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『逃走者 三』 作者: 名前がありません号
大妖精、チルノと他3名の妖怪で足がかりは作った。
いよいよ本腰を入れていこう。文はそう考えた。
ここから先は今までよりもさらにランクをあげる事になる。
野良の妖怪などではなく、上位の妖怪や名のある人間、すなわち何処かの勢力に属する者も対象になる。
そうなれば、当然リスクは増えるだろう。
だが、ここまで上手くいっているのだ。
それを今更やめられるわけがない。
幾らでも踏み台にしてやればいい。
文は人里に新しい逃走者候補を探しにいった。
文が人里に行くと、そこで珍しい光景を目にした。
人里の花屋に居たのは、風見幽香だった。
そこの花屋の娘と幽香が、楽しく談笑している姿が見えた。
以前から、幽香があの花屋に花を届けている事は知っていたが、
あそこまで、親密だとは思わなかった。
まるで姉妹のようにも見える。
ふむ。これは使えるかもしれない。
とはいえ、これはお預けだ。
これだけでは親密の度合いがわからない。
もう少し幽香と彼女の関係を調べておこう。
そうすれば、幽香を逃走者に招待できるかもしれない。
思わぬ収穫を得たが、それ以外にはこれといった物は無かった。
別の場所に行こうと人里から出る途中、文は慧音に声を掛けられた。
「おや、慧音さん」
「随分と盛況のようだな、あの遊戯は」
「ああ、【逃走者】ですか。おかげさまで」
「あれでもう少し穏便な遊戯にしてくれればいいのだがな」
「何のことでしょう?」
「お前の遊戯に参加した妖怪や妖精が行方不明になっていると聞く。何かしたんじゃないのか?」
「いえ、何も? でもまぁ、そういう輩も出てきますよ。嫉妬してるだけですって」
「だと、いいのだがな……」
慧音は文に疑いの眼を向けつつも、
確信がないのか、すこし考え込むような表情になる。
「もうよろしいですか?」
「ああ、引き止めて済まなかったな」
文にそう言われて、慧音も考えるのを止めて、文にそう言った。
飛び立った文を見て、慧音はまた考え込む。
元々、慧音は文が提示してきたゲームの内容については否定的だった。
しかし、里の有力者の多くは里の金銭収益に繋がる、娯楽提供の一環だとして説得され、了承した。
が、ゲームの内容については、収支報告以外に慧音に届く資料は殆どない。
まるで何処かでせき止められているかのように。
「何か知られたくない事がある、という事か……」
とはいえ、まだ情報は少ない。
文に気取られぬように、慎重に動く必要があるだろう。
慧音は慎重に、逃走者についての情報収集を続けた。
文が次に向かったのは、紅魔館であった。
しかし文は、逃走者探しには来ていない。
追跡者だ。既に逃走者のアテは作ってある。
何せあの“白黒ネズミ”は友人も多いが、敵も多い。
あとは魔女が乗ってくれば、次のゲームのマッチメイクは完了する。
文は門番の紅美鈴に挨拶をして、紅魔館へと入っていった。
玄関先にはメイド長が居た。
「あら、天狗じゃない。何しに来たのかしら」
「文って呼んで下さいよ、天狗って味気ないですねぇ」
「別に私は貴方と親密になった覚えはないですので」
相変わらず、距離感を感じる相手だ。
まぁ確かに彼女とは親密ではないのは事実だ。
彼女の主とは仲良くしているが。
「それで、今日は何の用事? お嬢様とお茶するの? それとも取材?」
「いえ、パチュリーさんにお会いしたいと思いましてね」
「パチュリー様に? 珍しいわね」
「今、いらっしゃいますか?」
「いるわよ。あの方は滅多に出かけませんので」
本の虫、パチュリー・ノーレッジ。
本の山に潰されて死んでも、喜びそうな読書中毒者である。
そんな読書中毒者が最も嫌う相手こそ、白黒ネズミこと霧雨魔理沙である。
紅魔館の定番ともいえる、図書館からの本強奪は既に数百件に昇っている。
週1の時もあれば、酷い時は一日に何度も強奪しに来るなどという事もある。
快活な性格で人に好かれるタイプではあるのだが、
そうした手癖の悪さと素行の問題から、たくさんの敵を作るタイプでもある。
そのため、彼女に対する印象はかなり極端になりやすい。
だからこそ、第三の逃走者のターゲットとなった。
そしてその制裁を下す人物も決めていた。
その一人がパチュリー・ノーレッジである。
文はメイド長に案内され、大図書館の前に来た。
扉を開けると、いつものように本を読みふけるパチュリーが居た。
「あら、珍しい。いつもはレミィと遊んでいるのに」
「今回は貴方にも用があるのですよ、パチュリーさん」
「“も”ってことは、レミィにも用があるのね」
「ええ、色々と」
パチュリーは本を読みながら、文の話を聞いている。
パチュリーはジャンキーである。
本を話すと禁断症状を起こすほどのジャンキーである。
そのため、人と話す時も本を手放さない。
実際、弾幕ごっこをしていても手放さない。
もう色々と駄目な魔女である。
「霧雨魔理沙さん、どう思います?」
パチュリーの本を捲る手が止まった。
その後、手がわなわなと震えている。
「……今日も、持って行かれたわ……!」
本に隠れて、顔が見えないがさぞお怒りのようだ。
パチュリーもそれとなく対策をしてきたが、ことごとく失敗している。
「なるほど、それは怒り心頭なお話ですね。では、その魔理沙さんに復讐できるとしたら、どうします?」
「!」
パチュリーが反応した。
これは脈ありかもしれない。
「詳しく話を聞かせて頂戴」
「ええ、それではですね……」
文は簡潔にゲームの内容とルールを説明する。
「ああ、貴方の新聞に書いてあったわね、【逃走者】がどうたらって」
「おや、読んでいただけたようですね」
「他はくだらなかったから、捨てたけどね」
「………」
文は怒りを堪えて、パチュリーに提案する。
「どうです? 魔理沙さんにはこれまでも辛酸を舐めさせられてきたんです。復讐してもいいのではないですか?」
「悪いけど、ノーね」
「何故です?」
「魔理沙に復讐したいのは山々だけど、外に出るのは嫌よ。疲れるし」
「………」
何処まで自堕落なんだ、この魔女は。
復讐よりも動くのが面倒。
まさに動かない大図書館である。
最もその辺を文が考えていなかったわけではない。
「では、紅魔館の敷地内で、というのはどうでしょう?」
「敷地内?」
「そうですね、中庭などいかがでしょう」
「……レミィに用事っていうのは、それのことね」
「ええ、まぁ」
元より今回のゲーム自体、個人の復讐であるから、
わざわざ敷地を用意せずに、ここを使ってしまえばいいだろう。
レミリアも逃げ回る魔理沙を見て、楽しめるのだ。
あながち悪い提案ではないだろう。
「いいでしょう。ただし、レミィとの交渉が失敗したら私の話を無かった事にしてもらうわ」
「ええ、わかっておりますよ」
パチュリーとは約束を取れた。
後はレミリアだ。
「いいよ」
「はやっ」
「止めた方がよかった?」
「い、いえ、ありがたいですけど」
レミリアのあんまりな程の即答に流石の文も驚いた。
「本を盗まれるたびに意気消沈するパチェの姿を見ていたら不憫でねぇ」
「確かに……数百冊と盗まれれば、なかなかきついものがありますね」
「ま、それにあまりに易々と入ってこられるのも正直気分が悪いところだ。そろそろ痛い目にあってもらわないと」
レミリアとしても、魔理沙の侵入は歓迎すべきところではない。
フランは楽しんでいるものの、魔理沙自身は煙たがっているし、
美鈴は侵入のたびに花壇を荒らされて、修繕に走る姿に哀愁が漂い、
館の中を暴れまわるせいで、メイド長の余計な仕事が増える。
レミリア自身には被害はないが、部下の被害は上司の被害である。
最早、魔理沙はただの害虫である。
「まぁ中庭に被害が出るとまた美鈴が泣く事になりそうだけど、魔理沙がいなくなればその心配もいらないでしょ」
「確かに……」
「その分、私は特等席で見物させてもらうよ」
「中継の方はよろしいですか?」
「構わないよ。魔理沙の無様に逃げ回る様を喜ぶ奴らもいるんじゃない?」
思いのほか交渉は進み、紅魔館での第三ゲームが決定した。
あとは霧雨魔理沙、となる。
とはいえ、彼女が欲しいものは何だろうか。
それさえ手に入れてしまえば、彼女を招待できるだろう。
あれで、そこそこ警戒心は強いので、あまり下手な言葉では乗ってこないだろう。
ふと文は、魔理沙は香霖堂の店主、森近霖之助と仲が良かったのを思い出した。
これは利用できるかもしれない。
紅魔館を出て、香霖堂へと向かっていった。
文が香霖堂に向かうと、いつものように店主が居た。
いつものように本を読んでいる。
魔理沙はいないらしい。
「おや、新聞ならお断りだよ」
「ああ、新聞勧誘ではありませんよ」
「じゃあ、何の用だい? 特に取材をするような面白い物は何も無いんだが……」
「いえいえ、私として……霖之助さんに興味がありますよ」
「……質の悪い冗談だね」
興味なさげに、霖之助は本を読み直す。
文はそんな霖之助を気にする事無く、近くに擦り寄ってくる。
「何故、そんなに近寄ってくるのかな、君は」
「霖之助さんも、興味はないんですか? こういうこと」
「……はぁ。そういうのは勘弁して欲しいね。そんなことをされても新聞は……」
「いえいえ、新聞は取っていただかなくても構わないので……」
「……ッ。本当に冗談はやめてくれっ」
「そうおっしゃらずに……」
そうして霖之助の股間に文が手を出そうとした時、
「まてぇぇぇ!!」
叫び声のような声を上げて、香霖堂に入ってくるものが居た。
霧雨魔理沙だった。
「な、なななななにしてる、そこの天狗! 香霖から離れろ!」
「えー? 別にいいじゃないですかぁ」
「香霖が迷惑しているだろ! いいから離れろよ!」
「仕方ないですねぇ」
文は霖之助から離れていく。
ふぅ、と霖之助は安堵の溜息をつく。
「別に私が霖之助さんに迫っても、魔理沙さんは困らないでしょ?」
「べ、べつにそんなことは……」
「僕にとっては大いに迷惑なんだが」
「そ、そうだっ! 香霖には迷惑なんだよ!」
「えー、でもくっつくのは自由じゃないですかー」
「香霖に自由がないだろ! ……私だって、そこまでしてないのに」
文は魔理沙が怒りに我を忘れている様子を見て、
これはいけるなと思い、話を切り出す。
「それじゃあ、ゲームをしましょうよ。それで白黒つけましょう」
「ゲーム?」
「人里で今私がやってるゲームです。ご存知ありません?」
「いや、知ってるぜ。随分趣味が悪いと噂のな」
「それはまた偏見ですねぇ。ともあれ、そのゲームで勝ちましたら、私は霖之助さんから手を引きましょう」
「いいぜ、自慢じゃないが逃げ足だけは一流なんだ。誰が相手でも逃げてやるぜ!」
それは自慢なんでしょうか。文はそう思いつつ、魔理沙が網に掛かった事を確信した。
紅魔館では、河童達が着々と作業を進めていた。
パチュリー監修の元で行なわれる中庭の改装作業を、美鈴も手伝っていた。
花の類は館の屋上に移動させた。
とはいえ中庭が壊れたら、当然修繕するのは美鈴なので、心労という意味では気休め程度である。
そんな作業の最中、にとりは見知った天狗を見つけた。
犬走椛。哨戒天狗の仕事の合間をぬってやってきたらしい。
「あれ、椛。いたんだ」
「差し入れですよ。皆頑張ってるみたいなので」
「ふぅーん」
椛が差し入れに来てくれたらしい。
そういえばこの所は、企画所に篭って文と共に色々な設備の製作をしていて、
自分の工房に帰ってなかった気がする。
そのため、椛に久々に会えたのはうれしかった。
「随分、人気みたいですね」
「うん。まぁ人によっては変な噂流す人もいるみたいだけど」
「変な噂?」
「他愛のない噂なんだけどさ、ゲームに参加した妖怪達を捕まえて売り飛ばしてるとか」
「……」
「本当におかしな話だよねぇ。そんな事するはずないのに」
「ふぅん……」
椛は少し思考をめぐらせる。
そして、にとりにこう言った。
「今日もゲームがあるのよね?」
「うん、そうだけど」
「それじゃあ、文さんにこれ、渡しておいてくれない?」
そういって、椛がにとりに封筒を渡す。
封筒には射命丸文様へ、と書かれているが、書いた人の名前は書かれていない。
「何これ?」
「中は見ちゃ駄目よ。必ず渡しておいてね。あ、私が渡したのは秘密で、ね?」
「え、何で?」
「いや、その、友達の……ね、察してよ、その辺」
「え、あ、ああ。分かったよ」
にとりは封筒の中身が恋文だと察して、それを受け取る。
「それじゃ、頼んだわよ」
椛はにとりの肩を叩いて、飛び立っていった。
にとりは封筒を服のポケットに入れて、作業に戻った。
完成した中庭は最早別物の様相を呈していた。
おどろおどろしい魔方陣があちこちに用意され、
まさに罠地獄といわんばかりの量のトラップが山のように用意されていた。
少々やりすぎではとも思うばかりだが、パチュリーの怨みつらみを考えれば致し方ないのかもしれない。
カメラの設置場所に苦心しながらも、比較的安全そうな位置にカメラを設置して、
魔理沙を捕まえるための中庭が完成した。
「我ながら会心の出来ね。魔理沙……今まで持っていった本の数だけ嬲り抜いてあげるわ」
もはや憎悪の塊のようにも見えるパチュリーの姿は、
施設作成に協力した天狗や河童達を恐怖させていた。
そして、魔理沙に心の中でそっと合掌した。
霧雨魔理沙が会場に到着した。
いつもと違う気配を漂わせる紅魔館に戦慄を覚えながらも、
紅魔館の門を開けた。
門を開ける美鈴の眼は魔理沙を哀れむ眼であった。
第三ゲーム
逃走者:霧雨魔理沙
追跡者:パチュリー・ノーレッジ
場所:紅魔館・中庭
逃走者の制限:弾幕使用禁止
制限時間:3分
『さて、始まりました第三ゲーム!』
『今回は紅魔館特設ステージです! 罠だらけの中庭の攻防です!』
『さぁ、今回の逃走者は人間です! 多くに愛され、多くに憎まれる、霧雨魔理沙さんの登場です!』
文はいつものように、マイクを握っていた。
今回観客は、人里の会場からカメラを通じて紅魔館ステージを見ている。
結界はパチュリーの自前の結界である。
そこそこ高さはあるが、それでも魔理沙が普段飛んでいる高度よりも遥かに低い。
今回は人間相手ということで、人が集まるか心配だったが、
問題なく人数は集まった。
やはりそれなりの人気はあるらしい。良くも悪くも。
そんな文の言葉と共に、魔理沙が中庭に入っていく。
魔理沙は目の前に広がる光景と、あからさまに怒りを露にするパチュリーに戦慄していた。
なんかしたっけかなぁといった表情の魔理沙を見て、
さらに腹を立てたパチュリーはカメラに向かって、試合を始めろと催促を始めていた。
あわてて文は試合開始の合図を出す。
『そ、それでは、遊戯開始(ゲームスタート)ッッッ!!』
深呼吸を一つして、魔理沙は眼前のパチュリーを見据える。
高度は余り取れない。障害物は少ないが、罠はかなりの数がある。
こりゃ図書館内と変わらないな。
実際、パチュリーもそうセッティングしたのかもしれない。
いつも逃げる側ではあるが、いつもとは勝手が違う。
だが捕まらなければいいのだ。なら問題はないだろう。
伊達に、こちとら図書館から本を借りているわけじゃない。
多少の移動制限と弾幕禁止なんざ、ハンデにもならない。
魔理沙は余裕の構えだった。
一方のパチュリーはというと、恐ろしいほど冷静だった。
試合開始前とはまるで別人のようですらある。
パチュリーは移動を始める霧雨魔理沙に、けん制攻撃を仕掛ける。
火球を作り出し、魔理沙の居る場所に放つ。
それを合図に魔理沙も動き出した。
パチュリーは魔理沙の移動予測位置に水柱を放つ。
当てる必要はない。罠まで誘導すればいいのだ。
予想通りに魔理沙が回避する。
そこで第一の罠を発動させる。
魔理沙の前方に、巨大な壁が出現する。
エメラルドメガリスの壁だ。
突然せり上がってきた壁に一瞬、驚きながらも急上昇して、難を逃れる。
最も真上は結界があるため、まさにギリギリであったが。
しかし体勢の崩れた魔理沙に金属の鋸を作り出して、魔理沙に放つ。
壁に反射して襲ってくる鋸をギリギリで避ける。
とはいえ、服の一部が破けてしまう。
「くそっ、パチュリーの奴……一張羅が台無しだぜ」
なかなか辛い縛りだ。そう魔理沙は苦笑する。
言ってみれば3分間の耐久弾幕だ。
長くても一分で済む耐久弾幕が、単純に3倍の時間になる。
この猛攻が三分。洒落にならない。
だが、調子に乗って魔法を連射して自爆させれば、こっちのもんだ。
魔理沙はそう考えて、回避を続けた。
「……っ。流石に避けるわね」
パチュリーは舌打ちをする。
魔理沙をこの閉鎖状況に追い込めば、1分も経たず決着がつくかと思ったが、
その見通しは甘かったらしい。
伊達に弾幕勝負の場数をこなしていない。
罠もこちらの弾幕も、ギリギリでかわしている。
エメラルドメガリスの壁には驚いていたようだが、
またいつもの余裕の笑みに戻る。
いつ見ても、腹立たしい笑みである。
今度は多数の金属の刃を作り出し、放つ。
それらは拡散した後、高速で一斉に魔理沙へと向かっていく。
放たれる金属の刃は次々と魔理沙は避けていく。ギリギリで。
そのギリギリさが憎らしい。
「でも、これはどうかしら!?」
パチュリーは次の罠を起動する。
魔方陣が光を放ったかと思うと、強烈な爆発を引き起こす。
流石の魔理沙もこれは避けられなかったのか、
爆発のあおりを受けて、吹き飛ばされる。
すかさず、追撃をいれるべく水の弾丸を速射する。
しかしこれも、着地寸前に箒の推力を使って飛び上がった魔理沙に避けられる。
ギリギリと歯軋りをしながら、弾幕攻撃を続けた。
「ごほっ、ごほっ。くそっ、加減してるみたいだが、殺す気か、パチュリーの奴!」
何故、そんなに本気になっているのかがわからない魔理沙。
本を借りたのはもう数百回にもなるのだから、もう慣れただろうに。
そんな自分勝手な意見を持ちながらも、
パチュリーの本気に、気圧され始めていた。
ここまで鬼気迫ってくると、恐ろしいものである。
(いやまぁ、本を返してやってもいいんだが……)
流石に、家の中がぐちゃぐちゃでわかりません、は通らないだろうなぁ。
と、楽観的に魔理沙が捕らえていると、頭上から多数の水晶の槍が落ちてくる。
魔理沙は落ちてくる槍の間をぬうように回避する。
(なんだよ、パチュリーの奴。本ぐらいでむきになりやがって……)
何故だか腹が立ってきた魔理沙はパチュリーに肉薄していく。
殴ってやるために。
突然、接近してくる魔理沙に反射的に全ての罠を起動させる。
しかし反応が遅れた罠はいずれも、真正面から突っ込んでくる魔理沙に対しては遅い。
そしてあっという間に肉薄されたパチュリーは魔理沙に襟首をつかまれて、殴り飛ばされた。
「ぐげぇ!」
「この、たかが本くらいでむきになるなよ!」
倒れるパチュリーにそう高らかに叫ぶ魔理沙。
少なくとも盗人が言うべき言葉ではない。
しかし反論しようにも、パチュリーは口を切った為、痛みで上手く喋れない。
「ったくよ、お前はいっつもいっつも図書館で本ばっか読んでて面白くないんだよ!」
「……」
「どうせ、あれだけ本があったって、お前一人で読めるわけないだろ! だから私が借りて読んでやってるんだ!」
パチュリーは怒りを通り越してあきれ返っていた。
盗人猛々しいとは今の魔理沙の為の言葉だろう。
ともあれ好き放題言ってくれる魔理沙は気付いていない。
自分が魔方陣の上にいる事など。
「魔理沙」
「なんだよ」
「下」
「え」
魔方陣が起動した事を魔理沙が確認した時には、既に手遅れだった。
大量の触手が魔理沙の身体を絡め取っていった後だった。
『王手詰み(チェックメイト)ッッッ!!!』
『何を思ったか、突如追跡者に近づいた魔理沙さんでしたが』
『最終的に自ら捕まりにいく結果になってしまいました!』
『なんとも拍子抜けですが、魔理沙さんらしいと言えばらしいのかも(?)しれません!』
文は試合終了を宣言した。
観客の盛り上がり具合は並といったところか。
魔理沙が余裕で逃げ回った事と、わざわざ捕まりに行った事から、
そこまで盛り上がりはしなかった。
文としては期待はずれな結果となった。
『それでは、別ルームにて準備が出来ておりますので、特別券をお持ちの方はそちらへどうぞ』
『それでは本日の逃走者はこれにて終了です! またのお越しをお待ちしております!』
そう文が締めると、一部の客は別ルームへ。
そうでない客は帰っていった。
別ルームでは触手に縛り上げられた魔理沙が映されていた。
「く、くそっ、離せ、離せよっ!」
「嫌よ。貴方は負けたの。命令するのは私よ」
「命令? 本を返せってか? それは無理だな」
「何でよ」
「私にもお前から借りた本の場所、わからないしっぎいいいいい!?」
その言葉を聞いた瞬間に、パチュリーは触手の締め上げを強めた。
「い、いき、いぎがぁぁぁ……」
「ああ、直ぐ殺しちゃだめよね。もっと嬲ってやらないと」
そういって、喉の辺りの触手を解いてやる。
しかし腹を締め上げる触手はさらに締め上げを強くする。
「あ、ぎゃあああああ……ぐ、ぐるじぃぃ」
「あなたねぇ……借りたものは返すって習わなかったの?」
「わ、私の辞書にそんなことばぐぎゃああああ」
「なら、今日から書き足すのね」
触手が、魔理沙の華奢な身体を、折ってしまいそうなぐらいの強さで締め上げていく。
強い締め上げのせいか、魔理沙は小便を垂らしていた。
「うわ、汚いわね……」
「あ、いぁぁぁぁ……」
恥ずかしさと痛みで死にそうになりながら、魔理沙は哀願を始めた。
「か、かえすぅ……ほん、かならずぅ、かえすからぁ……」
「それを信用しろって? 無理に決まってるじゃない。今まで何回貴方に嘘をつかれたと思ってるの?」
「そ、そんなぁぁぁぁ……」
「……そうね、こうしましょう。今から私がいう事を貴方が出来たら、信じてあげるわ」
「ほ、ほんとぉ……?」
「ええ、本当よ」
「わ、わかった、やるから、やるからっ」
とにかく触手の締め上げから助かりたくて、魔理沙はそう答える。
するとパチュリーは邪悪な笑みを浮かべて魔理沙にこう言った。
「その触手に貴方の処女を捧げなさい」
「え……」
「あぁ、やるって言ったわよね。だから捧げてもらうわ、そいつに」
魔理沙はその意味を理解して、首を横に振って拒絶した。
魔理沙は必死にパチュリーに哀願する。
「そ、それだけは、それだけはやめて!」
「駄目よ、やるって言ったのに、また嘘を付くわけ?」
「だ、だけど、これは駄目! 他のことなら、他のことなら、ね?」
「ふざけない事ね。貴方は負けたの。敗者は……ただ奪われるだけよ」
そしてパチュリーが人差し指をクッと上に上げた。
それと同時に魔理沙の両足が開かれて。
ズブッと、太い触手が魔理沙の処女を奪い取った。
「あぎゃああああああああああああ!!!!」
流石の文も其処から先は検閲した。
他の観客はやや不満そうだったが、あれから先を見るのは精神的にきつかった。
腐っても魔女、ということだろう。やる事がえげつない。
あの魔女を怒らせてはならない。それだけはよく理解できた。
文は魔理沙に少しだけ同情した。
「………あああああああ!!」
魔理沙の叫び声のような悲鳴。
触手に貫かれて気絶する魔理沙。
しかしそれを許さないとばかりに、また触手が魔理沙の中を突き上げる。
かなりの痛みなのだろう、また悲鳴を上げて魔理沙が起こされる。
それをパチュリー・ノーレッジが嬉しそうに見つめている。
にとりは、その場でその光景を目撃している事しか出来なかった。
今日は少し疲れていた。
大掛かりなセットの構築などもあって、完成する頃には少し眠気が襲っていた。
そして起きてみれば、逃走者のゲームが終わった後。
魔理沙が出場していた事を知らなかったにとりは、
今の光景を信じられないといった表情で見つめていた。
(な、なんでこんなことに……!?)
ふと、にとりは噂を思い出す。
―――ゲームの参加者は陵辱の限りを尽くされて、売り飛ばされる。
にわかに信じがたい話だったが、目の前で繰り広げられているそれは、
嘘偽りのない真実だ。これが現実だ。
しかしにとりは、動けない。
怖い。怖い。怖い。
眼前で盟友が犯されているっていうのに。
盟友が苦しい、苦しいって言っているのに。
何も出来ない。
にとりは、カメラを取り出した。
夜間でも、撮影できるようにしてあるカメラだった。
にとりは、魔理沙が犯されている写真を取った。
これを持って、文を問い詰めるしかない。
そう思ったにとりは、涙を零しながら魔理沙が犯されている写真を取り続けた。
第三ゲームは、終了した。
ここから文の転落劇の幕が、ゆっくり上がり始めていた事に、文は気付くよしもなかった。
2・5の時は色々と迷惑をかけてしまった。
もうしわけない。
前回よりもむしろ酷くなったかもしれない。
だんだんつまらないと思うかもしれない。
もうとっとと文をボコボコにしろと思うかもしれない。
でも、まだだ。まだ早いんだ。
文を徹底的に潰すには、煮えくり返るような憎悪が足りない。
それが無いと、自分が満足できそうにない。
名前がありません号
作品情報
作品集:
17
投稿日時:
2010/06/25 13:50:36
更新日時:
2010/06/25 22:53:59
分類
文
魔理沙
何となく標的になると覚悟はしていた、覚悟はしていたが………
魔理沙は可愛そうだね、うん。
ゆうかりんにも慧音にも酷いことしていいから、
ビッチを思う存分痛めつけてくれ!
2.5もっかいみたいんだが
別におかしいところなんてなかったしさ
それでもやっぱりにとりは人間大好きなんだな
今回射命丸はあんま悪いことしてないかなって思った
そして幽香と慧音にフラグがたった!
ところで先生、2.5をまた見たいです…
文に問い詰めたら逆に何かされそうだ
ゴミクズざまぁ+阿呆烏の転落劇の予感とは最高においしいな
この後買い取ってやってもいいぞw
ただし射命丸、てめーはダメだ
ビッチとゴミクズは知らん
しかし、俺は全く出てきてないキャラが逃亡者になることを期待するぜ!
むしろ、そっちでお願いします。
一度、昔の産廃作品を読んできたら?
作品によってそりゃキャラの評価は違うさw
やはりゆうかりんみたく強い奴には弱みを突くしかないよなぁ…けーね先生の常識人っぷりに安心
最後には何とか逃れてあややに逆襲してくれることを期待
この先の展開が楽しみで仕方ないw
でも、別に消すほどのコメじゃなかったと思うぞ?
[逃亡者] 三=-3
タイトル見てこういうことかと思った
上にも出てますね
これはかなり怖いw