音が聞こえる。
どうやら、男が私の股間をわざわざ音を立てて愛撫しているようだ。
だが、そんな事はどうでもいい。
周りを見渡すと何人もの男が私を取り囲んでいる。
そして、この状況。
これは間違いなくレイプ。
私の内部に子種を注ぎ込まれる前に、一刻も早くこの状況を打破しなければならない。
・・・意識が朦朧としている。
薬か何かを盛られたようだが、妖怪である私に対してはそう長い間効く物ではないはずだ。
男は愛撫に熱中している。まだ幾分か時間はあるようだ。
体が少しでも動くようになれば、人間など造作も無い。
それにしても、何故このような状況に陥ってしまったのか。
確か私は里に来ていたはずだった。
そう、そこである看板を目にしたのだ。
料亭「マグロ漁船」
マグロ漁船という名前なのだから、さぞ美味しいマグロ料理があるのだろう。
マグロだなんて懐かしい。
それなりに期待して店に入ったところで、私の記憶は途絶えていた。
迂闊だった。
海の無い幻想郷でマグロ料理などあるはずが無かった。
私はまんまと罠に嵌められたのだ。
と、私の眼前に男の胸板が現れた。
どうやら前戯は終わったらしい。
私の股間に熱いものがあてがわれ、男が体重をかけていく。
身体に力が入らない。
下半身から熱い感覚がする。
股間にざらざらしたものが当たっている。男の陰毛だろうか。
根元まで挿入されたという証である。
まだ意識は朦朧としている。
体が揺れる。
ピストン運動の揺れと眩暈で視界がめちゃくちゃになって気分が悪い。
「あっ」
反射的に声が漏れているようだが、まだ身体は動かない。
きついという男の声が聞こえる。
この男の生殖器にとって私の身体は小さいらしい。 これはまずい。
私は男の生殖器に必要以上の刺激を与えないようにと考えたが、そもそも私の身体は動かない。
下半身にも力が入っていないのだから、これ以上男への刺激を抑えることは出来ない。
私の視界が細かく震える。
私の股間に勢い良く男の下半身が撃ちつけられる。
これまでか。
そして男の動きが止まった。
お腹の奥から生ぬるい感覚がする。
意識は少しずつ回復してきているようだが、依然として身体は動かない。
結局、子種を注ぎ込まれるまで私は全く抵抗する事ができなかった。
そういえば、今の私のような状況をマグロと表現する事があるというが
マグロ漁船に騙されて自分がマグロになるとは皮肉なものだ。
・・・今の幻想郷の人間、目の前の男達は魚であるマグロを見た事があるのだろうか。
海が無いのだから、マグロが何なのかさえ知らないのでは無いだろうか。
幻想郷のマグロは、魚では無く今の私のような状況を意味する言葉なのでは無いだろうか。
マグロ漁船・・・
ああ
そうか
くだらない。
実にくだらない。
意識は大分回復した。
あとは体が動くようになるのを待つだけだ。
その間に何度犯されようとも関係ない。
目の前の人間共に、今一度妖怪の恐怖を味あわせてやらねばならない。
動いた。
私の首が動いた。
もうじきだ
もうじき
・・・
忘れていた。
妙に視界が広いと思ったんだ。
ここはマグロ漁船だ。
そして私は釣り上げられたマグロなのだ。
魚の身体はすごい大まかに分けると、頭と胴体の2つだ。
私の身体も、頭と胴体だけであった。
え〜っと・・・??
どゆこと?
あら??(混乱