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『東方スカ娘A『水蜜が水密って水満ちて水漏れするお話』』 作者: おたわ

東方スカ娘A『水蜜が水密って水満ちて水漏れするお話』

作品集: 17 投稿日時: 2010/06/13 17:33:49 更新日時: 2010/06/15 05:07:32
あああぁぁ、最悪だ。まさか、まさかだ。まさかの事態だ。まさかの緊急の事態だ。
これは、私が舟幽霊となってからの人生において、あの方に会ったとき以来、二度目のターニングポイントとなるだろう。そのくらい、緊急を要する事態だ。

今思い返せば、私が今日行ってきた行為全てが今に至るまでの伏線だったのだ。私はその巧妙に仕掛けられた伏線を見事回収しきったという訳だ。
まず持ちかけられた話を断らなかったのが事の始まりで、あの娘の暴走の成すがままに着いて行ってしまったのも私の過ちで、そしてなにより、アレだ。アレに関しては私の失策なのだろうか、いいや、そんな訳がない、ないよ。今は季節の変わり目、初夏の候。先月とは打って変わっての猛暑に私の冷たい身体は拒絶反応を起こしていた。だから、つい、ああしてしまった訳で、決して私は悪くない。全部あの娘が悪いんだ、全部あの娘が悪いんだ、全部あの娘が悪いんだ……



「さっきからなんの呪文を呟いているのさ」
「うぇ?」

例の娘――ぬえが私にそう問いかけてきた。

……自分でも思うのだが、思った事を直ぐに口に出してしまう癖を直す方法はないのだろうか。
誤魔化しが得意でない私がいくらこの癖に悩まされた事か。
ううぅ、今はあんまり話したくないのに。自分の悪癖とぬえの地獄耳を恨む。

「鬼打ちの呪文? それとも殲滅の呪文かしらねぇ」                                                                  
「あ、うあぁ、な、なんでもないよ」
「……ふーん? まあ、いいけどさ」

あぁ、まずい、まずい。なんとか凌げたけど、まずい、まずい。
ああ、この苦しみ、どう伝えればよいのだろう。伝えようにも思考がある一点のみに集中してしまい、他の物事がうまく考えられない。
歩くだけで全身にビリビリとした衝撃が走るといったら良いか、喋るだけで下腹部がドコドコと殴られているような感覚に襲われるといったら良いか。



あああぁあぁぁああぁああぁ。
こんな事、考えるから駄目なんだ。余計な事を考えちゃダメ。それは己の崩壊を早めるだけ。
集中、集中、気を落ち着かせて、落ち着かせて、無心、無心、無心、何も考えるな無心無心無心!



「なにか調子悪そうね」

無理矢理落ち着かせた私の精神を再び乱したのは一輪であった。
普段ならその一言は心に染み入る温かい言葉となりゆくのだろうが、今の私には雑音以外の何物でもない。

「そうなら、無理は厳禁よ?」
「だ、大丈夫、だから、気にしないで」

当然、大丈夫な訳が無いのだが、少し震えた声色でそう答える。
お願いだから、私に問いかけないで、注意を向けないで……。

「あ、もしかしてさ、怪我してるのを我慢してる? だって、さっきから動きがおかしいもの。
 遠慮せずに言ってごらんなさい。見てあげるから」


くぅぅ、性懲りもなく話しかけてくる……。
一輪に悪気がないのは分かってる。そもそも、悪意を持って人を心配する輩なんていないだろうし当然だが、どうしても怒りを覚えてしまう。
そりゃあ、もう、錨をぶつけてやりたいくらいに……。と、しょうもない冗談が言えるくらいには、まだ余裕があるのだが、これも後になくなるであろう。

しかし、一輪の言っている事は半分正解なのだ。確かに、私はある事を我慢している。


でも、我慢せず言ってくれなんて一輪は言ってるけど、言えないよ。
遠慮せず言ってくれなんて、言ってるけど、言えない、よ。

だって、何を我慢してるかというと、

怪我なんて大層な事ではなく、


その……


えっと……






おしっ、こ、を我慢してる、なんて……口が裂けても、言えないもんね……。
 




「もし、ムラサ? 黙ってちゃ分からないわよ?」
「わっ!」

防波堤を越えぬばかりの勢いで押し寄せてくる荒波を寸前のところで引き戻す。
急に話しかけられただけでこれなんだから、自分がいかに切羽詰まった状況に立たされているのか理解できる。

「な、なな何でもないっ! 何でもないってば!」

しつこく何度も問いかけてきた一輪に対し、少し強めにそう答えると、怪訝そうに眉をひそめ、「そう」と一言だけ呟き、釈然としない表情で前を向いてしまった。
べ、別に怒らせるつもりはなかったんだけど……。

やはり、一回窮地に陥ると何をやってもうまくいかない。負はスパイラルとなり連鎖するのだ。だから、こういうときは変にアクションを起こさないに限る。悪い流れをやり過ごし、やり過ごし、いつかやって来るであろう助け船を待ち、スパイラルからの脱出を図るのだ。
我慢強く耐え忍んだ者こそが幸せを掴む、聖がよく仰っていたお言葉、私の考えの基となったものだ。
だから私は如何なる事が起きようとも動揺しない事を心情にしている。
絶対に慌てふためない。



たとえ今が、



「んで、この竹林、出口が見えないんですけどー」







おしっこを必死に我慢している最中にも関わらず謎の竹林にて迷子になっている最中であろうとも。




「ぬえ、こうなった原因はあなたでしょう? 
 愚痴を言いたいのはこっち。もう門限はとっくに過ぎてるし、あー姐さんに叱られるー」
「大丈夫大丈夫、こんなちっぽけな事でカリカリしてる一輪よりよっぽど白蓮は優しいし寛大なんだから、私達を叱る筈がないよ。
 むしろ心配したんだからーって抱きつかれるくらいよ」


一輪とぬえが話し始めた。
丁度いいので状況を整理しよう。

ここは名も知れぬ竹林。
ぬえに人里の近くに面白そうな所があるから遊びに行こうと誘われ、一輪と三人でやって来たはいいもの、
広く、どこを歩いても目印になるような物はなく、迷いやすい条件がとにかく揃っているのだ。予めこんな場所だとわかっていれば方位磁石の一つでも用意していったのだけど……。船を扱う者とて不覚である。
さらに付け加えるなら全く、全っ然! 面白い場所ではない。ある物は竹と偶に遭遇する野生? の兎。ただそれだけ。何故だかはわからないがぬえはこんな場所に来て割と楽しそうである。いや、ほんとなんで何だろう、何が楽しいんだろう。

まあ、ここで迷ったとして私たちは妖怪。人ではない者に襲われる事はないし、お腹が空いて、喉が渇いて苦しむ事もない。
本来なら、心配な事といったら、余りのつまらなさによる精神的懸念と、一輪の言った通り聖に怒られる事くらいなのだが、
私の場合、その……もの凄く、本当に、おしっこが出てしまいそうなのだ。
今は夏。暑くて堪らなくて、それに外に出たらもっと暑いだろうし、この竹林にやって来る前に無駄に多くの水をゴクゴクと飲んでしまった事も相極まって、もうギリギリだ。
今こそ落ち着いているが、またいつ壮絶な荒波が私の膀胱をドンドカ叩き始めるかと思うと。あぁ、怖い!
普段仲良くしている二人の前で、漏らしてしまった自分の姿を考えると……。血筋がみるみるうちに引いてゆく。

空高く飛んで脱出を図ろうとも考えたが、森や林の上空にはたいてい妖怪と人間を見境なく食べてしまうような、知性や品の欠片もない低俗な妖怪がゴロついているのだ。
ここもその例に漏れず、時たま凄まじい叫び声が上空から聞こえる事から、人の形すら成してないような妖怪がたむろっている事が安易に想像できる。空は妖怪の巣窟である。



だから仕方ないが、一歩一歩、どこにあるのかも分からない出口に向けて、身体に衝撃を与えないように、慎重に、確実に歩いて行くしかない。

そう、慎重に。慎重に、慎重に……


「危なあああぁぁあぁぁい!!」
「ひっ、ひゃぁあぁあぁあぁぁぁああ!!!」

くぅぅぅ……。慎重にと思った瞬間これだ。ぬえが勢いよく私に突っ込んできた。
1メートルは吹っ飛ばされただろうか、堅い竹に思い切り後頭部をぶつけたところで急停止した。
ぐぐぐ、頭が重い。でもここで気を抜いたら……。

そして痛いを耐え忍び目を開けた瞬間、私はある異変に気付く。


「つめ、た、い……?」

そう、下着に、普段はない、あってはならない感覚があるのだ。

“冷たい”感覚……。




もしかして、やって、しまっ、た……?




い、いや、いや! そんな筈がない。そんな訳がない!
液体が流れる感じもしないし、ちょっと、ちょっと冷たいだけだし。そ、そう、私が、この歳にもなって、も、漏らしちゃう訳なんて……。


違う違う違う私に限ってそんなはしたない事しないする筈ない
これはきっと何かの間違えもしくは夢もしくは幻そうじゃなかったら現実以外の何かに違いない
だ、駄目、動揺するな聖にを言われたじゃないか冷静になって冷静になって
落ち着い、おち、落ち着……うああ、やっぱり落ち着けないよおおおおおおおぉぉぉ



「ぬえ! ムラサ! 怪我はない!? 
 くっ、悪質ね、尖り矢トラップなんて。いったい何処の誰が……」
「私は大丈夫。ムラサも怪我は……!! ど、どうしたムラサ!」


目の奥が熱くて堪らなかった。


「うくっ、うっ……はっ、ぐぅぁぁ……」


恥ずかしさ、惨めさ、辛さ、色んな要因が重なった。
下以上に顔がびちゃびちゃになった。


「あなた、何故泣い……」
「ふぐっ、くぅぅ、ぅぅぁ、あっ」


問いかけようとする一輪の声を遮るように泣き声を上げる私の姿は、誰がどう見ても見苦しくて醜かったと思う。


もうやだ、やだよ。さっきの衝撃で下も限界。もう一歩でも動いちゃ出ちゃう。
きっとこのままもっといっぱい漏らしちゃって、もっと醜い姿を二人に見せてしまう事になる。
めいっぱい笑われて、めいっぱいからかわれて、めいっぱい馬鹿にされて、聖にもバラされて、想像できないくらいの最悪の末路を迎える事になる。
もう悪い事しか考えられなくて、悪い事を考えると涙が出て、涙を止めようとしたら余計出てきて、もうわからない。何もかも、わからないっ……。


二人はどういう顔して私を見ているんだろう。
馬鹿にした眼差しだろうか、侮蔑した眼差しだろうか。それとも見捨てて行ってしまったのかな。

涙を止めるのやめて、そっと、静かに、滲んだ二人の姿を確認する。







「いこ、ムラサ」






目の前に広がる光景は予想していたものとは180度違った。
まるで悟ったかのような優しい笑みで、倒れこんでいる私に手を伸ばしてくれる二人の姿が、そこにはあった。


「どうして、どうして……」
「どうしてって……。仲間でしょ、私達。それ以上の理由がある?」
「あら、ぬえ。あなた、そういう事言えるのね」
「ちょ、ちょっと、変な事言わないでよ! その……恥ずかしいじゃん」
「うふふ。さ、帰りましょ。姐さんに星にナズーリン、皆私達を待ってる筈よ」


また、涙が止まらなくなった。
でも今度は違う、涙とともに湧いてきたのは卑劣な感情ではなく勇気だ。


今ならきっと我慢できる。漏らしたりなんかせずに、寺に帰れる! 
まったく確信はない、でも何故だかそう思ってやまなかった。


一輪が差し伸ばしてくれた手を、ぎゅっと、大切に掴んで、立ちあがろうとし……なっ!

立ち上がれない……?
なんで、どうして、力が……力が、入らない。さっき頭をぶつけたせいだろうか、体中に、力が入らない。
無論、下腹部にも……。

なんで! やだ! 嫌だっ!
ここまで皆が支えてくれたのに、どうして! お願いだから、私の身体、言う事聞いて……!


「あっ、くぅぅぅぁぁぅぅぅ……」
「ん、どした?」


もう、だめ、でちゃ……


「お、おねが、みな、見ない……」



涙と一緒で、止めようにも止まらなかった。
私は、やってしまった。


「ム、ムラ……」
「ひうっ、ぐすっ、止まって、見ないで、止まって……」


愛用の白いキュロットが、黄色く染まっていく。
キュロットではカバーしきれなかった分の液体は地面に流れ込み、茶色い土の色ををこげ茶色に変えていく。
その光景を、私は直視できなかった。
両手で顔を覆った。


「なんで、どう、して、止まらない、のぉ……」


意思に反し流れ出ていく液体を、結局私は最後まで止める事が出来なかった

全てを出し切ったとき、私に残ったものは虚無感だけだった。正に空っぽだった。
涙すらも枯れ果てて。
内なる感情を押し出す事すらも億劫に感じて。
空気の流れすらも止まったように感じた。

5分は経過しただろうか、死んだような時の中、私は固まって動けなかった。


「ごめ、ん、なさ、い」


ようやく動いた口から無意識に発した言葉は「ごめんなさい」だった。
きっと、それ以外に言う言葉が私の惰弱な脳では考える事ができなかったんだと思う。

「ごめん、なさ、い。ごめんな、さい。ごめ、んな、さい」

壊れたラジオのように同じ言葉を繰り返し呟いた。
皆の優しさを無駄にしてしまったという念に、私の心ははち切れそうだった。

もういっそ、この世からもおさらばしてしまいたい。
そう思ったとき、



「いこ、ムラサ」



さっきと全く変わらない笑顔と言葉で、二人は私に手を差し伸ばしてくれた。


「でも、私、きたない、よ……」


このとき、私は捻くれていた。
こんなおしっこ塗れの穢い私の身体を、後光が差して見えるほどに綺麗な二人に触れさせる訳にはいかない。
二人の優しさをふいにしてしまうような発言をしてしまった。


「そんなん関係ないじゃん、だって私達」
「仲間だもんね」
「あ、こら、とんな! 私のセリフ!」


そんな私にすらにも、二人は優しく接してくれた。

いつも私と仲良くしてくれた一輪。今はいつも以上にその笑顔が温かくみえた。
いつも私に悪戯ばかりしてきたぬえ。今だけは過去の悪事全てを許してやってもいいと思えた。


枯れ果てた筈の涙、もう一滴も残ってないと思ってた水分が、身体から目を通し抜けていく。


「ほら、泣かない。まずはそれ脱ご? 替えがあるから」


もうぬえと一輪に足を向けて寝られないなぁ。
そう思いながら、私は泣きながら自然と笑ってた。





































その後、バラさないと約束した筈のこの事をぬえが皆にバラしてしまい、私が幻想郷の皆の笑い者になった事は言うまでもない。
遅刻してしまいましたが、2回目のスカ娘(実質3回目?)も凄く楽しかったです。
皆さんは全作品、読まれましたか? まだ読まれてない方は祭りの余韻に浸っている暇はありませんよ、是非お読み下さい。どれも素晴らしく面白いものばかりですよ。
数少ないお祭り、骨の髄まで楽しまなければ損ですよ。
おたわ
作品情報
作品集:
17
投稿日時:
2010/06/13 17:33:49
更新日時:
2010/06/15 05:07:32
分類
東方スカ娘A
村紗水蜜
おもらし
村紗水密
村紗水満
村紗水漏
遅刻お許しください!
1. ぐう ■2010/06/14 11:42:18
ということは、前回(バレンタイン)の漏らしたこともぬえは喋ってしまったってことか。
さぁ村紗、どう動く?
2. うらんふ ■2010/06/14 14:16:41
舟幽霊がおもらし♪
そしてぬえよくやった(笑)
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