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『共同体』 作者: マジックフレークス

共同体

作品集: 17 投稿日時: 2010/06/26 17:07:09 更新日時: 2010/06/27 08:52:36
「やあ、おばさん。ちょっといいかな?」

「おば……さん?」

「そうそうあんただよ、あんた。俺達さぁ、ちょっと金に困っててよぅ。出来れば金持ってそうなおばちゃんに恵んで欲しいって言うかさぁ、ちょっとお小遣いくんない? って話よ」

「……あらあらそれは大変ですねぇ。でも私も周りの方々から恵んでもらって生活している身ですので、お助けできないかもしれません」

「だからさぁ、おばちゃんはいろんな奴の寄付とか貰い集めてるンでしょ? 聞いたよ〜、集金っていうの? お家を回ってお金貰ってるそうジャン。山ン中のお寺の人でしょ〜。俺達困ってるんだから助けて欲しいんだけれど、仏様は皆を助けてくれるんじゃないんですかぁ?」

「ヘッヘッへ」

「ククククク……」










――――――――   私達が協力して復活させた彼女は   ――――――――










「す、すいません、今持ち合わせが無いんで堪忍してください。もう二度とこんなことしませんから」

「じゃあ、とりあえずジャンプしてみてください」

「え、な、なんで?」

「いいから。それとも、あなたも右腕イッてみます?」

「ひっ、や、やるます!」

ぴょん、チャリ ぴょん、チャリ

「懐のそれも出して貰えます?」

「これは俺達の数日分の食事代なんです。これを持っていかれたら飯も食えなくなっちまいますよ」

「ちゃーんとしたお仕事をして食べるご飯は美味しいですよ。これはあなたのためです、そのお金を寄越しなさい」

タタタタタタタタタッ―――――

「聖! あ、あなた一体何を!?」

「ああ、星ちゃん。どうしたの、そんなに慌てて」

「何をしているというのですか!?」

「托鉢」










――――――――   カツアゲをしていた   ――――――――










「だってぇ〜、あの子達が悪いんですよぉ。初対面のはずの私のことをいきなりおばさん呼ばわりしてぇ〜。挙句に檀家さん達から頂いた大切なお金を寄越せって言うのですもの。これはちょっと御仕置きしてあげた方がこの子達のためと思ったのです」

「……ちょっとのおしおきにしてはやりすぎです。1人は軽い脳震盪で気を失っていただけですが、もう1人は顔面が陥没骨折の上に右腕の複雑骨折と右肩の脱臼ですよ。御医者様が全治3ヶ月を言い渡すほどの怪我はおしおきじゃ済みません! 一体どういう風にすればこんな惨状を引き起こせるのですか!?」

「最初の子はちょっと肩に手を乗せてきただけだったので、顎に掌底を入れただけです。2人目の子はそれに怒ってナイフみたいなのを出して向けてきたのです。ですから相手の肘を肩に乗せて背中から投げる逆一本背負いで御仕置きしました」

「……魔法は使ってないですよね?」

「いやですよぉ星ちゃん。素人の一般人相手に魔法攻撃や弾幕なんて使いませんって」

「ご自分には?(怒」

「……加速と強化を少々」

「同じことです! 加速はまだしも柔術をかけるときに強化しちゃ駄目ですよ!! ただでさえ聖は手加減したりしないし、極めたらタップを待たずに最後までいっちゃうんですから!」

「1対1ならまだしも実践で相手が複数ならば極・即・折! 流血を厭う聖職者の魔法は肉体という言語で紡がれる、血を見ることのないサブミッションこそ聖者の技!」

(駄目だこの人。早く何とかしないと)

天の声「何故復活させたし」

「うっせぇ!」

「?」

「ま、まぁ彼らは里の方でも有名なチンピラだったようなので火消しは出来ましたし、痛めつけたことに感謝する人までいる手合いでしたが、いずれにせよもう少し自重してください。博愛と平和を説く仏の心とお寺に対する信用を損ねてしまいます」

「親鸞聖人は仰いました、“悪人ほど救われるべきなのです。自らの悪を自覚し南無阿弥陀仏と唱えれば死後の世界でその罪を許してもらえるでしょう”と。私は彼らが早く救われるようにとお手伝いをですね」

「殺す気だったの!? まだ彼らは仏門に帰依してなさげでしたし、南無阿弥陀仏とも言ってませんよ。今死んだら日頃の行いから地獄行きでしたよ!」

「昔々ある大陸の大宗教の指導者達は言いました、“アナタタチパンピーハ生きているだけで罪ナノデース。免罪符を大枚はたいて買いナサーイ。サスレバ地獄に落ちずにテンゴクニイケルデショー”と。彼らの御布施と今回の苦行により彼らの罪は浄化されました。私が彼らを許します」

「腐ってやがる、遅すぎたんだ」

 一応怪我人を里の診療所まで連れて行って事情を説明(正当な事由のある防衛行動だったと話した)してからの帰路であった。



 あたりは日が暮れ始め、夕焼けが山々の初秋の鮮やかな色合いを映し出して美しいと素直に星は思った。

「夕焼けも紅葉も綺麗ですね」

「はい、聖」

「まるで真っ赤な血の色みたいで……」

(見たくないんじゃねぇのかよ)

 少し前までジメジメとしていた夕方の暑さを忘れさせる涼しい風が吹き抜けていった。















「ただいまぁ。ふぇ〜、疲れたぁ。今日はもうクタクタだよ、聖の暴挙の後始末に追われてさぁ」

 聖は檀家から頂いてきたお金(+今日の托鉢でのあがり♪)を保管しに帳面などのあるお寺の事務室に入っていった。
 星は主を置いて先に命蓮寺の居住区画に玄関から入ってゆく。
 二人の帰りを待っていたのは命蓮寺の全員という訳ではなかったようだ。連絡もせずに遅くなったのでしょうがないとは思うが少し寂しい。

「あらあら、うふふ」

「お腹も空いたし………、晩御飯はできてますか?」

「あらあら」

 雲居一輪の傍に居た雲山が手を形作って指し示す。居間の方を指差しているということは食事が出来てそちらに配膳されているということだろう。

「うん、ありがとうございます雲山、それと一輪」

「うふふ」



 部下達は主の帰宅を待たずして既に夕食を始めているらしい。主も奔放ならこいつらも勝手だなぁと星は思ったが、なにやら喧騒が聞こえてきたので襖を開ける前に耳をそばだてる。

「いぢめるぅ〜 新参のぬえぬえちゃんがナズをいぢめるのぉ〜」

「いぢめらいよぉ〜(笑」

 どうやら揉めているのは二人、毘沙門天から派遣されてきている監視役(笑)ナズーリンと妙蓮寺が誇る最強の準軍事工作担当官封獣ぬえであるようだ。

「一体全体どうし―――」

 膳が並べられている和室のなかをトテトテトテと走り回る頼もしい部下(憤死)ナズーリンと、体の一部を蛇や鷲にして彼女を追い掛け回すぬえ。
 二人は食事には手をつけているわけではなく、またこの部屋にいたもう一人村紗水蜜も膳を前に俯いてなにやら悩んでいるらしく箸もそのままだ。

「―――お待たせして申し訳なく思います。聖も一緒に帰ってきましたし、此処にすぐ来るでしょうからそうしたらみんなで一緒の食事にしましょう。…………だからよぉ、とりあえず静かにしろやてめぇらぁ!!!」

 村紗はビクッと顔を上げ、賢将(核爆)ナズーリンとぬえはその場所でピタッと止まる。

「コホンッ。ぬえは蛇と虎の姿はしまいなさい、ナズーリンはもうちょっとこう毅然とした態度をですね……」

「はーい」 「いぢめる? いぢめる?」

「いっぢめっるよ〜ん♪」

 星の言葉に一度は大人しく引いたぬえがナズに答えて シャァッ っと一瞬だけ蛇を出して威嚇した。

「ピィィィッッ!?!? ぬえちゃんが、ぬえちゃんがいぢめるぅ〜」

 パタタタと星の背中に回りこんで星を盾に隠れる。

「上司を盾にする部下が居ますか。まあそれはいいですから二人とももっと仲良くしなきゃ駄目ですよ。なんで喧嘩なんてしているんですか?」

「ううん、喧嘩なんてしてないの。ぬえちゃんがナズのネズミ君達の嫌いな生き物を見せて怖がらせるのでぃす」

(怖がってるのはお前だろ、ここに子ネズミ達はいないだろうが。まあ居間にネズミがいたらいたでしばき倒すが)

「ぬえ、そんなことをしてはいけませんよ。ナズーリンともっと仲良くしてあげなくてはいけません。私達は仏の教えを伝え広める身、争いごとやまして弱い者いじめは良くありません」

「えぇ〜、だってナズったら臆病で弱虫毛虫なんだもん。これはナズを鍛えてあげているの、特訓なのよ、と・っ・く・ん」

 星は はぁ、と溜息をついた。

「いいですか、ぬえ。彼女には彼女の強さと仕事があるのです。特訓が必要なら私がしますから、貴女はナズーリンと仲良くしてください、良いですね? さもないと」

 発声はせずに口をパクパクと開閉させた。

(コ・ロ・ス・ゾ♪)

「アイ,マム」



「ごめんなさいねぇ〜、遅くなってしまって。今日のシノギをお勘定していたら想像以上に時間がかかってしまったものだから。それじゃあ御夕飯にしましょうか」

 聖と一輪が入ってくる前には各々が膳を前に姿勢正しく正座して待っていた。

「では頂きます」

「頂きます」「いただきますでぃす」「いっただっきま〜す」「………頂きます」「うふふ」

 はじめる前こそ賑やかだった部屋も食事を始めてからは箸の立てる音や椀を膳に置くときの音のみになる。

 食事が終わり、各々は自室として使用している部屋や数人で寝る寝室にそれぞれ戻り今日一日の疲れを癒す。

 明日は彼女達の一日を追って観察してみようと思う。










 夜は明けた。





「おはようございます、皆さん。今日も朝食の前に読経をしましょう」

 本堂で聖を中央前に他の者は全員で横一列に並ぶ。

チーン

「二無量大数七千百八十二不可思議八千百八十二那由他八千四百五十九阿僧祇四百五十二恒河沙三千五百三十六極二百八十七載四千七百十三正五千二百六十六澗二千四百九十七溝七千五百七十二穣四千七百九杼三千六百九十九垓九千五百九十五京七千四百九十六兆六千九百六十七億六千二百七十七万二千四百七六分六厘三毛三忽五微三繊五沙四塵七埃五渺九漠四模糊五逡巡七須臾一瞬息三弾指八刹那二六徳一虚空七清浄八阿頼耶五阿摩羅二涅槃寂静」

 言い終えてから皆に向き直った。

「はい、では皆さん復唱しましょう」

「「「二無量大数七千百八十二不可思議八千百八十二那由他八千四百五十九阿僧祇四百五十二恒河沙…………」」」「あらあら、うふふ。あらあら、うふふ。あらあら、うふふ…………」

「いーかけるじゅうのろくじゅうはちじょうしょうすうてんだいにじゅうごいいかきりすて」

「は〜い、ずるっ子はしまっちゃうからね〜」

「あ゛ーーーー」

 首根っこを掴まれて引きずられていく小さな小さな賢将(オールクリアおめでとう! 次はノーマル以上でノーコンテニュークリアを目指そう!)を4人は見送った。

 本堂の奥のほうの部屋に連れて行かれてどんどんと二人の声は小さくなる。
 “悪い子はどんどんしまっちゃおうね〜”という言葉を最後にナズーリンの声は聞こえなくなった。

 しばらくして聖が戻ってくる。

「聞いていなかったのでもう一度始めからやり直しましょう」

 静謐な朝の空気の中に3人の声が響く。一輪は免除された。







「ごちそうさまでした。それでは片付けの後で本日のミーティングを始めましょうか」

 一輪と星とナズーリンがそれぞれ二人分ずつの膳を下げる。しばらくして洗い物の音が止み3人が戻ってきた。

「星は里で食糧や日用品の買出し」

「はい」

「ぬえはこの間里で私達を公然と批判した守矢派の家の人たち“なんとか”してきて下さい。思う様に埒を開けよ」

「イエス,マイ ロード」

「一輪と雲山の二人は永遠亭のやくざいしさんの所に行ってお仕事を頼まれてきて欲しいのです。それなりのお給金で依頼されていますので、たぶん治療費を出し渋ってる悪い人とお話をすればいいのだと思います」

「あらあら」

「それからナズ、あなたはずっと仕舞われてしまうところを出してあげたのだから今日は一日私の腰でも揉んでなさい」

「いぢめる? いぢめる?」

「……いぢめませんよ」

スパァーーン!

「だぁっ!!!」

 隣に座るぬえの頭を自分の尻尾でおもいっくそ叩いた。

「いぢめる?」

「いぢめませんよぉ^^」

「ところで聖はどうするのですか?」

 普段からぬえに与えている秘密任務は何なのかとか聞きたいことは山ほどある。一輪達の仕事の話とかも。だがそんなことは些細な事だ。

「私は今日は一日寝て曜日です」

 星はホッと胸を撫で下ろした。

「ではナズーリンを貸して下さい、探し物があるので手伝って欲しいと思っていたのです」

「仕方ありませんねぇ………。拾ったら私に二割上納するのですよ、いいですね」

「はい。それじゃあナズーリン、行きましょうか」

 適当な口実をつけて部下を救い出す。手を引っ張ってナズを部屋から連れ出して外へ出た。
 ぬえぬえがめっさ睨んでいたが、聖から言い渡された仕事を終えて帰ってきたぬえはいつも上機嫌で、それまでのことは水に流してくれるようだったので今日も大丈夫だろう。

「それと水蜜、あなたには……」

「聖、私には少しだけ時間を下さい。ちょっと悩んでいる事がありまして、自分なりの方向性がまとまったら相談したいと思いますが………今は一人で考えさせてもらえないでしょうか?」

「良いでしょうムラムラむらさ。でも忘れないで下さい、貴女には常に私たちがついているという事を。私が南無阿弥陀仏と唱えればいつでも貴女を浄化して差し上げられるということを。私が救ったその命、私のためだけに使いなさいな。悩みなど些細なことですよ」

「え、ええ。有難うございます聖」   (励まされた………んだよね?)










「星ちゃん星ちゃん、なにを探すのでぃすか?」

「申し訳ありません、私が先日買い物帰りに落としてしまった石を探してほしいのです。安価な宝石だったのですが、人里でお買い物をするときにお金の代わりになるからと信心深い信者さんから頂いていた物なのです。それがあろうことかポケットに穴が開いていたらしくて道の途中に落としてしまったようなのです。探すのを手伝ってくれますか?」

「犯人はぬえちゃんでぃす!!」

「ううん、私。じゃあお願いします」



 ダウジングロッドを構えて里への道を逆に辿る二匹。

 あるところまでやってくるとナズーリンの眼差しがいつになく真剣になり、歩みがゆっくりとしたものになる。まるで近くまで来たから精密に入念に調べているかのように。
 そして両手に並行に持っていたはずの棒がゆっくりと開いていき、左右横に開いて180°の直線上に棒が開ききった。

「見つかったのですか!?」

「いいやご主人、これは地下水脈だ。元々ダウジングロッドって金属イオンや水イオンの豊富な場所で発せられる微弱な電磁波で手の筋肉が弛緩する現象を利用したものだから。ただの石ころとか無理♪」

 ふるふる と首を振ってから解説、にかっ と笑って〆た。

ドゴォッ!

「ああん、もう♪ ナズナズは可愛いなぁっ そういうことはもっと早く言ってくれなきゃイヤン」

 可愛いナズナズの笑顔に右ストレートを決める。両頬に手を当ててイヤイヤと悶え、頬を染めた。

「オンドゥルルラギッタンディスカー?」

「うん、それたぶん違う」

「てめぇ毘沙門天様ディスってんじゃねーぞ、お?」

「それもちがうなぁ」

「ナズェナズをいぢめるのディス?」

「おしい、ちょっと混じってるね」



 ダウジングロッドとか関係なしにナズーリンの能力で宝石は見つかった。
 星のストレスとお腹が少し減った。










 一方そのころ一輪と雲山は永遠亭に到着していた。
 英海軍の式典用軍服を着て直立している赤い眼の兎が出迎える。

「ようこそおいで下さいました。お噂はかねがね、我々としても命蓮組さんの方に手数料を幾らか取られたとしても踏み倒されるよりはましというものです。この度はどうぞよろしくお願いします」

「あらあら、うふふ」

ブンブン   (組ちゃうわ、寺や寺)

 雲山が手を顔の前で振って否定する。

「ご謙遜を、実力は存じています。我々も高々人間風情なんて事は無いのですが、一般の優良患者の方々まで怯えさせてしまったり良くない噂が立つことは避けねばなりません。皆さんのように表向き慈善家を装っていて、しかもトップが人間である妖怪シンジケートは他にはなく、これからも御世話になるかと思いますが………。長くなってしまいました、こちらに支払いの遅れている患者の名簿があります。額と住所がありますので後のやり方はお任せいたします、報酬は徴収額の3割でいいですか」

(シンジケートてなぁ、嬢ちゃん)

「あらあらうふふ」

 雲山は呆れたような困ったような顔をし、一輪はいつもの柔和な笑顔で手をパーの形にして前に、優曇華の前に出した。

「………4割ではいけませんか?」

「あらあら」

 一輪は前に差し出した手を口元に戻して笑顔を小さく隠す。
 雅な女性が“いとおかし”とでも言うように。

「…………わかりました。こちらとしても半ば諦めていた治療費の請求です、半額を報酬としてお任せいたします。しかし1つだけこちらの条件を絶対に遵守してください、それは我々にマイナスイメージをもたらすような事は控えて欲しいのです。無論取り立てられた方それ自体は仕方ありません、というかそいつらはもう二度と診ませんので。ですが、そいつらが他の人に喋る様な“まずい事実”を残さないようにしてください。いいですね?」

「うふふ♪」

 一輪は嬉しそうに頷いて雲山を引き連れて去っていった。

「………ふぅ〜〜〜っ」

 彼女達が見えなくなってから優曇華は腹の中の息を全て出し切ってその場にへたり込んだ。

「鈴仙ちゃん、お疲れ様。でもそんなに怖かったかなぁ? 二人とも全然喋らなかったじゃない」

「喋らないのが怖いのよ、何考えてるか全然わかんないし。私が徴収に失敗したとはいえあんな人たちと係わり合いになるのは嫌だったのに………」

「そうかなぁ? えーりんも大丈夫って言ってたし、大丈夫じゃないかな。薬剤師と座薬は893屋さんと相性イイとか」

「んなわけあるかっ! ざやくってゆーな!!」

「どっちもケツの穴から手ぇ突っ込んで奥歯ガタガタ言わせるのは同じだよ〜♪ あっ、そんな事より姫様と影牢で勝負するんだった、じゃあね〜」

「………地味にどっちが勝つのか勝負の行方が気になるわね」










「うふふ」

 一輪は笑顔で男に写真を差し出した。
 そこには雲山が幼い少女を自分の体に乗せて低空を飛んであげているところが写っている。

「おい、娘は関係ないだろうが! てめぇやっぱりあの医者の回しモンだな、このことを村中に喋っても良いってのか!?」

「あらあら」

 おお、こわいこわい。
 というまるで何処かの新聞記者の顔を構成するパーツを縮小して一箇所に集めた福笑いの様な生き物を髣髴とさせる表情でこれに答える。

「ぐっ!」

 彼女が家を訪ねてきてもう30分になる。
 彼にも分かってきていた、こいつは厄介な手合いだと。
 永遠亭の使いにとって支払を拒否し続け、ゴネ続けたあげくに逆に脅すなどしていた自分が厄介だったように。コミュニケーションの取れない相手に何を言っても無駄だと、自分にとって金を払わずにごね得になるならあの妖怪兎が疲れた顔をして必死に懇願してきても平気で無視したように。
 この笑みを絶やさない女性も同じ笑顔で何の感慨もなく娘を捻り潰すだろう。

「…………」

 少しばかり奥に引っ込んでから支払い額分のお金を持って来た。この手の輩に限って持っているものである。

「あらあら、うふふ」

 一輪は笑顔で一礼して去って行った。



 果たして、娘は里の中心辺りに居た。
 娘を乗せていた入道の妖怪は雲山といい、命蓮寺という近頃出来たお寺で修行する人間の味方の妖怪の一人らしい。
 彼らは里では妖怪と人間の共存を訴えて人気があるらしく、雲山の行いは里に遊びに来たついでに子供たちと戯れていたらしい。
 事実雲山がその体に乗せて空を飛ばせていたのは自分の娘の他にも数名、皆一様に楽しそうにはしゃいで周りで見ていた大人にもなんら気になった事は無かったという話だった。





(一輪姐さん、やっこさん達が払うべきモン払ったっちゅうことはええんじゃが、だがわしは例え姐さんの命令でもわらしに手ぇ出しとうは無いわ。姐さんのことは信じておるが………)

「あらあら、うふふ」

(…………)

 同様に何軒かの仕事をこなし徴収金の半額を永遠亭に持って行く。残りは今日のあがりとして命蓮組事務所、もとい命蓮寺の収益として計上する。
 予想以上に手際が良く速い仕事に追加での名簿(小額、緊急性:低)を貰って帰る。今日徴収しきれていない者も含めて当分美味しい仕事には困らない訳だ。

「うふふ」










 封獣ぬえは里に来ていた。しかも自らの姿は堂々と晒しての接近である。

 ぬえは白蓮たちと一緒に命蓮寺としての仕事で幾度と里に降りてきている。そして彼女が妖怪である事は里の人間も知ってはいる。しかし彼女の姿はあくまで少女のそれであり、かつ普段から妖怪であることが一目で知れる羽は隠してなどいなかった。

 命蓮寺の面々は基本的にあけっぴろげだ、それはトップの白蓮がそうだったのかもしれないが、とにかく妖怪達は皆正直に自分が妖怪である事を明かしている。人間の信者は数多く居れど門弟になっている者は今のところおらず、寺の中で人間なのは白蓮だけ、彼女以外は下手に隠して人間に接近するよりも寧ろ命蓮寺の妖怪であるとオープンにした方が信用されてしまうくらいだ。

「正体というのは何も外見だけじゃない。外見と中身が一致しない相手というのも、人間にとっては十分過ぎるぐらい正体不明な者なのさ」

 ↑誰かに語りかけている

 普段の彼女は里で人間と言葉を交わすことは少ない。いつも誰かの付き添いで、買出しなどでも直接話をするのはもう一人の方。彼女は手持ち無沙汰にそこらをウロウロしていたり、里の少年少女にちょっとした悪戯をしていたり、一緒に来ていた同門の妖怪にちょっかいを出すなどして怒られていた。

「里での私の評価は知っている。命蓮寺の中じゃぁ落ち着きがないほうで、悪戯っ子、良く怒られてばかりいる幼いイメージのある女の子の姿をした妖怪」

 ↑誰かに語りかけている

 妖怪である以上幼いというのだけは異なる。だがそれ以外は彼女の本質、元々封獣ぬえという妖怪が生まれ持っていたものだった。

「それは事実、だから私は私の本質の中にある一部分をぼやけさせることができる。人が認識するのは常に物事や人物の輪郭だけ。だから自分の外側に正体不明を造って自分自身をぼやけさせるのは疑われるだけ、そんな奴は二流もいいとこ。一流は自分の内側に仕舞い込んで、自分自身の輪郭をくっきりはっきりと見せつける」

 ↑誰かに語りかけている

 そう言うと彼女はニヤリと妖しく微笑むと里から少しだけ外れたところに建っていた家へと歩きだした。





 里の中心から少しばかり離れたところにその家はあった。
 悪く言えば不便な場所であったが、里の中心に近づけば近づくほど喧騒は増すし、長屋のような大勢の人が住むだけの建物が多くなる。そういう場所に周りを省みずに大きな屋敷を構えられるのはいわゆる大金持ちであり、里の外縁に広い土地と屋敷を構えているここの主人はそれほどではない小金持ちということになる。

「ごめんくださ〜い」

 ぬえは屋敷の前で主に呼びかける。中の人がスタスタとゆっくり歩いてくる音が聞こえた。

ガラガラガラ―――

「ーっ! 貴様あの胡散臭い寺の小娘か、何の用だ!?」

 館の主人が出てきての第一声で怒鳴りつけられる。
 以前から守矢を信奉していたこの家の主は、里の人間達がまるでオセロゲームのように命蓮寺へと信仰先を替えていくのが気に入らなかった。白蓮が訪ねてきたときも罵倒して追い返し、其ればかりか往来で寺と彼女達妖怪を中傷した。

「私達の事を何か誤解されているようでしたので少しお話できたらと思って伺いました」

 愛と良心の人、聖白蓮も信教の自由は百万歩譲って認めることは出来る。だが自分達に対する不当な評価や謂れ無き誹謗中傷が行われる事を許しておく事は出来ない。仏の教えは慈悲と寛容であったが、それはあくまで同胞達に向けられるもの。白蓮にとっての同胞は人も妖怪も包み込む程に広く深いものであったが――――

『いいですかぬえ? 暴力はいけません。暴力を振るって良い相手は異教徒共だけです。私達は唯一絶対な御仏の代理人。仏罰の地上代行者。私達の使命は仏の御心を理解し得ない愚者をその肉の一片までも絶滅する事―――南無三』

 白蓮の教えを思い出す。

「貴様ら化け物共と話す事など何も無いわっ! とっとと人間の土地から消え失せろ」

 白蓮の教えは人と妖怪の共存。
 対して守矢神社はアパルトヘイト、極端な差別こそ推奨しない点で相違はあるものの両者は隔離するべきと一貫して主張している。妖怪も人間も互いを排斥したがる保守強硬派の者達は非暴力的な現実案として守矢神社の考えに賛同している。

「そんなつれないことを言わないで下さいよ………。こんなに可愛い女の子が頼み込んでいるというのに」

 ぬえの体が変化する。
 手足が目に見えて黒く太く変化してゆく過程をまざまざと見せ付けられ、膨れ上がった胸板が身に纏う黒い服を千切り飛ばした。
 怒ったケンシロウを前にしたモヒカンのような驚愕の顔で家の主はぬえの前から後ずさった。

「ひぃっ! ば、ばけものぉっ!!」

「間違いではないけど?」

 そう見えていたのは彼だけだ。残念ながら他の人にはぬえのあられもない姿は見えていない。いつも通りの少女の姿をした妖怪とその前で異様に取り乱している男の姿が見えているだけ。

「くっ、来るなぁ! 俺に近づくんじゃねぇ、人様に危害を加えるような化け物には神罰が下るぞぉ!!」

「じゃあ差別的で排他的な者には仏罰が下るって事で」

「くたばれ化け物がぁ!!」

 例の神社で作って貰ったのだろう、御札のようなものと退魔の力が宿っている小刀を震えながら手に構える。

「ありゃりゃ、それは私でもちょっときついかなぁ? 非暴力無抵抗となれば殺されちゃうかもね」

「しねぇーー!!」

 左手の札が青白く光る。光の紐の様な物が飛び出しぬえに絡みついた。

 腕の動きを封じられてもぞもぞと体をよじる。男は右手に持った小刀で斬り掛かってきた。

「あっつぅ!」

 腰が引けている上に身体中ががくがくと震えていたまま気力だけで振り回した刀は、それでもなおその力によってぬえの体を易々と切り裂き、かつ容易には回復できない傷を負わせしめる。

 五度六度と斬りつけられて服ははだけ浅い切り傷が体中に作られる。
 踏み込みの甘い斬撃など腕が使えずとも軽々とかわすことは出来る。だがぬえはそれを紙一重の所で“斬られて”いた。

「痛い、痛いよぉ! 誰か助けてーーー!!」

 ある程度体に傷を作ってから大きな声で助けを求めながら往来に向かって駆ける。

「一体何があった?」

「おい、あの子命蓮寺の妖怪じゃないか?」

「血ぃ流してるぞ」

「あいつ妖怪封じの札と刃物を持ってる! あの子に襲い掛かってるんだ」

 わらわらと喧騒の方に人が集まってきた。だがまだ状況を良く理解しているというわけではないようだ。

「くたばれ、くたばれ化け物! 妖怪なんぞ皆殺しにしてやらぁ!!」

 逃げるぬえを錯乱し涎をたらしながら刀を振り回して追いかける。

 ぬえは里人達が集まってきていた道の真ん中で大きく転んだ。追いついた男が刀をぬえ目掛けて振り下ろした。

「ひぃっ!」

 小さく弱く人を殺傷することの無い弾幕を不自由な手から放ち、男の胸倉に叩き込む。
 悶絶して男は動かなくなった。



「この度は私の弟子が人様を傷つけてしまったことを大変に重く受け止めております」

 連絡を受けた白蓮はすぐさま里に降りてきて里の有力者に面会した。

「いえ白蓮様、どうも先に襲い掛かったのは里の人間の方なのです。お弟子さんは殆ど抵抗もなさらずに傷を負われ、本当に危なくなった時に弱い弾幕で反撃したとのこと。目撃した者も多くおり、非があるのは彼の側であることは明らかです。このたび来て頂いたのは里を代表して私が謝罪したいと思ったためです」

「そんなことをして頂く必要などありません。ですがその方は何故そんなことをしたのでしょうか? 私が言うのもなんですがあの子は悪戯が過ぎることはあってもそれ程までに人様に恨みを買うとは考えにくいのですが」

 特定の宗派に肩入れできない里長として僅かに言い澱んだ。

「彼は守矢神社の熱心な信奉者だったのですが、いささか妖怪排除を強硬に主張したり、今回の御札や刀の様な対妖怪武器を神社から買い付けているなど少しばかり………」

「なんと、守矢の。ではその方のことは是非穏便に対処していただけ無いでしょうか? 彼に悪意があったり利益目的での襲撃であれば裁きを受けるべきでしょうが、信教に関する事柄であれば一概に善悪は言えません。その方のことは守矢の神々の裁量にお任せしたいと思います」



「白蓮」

「良くやりました。後のこともお任せしていいですね?」

「勿論、ここからが楽しいんだもの」





 これは今日の話ではないが、数日後例の男は妖怪の山の裾野付近で自殺しているのが見つかった。
 ただ多分に自殺を疑うに足る痕跡が周囲に残っていて噂が噂を呼んだ。

 他殺であるとするならば誰が彼を殺したのか。命蓮寺やぬえによる報復? 面子を潰された守矢神社による粛清?

 人は信じたいもののみを信じる生き物だ。世界の多くの事柄において、その正体が不明である以上致し方のない事。



「計画通り。確たる証拠など無くても良い、疑獄とは真実が不明瞭であればあるほど効果が増す。無論諸刃ではあるにしても、我々が潔白すぎてあまりに一方的に謀略が成功しすぎれば天邪鬼な陰謀論者が突っかかるし、守矢も本腰を入れて疑いを払拭しようとする。でもどちらとも言えないという状況を確立しておけば表立ってどちらかを批判するものは出てこないし、そんな中でおおっぴらに動いてしまうと目立ってしまい、変に勘ぐられるのは必定。どちらにせよ今回の事は向こうに多くのダメージがいくことは間違いないわ」

 ↑誰かに語りかけている










 夕方、遅くまで仕事をしていた一輪と雲山が帰ってきて夕食を皆でとった。

「あ〜、今日は楽しかったぁ」

「身体中を傷だらけにしていてですか? しかし妖怪嫌いの人間に襲われるとは災難でしたね。でも反撃して相手の方を傷つけなかったのは立派ですよ」

「ん? あぁ、うん」 (やっば、星には知られたらまずいよなぁ。やっぱり)

「あれ、そういえば今朝聖に言いつけられていた用事って………」

「ま、まぁ無事で何よりさ。アハハハハ」

「ん〜?」



「…………」

「どうかしましたか、村紗?」

 一人だけ普段より食の進みが遅い。
 いつもなら元気一杯、御夕飯だって毎日三杯はおかわりしている船長がご飯をあまり食べていない。今日一日はナズとぬえに気を取られていた星は気が付かなかったが、上座に座っていた聖からは全員の膳が見えていた。

「………後で相談したい事があるのですが」

「わかりました、食事が済んだら私の部屋に来てください。そこでお話を聞きましょう」

「聖ッ! わ、私もお話ししたい事があるのですよ!」

「そんなに大きな声を上げてはいけませんよ、星。むらむらの話を聞き終わったら此処に戻ってきますから、お片付けをし終わったら待っていてくださいな」







「聖、お邪魔してもいいですか?」

「どうぞ」

 結局村紗は普段の1.2倍近い時間をかけて二杯半しかおかわりをせずに食事を終えた。星が気が付かないのも道理である。
 構成員の異常をすぐさま察するひじりんマジ良い姐御。

「それでお話とはなんでしょうか?」

「はい、今日私は聖輦船から投網で漁をしていたのです。食べれそうな鳥を獲ってカレーの具にしようかと思いまして。そして鶴を十数匹とっ捕まえたのですが、そいつらを見ていたら急に船舶を手当たり次第に沈めていた昔の事を思い出してしまって………。そして思ったんです、私は聖に救われる前に犯した罪を今の善行で償わなければいけないのではないかと。私は今、網に絡まって苦しそうにもがき苦しんでいるこの鶴たちを救ってあげる事が出来ると。カレーの具になる運命から彼らを救ってあげるべきなのではないのかと考えてしまいました。そして彼らを離してやりました、今再び悩んでいるのです、それが本当に正しかったことなのかどうか…………」

「村紗は“鶴の恩返し”というお話を知っていますか?」

「はい。あの御話では確か鶴が美しい女性になって恩返しに現れるのでしたね? しかしその様なことをされても私は困ってしまいますよ」

 照れくさそうに頭を掻いてはにかんだ。

「ええそうです。しかし貴女が今日助けた鶴達がみんな雌だとは限りません。群れで飛んでいたというのなら大人ばかりという訳でもいないでしょう」

「では小さい男の子の姿で!?」

「その可能性が無いとは言い切れないではないですか」

「それは……すごく……イイですね………フヒヒ」

「こうしたらどうでしょう、村紗。今後投網で捕まえた鳥達のうち、若い雄は助けてやりそれ以外はカレーの具にする、あるいは焼き鳥もいいですね。とにかくこれで食糧を確保しつつも少なくとも一部は貴女の手によって救済することができ、そして万が一に彼らが恩返しに来る事があれば貴女はそれを喜んで受け入れればいい」

「さ、さすが聖です! 完璧です!!」

「私の仕事は罪を犯したものを正しく導き、救済することです。貴女の悩みは私の悩み、貴女の救いは私の救い、貴女の獲物は私の獲物です」

 村紗水蜜はひじりんの全てを包み込む深い深いジャイアニズムに心が洗われるような感じを抱き、悩みがなくなった本当にスッキリとした表情で聖の部屋を後にした。

 書いていて心から思う。
 ツッコミが不在って本当に恐ろしいと。
 星ちゃんはやくきて〜はやくきて〜





「へっくしっ!」

「だいじょうぶ? 星ちゃん」

「ええ大丈夫です、別に風邪というわけでもないと思いますから。気力も体力も法力も十分にあります、今日をおいて他にいい日も無いでしょう。今日こそは聖に改心してもらって、命蓮寺の代表者として真に人と妖怪の平等のための活動を………」

ガララッ

「なかなか愉快な御話のようですね、星。しかし……改心とは、非の打ち所の一切無いこの私の一体何処を改めればよいのでしょうか? 是非教えて頂きたいものですわね」

「ひ、ひじりっ!?」

「星ちゃん声が裏返っているのでぃす。戦う前から負けているのではねぃでしょうか?」

「うっさいわ、この74(ナズ)倍ドベ!」

「ど、ドベ??」

「まぁまぁ、それでお話というのはなんでしょうか?」

「………この頃聖が持ってくる仕事は胡散臭いのが非情に目立ちます。ぬえに言いつけている用事にしても同様です。私はたとえ時間がかかってもゆっくりと人間と妖怪の間に信頼関係を構築し、お互いに足りないところを補い合う共存関係を目指すと言った貴女について来たのです。今のような横暴で自分勝手な聖を放置する事は毘沙門天様の正義に、そして私の正義に反します!! 私が貴女を修正します、お覚悟を!」

「じゃあナズはジャッジね」

「おまかせくだせいっ」

カーーーンッ





2分後

「いだだだだッ!!! ギブっ、ギブギブギブ〜ッ!!!」

「ギブって何ですか? 何かくれるのですか? おかしいですねぇ、星ちゃんのアドバイスどおり直ぐにへし折らないでゆっくりと力を加えているのですが、心なしか一瞬でへし折ってるいつもの人たちよりも辛そうですよ? 大丈夫ですか?」

「そう思うんなら離して! 離してください、お願いします!!」

「びゃくれんのかちでぃす」

 ナズがそう言い放つと白蓮はミシミシと音を立て始めていた星の右腕を離してやった。
 まるで失恋の痛みのように長く滞留する鈍痛が星を苦しめる。腕を押さえ込んで悶えた。

「………残念です、星ちゃん。きっと貴方が信じていた正義はどこか間違っていたのです、だから私の正義の前に膝を折るしかなかった、屈するしかなかった、敗北するしかなかったのです。私の弟子である貴方がこのような挫折を経験するのは私にとっても辛いです、しかしこれをバネに真の正義にあなたが気づいてくれるならば……」

「膝じゃなくて腕が折れましたぁ><」

「いいですか、正義は必ず勝つのです。敗れた貴方は自分自身の正義にどこか欠陥があったと考えるほかありません。そして私の正義が唯一真なるものであると認めねばなりません。貴方はこれから一切の疑問を持たずに私に尽くすのです、いずれ貴方も皆と同じように正義のために働く事が喜びとなるでしょう」

「いやだぁーー、もうおうちかえるぅ〜」

「此処が貴方のお家ですよ、ふふふふふ」

「星ちゃん、好ましいわね。こういう生き様って好ましいじゃん」

「うるぁぎりものぉ〜」



 ああ、法の世界に光が満ちる………





 命蓮寺のとある一日はこれで終わりである。

 幻想郷は今日も平和だった。






                     つ  つ  つ  つ  つ
                      つ  つ  つ  つ
        .__          __   つ  つ  つ
         /:r-、ヽ. ____ /ィ-、:':,   つ  つ
       .';:ヽ ;ィ''"´:.:.:.:.:.:.:.:`゙゙ヽ ノ;ノ   つ
         >'´:.:.:,:.:.:.:.:.:.:.:.;.:.:.:.:.:.:.:';ヽ
       //:.:.:.:/.:/:.:l:.:.:.:.:|.:.:ハ.:.:.:l.:.:',
       /イ:.:.:.:|:''"";,ト、:.:.:!゙゙゙''}.:|:.:.:l:.:.:l  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
        ヽヘ/Vィt=t、\Vt=tト!:.:j.:.:.:.',< いぢめる?
          /.:lゝLリ   Lリイ.:ノ:.:.:.:.:} \______
         ル|人 " ー   "イィヘハイノ
         iTi ./マ;,;,;,;ハ,;,;,;,;フ`ヽ、   /|
          |./ ,イ{:.:.:.<>:.:.:.:.j\ \  /W
        とヽ/ . 〉:,;,;,;,;,;,;,:〈__ .\ノ-<
         |   ./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽヽ、゙テ'"
        .レi   L三;;三;;三;;ソヽメ、n_ノフ
        ''      \」_,/  /l/゙r=''=/
               `┘    ゙''ー''
あとがき

 色々な漫画の台詞回しやキャラやその他諸々をパロディにしました。
 最初は破天荒な不条理ギャグ&キャラ崩壊を書きたかったのに、途中からはやたら説明口調の自分の癖が……。どうしようか悩んだ挙句うまく軌道修正することも出来ずにそのままというグダグダ感。まぁいっかw

注:ナズに説明してもらったダウジングの原理はダウジングの科学的正当性を主張した人の論拠であって、それが事実であると確認が取られたことではありません。あしからず。


 『合成の誤謬』『美しさはわたし達の中に』の2つは投稿を休んでいた間に練っていたプロットを書き上げたもので、自分はこの手の作品作りは全く違う種類のものを並行して取り掛かるのが好きみたいです。(一つが行き詰ったら他のを進めたりして)
 どこかに書きましたが『真夜中のデッド・リミット』と『その愛は命を賭すに値した』も同時に書いていました。間のジョークだけその日の思いつきで書きあげましたが。

 という訳で書き溜めたネタが尽きたので、合成の誤謬1で宣言した通り今後の投稿速度は遅くなりそうです。あるいは一話完結の短編は出せるかもしれませんが長編はまだ纏め切れていないので当分先になるやもしれません。

 今書きたいと考えているのは自分でぶち上げた自作品の外伝的な【D・Lスピンオフ】が一つしかないのでそれを増やしたいのですが、プロット製作中なのは過去話で第一次月面戦争を絡めて某国がよっちゃんに無双される話。それとかりしゅま☆れみぃな後日談の二つがあるのですが、どちらも難しくて暗礁に乗り上げているところなのです。
 宇宙戦争、それも近代に限定するとかなり難しいです、ハイ。でも書けるといいな。

 合成の誤謬で文ちゃんの話を番外編に書いて欲しいという有難いリクエストを頂いてしまったのですが、自分としてはたぶんあっさりと消されてしまったという方がしっくりくるのではないか、と思います。皆さんもお好きなように脳内保管という事でここは一つよろしくお願いします。

 読んで頂いた全ての方々に謝辞を。
マジックフレークス
作品情報
作品集:
17
投稿日時:
2010/06/26 17:07:09
更新日時:
2010/06/27 08:52:36
分類
パロディ
星組
正義の反対は別の正義
ナズ可愛いよナズ追加
1. 名無し ■2010/06/27 02:45:21
ええいまともな奴はいないのか!
2. 名無し ■2010/06/27 05:15:17
ナズーリンの扱いがw
まぁ自分達に張り付いてる監視を快く思わなければならない道理もないけど
3. 名無し ■2010/06/27 06:30:18
まともなのが殆どいないがぬえが一番こええ…
嵌め込み・イメージ操作担当か
4. 名無し ■2010/06/27 07:43:17
冒頭の白蓮さんのような暴力だけの理不尽ギャグかと思ったら
実際はめっちゃ計画的で全然シャレになってねえ!w
完全にどす黒い方向で上手く人里に浸透している命蓮寺の人々が怖くて素敵でした
星ちゃんマジ最後の良心ww
5. 名無し ■2010/06/27 13:00:16
「正義の反対は別の正義」って・・・・野原ひろしの事かーーっ!
6. 名無し ■2010/06/27 16:49:37
ひろしは、父親の鏡。
しかし、ナズがかわいいなぁ
7. 名無し ■2010/06/27 21:12:07
今までクールなナズしか見てないからこのナズは衝撃を受けました、だが滅茶苦茶ベネ!GJ!
8. 名無し ■2010/06/29 17:26:05
良い意味でこれはひどいww
このナズは胡桃「ククルコルテアダムスチーヨボール」とかいうスペルカード使いそう
星と後地味に雲山が最後の良心w
9. 名無し ■2010/06/30 18:20:08
いろんな漫画のパロとのことだがヒュマイスくんだけしかわからなかった
10. 名無し ■2010/06/30 19:27:08
雲山がいくら良心でも、一輪さんがこれじゃあその良心は存在しないのと一緒だなw
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