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『霧雨邸が雪に埋まる話』 作者: 和愛変態
ここ、魔法の森は三日間続いた大雪により白に染まっていた。
時折見せる木の枝は白銀のパレットに緑の絵の具を滴らしたようにも見える。
霧雨魔理沙、この少女、いや、魔女はこの魔法の森に佇む霧雨邸に住んでいる。
彼女はこの三日間新しい魔法の実験の為、白い雪の舞う美しい世界を見ていなかったのか。
いや、実験の合間に窓の外を眺めては嵐のように舞う白に見惚れていたかもしれない。
だが、今窓から見える世界は、美しい白銀とは全く異なっていた。
雪は太陽の光を反射し、その姿を銀に見せる。
しかし、光の当たらない深い所にある雪はどうだろうか。
白銀とは程遠い灰色の世界である。
魔理沙は雪の重みで開かなくなった窓を眺めて
「これからどうしようか」
と、呟いた。
灰色の壁がのしかかる窓は薄らと彼女の姿を映す。
「雪が解けるのと、私が餓死するのどちらがさきかな」
彼女は自嘲ぎみに笑うも、その声は灰色の壁に吸い込まれて行った。
霧雨邸には食糧の蓄えが少ししかなかった。それは彼女のずぼらな性格が起こした悲劇でもある。
嵐の前の静けさは過ぎた。
再び幻想郷を大雪が襲う。
今度の大雪でパレットにのった緑は塗りつぶされてしまった。
5日目
彼女はミニ八卦炉を使い寒さを凌いでいた。
ミニ八卦炉とは、簡単に説明すると魔力を燃料とした火炉である。そして、知り合いの森近霖之助から貰ったものでもある。
「これが無ければ凍死してたぜ、コーリンにも感謝しないとな」
孤独を紛らわせる為か彼女の独り言は次第に増えていった。
「さぁ、昼飯は何にしようか、と言っても腹一杯食えないけどな」
彼女もそこまで馬鹿ではない。残り少ない食糧をバクバク食ったりはしない。
Hな妖精とは一緒にしないでほしい。
ゴォォォ
と、いうミニ八卦炉の音と、
チクタク
と、いう時計の音の二重奏と孤独が霧雨邸を支配する。
魔理沙、彼女はやはり少女だ。独り言で紛らわしていたが、孤独には耐えられなくなったようだ。
「助けてくれー!
霊夢ー!
紫ー!
パチュリー!
アリスー!」
手当り次第に知り合いの名前を呼ぶ。だが、叫び声は霧雨邸を包み込む灰色の壁に飲み込まれてしまい、彼女を静寂が包み込んだ。
叫ぶ前と静かさに変わりは無いが、彼女はよりいっそう静かになったと感じた。
彼女の頬を一筋の光が伝った。
彼女は孤独に耐えきれず涙をながしてしまった。しだいに嗚咽を漏らし、ソファーの上で本格的に泣き始めた。
この行為は彼女の体力を奪っていき、彼女を眠らせた。
六日目
コンコン
と、窓を叩く音で彼女は目をさますと、窓には灰色の壁はなく代わりに白い朝日が差していた。
「魔理沙ー!大丈夫?」
彼女にとって最も馴染みのある声が聞こえる。
助かった。彼女は心から思った。
「霊夢!!」
彼女は薄暗い部屋で目を覚ます。
時計は十時をさしていた。
「夢か」
彼女は悲しげに呟く。
「昨日最後に見たのが九時だったから、結構寝てたな」
今日も彼女の独り言は灰色の壁に吸い込まれる。
簡単な朝食を食べると彼女は、椅子を使い窓を叩き割った。
「最初からこうしておけば良かったな」
彼女は笑いながら部屋の隅に置かれていたスコップで雪を掘り進む。
どれぐらい掘っていただろうか。部屋に集めた雪は山を作っていた。
「屋根の高さぐらいまで掘ったつもりなんだけどな」
ミニ八卦炉で解かした雪解け水を飲みながら彼女は呟く。
ふと、時計を見ると二時半を指していた。
「遅い昼飯でも食べるか」
彼女は昼食の用意をしてから、食糧が無いのに気づいた。
昼食分すらも危うい量だ。
「これからは、飯なしか」
彼女は最後になるであろう食事を済ませた。
それから、彼女は体力を温存させるためにベッドで寝た。
寝るには少し早かったが、無駄な穴掘りのおかげですぐに寝られた。
七日目?
時計は一時を指していた。
深夜なのか昼なのかわからない、灰色の壁は霧雨邸を時間からも外の世界と遮断した。
昼か夜かは、彼女は規則正しく生活していたので、わかっていたが、昨日、寝る時間が悪かった為わからなくなってしまった。
彼女は独り言を言わなかった。
体力を使いたく無いのだろう。
しかし、ミニ八卦炉に魔力は送り込んでいた。理由は簡単、霧雨邸は雪で覆われて、冷蔵庫のように冷やされているからだ。
暖房器具であるミニ八卦炉が生命線なのだ。
八日目?
冷たい部屋で彼女は目を覚ました。
彼女の体力は無くなり、体内で魔力を製造できなくなったからだ。
彼女の魔力が製造できなくなった今、ミニ八卦炉はただのガラクタ。
彼女は虚ろな目で一点を見つめた。
そこには日が当たらなくなって枯れてしまった花が生けてある花瓶があった。
無言で、彼女は花を食べ始めた。
観賞用の花が美味い訳がないが、いまの彼女には関係がなかった。
ただ、空腹を紛らわしたい。それしか頭になかった。
枯れた花を食べ終えた彼女は、体力を使わない様にするため、ベッドに横になる。
だが、寒い事に変わりは無い。
彼女はふと気づき、部屋の隅から、ある道具を引張り出した。七輪だ。
「これで、魔力を使わずにすむぜ」
彼女は呟く。
七輪を暖房として使うのだろう。
彼女は無言で夜雀の屋台で貰った、練炭に火をつけた。
「暖かい」
彼女は最後にそう言って眠りにつき、二度と目を覚まさなかった。
幻想郷を襲った大雪は外の日本のものだ。
日本の冬の平均気温は温暖化によりいつのまにか高くなり、
冬に雪があまり降らなくなってしまった。
いつしか、日本は冬の大雪を忘れてしまった。
この異変は、妖怪や妖精ではなく、外の世界の[人間]が起こした物なのである。
終
初投稿です。よろしくお願いします。
花をむしゃむしゃ食べる魔理沙ちゃんはとっても
ファンシーです。
そんな魔理沙ちゃんが見たいので今日も温暖化に
貢献します。
そんな事より練炭って怖くね?
和愛変態
作品情報
作品集:
17
投稿日時:
2010/06/30 09:30:35
更新日時:
2010/06/30 18:30:35
分類
初投稿
魔理沙
季節外れだけど気にしない
期待の新人さんも多くて嬉しいわ
温暖化が進むにつれて冬も雪が降る様になるんだとか
体力あるうちに惜しまずマスパで窓ごと吹っ飛ばせばよかったのに
まあ一酸化炭素中毒には気をつけましょう