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『Point LED』 作者: sako
「姫様、お召し物を持って参りました」
日も高くなりつつある頃、永遠亭の最奥、従者の中では私しか入ることが許されていない輝夜の寝室へ。
廊下の板の上に座り、しかと手をついてお辞儀をしてからするり、と摩擦係数ゼロのふすまを開けて、風呂敷に包んだ召し物を部屋の中へ入れおいてから私も中へ。後ろ手にふすまを閉めて、もう一度、深々とお辞儀をしてから面を上げる。
部屋の中央、木綿の布団に体を横たえて、すやすやと眠っている市松人形、我が月の姫君、蓬莱山輝夜。
浅く瞼を閉じ、軽く唇を結んで眠っている姿は本当にお人形さんのように見える。一個の完璧な個体。私はこの輝夜の姿を独占したいがゆえに、因幡たちには輝夜の寝所や私室に立ち入らぬよう、厳命を下しているのだ。
「―――姫様、お目覚めください。もう、よい時間ですよ」
暫く輝夜の寝顔を眺めていたが、それも永遠と続けるわけにはいかず、呼び起こそうと声をかける。けれど、輝夜は僅かにうなり、身じろぎしただけで起きようとはしない。
「姫様、起きてください。姫様」
「んんっ…ふぁぁぁぁ…ああ、おはよう、永琳」
それでも根気よく、何度か声をかけるともぞりと輝夜は体を起こし、大きく体を伸ばしてから私に向き合った。木綿地の真っ白な寝間着の襟の間から輝夜の薄い胸板と桜色のぽっちが覗いている。
「はい、こんにちわ姫様。もう、お昼前ですけれどね」
私の言葉に、輝夜はえっ、嘘、と驚き、枕元においてあったストロンチウム光格子懐中時計を手に今の時刻を調べる。
「あちゃー、七時には起きようと思ってたのに」
「そう言って起きた試しがありませんね」
額に掌を押し当て、しまった、と目をつむる輝夜。その様子がおかしくて私は少し笑ってしまう。
「さっ、因幡たちが食事を用意しています。早く着替えて、お昼にしましょう」
輝夜にそう促し、包みを手に輝夜のそばへ。
輝夜は掛け布団をのけるとのっそりとした緩慢な動作で布団から這い出て立ち上がる。
「それでは、失礼します」
私も立ち上がり、輝夜の後ろへ。
後ろから腕を伸ばし、輝夜の臍の上あたりで結わえられている細い腰帯を解く。はらり、と腰帯が畳の上に垂れ下がる。腰の部分で縫い付けられているので落ちることはない。そのまま、開かれた襟を手に、二重袷を脱がしていく。輝夜はその間、私にされるがままだ。
「姫様、腕を少し、広げてください」
私の言葉にも従ってくれる。斜めになった肩を滑らせるように袖を脱がせる。白い肩が露わになる。そのまま、袖を腕から引き抜き、脱がせる。
全裸―――輝夜は生まれたままの姿になる。
脱がせた寝間着を片手に抱え、もう片手で手早くたたみ、床の上へ置いてから改めて輝夜の裸を後ろから眺める。
卸したての檜の板に香油を垂らしたようななめらかな肌。流水を思わせる腰まである長い黒髪。体の線はまるで空力学に基づいて計算されたように完全でありながら、生物特有の曖昧さを併せ持ち、ナル・ユークリッド幾何学的な語りきれない美しさを誇っている。その背中、肋骨の形が浮いているところへ軽く、骨格の隆起に指を這わせる。指先は区もなく滑り、まるで白粉を振ったつきたての餅を触っているような気分にさせられる。
「っ、永琳」
擽ったそうな悲鳴を漏らし、肩越しに非難がましい視線を私に投げかけてくる輝夜。私は悪戯っぽく笑んでから、すいません、と謝った。
「姫様、ついでですからお体の方を、診させてもらってよろしいでしょうか」
それからそう、問いかける。中腰に立ち、輝夜の顔を見上げる形になっている私の視線と肩から私の顔を見下ろしている輝夜の視線とが入り交じる。同軸線上で。離れることなく、同じ角度で。輝夜は、少し恥ずかしそうに顔を赤らめながらも、お願い、と軽く頷いた。
私は分りましたと、輝夜の余り肉のついていない臀部に顔を寄せる。
「っああ…」
輝夜の嘆息を聞きながら頬でその体の滑らかさを確かめる。子猫が顔をすり寄せてくるように、輝夜の腰から背骨にかけて私は頬を押し当てる。指は同じく、太ももの方へ。百合の花を思わせる白い肌の上を無造作に這わせる。カッシーニ卵形線を描く私の指。血行がよくなってきたのか、私の指が触れたところが朱に染まり始める。指はそのまま臀部へ。指先だけではなく掌全体を使って陶芸家の手つきで尻たぶをこねりはじめる。
そのときにはもう、私の頭は輝夜の肩口、首筋へ到達している。私の吐息が首筋にかかるたびに輝夜はぞくぞくと体を震わせて息を激しくし始めている。鼻を寄せると、寝ている間にかいた汗の臭いが届いた。僅かに種籾を思わせる香り。その臭いをもっと味わおうと顔を首筋に寄せると輝夜は擽ったそうに身をよじった。逃がさない。
私は腕を前に回すと片方を下半身へ、もう片方を上半身に回し、輝夜の細い体を抱き寄せる。
片方の手は人差し指を伸ばして、うっすらと黒い艶やかな毛を生えそろわせた輝夜の秘所、その上部、柔らかな皮に包まれた円らな肉芽へ。指の腹でその突起を押しつぶし、薬を塗りつけるように円弧を描いて刺激する。
胸に置かれた逆の手は掌全体を使ってその平たい丘を押さえつけている。丘陵へ軍勢が攻め込むように輝夜の片手で余るほどの平べったい胸をわしづかみに、その標高を高めるように引っ張り上げる。二指の間には堅く、尖り始めた桜色の頂が。それを虐めるように強く引っ張り、乳全体を柔らかくするようにこねくり回す。
「はぁはぁ…永琳っ…♥」
輝夜の声に艶が混じり始め、白磁の肌に汗が浮き始める。下の口からは糸を引く淫液が。体が興奮し始めたのだろう。
私は舌を伸ばすと、輝夜の首筋に浮き始めた汗を舐めとるように動かした。甘さを憶える塩っ気。そのまま肩の方へ舌を這わせ、腕を取ると、橋を渡るように直線に伸びた腕の内側へ私の紅い舌先を走らせていく。
片方の腕は当然、下半身をもてあそんでいる。ひくつき始め、薄く口を開けた女陰に指を差し入れ、暖かく滑りを帯びている輝夜の内を楽しむ。
滑らかな肌の上を走る舌。
白塗りの皿に盛られた黒蜜、その残滓を舐め取るイメージ。はしたなさと卑しさ、その卑しい感情をこの高貴な姫君の肌を舐めることで味わっているという背徳感に私の内の女も濡れ始める。
美しい美しい、まっさらな屏風紙に絵筆を走らせている気分。薄い朱の筆で紅葉を、日の光を、薄墨汁で山河を。ああ、この躰を作るのにどれだけの歳月がかかったのか、遙か昔、遺伝の螺旋と配合と人造レトロウイルスの構図が目に浮かぶ。懐かしい。
「ああっ、永琳♥ 永琳♥」
その遙か昔の光景と現在の情景が入り交じり、恍惚とした環境に身を浸していた、その刹那―――
「っ!? 輝夜…」
あってはならぬモノを私は輝夜のまっさらな肌の上に見つけた。
「えい…りん…?」
行為を不意に止めた私に、輝夜はどこかおそるおそる伺うような姿勢で声をかけてくる。私はそれを無視。厳しい目つきで“其の”一点を忌々しげに凝視する。
「輝夜、これは…?」
そう言って指し示したのは輝夜の肘の内側。二の腕にほど近い部分に出来た赤い腫れ物。医学に心得のある私はそれがなんなのか、すぐに分ったが問わずにはいられなかった。
「あ、それ。昨日、縁側で寝てたらどっからか入ってきた蚊に刺されたみたいなの。後で、お薬くれる?」
そう説明する輝夜。けれど、話の後半はもうほとんど聞いてはいなかった。輝夜の血を吸った下等生物への怒りと、この違和感しか憶えない赤い虫刺されの痕に。
まるで美味しく食べていたお菓子の中に異物が混入していたような、そんな憤りを覚える。ありえない。ありえない。こんなに美しい輝夜の肌に虫刺されなんて。糞尿にたかる蠅のような穢らわしさを憶える。
知らずの内に私は奥歯をぎりぎりとかみしめていた。
私の豹変ぶりにかける言葉が見つからないのか輝夜はおずおずと私を見上げてくる。私はその輝夜の足を払うと、布団の上へ押し倒した。
「っ、えいり…!?」
間髪入れず輝夜の上に馬乗りに。腕を伸ばしてそのか細い首を締め上げる。
「あ、あかか…えいりん、はな、ばな…じで…」
ぎりぎりと爪が輝夜の肌に食い込み、汗と共に玉の朱が浮かび上がる。苦しさに私の下であえぐ輝夜。まるで陸にあげられた鯉のよう。口をぱくつかせ、酸素を求める。けれど、気道を途中でせき止められ、酸素は供給はおろか破棄も出来ない。
次第に白かった輝夜の顔が破裂するように赤く染まり始め、目頭から涙があふれ始める。
「あが…ひぎぃ…ぐぐ…!!」
私の拘束から逃れようと無我夢中で暴れる輝夜。振るった手が私の腕を打ち据えるが非力な姫の一撃なんて造作もない。私はためらうことなく輝夜の首を絞め続ける。
私の腕を取って文字通り、必死の力で私を引きはがそうとしてくる。服の袖越しに輝夜の爪が食い込む。力の入れすぎで爪がひび割れる。瞳は赤く染まり、白目を剥いて眼球が飛び出るのではと錯覚するほど目を見開いている。顔色はもはや赤から紫へ。酸素を求める隙間風のような音が喉の奥から聞こえてくる。
そして、
「あか―――」
私は庭の花を摘むように、輝夜の命を刈り取った。
こきり、と軽い音が鳴り、私が手を離すと輝夜の首は力が抜け落ちているにしても異様な角度に曲がっていた。白い肌にはくっきりと私の手の痕が青痣として残っていた。
鼻をつく臭気と腰を蒸す蒸気の暖かさに立ち上がると息絶えた輝夜は筋肉が弛緩したせいか、布団の上で失禁してしまっていた。
やれやれ、掃除が大変だと、私はいぶかしげに眉を潜める。
けれど、休んでいる暇はない。早く、綺麗にしてあげないと。
私は懐からいつも持ち歩いている簡易手術セットを取り出すとそこから滅菌処理されパウチに収められていた樹脂製の換え刃型のメスを取り出した。ミントグリーンの柄を握り、輝夜の傍らに、布団の上に膝をついて腰を下ろす。
一切の力が抜け落ちた腕を取ると其所…二の腕の虫刺されの痕の近くに切っ先を突き刺す。流れが止まった血管からどろりと赤黒い血が流れ出てくる。
後は簡単だ。ジャガイモの芽を取る要領で刃先を斜めにぐるりと刃を走らせて、虫刺されごと、その一角の肉を切り取る。まっさらな布団と輝夜の肌の上に血の紅が広がっていった。
その後、切り取った部位と使用済みのメスの刃別々のを廃棄物用の袋にしまい、しっかりと口を縛っているとたった今し方、処方したばかりの輝夜の虫刺されの部分の再生が始まっていた。肉が増殖し、神経が伸び、筋肉が生え、瞬く間に元通りのまっさらな肌に戻っていく。私が絞めた首も同様。内部では頸椎の再接続と折れた骨格の再配置が始まっている頃だろ。絞殺の紫色の後も元に戻りつつある。
蓬莱の薬による蘇生“リザレクション”
私は私の輝夜の身体に今の虫刺されのような気に入らない部分が出来てしまったときはこうして一度、輝夜を殺した後でそこを修正。その後で蘇生させることにしている。この方法が下手に生かしたままで手術したり、長い時間をかけて薬物治療、放射線治療するより手っ取り早く且つ簡単だからである。
それともう一つ、手段と目的が入れ替わっているが、私は輝夜と睦事と同じぐらい姫様を殺すことが好きなのだ。生殺与奪というのは愛の交わしあい同様、魂と生命の根源に関わる行為なのだから。あの、腕の中で輝夜の身体が冷たくなっていく心地はなにものにも耐え難い。輝夜の胎で果てるのと同じぐらいに。
「あれ…永琳、私…」
「もう、姫様。二度寝はおやめくださいっていつも言ってるでしょう」
血糊で汚れた布団を片付けていると真っ裸の輝夜が目を覚ました/生き返った。不意打ちの死と蘇生は蓬莱の薬服用者にとっても前後不覚に陥ることが多く、たいていの場合、その暫く前の記憶が抜け落ちてしまう。私はそれを利用して輝夜に適当に都合のいい嘘をつく。
生き返ったばかりの輝夜はまだ、何か腑に落ちない部分があると思っているのか、裸のままきょろきょろと視線を泳がせていた。
「なにか、永琳と楽しいことをしていたような…夢かしら」
「夢ですよ。そんなこと」
かろうじて残っていた睦事の記憶に輝夜は物欲しそうな視線を投げかけてくる。けれど、私はそれを意図的に無視する。あの虫刺され、完璧な輝夜の肌に出来たおぞましい虫刺されを見つけてしまってはもう、気分ものってこない。代わりに内にたまっているのはサディスティックな怒りだけだ。
「さ、早く着替えてください。ウドンゲがご飯を用意して待っていますから」
風呂敷を広げて中からお召し物を取りだしてみせる。
輝夜を縊死させたことで少しだけ、私の中の欲求不満は解消されたがまだまだ心は晴れやかになっていない。ストレスを感じている。
ああ、早くご飯でも食べて、ウドンゲでも虐めて遊びましょう、かと心中に思い、早くす着替えるよう輝夜を促す。とんだお昼前になってしまった。
「姫様、夜更かしと過度の睡眠はお肌の大敵ですよ。ビタミンCをたくさん取って健康的な生活を送ってくださいましね」
END
すわっ、気がつくと腕やら肘やらお腹やらに蚊に刺された痕が!?
もうすっかり、蚊の羽の音が聞こえなくなってしまいました。
老いたな! 俺!
sako
- 作品情報
- 作品集:
- 18
- 投稿日時:
- 2010/07/01 18:50:03
- 更新日時:
- 2010/07/02 03:50:03
- 分類
- 永琳
- 輝夜
- 虫刺され
- ムヒは幻想郷入りしていません。
実際に火を付けるタイプのやつは久しく見てないなあ
さすが月の天才は格が違うな