙の後ろの空気がぐにゃりと動いた。
後ろの風景が歪んで見える。
魔理沙の体に、大きな穴が開いていた。
背中から、表へとつながる穴。
そこから、手が突き出されていた。
目の前の心臓は、その手が握りしめている心臓だ。
「ぎょぷぅ・・・」
声にならない声が、魔理沙の口からこぼれた。
ひゅるひゅるという音が漏れてくる。
「光学迷彩スーツ」
魔理沙の後ろのゆがんだ空気がいった。
「覚えておくがいいさ」
空気がゆがむ。
色がついていく。
魔理沙の後ろに立って体を貫いていたのは、守矢神社の妖怪、河城にとりだった。
どくん、どくん、どくん。
魔理沙の体から離れてしばらくたっても、心臓はまだ動いていた。
大動脈と、大静脈が、魔理沙の体と心臓をつないでいるのが分かる。
「チーズよりも、心臓の方が好きなんだけどねぇ」
ナズーリンが笑った。
「食事は諦めよう」
その言葉と同時に。
魔理沙の心臓は、握りつぶされた。
血。
血。
血。
赤。
赤。
赤。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
全身を、好きな人の血で赤く染めて、アリスは叫んだ。
つづく
あと萃香が守矢組なのが不思議な気分w
ついでに、白蓮対白玉楼の続きも待ってます。
あ、あれはカンダタさんの作品じゃなかった・・・ごめんなさい。
格ゲー枠ってことなら萃香が出てるけど
いや、話は面白かったけどw
バジリスクは知らないが興味出てきたなぁ
次回も楽しみにしてます
輝夜きてくれー
スペカルールだとどうしても弱い彼女に救済を(笑)
これ博麗惨敗フラグがビンビンに立ってますな
友人裏切る理由がわからない
他にも微妙な面子がちらほら
まあ本当に考えたら守矢組の面子が足らなくなるんだろうけど
しっかしいつか来るとは思ってたがやっぱステルスつええ
白蓮達がどうなるかも気になる
それはさすがに紅魔優遇すぎないか?