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『要塞の山 前編』 作者: ギョーザ
今日の幻想郷での技術革命は目覚しいものがある。
その理由は突然様々な外界の品が幻想郷に流入してきたからである。大妖怪、八雲紫が暇つぶしにやったとも云われるし、また大結界の異常であるとも云われた。はっきりした原因はわからず、その数は増えつつあった。
家電や自動車や電車その他様々な用品は2000年代のものから1960年代くらいのものまで様々に、兵器や火器類は第二次大戦以前のものから、大戦後10年くらいのものが流入してきた。
人々は自動車に乗り、上白沢慧音率いる人里の自警団は武装化し、小銃を持つまでに至った。これにより、妖怪と人間の立場はかなりその差を狭めることになった
そしてこの外界の技術、特に科学技術の結晶たる兵器の技術に妖怪の山の河童たちが目をつけないはずは無く、持てる技術力をフルに活かし様々なものコピー製造していった。
そんな河童の中でも特に名高いといわれる河城にとりは妖怪の山の要塞化を提案。天狗の各部族長で作る議会もこれを承認した。
守矢の二柱の力を借りて、地底にいる熱かい悩む神の火―霊烏路空の核融合エネルギーによって発生する熱を地上に送ってもらいそのエネルギーによる発電によって電力も確保。これにより更なる技術革新が妖怪の山の要塞化をさらに推し進めることになる。
地下には河童の兵器工廠があり様々な兵器を生産し、山肌には巧妙に偽装して作られたコンクリート製対戦車壕や機関銃陣地。それをつなぐ複雑で迷路のような地下道が無数に掘られ、ハリネズミのように、ドイツ製88mm高射砲を配置した。
しかしながら幻想入りした兵器は大きいほどに故障箇所があり、最初は故障していない箇所を無理矢理合体した兵器をその場しのぎで作っていたが、やがてそれが基になって独自生産されたものが多いので、外界の兵器とは若干の差異があった。たとえば山肌の88mm高射砲は本体がドイツ製、基部が日本製の別の高射砲から取ったものといった具合にである。だが銃器などの比較的小型の兵器は故障箇所は少なく状態は良かった。これはこのあと幻想郷の七不思議といわれることとなる。
それらの兵器を扱うは、哨戒天狗の役目だ。そして極秘裏に一部の地底の鬼を地上に上げる(高射砲の装填手として使うつもりらしい)暴挙に出てまで火力を強化した。哨戒天狗は盾や剣のほかに小銃や短機関銃を装備している。
―――このような重武装化の背景には、二人の人間の影があった。もちろん妖怪の山がこのようになっていることは知る由もない。
「霊夢〜早苗たちのところに行こうぜ〜」
「めんどくさいわねぇ・・・何で?また何か盗むの?」
博麗神社には普通の魔法使い―霧雨魔理沙が遊びに来ていた。どうやら茶を飲むだけではなく、守矢神社へなにかよからぬことをしようと企んでいるところであった。
「おいおい霊夢、盗むんじゃなくて借りるんだよ。わかってないなぁ〜。あそこには外界からの珍しいものが結構あるんだよね」
「そんなもんどうするのよ。どうせガラクタに埋もれて終わりでしょ」
「いやいや。あれをガラクタと言うかね。この貧乏巫女は。あれは"いつか"研究しようと思ってるものじゃないか。」
「それをガラクタと言うのよ。」
貧乏巫女、という言葉は華麗にスルーして霊夢は興味本位で今回どんなものを"借りる"つもりなのか聞いてみた。
「で、今回どんなモンを"借りる"気?」
「なんでも、かなり珍しいものらしいぜ。この前人里に早苗が来て自慢してきやがった。その仕返しも兼ねてるんだぜ」
「それに私が出て何か意味あるの?」
「それが大有りなんだよね。売ると金になるかもしれんだろ。売った金を山分け、ってわけだぜ」
「本当に!?それ確かなの!?本当ならすぐ支度しなくちゃ!あ、でもあんた研究に使うんでしょ。売れないじゃない」
「珍しいものっていってもひとつじゃないからな。ほら!行こうぜ!」
「仕方ないわねぇ〜」
霊夢は言葉ではやれやれといった感じだが、行動は嘘をつけないタイプらしい。嬉々として支度を始めた。もちろん頭の中は金のことでいっぱいだ。急いで妖怪の山へ飛んでいく霊夢と魔理沙であった。時速100kmなど軽く超え、時速300kmほどのスピードで飛行する。
このようなことは外界の物が大量に流入する以前にも何回かあり、そのときはまだ幻想郷では珍しかった冷蔵庫などを"借りて"いた。
そしてこれが天狗が妖怪の山を要塞化することを決定付けた要因であった。
ほかの妖怪に比べ異常なまでにプライドが高く、そんな者たちが人間などにやすやすと山に侵入されるとなると、面目が丸つぶれなのである。今までに幾度も魔理沙と霊夢に侵入をされ、そのすべてが天狗の敗北という苦々しい結果に終わっているのだから、外界の武器の流入、そしてにとりの妖怪の山の要塞化計画は願ってもみない機会であった。
河童という他種族の提案であったが、妖怪の山の妖怪同士であるということで苦渋の決断ながら要塞化を決定したのだ。これが妖怪の山の外の妖怪の提案であったならその場で即刻処刑されていただろう。それだけこの問題は深刻且つ複雑なのだ。
――妖怪の山、麓の上空をを哨戒中の天狗が猛スピードで飛行してくる人影を発見する。背中に背負った無線機ですぐさま妖怪の山の地下司令部に緊急連絡を入れる。
「哨戒天狗部隊第一斑より地下司令部へ。猛スピードで接近する人影を確認。博麗の巫女と黒白魔法使いです。どうぞ」
「了解、発砲を許可する。迎撃せよ、今までの借りを返してやれ」
「了解」
最初の戦闘は山の麓であった。飛行する二人を発見した一匹の哨戒天狗との間に起こった。
肩にかけた日本製の小銃―九十九式小銃を発砲し銃声が轟く。上に向けて威嚇で発砲したため、誰にも当たらない。が、霊夢たちを驚かすには十分であった。
「な・・・銃!?あいつら本気!?」
「そ・・・そんなわけないぜ!どうせ威嚇に決まってる!軽く無視していこうぜ!」
すると、天狗はスッと直進してくる魔理沙に銃口を向ける。
再び一発の銃声が轟く。魔理沙の箒にかけられた雑嚢に穴が開く。
「え!?本気かよっ!でもここまで来て引くわけにはいかないぜ!」
「魔理沙ッ!一旦別れましょ。頂上でまた会いましょう!」
「ああ!」
二人は照準されないようジグザグに飛行しながらそれぞれ別ルートで頂上へ向う。先ほどよりさらに加速した二人は天狗を一気に引き離して。
山中に甲高いサイレンの音が鳴り響く―先ほどの天狗の連絡を受けてのことなのだろう。
戦いは始まったのだ。
――魔理沙ルート
魔理沙はジグザグに飛行しつつもほぼ一直線に山頂を目指すルートを行くことにした。
山の中腹辺りを飛行中再び哨戒天狗、今回は5人掛かりで襲ってきた。
全員手には魔理沙の身の丈ほどもありそうな銃――細身のシルエット、ベルト給弾式で真ん中あたりの給弾口より先は四角形の穴の開いたカバーがついた銃身が特徴的なMG42汎用機関銃が握られている。
全員がジャッと魔理沙に照準を合わせる。この時点で魔理沙と哨戒天狗の距離は200mというところ、5人平行に、魔理沙と向かい合うように飛行してくる。
1丁毎分1200発を超える発射速度で5人の銃が一斉に火を吹き、初速975m/秒を超える速度で魔理沙の目の前にごっこ遊びなどではない純殺意の弾幕が迫る。
だが魔理沙の箒さばきもさるもので、突然きりもみ状態で急降下し、天狗たちの真下につき、すぐに上向きになる。
「恋符!マスタースパァァァク!」
箒の先に取り付けられた八卦炉から極太のレーザーが発射され、真上の天狗たちは全員が被弾、地面に落ちていく。
「ふぅ・・・どんなもんだぜ!」
満足気にその姿を見ている魔理沙の背後に新たな脅威が迫っていることを彼女はまだ知らない。
一方霊夢ルートでは魔理沙への発砲音が山にこだまし、霊夢の耳にも届く。
「派手にやってるわね、魔理沙の奴。とにかくここを抜けな・・・・」
その言葉を言い終わらないうちに霊夢のすぐ横を熱い塊が猛スピードで通り過ぎていく。山に轟音が響く。霊夢が身構えると、近くの山肌からなにやら細長い筒のような物が先から白い煙を上げているのが見えた。どうやら先ほどの弾はその筒から発射されたようである。それが何かを確認する前に今度は先ほどよりも小さい弾が大量に飛んできた。
「あれは・・・何?」
飛び回っているうちに先ほどの筒の横に、大盾から小さい棒が4本ほど同じ方向を向いて突き出ているものから小さい弾は発射されているようだ。
そうこうしているうちにまた筒から弾が飛んできた。持ち前の人間離れした動体視力で瞬時に判断し、目の前に結界を張る。
目の前で弾が炸裂し、無数の破片がばら撒かれる。結界はかなり強力なものにも関わらず、霊夢の外側のほんの少し弱い部分は貫通弾にボロボロにされていた。
(そんな・・・私の結界が・・・こんなに簡単に・・・)
――地上では天狗、鬼連合が高射砲や高射機関砲を猛烈な勢いで操作していた。
霊夢が長細い筒だと思ったのは射命丸文と星熊勇儀の他数名が操作する88mm高射砲だったのである。その十m横には20mmの4連装高射機関砲が設置されている。
「あやや、勇儀さん。さっきの弾は徹甲弾ですよ。アレじゃほとんど効果はありませんよ」
「え?そうだったの?全然わかんなかったよ。すまないな」
「今度から時限信管のほうを使ってくださいね!」
「そう言われてもなぁ・・・わかったよ」
「ほら、今度は霊夢さんの目の前で炸裂しましたよ」
「ああ・・・でもいいのか?これ当たったら、死んじゃうぞ?」
「大丈夫ですよ。大天狗様からも許可をいただきましたから」
「だからって殺すのか・・・お前さんはどう思ってるんだい?」
「別になんとも・・・所詮は人間ですからね」
「これだから天狗は・・・こわいねぇ!」
「そんなことよりもっ装填に集中してくださいね!」
「へいへい」
かなりの重量の弾を片手で軽々と持ち、砲尾に人間の倍近い速度で突き入れる。このようなスピード装填は怪力を持つ鬼ならではの技なのだが。そのために地上に鬼を上げたのである。
「にしても殺すだけなら山ひとつこんなにしなくてもいいだろうにねぇ。どういうことなんだい?射命丸」
「意外なことに大天狗様は新しいものが大好きでして。しかもあの二人は結構強いですから」
「なるほどね。さっさと片付けてまた酒を飲みたいねェ」
人間による操作の倍近い速度で88mm砲は弾を撃ち出す。たまに鬼が気まぐれで弾を撃たないときは、隣の20mm機関砲が弾を打ち出している。
このような88mm1基20mm1基の態勢が妖怪の山全体にあり、霊夢たちが頂上に行くためにはこのエリアを避けては通れない。
―霊夢の霊力はかなり削られ、碌な結界を張れなくなっていた。
気づけば山のいたるところから突き出た筒が霊夢を狙っていた。
「ハァッ・・・!なんで・・・・こんッ・・なことに?」
元はといえば魔理沙の誘いに乗った霊夢が悪いのであるが、紫の気まぐれも原因としては大きいであろうことは今の霊夢には知る術などない。
「逃げなきゃッ・・・殺される・・・!」
重火器の威力は霊夢の想像していたものよりはるかに大きく、苦しいものだった。20mmでさえも霊夢の結界を少しずつではあるが削ってゆく。
―背中を見せれば殺されるッ
いよいよ血迷った霊夢は霊力を結界に回すのを止め飛行に専念することにした。
だがその読みは当たったようで、飛び回って回避に専念するほうが霊力の消耗は少なかった。
相手は信管の設定に少々時間がかかるので、あまり弾を撃ってはこなくなった。しかしそれでも十発ほどは飛んでくる。
霊夢の疲れがピークに達しようといているとき、少し離れたところで砲弾が炸裂。彼女の指先と太ももに衝撃と灼熱感が走る。すぐに見やると指は中指があらぬ方向に折れ曲がり、小指と薬指は付け根の肉ごと醜い切断痕を残し吹き飛んでいた。太もものほうは裂傷だけで済んだようである。
「え・・・?いやあああぁぁぁぁぁぁ!指!私の・・・私の・・・指・・・」
この一撃により霊夢の精神は崩壊、涙を流し、怯えた表情のまままっすぐ飛びながら、頂上まで一直線。
対高射砲ではまっすぐ飛ぶことはすぐに捕捉される原因となりあまりよろしくない。故に霊夢に狙いを定めるのは簡単であった。
山肌にハリネズミのように据え付けられた88mm高射砲や20mm機関砲、そして割と霊夢に近い地上の天狗の小銃や機関銃が一斉に火を噴く。
(!・・・しまった・・・)
時既に遅し。すさまじい発砲音に我に返った霊夢であったが、目の前を埋め尽くす鋼鉄の弾幕に視界がスローモーションになる。
(あの弾ってこんな風に爆発するんだ・・・綺麗かも・・・)
信管が作動した何百発もの88mm砲弾は炸裂し、一発につき何百という破片をばら撒く。20mm機関砲弾はそのまま直進を続ける。天狗達の放った小銃弾や機関銃弾も同様に進む。
一瞬のうちに破片や弾丸は霊夢の服、巫女棒、リボン、そして彼女自身の身体にめり込み、引き裂き、肉の華を咲かせる。動体視力のいい天狗たちには、一瞬だけだが、爆発の火の中に紅魔異変のときのように真っ赤な霧を見たかもしれない。それもすぐに衝撃波で消し飛ぶ。
霊夢がいたところを鉄の暴風が過ぎ去った後、そこにはもう既に彼女の姿は無かった。あるのは砲弾の炸裂で生じた煙のみ。
「さようなら、霊夢さん。これでやっと一人消えましたね」
空中の煙を写真に収めながら射命丸文はつぶやく。もちろんとなりにいた勇儀もそれが聞こえる。
「え?今なんて・・・?」
「いやいや、なんでもないです。ただの独り言ですから」
にこり、といつもの営業スマイルで返す射命丸、勇儀は解せなかったが、とりあえず今のところは聞かなかったことにする。
(ああ・・・霊夢・・・もう一回地底に来て欲しかった・・・)
勇儀はぼうっと空を仰ぐ。そこには消えかけの煙しか無い。
「紫様、たった今妖怪の山から連絡がありまして、霊夢を撃破したそうです」
「そう、霊夢がね・・・わかったわ。下がってなさい、藍。ご苦労様」
「ひとつ質問が。これで一応次期博麗の巫女を決められるわけですが、もう一人の少女、たしか魔理沙とか言いましたっけ?彼女はどうします?」
「あら、そんなものもいたわね。いいわ、天狗たちに任せましょう」
「了解しました。では引き続き妖怪の山との交信を続けます」
マヨヒガの一室で肘掛つきの椅子に深々と腰をおろすは幻想郷の管理者とも言える大妖怪―八雲紫であった。
深く息を吐いた後、ぽつりと呟く。
「さようなら、霊夢」
ども、ギョーザです。
幻想郷に兵器が流入してきたらどうなるか?ということを考えて見た結果がこれだよ!
兵器のチョイスは自分の好みです。
兵器の表現等がわかりにくい上に稚拙かつ突っ込み所もあるかと思いますが、許して下さいまし。
あとよくよく考えたら霊夢の行動がなんだか動機不順ですが、思いつきで書いたのでご容赦ください。
前書いたものも前編後編に分けたけど、一気に長文を書き上げる人ってすごいと思います。
ギョーザ
- 作品情報
- 作品集:
- 17
- 投稿日時:
- 2010/06/13 07:21:45
- 更新日時:
- 2010/06/13 16:21:45
- 分類
- 霊夢
- 魔理沙
- 軍事
装備は対空
連装対空機銃に高射砲
短機や軽機もった天狗は要撃機となり、さらに偵察観測連絡も行えると
あとは、車と電力ですか
後編が楽しみ
軍事話は漢字が多くて単語が長い
対空砲を黙らせるには30000ftぐらいからJDAMを落とすしかない
あの二人では無理だな