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『輝夜姫様の殺人ビデオ』 作者: おにく
輝夜姫様の殺人ビデオ
私は障子をわずかに開けて、河童の土地で輸入したビデオカメラをそっと回していた。レンズの奥には広い庭園と長い廊下が、宵闇の少し前の空の光から薄暗くも映し出されている。手には汗が流れ、今にもカメラが滑り落ちそうだ。腋の間のじっとりさが気にかかる。体温も心なしか上がってきた。しっぽが取れてしまいそうな緊張感。二三深呼吸する、ビデオカメラに音を拾われないようそうっと……。そして私はビデオを左手に持ち替え、ブレザーのすそで右手の汗をぬぐった。
改めてレンズを覗きこむと、その向こうに廊下をあわただしく駆ける姫様がうつり込んでいた。丁寧に整えられた長い髪、髪たちはそれぞれ空の光を美しい輝きにして照り返させる。その黒髪には汗の粒がぽろぽろとごぼされていた。いや、汗ばんでいるのは姫様の体全体だ。竹模様などあしらわれたしとやかなスカートはばさりばさりと乱れ、リボンの良くあしらわれた暗桃色の上は汗でからだにひっついて、なによりその額、髪の森からこぼれた滴が姫様の柔肌をするりとくすぐる。初夏のじっとりとした暑さもあれど、その正体はせわしない運動から出たものだった。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
姫様は走る。裾の長いスカートを持ち上げ、庭に接する屋敷の長廊下をぱたぱたと走っていた。そしてその後ろ数尺前から大きな槌を持った体格のいい男たちが細身の姫様追いかけている。いずれも木槌、叩かれたらひとたまりもない大きさを持っていた。その目のもので、赤く染まりながら大きく見開かれて、目尻はにやりと上がっている。だからこそ息が絶え絶えになってもなお全速力で走る。その男たちはにたりと笑いながら速く走り遅く走り、怒鳴りつけてみせたり、姫様の心を無暗に焦燥させる。らんらんと赤く輝く目は、利益のために殺すのではなく殺すために殺す、そんな意思を連想させるものだった。
姫というのは年がら年中座っているもの、箸より重い物は持たない人々である。そんなかよわい少女がどうしてあんな体格のいい奴らから逃げ切ることができるだろう? ……もちろんそんなこと、出来るわけがない。やはり姫様は満足に走ることもできない重箱入りの女の子なのだから。私は姫様の体を見たことがあるから、そのことは良く分かる。
師匠に変わり身の回りのお世話をさせていただくことがたびたびあった。お召し物を変える時、そしてお体を拭いて差し上げる時、そのたびに白い真珠の様な肌が私の心に焼き付けられた。栄養状態がよく何の労働もない環境、永遠である存在であられたからこそ生まれた玉の肌、乳児の様なそれ。そして筋肉とは無縁のその肉は、あまりにもほっそりしていた。あまりに容易く壊れそうで触ることすら躊躇われるその肢体。湯に浸した布でおそるおそるこするとしっとりと濡れて、それもまた美しかった。姫様の部屋から自分の部屋まで戻ったあと、自分の腹を触ってみたら、あまりの固さに愕然としたことを良く覚えている。……。
姫様の様な大事に大事にされたお身体で走ることが出来る、それ自体がそもそも奇跡であって、捕食者から逃げるとかそういうことはそもそも従者がなんとかする仕事なのである。姫様の体はそんな大変な事が出来るような作りになっていない。……できない。この状況を仕組んだ人は、そんなこと承知の上に違いなかったが。
姫様がだんだんとこちらに近づいてくる。廊下を真っすぐ走った先で私がカメラを構えていたからだ。カメラをわずかに引っ込める。少し引っ込んだその場所、私の瞳に姫様が横に駆けていく様子が映された。あまりに近づいたのでスカートとカメラがわずかに触れるが、しかし姫様はこちらに視線を向けることもこちらに気付くことさえなく、ただまっすぐまっすぐ走って行く。心理的な視野狭窄、生きたいという強い願望は、半ば狂気をはらんでいる。たとえここが劇場であったとしても。……姫様が通り過ぎると男たちがどがどがとけたたましく床を鳴らして進み、それを確認すると私も身を小さく屈めながら、それらの後ろをつけていった。カメラはまわったまま、姫と男たちの背中をただ撮影する。
「はぁぁ、はぁっ……、はぁ、はぁっ……!」
あたりは本当に静かだった。ただ姫様の、酸素を吸って二酸化炭素を吐くひゅうひゅうと忙しい息の音がふわりとあたりに響いていた。その息は息の音をしておらず、泣いてしまった泣き虫の、嗚咽を漏らすその悲しげな音に似ていた。そして姫様の目の端にはわずかに涙が浮かんで、汗と混じり合いながら顔をますます汚していった。視界がにじんでしまったのか、目を思いっきりつぶり袖で水たちを払い捨てる。そして足に良く鞭をうって、裸足のまま中庭――池に中島、松などがほどよく植えられている、平安の和風庭園風のつくりをしている庭だった――に飛び出した。砂利が足裏に突き刺さる。対して歩きもしない姫の足の裏は柔らかで傷つきやすかった。
姫様は足をもつれさせ、庭の中で大きく転んだ。土ぼこりが立つ。背中に迫る恐怖でいじらしくも悲しく喘ぎながら、また立ちあがろうとするのだが、突然両足が茶色く太い男の腕に掴まれてしまった。姫様の体が大きくびくりと跳ねた。
「いやぁ、嫌あぁぁ……」
暴れようとする足、白の両手は土を掴んで、一生懸命逃げようとする。しかしそのうち両腕すら自由を奪われて、土を見ていた姫様はくるりと返され、仰向けの体制に直された。空は少し藍がかり初めているころだ。男たちの大きな顔をまともに見た姫様は、怖さのあまりか大きく目を見開いて、涙のつたう頬はさきほど以上に紅潮している。命の危険を前にしての、非常な緊張状態にあったのかもしれない。過呼吸患者のように、病的な息の頻度。
いじらしい、本当にいじらしい。もっと近くでよく映さなければいけない。そういうことが望まれている。河童に聞いたところによると、このカメラには拡大機能というものがあるらしい。私はこのカメラを受け取ってしばらく、そのことを知らずに苦労してしまっていた。どれだったか、これだったか。その青い出っ張りを押すと、姫様の体の更に細かいところまで見ることが出来るようになった。なるほどこれだ。落着きと分別が取り払われて赤くゆがんだその顔、怖い怖いとゆがみ続ける。この距離からでも良く見えた。この姿を全て記録することだけが私に与えられた役目だ。私も廊下から降り、庭の大松の幹の影に隠れ、撮影を続ける。少々近いが、大丈夫だろうか。しかし近づかなければお顔が良く映らない。
「んだら、姫様のおみ足を潰してしまうぞぉ」
「んだんだぁ」
庭に集まった男は5人、がっしりとした筋肉の鎧を着込んでいる。少女一人殺すには、十分を超えて過分な人数といえた。
男の一人が姫のスカートを破いてゆくと、しっとりと軽い脂肪がのった白く柔らかい足が現れる。そして裂け目が腰まで上がってゆくと、ほのかに桜色をした、もっちりとした性器が無暗に現れてしまった。陰毛は短く、膣の上部に寂しく生えているだけ、いまだ発展途上の性器であって、単純なすじ状の外観である。だがこんな赤く柔らかで上等な性器であるにもかかわらず、男たちは関心を持たなかった。あくまで足を叩きつぶすことに執心していた。姫様の顔も、特に恥辱は現れているふうではない。生きるか死ぬか、食うか食われるかの緊張状態で、恥なんてたいした価値は無い。だからこの場の関心は、潰されようとしている足に集中していた。
手足を引っ張られ、大の字の形にされた姫様。男の一人の特に筋肉が厚い者が、中ぐらいの丸太を素直に加工した威圧感のある木槌をどっこらせと難儀そうに持ち上げた。あの木槌、もしかしたら裸の姫様と同じくらいの重さがあるかもしれない。木槌がそっとふとももにあてがわれる。狙いを定めて一撃で潰してやろう、かたびっこの姫様にしてやろう、そんな意図が感じられる目をしていた。躊躇いはまったく含まれていない。姫様もそれを感じてか、喉をふりしぼって懇願をはじめる。その声は小川のように清らかだったが、さんざん泣き、気持ちが昂ぶっていることで、とぎれとぎれの少々枯れた声になってしまっていた。
「やめでぇ……、お願いだから潰さないで、なんでこんな、酷い」
無慈悲にも持ち上げられてゆく木槌。なんと喚こうと潰してやると。問答無用であるとその態度は語っていた。姫様は言葉を続けることができず、金魚のように口をぱくつかせ、適切な言葉を必死に探している。木槌がその頭上に持ち上がった時、男の口はにこにこと歪んでいた。
「あぁ、やだ、やだ、やだやだやだあぁぁあああぁぁああ!!!」
みしゃり
か細い骨が折れる音、ぐじゅりという水気の混じった音、それとともに耳に響いたのは喉奥からあふれ出るような痛ましい叫び声だった。
「ああああぁぁああぁああぁ!!!! いぎゃあああぁぁああぁぁあああぁぁああぁあぁ!!!!」
姫様の目はかっと見開かれ、眉は大きく歪む。涙がぽろぽろこぼれる。口はぱっくり開かれ、唾液が飛んでゆくのもかまわず叫んでいた。木槌は姫様のふとももを貫通し、片足を一気に切断した。足の先は切断された勢いで跳ね、ころころ転がっていった。木槌がどけられると、骨と筋肉と皮膚がぐちゃぐちゃに入り混じったグロテスクな切断面が現れる。骨のかけらがぽつぽつと肉に挟まっているのが見える。血がぴしゃぴしゃと吹き出し、止まる気配すらない。
姫様は痛い痛いと叫びながら、もう痛み以外に何も分からないといった様子で、軽い痙攣を続けている。ヒトの体の内部には相当の痛覚神経が張り巡らされているという。筋肉と骨を潰された痛みはもう神経が爆発するような恐ろしいものに違いない。姫様の体からだらだらと脂汗が流れているのがここからでも良く視認できた。潰された後にも延々と続く激しい痛みと、姫様は戦っている。
血まみれの木槌はもう一度振り上げられる。それを見た姫様の顔には明らかな恐怖があったが、痛みのあまりまともに喋ることが出来ない。抵抗することは夢のまた夢だった。ただ肩がぶるぶると異様に震え、ほほがひくひくとひくついて、どうにもならない物に恐れおののくのみである。
「したら、他の手足も潰すべ」
姫様は満足に抵抗も出来ず、切断は中断の無い比較的スムーズなものとなっていた。もう体力も気力もからっぽの様子である。目は虚空へ向いて、何を見ているのか何も見ていないのかという表情になっていた。姫様の意識は朦朧とし始めていたようで、もう一方の足の切断、両手の切断と続くうちにその反応は薄くなっていった。二本目の足を潰された時は大きな悲鳴があたりに再び響いたが、全て完全に切断し終わる頃にはもう神経が麻痺して来ていたようで、腕が飛んでも殆どかすかな呻き声をあげるだけであった。切断の途中、たまにがくりと意識をうしなうこともあったが、その度に池の水をぶっかけられたり切断面を蹴られたりして、辛い現実に引き戻されてしまう。
ともかくいまや姫様は芋虫だ。両手両足を失ってもう這うことしか許されない体。しかし姫様は切断面からの痛みのおかげで満足に泣き叫ぶことすら出来そうにない。忙しく呼吸をしながら虚ろな目で、そこらに転がる切断された両手足を見つめるのみである。涙はやまずにだらだらとこぼれていたが、痛みによるものか、悲しみによるものかそれはわからない。
「ひぁ……、ぁぁあ……」
時折悲しそうな声を漏らす姫様、抱きかかえて撫でて差し上げたくなるような、かよわくかすかな悲鳴。飛び出したくなる。しかし私はこの姿をビデオに納めなければいけない。それを持ち替え、しっかりと握りなおす。身をかがめ、松の影に改めて沈む。
男たちが次に始めたのは、姫様の服をすべて剥いでしまうことだった。両手足の付け根部分はいまや血だらけだったが、服に守られていた腹や胸などは相変わらず白く美しい。汗の玉がいっぱい浮かんで、きらきらしている。そして木槌はその白く柔らかい腹にあてがわれた。その重量でお腹がもちりとへこむ。姫様の表情もこころなしか苦しそうだ。次に潰すのは腹ということだろう。そんな木槌で叩いては内臓がぐちゃぐちゃに潰れてしまうに違いない。ただ乗せているだけでも苦しそうなのに。失血に耐えた姫様もいよいよ死んでしまうのだろうか。
でろでろと血で濡れた木槌は、それがもともと木であったのか定かでないというほどまでに赤く染まっていた。生温かそうな血がいまだぴちゃりぴちゃりと垂れていて、姫様の肉体に赤い斑点を描く。姫様は自分を傷つけようとする木槌をじっと見つめていた。表情は暗く、それは恐怖とも絶望とも、痛みを前にしてのあきらめの表情ともとれた。
一撃目。手加減して振り下ろされたのか、腹の皮は破れなかった。しかしその重量と圧力は本物であったようで、その瞬間姫様の口から大きな呻き声が漏れた。痛かったのは確かだろうが、臓器が潰れたわけでもないらしい。木槌がどけられると表情は少し戻った。
二撃目。今度はかなり勢いよく振り下ろされた。振り下ろされる瞬間、姫様は怖さのあまりか目をぎゅっと瞑っていた。打撃の瞬間、肺の空気を全て絞り出す、大きな悲鳴があたりに響いた。瀕死の姫様になお悲鳴を上げさせるその痛みとはそれほど残酷な物なのか。口元からこぽりこぽりと血があふれてくる、舌を切ったのかもしれない。……そして殴られたその後も悲惨だった。殴られた場所が下腹部に近かったせいで、姫様はお小水をちょろちょろと、そして更に腸が圧迫されたせいで大きい方まで漏らし始めてしまった。いつもの姫様が糞尿たれと嗤われれば、それはそれは屈辱に思って、真っ赤になって部屋にこもってしまうだろう。しかし朦朧とした意識の姫様は、もう自分の下半身の失態を理解することが出来ないらしい。何の反応も示さなかった。
三撃目。先ほどの一撃より少し上の方に命中。そのため久々に骨の折れるぱきりという音がした。肋骨が折れた、あるいはヒビ位は入っているだろう。内臓のダメージもかなりあったようで、口だけではなく鼻からも血が垂れ始めていた。ここからは確認できないが、肛門からも血が出ているかもしれない。しかしこれだけ傷めつけられてもまだ息があるなんて、月人としての体質がその丈夫さの秘訣なのだろうか。
四撃目。お腹のど真ん中に当たり姫様は盛大に血を吐いた。ごぼごぼと、気管支に異物が入ろうとした時のように激しく咳をする。とはいえその勢いは弱い。もう体の機能が全体的に麻痺しはじめているのだ。自分の血を口から出せず溺れる姫様。首が横に傾いてやっと口と肺に通路が確保された。呼吸を深くする、残された力で精一杯酸素を味わう。
五撃目。今度は胸を中心として潰された。肋骨が何本もやられる音がする、そうなれば相当痛いはずだが、姫様が悲鳴を上げることはもうなかった。小ぶりで柔らかい姫様の胸も一緒に潰され、行き場を失くした胸の脂肪が皮のすきまから飛び出ていた。
六撃目、七撃目、八撃目。腹が三回狙われた。既に腹の皮が破れ、ずたずたで痛々しい。中身はもうどうなっているか分からない。姫様のお腹はさんざん傷めつけられても内臓袋としての機能は完全には失っておらず、姫様の中身は全てその中にある、今は……。
九撃目、十撃目。胸に思い切り振り降ろされ、木槌が持ち上げられた時には肋骨は全て役立たずになってしまっていた。心臓にも大きなダメージがあったに違いない。姫様は目をつぶってもうピクリとも動かない。
反応が無くなったことに気付いた男たちは、殴ったり水をかけたり。そして肌を触ってようやく姫が死んだと分かったのか、それぞれ歓声をあげ、おまけという具合に二三蹴り飛ばした後、死体も武器もそのままに去っていった。お互いに肩を抱いて、くるくる踊り、鼻歌を歌いながら庭を離れ、廊下を離れ、竹やぶの中に消えていった。
姫様の体は肉塊だった。辛うじて人の肉体の外形を保っているが、皮はところどころ千切れ、折れた骨が皮を破って露出している。叩かれた場所はひどい内出血で赤か紫かに腫れあがって、神経回路がまともに生きていたら、風が吹くだけで鈍器で殴られるような大きな痛みが襲うだろう。出血も著しく、血のいきわたらない所で肌の変色が始まっていた。体全体にとどまらず、姫様の血は庭の草花まで赤く染め上げている。しかしそのような中で姫様の首だけは血が多少ついているのみで、色といい形といい相変わらず美しいままだった。泣きつかれた子供が安らかに眠るその顔だった。
男たちが去ったことを確認すると私は姫様の死体に近寄る。大型のナイフを取り出し、姫様のぼろぼろにされた体の胸のど真ん中に突き刺した。そのまま下腹部方向へ向かってぐっと力を込める、姫様の脂肪はもともと薄く、さんざん叩かれてほぐれていたから割いてしまうのは簡単だ。姫様の内臓で無事な物は一つも無く、すべて混ざったミンチになっていた。
それを確認すると私はナイフを抜き、池の水でちゃぽちゃぽと洗った。刃に引っかかった肉片に鯉たちが誰の物とも気にせずぱくつく。こんな様子もカメラに納めてほしいと聞いていた。しっかり撮っておかないと怒られてしまう。私は姫様の内臓をもう一掴みして、池にばらまいてやった。ごちそうの雨に鯉たちはばちゃばちゃと水を飛ばして、まるではしゃいでいるようだった。
水面の揺れが静まると、レンズは再び姫様の死体へ向けられた。あまりにも無残な死体。まずは距離を取って全身を写す。……どこから嗅ぎつけてきたのだろう、丸まると太った蠅たちが数匹、死体の周りを忙しく飛んでレンズの視界に割り込んでくる。美味しい肉を子供に食わせてやろうと、卵をうみつけにやってきたのだ。特に今は夏である。地上の夏は暑い。蠅の活発な季節。
ともかく、早いうちに姫様の死体をレンズに納めないとまずい。顔から胸、腹と内臓、千切れて飛んで行った手足まで入念に撮影すると、ボタンをさぐってビデオカメラを停止させ、ちょっと大きな庭石にかけて、いつのまにか乱れてしまったネクタイを正しながらとりあえずの一息をついた。
【リザレクション】
「姫様、この遊びもそろそろやめたほうがいいです……。姫様にそんな趣味があるなんて知れたら永遠亭に誰も寄りつかなくなるって、師匠も悩んでるみたいですし……」
「いいわよそんなこと。かまわないわ。これだけが私の楽しみなのに、譲れないじゃない」
姫様が笑う。ほんの数分前、ぐちゃぐちゃの肉塊だったのが嘘のようだ。
幻想郷に来てからの姫様は前よりいっそう妙になった。育った環境のためか以前から世間知らずな所があり、少し変わった人だとは思っていた。いや、そもそもいくら不死同士だからって殺し合いで遊ぶなんて、相当変わった人だとずっと思っていた。月の人である以上、傷がつけば相応の痛みがあるはずなのに。
結局姫様は重度のマゾヒストだったんだ。……お友達のほうはどうか分からないけれど。それでなければ殺し合いまではともかく、自分が殺される様子を私に撮らせて終わったら自室で延々と見返すなんて、そんなおかしい趣味を持つはずがない。ここだけの話、殺人ビデオを見ている時の姫様は目がうっとり蕩けていて、口元がやばいくらいニヤニヤしている。よだれもたれて、本当に幸せそうだ。殺される姫様を見ていると本当に痛そうで、全く楽しそうに見えないのに。姫様は「どうしようもない状況に追い詰められるのが良い」とか良く分からないことを言っていた。
「それに鈴仙だって、ちょっとは楽しんでるんじゃないの?」
姫様に泣きつかれたからしぶしぶ協力してるんですよ、と言いきることができるだろうか。私もこのスリリングな遊びに溺れ始めているのでは? ここ最近、私がこの遊びを真剣に止めたことは何回あっただろう。殺してくれと言って殺してくれる人などそうそう無い以上、私の協力無しでは遊びのバリエーションは大きく下がってしまう、先ほどの男たちも私が狂気の瞳を使って一時的に狂わせた人たちだ。私が協力しなければ姫様が遊びに飽きることがあるかもしれない。それなのに私は、姫様が止めると言わない限り、ずっと続けようとするに違いないという気がした。
「今度は天ぷらかなあ!」
風が一陣吹くと、庭の方から血生臭い死体の残り香が漂ってきた。
おわり
輝夜様は細身で美しく、柔らかで食用にも適しているというのが私のイメージです。
おにく
- 作品情報
- 作品集:
- 18
- 投稿日時:
- 2010/07/04 13:31:20
- 更新日時:
- 2010/07/04 22:33:26
- 分類
- 輝夜
- 殺害
- 殺人ビデオ
- 四肢切断
- 木槌で潰されて死ぬ
- 撮影
あとがきがまたエロイなー・・・